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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
210/364

ダヌアの空に46

...ブゥゥゥゥゥゥゥゥンン....ドドーーーーーーーーーーーーーン!ズドドドーーーーーーーーーーーーーン!...ブゥゥゥゥゥゥゥゥンン....ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...ドルゥドルゥドルゥドルゥ....ブゥゥゥゥゥゥゥゥンン....バババババババババ...ドドーーーーーーーーーーーーーン!ズドドドーーーーーーーーーーーーーン!...ドルゥドルゥドルゥドルゥ....ゴゴゴゴッゴッ....ゴゴゴゴッゴッ....ドルゥドルゥドルゥドルゥ....ドドーーーーーーーーーーーーーン!ズドドドーーーーーーーーーーーーーン!...ブゥゥゥゥゥゥゥゥンン....ブゥゥゥゥゥゥゥゥンン....ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...ドルゥドルゥドルゥドルゥ....ブゥゥゥゥゥゥゥゥンン....バババババババババ...ドドーーーーーーーーーーーーーン!ズドドドーーーーーーーーーーーーーン!...ドルゥドルゥドルゥドルゥ....ゴゴゴゴッゴッ....ゴゴゴゴッゴッ....ドルゥドルゥドルゥドルゥ...


鋼鉄の獣たちが進む。


大地を揺さぶり爆音を轟かせながら。


7000の隊列は整然と爆進して行く。


時速は117km。


砂煙があちこちで立ち上がる。


もうかれこれ、112時間。


機械の獣達は爆走する。


最高司令戦略装甲車 ペネループは、地面を離れ滑るように押し進む。


反重力推進器の力で。


その平たく多角形の真っ白な機体から、無数のセンサーが飛び出している。まるで昆虫の触覚のように。


この装甲車には、国家を統率できる規模のシナプスフレームが搭載されている。


ペリシーダ。


ハイドラのマザー ペルセアと同じ組成、同じ構造のシナプスフレーム。


通信の度に、独自の言語を作り出し、マザーと交信をする。


1秒の間に数万回。


この親子の会話には、変化暗号通信は必要ない。会話する言語自体が都度変化する暗号なのだから。


その親和性、同一性から、帝国のアメンやアトラのスサノオですら、それ以上の解析は不可能だ。


このハイテク戦略装甲車は、あの方のために作られた。


そう言っても過言では無い。


提督席のあの方は表情一つ動かされない。


ムスワルダン提督殿の亡き今、あの方がゾーグ上陸作戦の最高責任者だ。


8つの師団を統べている。


いつお休みになられているのか分からない。


静かに全てを見守られている。


まるで、世界を支配する王のように。


そして、神々のように。


一人の兵も見失うことがない。


かつて、ハイドラの危機を幾度となく救った女傑、ウルワナ•イ•ヒミーディア(ルカイ族の大酋長)は、恐らくこのような方だったのだ。


短い黒髪。黒い瞳。


ルカイのインディオらしい褐色の肌。


屈強な男と比べて遜色ない体格をされている。


体格の大きい私ですら、戦えば数分ともたない。


あの方は、最高の軍人であり、格闘家である。


そして、修道女であり、母親だ。


故郷に20歳になる息子さんがいらっしゃる。


あの方の言葉は穏やかで、温かい。


いつも深く重い。


そして、心臓を射抜くように、常に本質を突く。


あの方が声を荒げる時は、真実を見抜くため、そして、誰かを真理に触れさせるため。


厳しさは常に愛に裏打ちされている。


ハイドラ部族軍出身の私は、当初、従う気など全くなかった。


着任の日まで、どのようにして軍を乗っ取るか、どうやって提督を闇に葬り去るか、それしか考えて来なかった。


愚かなことに。


情けないことに。


しかし、それは、その愚かな考えは...。


1日と持たなかった。


あの方にお会いして。


私は...。


私は、提督殿を(あの頃はまだ大佐だったが)一目見た瞬間、床に崩れ落ちてしまった。


本当に真実を語っていたのは誰なのか、真に皆を愛している者が誰なのか...気づいてしまったのだ。


提督殿は、力無くうずくまる私を、母のように、抱え起こし、こう声をかけて下さった。


「カルボ•ゴーンよ。待っていた。おまえの到着を心待ちにしていた。同志よ。共に明日のハイドラを切り開こう。」


