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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
262/364

ダヌアの空に99


破壊のウインドミルが粉々に粉砕して行く。


...ドドドドドドドド...ボゴォ...ゴゴゴゴゴゴゴゴ...ドゴッ...ゴゴゴゴ...バリバリバリバリバリバリ..バシュウゥゥンン...ドドドドドドドドドドドドドドドド...バシィッ...ゴゴゴゴ...バリバリバリバリバリバリ...ボォンン...ドドドドドドドド...ゴゴン...ドドドドドドドド...ボゴォォ...ゴゴゴゴゴゴゴゴ...ドゴォゥ...ゴゴゴゴ...バゴッ...


バルバロイを。


... ソヌイルクリーーバルナ。イーブァ、エメヌノータ、ム、レ、アンティゥカーハ。 ...

《...我、ここにあり。我は、勇気のアンティカなり。...》


嵐が吹き荒れる。


「サビアノーアにアラート!。」


リタが叫ぶ。


〔※サビアノーア : 14歳。体長17m。シカム鳳凰系。ジュール族。キドー一門の若き師範代。

ハイドラ孤児。スサの養子。マジトゥの義弟

トルカカに兄と呼ばれ一番慕われている〕


「も、も、モニター、い、い、1だ。」


モニターが切り替わる。


サビアノーアが腕を組んで立っている。


第一層のイブラデの中では、最も華奢。


「立ち姿がアンティカだぜ。似てないか?。」


「誰にだ?。」


「あのアンティカだ。新しい...。」


「あぁ。確かに。新四方の...。」


四方とは文字通り、東西南北。


新四方マジトゥは歴史上、初めて5人目の四方アンティカとなった。


八方アンティカを飛び越して、初戦で四方に抜擢された者は歴史上いない。


大闘技も地に落ちた。


ハイドゥクの実子だからだと。


ハイドゥクは高齢になり判断が鈍った。


大変な批判があった。


高齢の闘技関係者や、族長達の反発は強く、国を2分する対立が生まれた。


マジゥの時以来。


兄弟は似るものだ。


5人目の四方は、正にマジトゥの為に作られた。


しかし、その溝は2回目の大闘技で完全に消え失せた。


マジゥ不在の大闘技において、マジトゥ率いる中央軍が、マジア、ノリエガ、カルタゴの南軍、西軍、東軍を抑え優勝をしたからだ。


しかも圧倒的な大差で。


千秋楽の大将戦こそ、マジトゥはマジアに大敗を喫した。


しかし、中央軍はその他の戦いで圧倒的な勝利を収め優勝をした。


だが、人々が見ていたのはそこではない。


マジトゥの温かく、動じない人柄。


最後まで諦めず、仲間を何よりも大切に思う姿勢。


そして、少しおっちょこちょいな人の良さ。


マジトゥの中央軍の結束。


北軍の様な厳しさは無いが、それでも北軍に勝るとも劣らない強い結束。


「そうだ。きっと新四方があいつの目標だ。」


あの腕を組み、静かに相手を待つ姿。


目を開き微動だにしない姿。


どんなに逆境になろうとも、どんなに形勢が悪かろうと。


全く動じない。


マジアが冷徹と制覇のアンティカ。


マジゥは激情と奇跡のアンティカ。


そして、マジトゥは未来と安寧のアンティカ。


天下の裏切り者シーア•ハーンはそう言った。


マジトゥこそ、永い永い間、ヒドウィーンが待望して来た守護者だと。


マジトゥは現れた。


僅か2年前。


彗星のように。


無数のバルバロイが集まって来ている。


サビアノーアの周りを。


渦のように。


華奢なサビアノーアは格好の餌だ。


しかし、バルバロイもバカではない。


ただならぬ気を感じている。


「一挙手、一頭足、マジトゥそのものだ。」


「しかし、流石にやばいぞ...。」


無数の黒い生き物がサビアノーアの周りを回っている。


数十メートルの化け物達。


水族館の回遊魚のように。


機会を伺っている。


血に飢えたハイエナのように。


荒い息遣い。


したたる唾液。


血走った赤い目。


今にも飛びかかり貪ろう食らおうとしている。


「ドゥボンもいるわ。」


エマがモニター17を指差す。



...ドーーーーーーン...


