ダヌアの空に33
星の洪水が薄れていく。
...ピピッ!ピピッ!ピピッ!ピピッ!...
制御センサーの音。
...ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...
ジャミーの足は高速で回転してる。
時速は500kmを超えた。
胃が揺さぶられる。
少しでも躓けば、大クラッシュだ。
センサーが壊れてないことを祈るしかない。
...シュウゥッ...コーーーーー...
隙間から時折、涼しい風が入って来る。
ほのかなクヌンの匂い。
ターメリックとラベンダーを足したような香り。
もう夜明けだ。
シールドにぶら下げてる写真のキーホルダー。
揺れている。
ジャミーの振動で上下左右、裏表に...。
父さん、母さん、シンタ、ココロ...。
会いたいよ...。
シアバールの家。
何でもない日曜日。
みんなで家の前で撮った。
母さんがココロを抱っこして、父さんが僕とシンタ後ろからギュッとしてる。
僕が怒るから、父さんは不意打ち。
これ父さんと喧嘩した後。
今となっては、懐かしい。
海の前。
大きな木の下に建ってる。
木の小さな家。
貧乏な家だけど、暖かくて笑いの絶えない家。
今は、手の届かないところにいる。
そして、タイダ、ケント、プロスティの写真。
去年の夏。
4人でクシャーナ岳に行った時の...。
最高に楽しかった。w
ケントとプロスティは案内板の前にすわって、タイダとぼくは案内板の両脇に登ってVサインをしてる。
みんなでクシャーナ名物のサイダーを飲んでる。
元気かな。
ここは遠すぎてダヌアとも通信ができない。
またみんなとバカやりたい。
大好きだよ。
みんな...。
心から...。
シールド越しに輝いてる。
キーホルダーの後ろ。
ハイドラ軍の攻撃衛星ビスタックが。
激しく点滅し始めた!。
赤、薄緑、黄色、青...。
『...ペルセア。コントロール。ペルセア。コントロール。衛星砲発射まであと40秒。衛星砲発射まであと38秒。ハイドラ軍は直ちに影響範囲から離脱せよ。繰り返す。ペルセア。コントロール。ペルセア。コントロール。衛星砲発射まで36秒。衛星砲発射まで36秒。ハイドラ軍は直ちに影響範囲から離脱せよ。...』
ギリギリだ...。
『...アキーユ!!アキーユ!!どうした!!アキーユ!!応答しろ!!...』
え!?。
アキーユさん?!。
...ま、まさか!。
しまった...。
...ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...
ジャミーの走行音だけが無情に響く。
僕のジャミーは、今、ゾルクヌート〔※1〕を抜けた。
逆にZ3が次のに突入する。
ここ、ダルバザは、ゾーグ平原の中域にある地帯。
神話の悪神、アジャイロの住む地に因んでつけられた。
見渡す限り、クレーターのある月面のような土地が続いている。
〔※1:ゾーグに発生するクヌンと水蒸気によってできるマジックミラー層。電磁波、アルマダイ、アフロダイを反射する。広く薄い泡のような形で何層か重なっている場所もある。〕
レーダーが復旧していく。
僕のジャミー84のアフロダイレーダー。
!!
あぁ...。
アキーユさんが!!。
かなり後方だ!。
速度が出てない!。
316...
え!?
えぇ...。汗。
300㎞しか...。
これじゃ間に合わない...。
とてもじゃないけど。
さっきはあんなに加速してたのに。
『...こちらJ1!!リュウ•アーデン。TT11(ティーティーイレブン)!TT11!どうぞ!!。TT11!TT11!アキーユさん!!。...』
『...』
応答が無い。
まずい...。
あれ?
空に月が...。
4個も...。
なんだあれ?。
はっ!?