あの日ほど魂が震えたことは無い。


あの日のことは、忘れない。


鋭い眼差し。


強い眼差し。


厳しい眼差し。


許す眼差し。


そして、あの温かい眼差し...。


あの方は、私の本質、そして過ちを既にご存知だった。


神よ...。


...グゥヲオォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


時折、巨大な鋼鉄の缶を、何かに擦り付けるような振動が轟く。


ジャミナキラの雄叫びだ。


ジャミナキラは、ペネループを中心に、北、南、東、西、それぞれ5km遠方にいる。


防御翼と共に移動しながら、直径10kmの外円をゆっくりと周回している。


ダルカンがいない今、防御翼の要は彼等だ。


ジャミナキラは、ハイドゥク戦記に記載のある太古の怪物。


ザブルの地下帝国アモイに住んでいた。


タイクーダイと同じく、実在する神話の生き物だ。


最初のハイドゥクによって、13万年前に制圧された地下帝国アモイ。


忘れられた危機、アモイ。


最初のハイドゥク シンがジャミナキラを種族ごと手懐けたという。


鋼鉄の鱗を纏った緑の身体。


楕円形の目は赤く大きい。


カマキリや、バッタ、そして人を合わせたような外観。


頭部は後ろに長く、巨大なカッパにも、宇宙生物にも見える。


太く巨大な四つ脚で歩き、前脚が長く、後脚は、ダチョウのように関節が前に曲がる。


タイクーダイと同じく、絶対温度でも真空でも、毒や、細菌でも死なない。


身体は硬く、粘り気が強い。


物理的な力で傷つけることが難しい。


そして、アルマダイの炉を体内に持っていて、即時に、傷を治癒させてしまう。


非常に賢く、10歳児並みの知能を持っている。


母親、つまり、孵化させてくれた者を生まれながらに知っている。


そう創られた。


母親にのみ従順で、誠実に従う。


ジャミナキラは、動物でも、昆虫でもない。


科学的分類で言うならば、植物だ。


短期間で巨大化し、決戦の時には100m近く

最強になるだろう。


しかし、決戦が終わった時、僅か1か月の一生を終える。


母との淡い記憶を宿した小さな種を残して。


母の命を護ろうとした淡く幼い記憶を。


戦闘植物のジャミナキラの一生はとても短い。


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


ホッパーやホバーに乗った装甲兵達が追い抜いていく。


ホッパーは、飛行バイク スピーダーに似ている。


しかし、もっと大型で、両脇にサイドカーが着いている。


最大6人乗りだ。


ホバーは、20人乗りの、飛行装甲車。兵士はすぐにでも飛び出せる。


ビーチーは100人乗りの運搬専用機だ。


3300の装甲歩兵達が、ホッパー、ホバー、ビーチーに乗り、防御翼全体に拡散している。


900騎の装甲騎兵は、ペネループに追従している。


ペネループのモニターには、全ての情報が映し出される。


他師団の状況。


攻撃翼の状況。


防御翼の東、西、南、北。


何もかもが。


既に4つの師団が壊滅してしまった。


デューンの圧倒的な軍事力の前に。


ペネループは、これまで、敗北した4師団と共に勝利に向け、戦って来た。


この情報の開示については、提督はずっとお考えになられている。士気や戦略に密接に関わってくる重要事項だ。


4師団が呆気なく殲滅させられてしまったことは、兵士達には少なからず衝撃を与えるだろう。


予測以上に、絶望的に敵が多くそして強い。


状況は、遥かに過酷だ。


だが...。


だが、かける価値がある。


護る価値がある。


命に変える価値がある。


わが故郷。


我が妻。


そして、我が娘。


...ドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


時折、轟音が響いて来る。


作戦GQ197がラビアンローズを放っている。


モニターに映る大地は、その振動で撓んでいる。


陸走する兵器に影響が出なければ良いが...。


『...南東レオパードX-10、およびピーカー5体、並びに、Λ3(ラムダスリー)護衛レオパードX-9とピーカー6体遅れ始めました。18減速。繰り返します。南東レオパードX-10、およびピーカー5体、並びに、Λ3(ラムダスリー)護衛レオパードX-9とピーカー6体遅れ始めました。18減速。内部繰り入れのご指示を。...』