...ドドーーーーーーーーーーン...


雑魚を踏み潰しながら大型のバルバロイが来る。


「パルトだ。汗」


蜘蛛を母体にしている。


ピーカーやアルガードのような球状の目が幾つもついてる。


「デカい!。40mを超えてる!。」


ロスターが叫ぶ。


「桁外れに大きいわ。汗」


身体は毛だらけのゴリラに似ている。


隆起した筋肉もある。


脚は装甲から2本ずつ出ている。


人の手足を模して。


2本ずつの脚で槍を持っている。


「ファントムもいる。司令塔がいるはずだ。」


ロベルト。


2つの首を持ったバルバロイ。


鎧を身につけている。


人間をベースに作られている。


まるで落武者。


死人のように生気のない顔をしている。


体長60m。


「いた。MD16よ。多分あれが司令塔。」


リタがモニターに映る大ダコを指差す。


「MD16。奴はバルバロイじゃない。何でタコが陸に...。」


ガレスは呆然としている。


MD16は知能の高い殺人ダコ。


通常は寒い海にしかいない。


ダルカンラキティカ メーンヌサは複数のMD16に粉々にされた。


「直立してる。遺伝子操作だ。」


「戦闘力のデータがnullになってるわ。ねぇ!。ナイジェル!。チーフ!。」


脚の先端が先鋭で鋭利な刃になっている。


「やはりMD16が指令を送ってる。エネリウムパルスが出てる。」


ロベルトがナイジェルの方を見る。


「こ...こ、こ、この、お、大きさ...。見ろ!。せ、せ、戦闘力が!。れ、れ、レインシェードを上回ってる!。」


ナイジェルは汗だくだ。


「キャァァーーーーーーーーーー!。」


MD16が飛びかかる。


目にも止まらぬ速さ。


鋭い4本の触手が。


サビアノーアがやっと動く。


「お、遅い...。」


「ダメだぁ...。汗」


我々はMD16の恐ろしさを知っている。


「サビオっ!。」


「逃げろ!。」


「サビオーーーーっ!。」


触手がサビアノーアを貫...。


...ドウン...


サビアノーアは動じない。


左手を広げMD16にかざす。


触手が止まる。


物理の方則を無視して。


時間が止まったように。


「両掌波?。」


「いや、違う。」


サビアノーアの額、両肩、胸、臍、両膝、両肘。


光の渦が回っている。


赤、青、黄色、白、黒、緑、桃、橙...。


...ゴゴゴゴオオオォォォーーーーーー...


...バチィィッ...


プラズマが飛び散る。


...バチイイイイィィッ...


....ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


衝撃の渦がサビアノーアの左手から広がり一瞬でMD16を捉える。


4本の触手が引きちぎれる。


「MD16が...。」


MD16が吹き飛ぶ。


たかだか16mの兵曹の攻撃に。


「チャクラの兵曹だ...。」


ロベルトの眼鏡がずれている。


「え?。汗。バカな...」


「いや、間違い無い。モニターのゲージを見ろ。」


「げっ。1263億カルーデラ!?。何だこの数字。ダルカン級...。いや、超えてる。汗」


「サビオがあの神話の...。」


チャクラの兵曹は、ハイドゥク戦記の最初に出てくる。


MD16を片手で一蹴....。


ダルカンどころではない。


「危ない!。」


「サビオ!。」


...グゥウオオオォォォーーーーーー...


落武者ファントムがサビアノーアに襲いかかる。


落武者ファントムは知能は低い。


ただ、途方も無く怪力だ。


落武者ファントムが覆いかぶさる。


真上からサビアノーアを両腕で鷲掴みにした。


...グガガガガゴゴゴゴ...