それどころじゃない。
アキーユさん...。汗。
『...TT11(イレブン)!!アキー...』
『...加速中だ!リュウ!心配かけてすまん!今加速してる!もう大丈夫だ!!粒子エンジンのプラグがダメージを受けてる。だがもう大丈夫だ!心配かけた!Z3!J1!あ。デュークは中か...。...』
よ、良かった...。
...チカーッ!チカーッ!チカーッ!...
空が白む。
!?
なんだ?
...チカーッ!チカーッ!チカーッ!...
ビスタックじゃない。
『...ジャイロだ。ビスタックが攻撃を受けてる。...』
『...カウントダウンを開始します。55,54,53,52,51...』
え!!?
『...急げ!衛星砲が早まる。...』
えぇ?
『...ビスタックが攻撃を!?...』
『...ソランだ。...』
ソラン...。
あ、あ、アマルの攻撃衛星だ...。
さっきの4つの光!。
『...密集陣形を破られた。オグワンが追って来る。...』
オグワンとソランの関係は、まるでミツバチとスズメバチよのようだ。
ハイドラの領空で常に交戦している。
オグワンは、ここからは小さく見えるけど、200mの大きさがある。
アルマダイで動く、アマル、アトラ、ハイドラの攻撃衛星は、他国のものに比べて圧倒的に大きい。
中でも、帝国のソランは一機が500m近くある。
アキーユさんは!。
また加速してる。
Z3は第3影響範囲離脱。
僕も間も無く第3影響範囲だ。
第3影響範囲まで来れば何とかなる。
何とか第3まで。
アキーユさん。
『...チャージ89%完了。チャージ89完了。...』
『...48,47,45...』
あぁぁ...。
ティゲルはまだ、第1からも抜けられていない。
後ろはウィンテルンの群れ。
もの凄い数だ。
...チカーッ!チカーッ!チカーッ!...
...チカーッ!チカーッ!チカーッ!...
...チカーッ!チカーッ!チカーッ!...
ビスタックに複数の光の筋が向かって行く。
ソランからの砲撃が。
《...第3影響範囲に入りました。...》
ジャミーの機械音が知らせる。
アキーユさんは...。
速度1000を超えた!。
まだ、加速してる。
第2影響範囲に入った。
何とかなるかもしれない。
...ピピッ!ピピッ!ピピッ!ピピッ!...
...ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...
ジャミーは半自動で爆走してる。
時速690㎞。
待って!?。
何で??。
ビスタックの光が増す。
...ウウゥゥウウゥゥウウゥゥウウゥゥウウーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
『...40,39..カウントダウンを打ち切り。...』
えっ!?
あ、アキーユさんが!!。
『...アキーユさん!!...』
『...TN砲 照射。...』
『...おおぉい!あ、アキーユ!!アキーユ!!...』
『...アキーユ!!アキーユ!!アキーユ!!...』
みんなが一斉に叫び始める。
誰が誰か分からない。
えっ!?
えっ!?
何だって!?
そんな、メチャクチャな!。
そ、そんな...。
アキーユさんが...。
えっ!?
...バシッ!パシ!パシ!パシ!バシッ!...
プラズマ放電だ。
『...アキーユ!!急げっ!!アキーユ!!急げぇ!!...』
光が広がって行く。
...クワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア...
シールドがまっ黒に変わる。
ハイパー耐閃光モードだ。
それでも、眩しい。
...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
空が唸っている。
ビスタックに向かって光が巻き上げられていく。
衛星粒子砲を中心に、雲が大きな渦を巻き始めた。
まるで天界のサイクロンだ。
...バシッ!パシ!パシ!パシ!バシッ!...
雷みたいな閃光は、ビスタックから発せられている。
ハイパー耐閃光モードなのに、眩しくて目が焼けそうだ。
あぁぁ...。
『...リュウアーデン!!タイミングでダンバーをニュートラルに!!ニュートラルだ!!衝撃が和らぐ!!リュウアーデン!!聞こえるか!!...』
『...リュウ!リュウ!頭を下げろ!!...』
やばい、僕も。
第3影響範囲でも全然ダメだ。
光で何も見えない。
...キュワァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!...