やはり歩行型は、特に振動の影響を受ける。


南東は作戦GQ197に近い。


「艦長。Λ3から入電。内角に移動させますか?。」


CICのジェベットだ。


ペネループには55名のクルーがいる。


「いや、防御翼全体を減速する。」


私は少尉に応えながら、船内の奥、高い位置にある提督席を見る。


提督は目を瞑られて黙っておられる。


「ハッ!。左翼全軍に指示を出します。」


ジェベットは意外なようだ。


「これから900秒間、減速30。その後速度100まで加速。巡航とする。」


「ハッ!。」


【...こちらペネループ。防御翼オール。本艦の号令により100秒以内に30減速。800秒維持の後、その後100を巡航速とする。繰り返す。こちらペネループ。防御翼オール。本艦の号令により100秒以内に30減速。800秒維持の後、その後100を巡航速とする。...】


...グググゥ...


ペネループが減速を開始した。


30と言えども、かなりの減速だ。


...グググググゥ...


この減速は隊としては、かなりの急ブレーキだ。


...グググググググゥ...


シートベルトが身体に食い込む。


追い討ちをかけるように。


ハイテク戦略装甲車アギュラーラムダは、ペネループを中心に、対角線5kmのハニカム構造を作っている。


北Λ6、北東Λ8、南東Λ3、南Λ0、南西Λ2、そして、北西にはΛ1。


それぞれのアギュラーラムダには、レオパードが防衛に当たっている。


レオパードは全長30m。ボハヘッドと合体し、8足歩行戦車になった。戦艦並みの砲撃力を持っている。


この防御翼では、各レオパードが6体のピーカーを引き連れている。


ピーカー はいわば、鉄のハエトリグモだ。

体長は、レオパードよりふた回り大きい。

不慮の事故で亡くなった、警察犬達の頭脳がコパーソンズとして読み込まれている。


更にピーカーの上には、アンドロイド1型、アンドロイド2型が10体前後取り付いている。


ピーカー達の苦手な、敵の小型の兵器、つまり、敵装甲兵や、敵のアンドロイドから、ピーカー達を守るためだ。


アンドロイド達はアルガードや、10式にも取り付いている。


そして、このペネループの護衛は、レオパードのルイスが担当している。


32体ものピーカーを追従させて。


ルイスはこの作戦以外に、何回もハイドラ軍の窮地を救っている。


彼女が操縦すると、ピーカー達とレオパードが一つの生き物に見える。


!!?


提督が目を開かれた。


モニターを凝視されている。


白い壁に埋め込まれたモニターの1つを。


ペネループの、微かに真珠のような光彩を放つ内壁。


モニター11は、防御翼上空を映している。


これは、高速偵察爆撃機ジグルス13の映像だ。


今、防御翼上空には、数十のシムゴード(航空戦車)が拡散している。


巡洋艦級の粒子砲を二門備えた ティゲルワン 。

生体アルマダイミサイル戦車 ティゲルツー 。

そして、スティングレイ 。スティングレイは、長距離粒子砲を搭載している。


...パシッ!パシッ!パシッ!...


空がフラッシュする。


「艦長!。」


エネルギー解析担当のミゲルがこちらを見る。


上空の航空戦車群が地面に自らの影絵を落とす。


...パシッ!パシッ!パシパシパシッ!...


『...こちらTT3。この発光、デューンの本国の方角からです。...』


この距離...。かなりの規模になる。


「艦長!。エネリウム放電です!。かなり大きなエネルギー...」


「本国に警告!。パスタップチャネルを開け!」


提督殿が...。


!!?


「総員!!耐閃光防御!!。」


いかん。


これは。


「通信!!全軍に耐閃光警告!!。」


【...全軍!!耐閃光防御!!全軍!!耐閃光防御!!...】


モニターが眩い光で満たされる。


「うわぁぁぁ...」


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


大地も振動している。


...ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...


焼けるほど眩い光が、緑色の閃光が、空を横切っていく。


巨大な光の洪水が通過して行く。


途轍もないエネルギー量だ。


これは...