「持ち上がらない?。」


「見ろ!。サビオの質量が上がって行く!。汗」


ロベルトがゲージを指差す。


グラビメーターの数字が爆速で回転している。


サビアノーアのいる地点だけ。


落武者ファントムが焦っている。


...ガツッ..


...ガッッ...


サビアノーアが落武者ファントム人差し指を掴んだ。


「見ろ!。指が折れそうだ。」


...ギィィィィ...タン...タン..タン...タン..タン...


「サビオが落武者ファントムを手繰り寄せてる。」


...グウウウオオオォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーー...


落武者が悲鳴を上げる。


...ガツッ...


...ドガッ...


フィギュアが鬼を地面に手繰り寄せている。


サビアノーアが手を持ち変えるたび、落武者の甲殻が砕け散る。


...バシュウ...


...シャアァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


体液が噴き上がる。


...バシュウゥゥ...


...グウェェェェェーーーーーッッ...


落武者ファントムが悲鳴を上げている。


周囲を回っていた、骸骨頭のザコ達が一斉に逃げ出した。


ドゥボンは既にいない。


...バギィィィッ...


サビアノーアが落武者の両肘をへし折った。


手首を掴んだまま。


「うわぁぁぁ。」


「あんなデカいのを持ち上げた...。」


「ほ...本物だ、さ、サビオ、サビアノーアは本物だ。」


落武者の巨体が宙に浮く。


60mの巨体が。


...グウェェェーーーーーッッ...グウェェェ...グウェェェーーーーーッッ...


影武者は得たいの知れない小人に怯えている。


自分より重い小人に腕を折られ、空箱のように持ち上げられている。


...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


サビアノーアの足元にクレーターが出来る。


重力が捻れている。


サビアノーアの周りには何も居なくなった。


バルバロイは力の差に敏感。


野生の獣以上に。


...ズダドーーーーン...


パルトが向きを変えた。


...ズズドーーーーン...


...ズダドーーーーーーーーーーーーーン...


パルト(蜘蛛人間)が逃げて行く。


一目散に。


...スゥゥ..


...ゥゥゥゥ...


...


....ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


サビアノーアが落武者を地面に叩きつけた。


頭から。


「あぁ...。」


皆、声が出ない。


サビアノーアが飛ぶ。


「飛んだ。」


...ドーーーーーーン...


...ドーーーーーーーーーーーーン...


「両掌波だ。」


衝撃波がパルトを直撃する。


パルトが転がる。


風に吹かれたドラム缶のように。


高速で横転するトラックのように。


...ドドドドドドドドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


蜘蛛巨人が大地を削って転がって行く。


既に腕が何本ももげている。


慌てて逃げる姿は正に人間。


パルトが必死で立ち上がろうとする。


バルバロイに恐怖の感情は無いと言われている。


しかし、この挙動は恐怖に突き動かされているとしか思えない。


...ブシャァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ...


...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


...グシャアァァァ...


小さなフィギュアは蜘蛛巨人の頭を踏み潰した。


腕を組んだまま。


微動だにしない。


... ソヌイルクリーーバルナ。イーブァ、アルマーナ、ム、レ、アンティゥカーハ。 ...

《...我、ここにあり。我は、愛のアンティカなり。...》


トルカカの歌はサビアノーアを讃える。


...スドーーーーーーーーーーーーーン...


タンパーが蹴りを打ち込む。


〔※タンパー : 15歳。体長22m。ヒモン系(赤)。家庭が貧しく、生活費のためにダヌア戦に参加。戦わず帰ろうとしている。病弱な母と3人の弟。〕


...バッスゥゥゥーーーーーーーーーーーン...


クジラの腹のようなドゥボン(ガマ口)の胴体に。


ドゥボンはガマ口にトカゲの手足がついた化け物。


口の部分に無数の目がある。


「おい。ドゥボンは危険だぜ...汗」


ガレスがロスターを覗き込む。


ドゥボンは戦いのネックになる。


...スドーーーーーーーーーーーーーン...


...グボォォッ...


