ダヌアの空に44
「ジャミー!GO!」
《...ダァッ...》
音声にジャミーが呼応する。
...ズドーーーーーーーーーーーーン...
バックホーン(アルマダイハイブリッドタービン)が火を噴く。
反響して広がっていく。
爆発音が。
無限に広がる荒地に。
...グン...
...ググググゥゥ...
ジャミーが加速する。
狂ったように。
視界がブレる。
身体が押し潰されそう。
でも、この感覚が好き。
もう大地は遥か下。
ルーク達のバラッカス9(ナイン)がミニチュアに見える。
もう、待機に戻ったかな...。
ビール飲んでたりして。w
...ググウゥゥゥゥ...
更に加速する。
Gで身体中の骨が撓んでいる。
...ゥゥゥ...
カナイヒャクは僕の胸の上でぺちゃんこだ。
餅みたい。
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
フル稼動してる。
乙型のハイブリッドエンジンが。
...ゴゴゴオオォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
また加速する。
操縦桿やダンバーから伝わってくる。
乙型の怪物じみたパワー。
でも、シールドに映る景色は長閑。
でも、それが嘘のように。
旅の車窓から景色を眺めているみたい。
...ぶぶ...ぶ...
カナイヒャクから声が漏れる。
もう少し我慢だよ。
名前つけような。
カナイヒャクを撫でてやる。
Gでぺちゃんこ。
可愛い。w
柔らかくて気待ちいい。
...ププ...
...ゴゥゥウォオオオオーーーーーーーーーーーーーーゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
スラスターの音。
ボディの振動する音。
ハイブリッドタービンの回転音。
レーシングカーともジェット機とも違う。
ただ...加速の化け物には違いない。
樹脂やオイルに混ざった革の匂い。
コンパネ以外は全て新品。
全部ルークの仕事だ。
繊細で細やか。
あんな大男なのに、
何か笑ってしまう。
写真が振動で揺れている。
まるで、みんなも笑ってるみたいに。
操縦桿を少し浮かせて倒す。
平行になるまで。
空陸ダブル走行モードだ。
これをコントロールできるパイロットはほとんどいない。
...グググググゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
更に激しいGが。
ゆっくりと包み込むような、それでいて容赦の無い加速。
これが、ハイドラ最強の人型戦車。
シールドの外を流れる景色は、穏やかだけど、危うさをはらんでいる。
ジャミーの速度は893。
キノコ雲の方へ驀進していく。
爆速の中でも、機体が地面に吸い付くような安定感を与えてくれる。
はるか後方に黒点と化した防御翼(左翼)7000騎。
師団の心臓であり頭脳であるペネループを死守するための防御の陣。
小さく少な過ぎる群れ。
この広大な大地では...。
北の彼方には、いくつも巨大な怪物たちの影が見える。
...ダンダンカンダンタンタンガンガンダダダンダンカンダンタンタンガンガン...
時折、残骸が地面に落下してくる。
ラビィアンローズによって宇宙まで噴き上げられたシンニアジャの残骸。
そして、シンニアジャによってたたき落とされた航空隊達。
...シュゥゥゥウウッ...
...シャアァァァァーーーーーーーーーーーーーーーッ...
曇った空に緑色の光が駆け抜ける。
...ドドドドンッ...
...ドドドドドドドン...ドンッ...
エネリウム線が地面を這う度、粉々になった岩や砂、そして爆炎が噴き上がる。
...ドドドドンッ...
...ドドドドドドドン...ドンッ...
...ドドドドンッ...
...ドドドドドドドン..ドンッ...
その衝撃は雷よりも重い。
...ブッ...ズズゥーーー...
パスタップが鳴ってる。
p : 2 : (agularΛ7) Liriano , you
え?!
リリアーノ!
『...Z3。Z3。リュウ•アーデン聞こえるか?。こちらラムダセブン リリアーノ。...』
『...り、リリーさん!。リュウです。...』
...シュゥゥゥウウッ...
