ダヌアの空に76
...ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...
戦闘艦達の掃射が続く。
...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
閃光の嵐。
目の奥まで焼き散らす。
執拗に。
『...モガ.......員...総.....無事..着...。...』
パスタップが聞こえる。
合間に。
途切れ途切れに。
外郭の機材からだ。
ここ(内郭)には届かない。
ゾルクヌートが反射している。
※ゾルクヌート:大気に浮遊するクヌン粒子が作るミラー層。アルマダイや電磁波を反射する。
『...こち.....最後衛...α...い。アギ...ラー...ム.....24。座...を知....せ....。...』
...クアワァッ....
閃光がゴーグルや瞼すら貫く。
『...ウィンテル......5....る。...』
私には瞼はない...笑。
『...モガ.......艦長...ま......い.........』
...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ...
爆音が身体を激しく揺さぶる。
『...ジンズゥ...員。総......脱中。...』
脳や内臓を鷲掴みにする。
機体ごと。
『...着地目.....座... ペネ....ー..相....X1...27...3...6、Y22...6,....0...』
私には内臓もない...笑。
『...ジン....ゥ。第1操舵...イー....ー....半自......操舵....始。...』
光と音の洪水は止まない。
『...座標....変....。こち...か....指....る。辺........無数....ウィン....ルン.......る...』
僅か数分が永遠に感じられる。
無限の暗黒。
苛烈な規模の粒子線照射。
まるで灼熱の砂漠サバラン。
漆黒のゾーグが焼き尽くされて行く。
何もかもが花火に飛び込む小虫のようだ。
内郭の人間は声すら出せない。
何かにしがみついて耐えるのが必死。
身体と魂が分離しないように。笑。
最先端にいるラムダ13が最も激しく揺れている。
そこにもフォーカスするとしよう。
『...ヒッ...』
ジャイナの大男が悲鳴をあげる。
レーダーシャフトの収納壁に激突しそうだ。
灰色の金属の壁。
表面は柔らかい。
ジャイナ族は肌の色が黒い。
『...ろ、ろ、ロスター!。じ...状...状況......』
艦長席の男。
制御バーにしがみついている。
固定ベルトだけでは、叩きつけられるからだ。
コンパネは複雑で平坦には出来ていない。
あの男がジャイロ...。
目の青い白人。
銀の髪。
ダンドア族の40男。
白髪混じりの短髪で赤ら顔。
真っ白な歯。
屈強で頑強。
真っ直ぐで不正が大嫌いだ。
ぶっきらぼうな男だ。
しかし...。
心の広い男。
愛のある温かい男だ。
人は見かけに寄らない。
『...ひぃぃっ...』
第1レーダーの男。
ジャワ族。
オタクの黄色人種。
ぽっちゃりで身体はデカい。
全く次元レーダーを見ていない。
艦内左前方の操縦席。
正面を向く2人の操舵手に対して、60度斜めに配置されている。
やはり制御バーにしがみついてる。
ガタガタと震え顔も上げられない。
極度の小心者。
病的なほど。
だが卑怯でも臆病でもない。
『...クッ...』
操舵手2人が激しく揺れる。
ジェットコースターにくくりつけたマネキンよように。
左は第1操舵手クレランス。
屈指のパイロット。
右の第2は...。
あぁ。
イーシャスだ。
ガングロのギャル。
意外にも医学生。
兵役でここに来ている。
冷静にコンパネのスイッチを切り替えながら、操舵をする。
短期間でこの熟達。
クレランスはかなり楽なはず。
女達はみな冷静だ。
『..うをぉぉおおお...』
最も体格の大きなサラディーンの男。
ガレス。
まるで格闘家。
『...ぅぅ...ヒッ...。バル...バ...うわぁ...ヒッ...。バ、バ..バルバ.....生命反...急激...』
話す間も無い。
油断をすれば壁かコンパネに叩きつけられる。
固定ベルトで縛り付けられてなお。
そしてこの屈強な男。
意外に臆病だ。
...ピシュゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
主砲が大地を捉える。
艦内が真っ白に。
『...キャアァ...』
副長の女。
艦長席の斜め前。
壁に張り付く無数のモニター。
大小様々な。
全ての戦況を捉える。
全機材に指示や情報を流している。
モニターを監視しながら、コンパネをブラインドタッチで操作していた。
あの女が遠隔で操作することもある。
アギュラーラムダ13の操作は、その機材の判断よりプライオリティが上だ。
ペネループを除いて。
...ババババババババババババババババババババババババババババババ...