「提督殿。」


提督殿も、頷かれる。


提督殿が受話器を握られた。


本国のハイドラ軍へのホットラインだ。


緊急事態だ。


直接、オグワンやリガヤを動かすかもしれない。


汚らしい蝿を叩き落とすために。


敵の反射迫撃艦を。


これは、ターシー•エネリウム砲。


間違い無い。


我々が最も恐れている、恐怖のエネルギー砲。


「提督殿!艦長殿!超級のエネリウム砲撃です。超級のエネリウム砲撃!。こ、これは、これは、ターシーです。た、た、ターシーエネリウム砲です。デューンのターシー•エネリウムが...」


その通りだ。


「ミゲル落ち着け!」


ヘイゲンがミゲルをなだめる。


無理もない。


これが直撃すれば、都市だけではなく広範囲に渡り、アリ一匹生き残ることは出来ない。


そして、この超級の巨大砲は、10回以上の連射が効く。


そうなれば、30分以内にハイドラは滅亡してしまうだろう。


「超級エネリウム線が、ザブルシティを通過!超級エネリウム線がザブルシティを通過」


ザブル上空を通過したなら、ハイドラへの直撃は無い。


反射迫撃艦がいなければ、大陸間大道粒子線は、都市には命中はしない。


ペルセアの目をすり抜け、ハイドラの領空に反射迫撃艦を展開することはまず不可能だ。


しかも、あの規模のエネルギー。


通常の反射迫撃艦では一瞬で蒸発してしまう。


しかし、シシィ•ドールが威嚇で、あれを撃つとは思えない。


あの女。


得体が知れない...。


我々は、気を散らしてはならない。


これ以上の対処は不要だ。


必要があれば提督が我々に指示される。


我々は成すべきことをするのみだ。


提督は、レバンナを失った第七艦隊、我が軍を含む残存4師団の統轄して指揮を取られる。


これは、カルバラルト総督のご命令だ。


ハイドラでは、提督殿達を、統べられるお方。


アンヌ提督は、その職責の委譲をお受けになられている。


副長のオオタカがマイクを握る。


『...ペネループの総員に次ぐ。各自、自らの職務に戻れ。これ以上の対処は命令があるまで行ってはならない。これについて我々が今出来ることは無い。アンヌ提督殿が本国と協議されている。我々は仲間を信じ自らの役割を果たすのみだ。...』


提督はこの件はまだ開示されない。


恐らくペルセアの資力は、今まで以上に、我々以外に割かれるだろう。


「艦長殿!攻撃翼1000km圏内、こちらに移動してくる物体があります!数は...。数16。数16です!」


!?


「エネルギー形状解析。形状確認。エネリウム系。...平均体高60m。......。キ、キリーク...。キリークです!」


何だと?。


攻撃翼と激突するまで1時間あるだろうか。


防御翼は更に150km後方。


しかし、キリークは地上を音速で移動すると言われる化け物。


数値ほどの余裕は無い。


「キリークの全個体、攻撃翼に向かっています!。」


ダルカンの強いアルマダイに引き寄せられている。


キリークは昆虫。知能は無いと言われている。


そうではない。


「ラムダゼロに繋げ。」


提督殿だ。


通信担当ファティマに指示された。


「ハッ!」


「アギュラーラムダゼロパスタップgif5」


「アギュラーラムダゼロパスタップgif5カウンターttx4、通信中」


「提督殿。どうぞ!」


「私だ。攻撃翼への移動を急げ。................。そうだ。時間が無い。....。今から30分以内にラムダセブンとの連携を終わらせることが望ましい。...........。分かった。それで良い。」