...シャアァァァァーーーーーーーーーーーーーーーッ...
眩い光線が地を這う。
目が焼けそうだ。
『...久しぶりだな?。リュウ。防御翼の全体命令前におまえに伝えておく。よく聞いてくれ。作戦コードはGQ197だ。パスタップのチャンネルをrmg334に。...』
余裕でかわせる。
この位なら。
『...全体命令を?。...』
...ドドドドンッ...
...ドドドドドドドン!ドンッ...
爆炎が噴き上がる。
『...おまえ、声が弱々しい。大丈夫か?。...』
...ゴゥゥウォオオオオーーーーーーーーーーーーーーゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
ジャミーは爆走している。
『...大丈夫です。やれます。...』
『...頼むぞ。終わったらみんなで飯でも食おう。副長やバン。おまえの大好きなルイス中尉も呼んでな。...』
『...え?。...』
『...はっはっはっはっは!。冗談だよ!。はっはっはっはっ!はっはっはっはっはっ...』
『...ちょ。...』
『...リュウ。死ぬな!。絶対に。また会おう。リュウ•アーデン。...』
『...もし成功したら、奢ってください。酒。リリーさん。ご武運を。...』
『...ああ。武運を。またなリュウ•アーデン。またな。...』
ラムダセブンは今攻撃翼(右翼)の司令塔。
重責だ。
リリーさんは苦しいだろう。
リリーさんが間違えれば、ハイドラはデューンに蹂躙される。
あなたこそ頑張れよ。
絶対に死ぬなよ。
...ズズズ...ズズゥーーー...
パスタップのペギリュウム ダイヤルが自動で動く。
ラムダセブンのパスタップを追跡してる。
【...こちらラムダセブン。リリアーノ。作戦GQ197関係者に告ぐ。これから全体命令を発令する。...】
...ゴゥゥウォオオオオーーーーーーーーーーーーーーゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
ジャミーは爆走してる。
【...防御翼の前方に、キリークの個体が複数確認されている。知っての通り、キリークの戦闘力は、シンニアジャの比ではない。序盤での膠着はどうしても避けなくてはならない。そのために、シンニアジャを殲滅し、退路を確保する。...】
...シュゥゥゥウウッ...
...シャアァァァァーーーーーーーーーーーーーーーッ...
...シュゥゥゥウウッ...
...シャアァァァァーーーーーーーーーーーーーーーッ...
エネリウム線が地を這う。
大きな蛇のように。
【...奴らを倒すためには、まず、エネリウム炉にあたる器官を破壊しなくてはならない。致命傷を与えても何度も再生してしまうからだ。奴らはジーン達と同じ兵曹だ。...】
...ドドドドンッ...
...ドドドドドドドン!ドンッ...
爆炎が噴き上がる。
【...エネリウムシールドは、ダイラタンシーに近い性質を持っている。分かるか?。速くて強い物理刺激や、粒子ミサイル、そして、粒子砲のような大きな破壊エネルギーに対しては、常にそれを上回る防御力を発揮する。つまり、奴らにエネリウムシールドを張られてしまえば、ブラックドッグですら効かない。...】
...ズズズズズ...
...ズッ...
...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ゴゴゴゴゴゴゴゴ...
一際大きな爆発が。
キノコ雲が立ち上がる。
【...ペルセアの解析によれば、今いる56体の個体の内、エネリウム線を吐けるまで成長している個体は31体。つまり、25体はただのゴーグの集合体。...】
...シュゥゥゥウウッ...
...シャアァァァァーーーーーーーーーーーーーーーッ...
...シュゥゥゥウウッ...
...シャアァァァァーーーーーーーーーーーーーーーッ...