『...め、目が!。...』
『...おい!。ラウル!。頼む!。...』
ロスターの身体はエマの席に入らない。
『..あぁぁ...うぅぅ...』
『...エマ!。俺が見る。変わって!。...』
ラウルが制御バーに固定ベルトのフックを架け替えながら移動する。
『...エマこっちよ!。...』
エマは手探り。
ヘザーが立ち上がり、エマの手を制御バーにかけてやっている。
ヘザーは一時的に自分の制御バーから手を離す。
...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
無数のバルバロイの身体が引きちぎれ飛び散る。
ラムダ7はジグルス6とジグルス11からの映像を取得している。
...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
数十メートルの巨体が飛散する。
焦げたケチャップのように。
他の機材達も激しく揺れている。
地震に揺さぶられる食器のように。
大時化の笹舟のように。
バルバロイが消え行く...。
蒸発して。
神の業火によって。
存在は消えて無くなる。
あと数分で。
1匹残らず。
この惑星から。
未来永劫...。
ゾーグにのみ住む半獣人間。
卑しく忌まわしい獣。
獣よりも卑しい獣兵曹。
現世の邪鬼そのもの。
デューンの大皇帝ダイダレスによって作り変えられた。
※91人目のダイダレス大皇。現ターシーであるクセルクはクセルク大皇としては121人目。デューンでは〇世の呼び方はタブー。大皇帝1人が1つの宇宙を創造し終わらせると考えるため。
300万年に渡り120億の国民を服従させて来た、その圧倒的な力によって。
...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
爆炎が噴き上がる。
暗黒の夜空に。
『...か、か、数...さ、さ、3000...うぅ...』
ロスターは身体を打ちつけてしまった。
シャフトボックスの角に。
『...上..空...艦影!。ベイ..ーブ上空!。...』
外郭通信の音。
『...艦長!。ラムダ7から...ラムダ7です。ゾ、ゾルクヌートが上空に!。...』
第2レーダーの女。
リタ。
ベッドギアを外して振り返る。
ヘザーの前の席。
アミ族。
個性的な女。
髪型も独創的。
重量挙げ世界3位。
痩せた小さな身体で。
18歳の息子がいる。
決して流されない、冷静な女。
やや保守的。
!
巨大な長い雲が夜空に浮き上がっている。
!?
『...艦影!。敵艦の艦影です!。...』
ロベルトが叫ぶ。
眼鏡が衝撃で割れている。
ジュール族。
勤勉で緻密な30代前半の男。
中肉中背。
『...ソースを切り替えろ!。外郭に!。...』
『...7と連動!。7のレーダーソース。ラムダ7からのデータに切り替わります!。...』
...ピッ...
『...何!?...』
...ピッ...ピッ...ピッ...
『..こ、これは...汗。...』
『...ろ、ろ、ロックオン...ロックオンアラート...』
冷静なロベルトが慌てている。
『...な、なぜ?。何が!...』
...ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ...
...バシッッッ...
『...キャアァァ...』
ヘザーが堪らず悲鳴をあげる。
稲妻...。
砲撃で白んだ夜空を切り裂く。
...バッッ...
緑色の巨大な雷柱。
...バシッッッッ...
地平に向け空を走る。
『...まさか...』
ゾーグの夜空を。
...バッシッッッッッ...