少佐へご指示だ。


ダンは攻撃翼の指揮を、私は師団全て、そして、防御翼の指揮を委譲されている。


我々がここまで来れた理由は、デューンが我々を全く警戒していなかったからだ。


デューンは188億の軍隊を持っている。


ハイドラ全軍ですら、小バエほどの脅威も感じていない。


メルケメサス(現デューンの皇帝)は、恐らく、私達がガレンルハンドに迫っていることを知らない。


我々の決死の闘いに気づいてすらいないのだ。


状況は厳しい。


私達は、我が軍の予想以上の劣勢のため、作戦を練り直した。


ダンは攻撃翼への出撃が遅れた。


「キリーク現在位置 攻撃翼 北 980km。キリーク現在位置 攻撃翼 北 980km。侵攻速度緩やかです。」


何かがおかしい。


キリークがこんなに穏やかなはずは無い。


「この点滅は、どういうことだ?。」


レーダーのキリークは点滅をしている。


不規則に。


このような仕様は、アルマダイレーダーには無い。


まずい。


ルイスを呼び戻さなくては...。


「レオパードのルイスを呼び戻せ。今すぐに!。防御翼全軍。第一級防御体制。防御翼全軍。第一級防御体制。」


「ハッ!」


オオタカは腑に落ちていない。


【...左翼全軍に告ぐ。直ちに第一級防御体制に移行せよ!。繰り返す。直ちに左翼全軍に告ぐ。第一級防御体制に移行せよ!。...】


兵が疲弊したとしても、奇襲で我が軍の将を討ち取られるよりはマシだ。


でなければ誰がキリークを恐れる?。


「ラムダセブンに通信。攻撃翼、ダルカンを2体とも前面に。キリークの襲撃に備えさせよ。」


「ハッ!」


「100キロ圏内!100キロ圏内にキリーク。16体!。さっきの16体が!」


レーダー担当のサラ。


「なぜいきなり900キロも...。」


「バカな...。」


「あ!あぁ...。」


ファティマ。2番レーダー担当だ。


「どうした?」


「2番が、反応しません。残光のようなものが...」


「何?」


「3番反応しません!」


オオタカが駆け寄る。


「どうした!?一体何だこれは?。」


「前方アルガードを全て出せ!。ジャミナキラの外円近くまで。」


〔※アルガード:8足歩行戦車。イエグモに外観が似ている。全長10m〕


これは、覚悟をしておいた方が良い。


!!?


何だ!?


どうした!?


「き、キリーク!攻撃翼前方10キロ!攻撃翼前方10キロ!キリークが!16体!16体!」


何という...。


何という速度。


「レオパードは!?ルイスはまだか!?。」


「間も無く半周回です!間も無く半周回!」


「ダメだ!何を使っても構わん!急がせろ!」


「し、しかし...ハッ!了解しました!!」


落ち着け。


私が浮き足立っては。


「左翼。第一級防御体制。左翼第一級...」


...


....


......



!!?



....


...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!...


何だ?


何があった...。


モニター...。


アルガードが。


火を噴いている。


な、なぜ?


...ドーーーーン!!ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!...


次々とアルガード何かに押し潰されていく。


...ドーーーーン!!ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!ドーーーーーーーーーーーン!!...


き、来たのか...?。


...ガガガガガゴゴゴゴ!!...


...ズゴゴゴゴゴゴ!!...


次々と切り裂かれて行く。


あの装甲の分厚い歩行型シムセプトが...。


『...大きな、大...うわあああああああ!!...』


き、キリークが...。


『...爪..巨大な爪...』


...ドーーーーン!!ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!ドーーーーーーーーーーーン!!...


「一番レーダー、捉えました。次元潜航、ステルス。巨大な物体。高さ67。」


間違いない。


キリークだ。


「アギュラーラムダは何か捉えているか!?CIC!音叉ミサイル、前衛アルガード上空に撃て。」


「ハッ!」


「オリファント〔※〕 3号、5号。音叉ミサイル発射用意。目標、前衛アルガード上空。相対座標 144,26,20。オリファント 3号、5号。音叉ミサイル発射用意。目標、前衛アルガード上空。相対座標 144,26,20。」


〔※オリファント:主力ミサイルシムセプト(陸上戦車)〕


『...op5発射準備完了。発射指示を待つ。...』


『...op3発射準備完了。指示を待つ。...』


「撃て!」


...バスゥン!バスゥンッ!!...

...バスゥン!バス!バスッ!!...

...バス!バス!バス!バス!バスッ!...

...バスゥン!バスゥンッ!!...

...バスゥン!バス!バスッ!!...


オリファントの無数の発射管から、音叉ミサイルが発射される。


...ドォゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーン!...

...ゴワァァァァーーーーーーーーーーーーン...

...ブゥワワワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!...

...ドウゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!...

...ドォゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーン!...

...ゴワァァァァーーーーーーーーーーーーン...

...ブゥワワワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!...

...ドウゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!...


音叉ミサイルが炸裂する。


耐音装備をしていても、耳が引きちぎれそうな音だ。


...バシバシバシバシッッッ!!...