近づくに従い、粒子線の頻度が高まる。
シンニアジャ達はこちらを意識していない。
あの巨大な化け物達はまだ生まれたばかりだ。
【...25体は、ジャミー84隊 J1とJ2が破壊する。ムスタファ隊、そして、残りのジャミー84隊は囮になり、シンニアジャ31体のエネルギーを一時的に枯渇させる。エネリウム線の発射回数が最も多い個体から順に指定をする。エネリウム線を吐き尽くさせて欲しい。
そして、ジャミー乙隊 Z3リュウアーデンが中心的なシンニアジャを倒す。熱線を吐かず、強く放電しているものを狙う。脚を切り倒せ。炉は結合した頭部の中心にある。パルチザンを使え。パルチザンのせん断刺激にはエネリウムシールドもただの光。シールドを硬化させるには至らない。...】
...ゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...ゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
二体のジャミー84が爆速で追い抜いて行く。
しかも、空陸ダブル走行...。
そんなことが出来るのは、そう。
J1とJ2、ヤマトとザラだ。
2人とも僕より遥かにスキルもグレードも高い。
84が修理不能になったこと、ウルヘリエスのこと、ルークさんのゴリ押しが重なって僕の方が先に転向•昇格した。
本来なら...。
でも、2人とも全くそんなことを気にしていない。
...ドドドドンッ...
...ドドドドドドドン!ドンッ...
...ドドドドンッ...
...ドドドドドドドン...ドンッ...
小型のキノコ雲が立ち上がる。
地面が割れるような爆音。
エネリウム線が幾重にも炸裂する。
自分は最初84と乙型の違いすら分かっていなかった。
それを教えてくれたのはザラだ。
84は入門者用のジャミーではない。
84はアトラ北軍の大型装甲兵をモデルに作られている。
だからコックピットもアトラ人向けに小さい。
大人のアトラ人用の大きさだ。
そして、乙型は、それを元にハイドラで開発された人型戦車だ。
用途が違う。
84は人間のように繊細に動くことが出来る。道具を使って様々な作戦を行うことが出来る。
そして、俊敏だ。
人型戦車は、強化装甲兵を捕まえることすら出来ない。
普通の装甲兵と、同じ動きをできる12mの巨人。それがジャミー84。
どれだけ凄い兵器か。
ザラとヤマトは、アトラ人に似ている。
謎が多い。
アトラ人は、世界的に有名なパイロットが多い。
巨大航空要塞ゴンドアナや、人型航空戦車。
全ての兵器や機器の操作で、世界中、アトラ人に敵う民族はいない。
1000億いると言われる人型民族の中で。
実際に、飛行艇のレースの最高峰Σ1では、歴代アトラ人のチャンピオンばかりだ。
【...こちらJ2 ザラだ。ターゲット2群。殲滅作戦を開始する。...】
【...よぉー!リュウ。俺だ!ナムジーだ!。J13ナムジーだ!。元気か!?...】
!?
え?
何だって!?
【...り、リュウ君!僕も作戦に参加してるよ!サムサだ!サムサだよ!J24!リュウ...】
遥か後方に、数十機の白い機体。
ジャミー84だ!。
【...お前の力になりたくて2人で...】
サムサ!ナムジー!。
何で志願なんかするんだよ!。
【...こちらJ1ヤマト。陽動を開始する。...】
自らエネリウムの洪水の中に。
【...こちらムスタファ1。グスタフだ。シンニアジャはエネリウム戦の予備動作から発射まで平均15秒、早いもので3秒、遅いもは30秒だ。予備動作はエネリウム放電のことだ。そして、発射後のチャージタイムは平均44.8秒。発射の頻度やエネリウム線の強度は個体ごと異なる。A班はモニター赤丸。B班はモニター青丸。それがキーターゲットだ。これも番号の若いものから集中して陽動を行ってくれ。物理攻撃は自由に行って構わない。注意を引く効果は十分にある。攻撃後の離脱は、ペルセアが牽引する。エネリウム線の命中率は16%。あとは個々の技量で交わしてくれ。...】