「タンパーはリスクを減らそうとしてる。」


ドゥボンの口から解けた骨が。


「バルバロイの骨だ。汗。仲間を喰ってやがる。」


...バッスゥゥゥーーーーーーーーーーーン...


ドゥボンが仰向けに倒れて行く。


「タンパーには斬撃がある。一番ドゥボンに強いわ。」


「いや、シエルに任せた方が良い。」


「シエルの負担が大き過ぎる。もう1000体以上倒してる。」


何やってる!。


「ガレス!。おまえが決めろ!。」


ガレスが決めることになってる。


火口包囲陣の指揮は。


エマに優先する。


そう決めたはずだ。


「気を付けろ!。タンパー!。」


「気をつけて!。」


「危ない!。」


「キャァァァァァー。」


「うをぉぉぉぉ。」


...グバァアオオオオオウウウッッ...


ドゥボンがタンパーを丸呑みにした。


「タンパー!」


「タンパー!。」


「し、しまった。俺としてことが。」


ガレスが頭を抱える。


ピンクのハチマキがはちきれそうだ。


ドゥボンの胃の中でタンパーがもがいている。


「猶予が無い。し、シエルはどこ!?。何とかしないと!。」


ロスターが立ち上がる。


「落ち着いて!。大丈夫よ!。」


エマは冷静だ。


...ピッ...


ドゥボンの腹に一瞬焦げが。


煙を上げて回復する。


...ピッ...ピーッ...


3本の光の筋。


ドゥボンの腹が焦げてまた煙を上げる。


...ブルルルルルルル...


ドゥボンが身を捩っている。


...ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ...

...ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ...

...ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ...


オレンジ色の閃光がドゥボンの腹を切り裂く。


内側から。


...ブシャァァァァ....


「タンパー!」


タンパーがドゥボンの腹を突き破り出て来た。


...ブルルルルルルル...

...ブルルルルルルル...

...ブルルルルルルル...


ドゥボンが悶え苦しんでいる。


...ジャバアアア...


ドゥボンから体液や胃の中の残骸が流れ出す。


〈...うっ...くせぇ...〉


...ザザァァ...


ドゥボンはまるで水の抜けたビニールプール。


... イルーーバ、シスゥーア。メーフ、ニルマーバノームエアハィ。 ...

《...我、進む。例えこの身が滅ぶとしても。...》


タンパーの手から斬撃波が飛ぶ。


光の衝撃波。


..バスッ...バスッ...バス...バス..バスバスバス...バスッ...


ドゥボン目から体液が噴き上がる。


裂けたドゥボンの腹が塞がって行く。


「粒子線の威力が足りてない。炭化が不十分だ。これじゃ、キリが無い。」


ロベルトが振り返る。


直後に別の場所から目が湧き出てくる。


「気を付けて!。」


パルト(蜘蛛人間)がタンパーの背後に。


「パルトが来てるぞ!。タンパー!。」


ガレスが叫ぶ。


〈...大丈夫だ。ケアしてる。...〉


タンパーがドゥボンの口を持って引き裂いて行く。


...バリバリボリバリバリボリバリバリボリバリバリボリ...


分厚いビニールのように。


...ブシャァァァァーーーーーー...


ドゥボンが体液を噴き上げる。


血は赤い。


引き裂いた直後に破れた箇所が繋がって行く。


...ピシュゥゥゥ...


タンパーに液体が付着した。


...ピシュゥ...


パルトが吐いた唾液...?。


...シュルルルシュウウウウゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーー...


「パルトが糸吐いてるよ!。」


タンパーががんじがらめにされて行く。


...ツッドーン...


...ゴゴゴゴ...


...ドスゥン...


ドゥボンが来る。


地面を這って。


タンパーに手足を引きちぎられたドゥボンが。


「タンパー!。逃げろ!。ドゥボンが来た!。」


「タンパー逃げて!。」


....グゥボオオオォォォウウウッッ...


「タンパー!」


「タンパー!」


斬撃を封じられてる。汗。


「まずい...。」

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