...バシバシバシバシッッッ!!...


...バシバシバシバシッバシバシバシバシッッッ...バシバシバシバシッッッ!!...


空から、音叉ミサイルの直撃した空中から、火花が飛び散る。


...バシバシバシバシッバシバシバシバシッッッバシバシバシバシッッッ!!...バシバシバシバシッバシバシバシバシッッッ...バシバシバシバシッッッ!!...


巨大な何かが姿を現わす。


微かに。


消えたり半透明になりながら。


「き、き、キリーク。キリークです...。」


途轍もなく大きい。


「第2射用意!」


『...op3第2射準備完了。...』


『...op5第2射準備完了。...』


「撃て!」


...バスゥン!バスゥンッ!!...

...バスゥン!バス!バスッ!!...

...バス!バス!バス!バス!バスッ!...

...バスゥン!バスゥンッ!!...

...バスゥン!バス!バスッ!!...


!!?


消えた!!。


...ズガゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!ドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!スゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!ズガゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!ドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!スゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!ズガゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!ドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!スゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!...


オリファント3号が火を噴いている。


爆炎の中からキリークが。


動きが凄まじく早い。


昔の模型を使った特撮のようにぎこちない。


しかし、あの巨体にして、壮絶な早さだ。


「アルガード4、8、11、16、21、22、25、13、17。オリファント3、沈黙!!アルガード4、8、11、16、21、22、25、13、17。オリファント3、沈黙!!」


奴の爪は想像を絶するほど鋭利だ。


「キリーク!!実体化します!!キリークが!!」


透明な歪みが、巨大な影が、実体化して行く。


電波の悪いテレビのように。


高層ビル並の高さ...。体高は60mはある。


銀色の脚。


鏡のように光を反射する。


爪はまるで民家よりも大きいツルハシだ。


アルガードのアルマダイエンジンの大爆発で、擦り傷すら追っていない。


何だ?


あれは!?


ラムダワンを追っている歪み。


モニターに映っている。


ラムダワン付きのレオパードそして、ピーカー6体が応戦している。


!!?


全身に電流が流れたようだ。


息が止まる。


「あぁ...。キリークが...さ、更に二体のキリーク!! 北西と東!」


冷や汗が止まらない。


くっ...。


...ズズドーーーーーーーーーーーン!...


モニター越しに、巨人の顎が見える。


...ズズドーーーーーーーーーーーン!...


ゆっくりと歩いて来る。


巨人な8本の脚を大地に突き刺しながら。


地面が激しく波打っている。


鏡のように輝く銀色の巨大グモが。


頭部が傾く。


如来の頭部が後ろ向きに結合している。


ウィンテルンの女王の集合体。


その血のように赤い目は、複眼だ。


こちらを、ペネループを見ている。


慈悲も愛も全く感じられない目。


おぞましさ、浅ましさ、野蛮さ、凶暴さ。


如来とは全く逆の波動を感じる。


...ズズズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!...


また、巨大な爪で地面を貫き通す。


ペネループには、もはや遮るものすらない。


ラムダエイト、ラムダシックスを護衛していたレオパード、そしてピーカー達が全力で戻って来る。


しかし、間に合わない。


こいつは、この化け物は、ジャミナキラや、レオパードの外円をすり抜けてしまった。


「ル、ルイスはまだか!!?。」


キリークが全ての尻尾を掲げた。


重く、巨大なフックのような尻尾を。


あれの1つでも直撃すれば、ペネループは終わりだ。


...ギギギュュウウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!...


化け物は咆哮を上げる。


途轍もなく大きな。


くそ!。


「ペネループ全速後退!!全速後退!!」


捕食者は逃げるものを追う。


キリークも例外ではない。


絶体絶命だ。


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


....グググゥゥ....


ペネループが全力で後退を始める。


...ギギギュュウウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!ギギギュュウウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!...


キリークの8つの頭が同時に咆哮を上げる。


彼方に反響して行く。


大きな顔が8つに裂け、鋭い牙が露わになる。


剣山のように、無数の牙が。


...ズズズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!...


キリークが脚を踏み出す。


...ガゴウッ!!...


ペネループを爪が掠った。


激しく揺れる。


絶体絶命だ...。

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