『...こ、これは...』
2隻の戦闘艦の上空...500m。
大きな塊が光を増す。
『...デ.......デンジネード...。...』
ロベルト。
『...まさか...汗...』
リタ。
『...で、デンジネード?。...』
ヘザーが。
『...ばかな...ひ、ひとたまりも無い...。...』
ロスター。
『...全滅するぞ...』
ガレス。
ラムダ13のクルーが浮き足立っている。
全ての機材からの悲鳴が渦巻いている。
半透明の巨大な物体。
雲ではない。
光の洪水に埋もれていた。
...バッシッッッッッッッ...
【...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...】
『...警報が!。汗。第一防衛だ!。...』
『..あ..ぁぁ...』
【...全軍特別防衛体制!。ファザスフォーメージョンシールド展開!。全軍特別防衛体制!。ファザスフォーメーションシールド展開!。...】
『...と、とけ、と、特?!...』
ナイゼルはひたすら汗をかき震えている。
【...緊急停止。緊急停止。アルマダイ残留不足。アルマダイ残留不足。緊急停止。...】
ペリシーダ。
ペネループの人工知能。
国家規模の。
ペリシーダの音声が流れている。
【...サーマルリアクター起動。サーマルリアクター起動。...】
自動音声が交錯する。
【...緊急停止。緊急停止。ファーストプライオリティ採決確認中...。ファーストプライオリティ採決確認中...】
【...セカンドステージに移行。...】
【...ペルセアと同期を開始。ペルセアとの同期を開始。...】
【...通信が遮断されます。通信が遮断されます。...】
別の艦影...。
『...そんな...』
『...n...n...4...4....0...0..0...0、うわぁ。じ、じ、ジルカンダーだっ!。ジルカンダー!。...』
姿を現わす巨大な戦闘鑑。
細長い流線型の船体。
金属の機体が露わになる。
地上の掃射を眩く反射している。
鏡のように。
ベイルーブやハリーヤよりも更に大きい。
1000mを超えている。
下弦。
巨大な金属の板がひらついている。
無数に。
反重力板だ。
まるで呑気なイカかタコの触手。
ビル並みに大きな触手。
船体の横、放電口をリレーする閃光。
艦首から艦尾まで。
エネリウム放電だ。
エネルギーを蓄積している段階。
間も無くハイドラ軍が壊滅する。
一瞬で。
シシィ•ドールは読んでいた。
トルカカの狼煙。
本人と相手の心の中にしかない。
読心術でも解読できないはずの変化暗号。
『...上空に新たな艦影!。...』
『...艦影が!。まだいます!。...』
リタとラウルが同時に叫ぶ。
『...じ、じ、ジルカンダー!。ジルカンダー!。ジルカンダー!。ジルカンダーです!。い、あ、い、一隻ではありません!。ふ、ふ、複数います!。...』
ラウルが慌てている。
『...あぁぁぁ...』
デンジネード。
空戦であの威力。
この至近距離では。
地上の何もかもが跡形無く吹き飛ぶだろう。
あと数秒...。
サビオも...。
我が子も同然。
心が痛い。
苦しい。汗。
急に身体が重くなる。
地面に強く引き寄せられる。
でも、私には、私には手出しは出来ない。
手を出すことは許されない。汗。
時空が歪む。
守護球の中の私の本体。
二度と上様のお側に行けなくなる。
何も出来ない。
今の私は無力。
....パシィッッッッッ....
....ブゥウウワワゥゥゥン...
『...クッ...』
『...うっ...』
『...来る...』
『...あわゎゎ...』
一瞬で消える。
ファザスすら無いハイドラ軍。
枯れ草ほどの重みもない。
...ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...パシィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ...
来る!。
終わりだ...。
...フォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーゥゥゥゥ...
...ブゥウウワワオオォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーゥゥゥ...
!!
2つの光の塊。
音が遅れて到達する。
彗星が2つ。