光が、光の巨大な柱が地上に下りてくる。凄い大きさだ。
ドーム球場くらいの直径だ。
多分。
...カーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!
『...アキーユ!!アキーユ!!アキーーーーーーーユ!!...』
『...あの...娘...あの娘に...伝え.くれ。ルイ..愛..てる。ルイス...愛してる...ルイ...』
アキーユさん...。
光と爆風がジャミーを追い抜いて行く。
...ドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンン...
ひっ!。
な、何だこの音。
...ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
ジャミーが吹き飛ばされて縦に横に激しく揺さぶられる。
腕が千切れそうだ。
ダ、ダンバーを、ダンバーをニュートラルに。
...シュウッ!...シュウッ!...シュウッ!...シュウッ!...シュウッ!...シュウッ!...
衝撃吸収ジェルが噴き出している。
何も見えない。
縦か横か。
何も聞こえない。
ただ吹き飛ばされている。
ダンバーを解除した。
岩に激突したらペチャンコだ。
あ、熱い!。
ジャミーの温度が急に上がる。
僕は一体...。
どこにいる。
死んでしまった?
いつ?
何も分からない。
何もかも。
...。
...。
...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
!?
聞こえる。
...ピピッ!ピピッ!ピピッ!ピピッ!...
...ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...
振動が伝わって来る。
ジャミーだ。
僕のジャミー。
走ってる?。
あの爆風を浴びたのに?。
夢?!。
衛星砲は...。
『...ウィンテルン殲滅率47%です。約半数殲滅。...』
『...第2射チャージ開始...』
え?
数秒しか経ってない。
どうなってる...。
『...アキーユ!!アキーユー!!!。アキーユ!!...』
『...J1間も無く108度線。自動運転中。生体反応ありません!生体反応ありません!...』
あ...。
『...ピーーーーーー、ピュウーーーーーガガガガガガガガガガガガ...』
ダメだ。通信機が壊れてる。
モードを切り替える。
『......』
あれ、声が出ない。
『...TT11見つかりません。TT11反応がありません!TT11沈黙!!...』
『...何!?探せ!何としても探せ!!...』
レバーを切り替え...。
あれ。
手が効かない。
俺死んでる?。
え!?。
嫌だ!
え!!?
嘘だ!!
ウソ!!
...ガチャーン...
《...MANUAL PILOT MODE...》
『...あっ!!J1!マニュアルパイロットモードに替わりました!J1!マニュアルに変わりました!!...』
『...J1!!J1!!応答しろ!!J1!お、おい...ドリー!J1のパイロット誰だ?!J1のパイロット反応してくれ!!...』
『...ピーーーーーー、ピュウーーーーーガガガガガガガガガガガガ...』
『...おいっ!見ろドリー!反応してる!回線を開こうとしてる。...』
そうだ。
僕は生きてる。
て、手は効いてる。
視力が戻ってくる。
『...J1!!J1!!反応してくれ!!同じでいい!!J1!!...』
『...ピーーーーーー、ピュウーーーーーガガガガガガガガガガガガ...』
僕の腕。
焼けただれてる。
顔もきっと酷いことになってるんだろうな。
『...おい!やったぞ!ドリー!!見ろ!!J1のパイロット生存している!!繰り返すJ1のパイロット生存してる!!フォロー頼む!!ジャミー隊!!...』
『...こちら救護隊ドリーだ!J1のパイロットが生きてる!ジャミー隊!並走して介助を!...』
...チカーッ!チカーッ!チカーッ!......チカーッ!チカーッ!チカーッ!......チカーッ!チカーッ!チカーッ!......チカーッ!チカーッ!チカーッ!......チカーッ!チカーッ!チカーッ!......チカーッ!チカーッ!チカーッ!...
...クゥワァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!...
『...ビスタック沈黙!!ビスタック沈黙!!...』
『...くそ!やられた!...』
『...ソラン!。帝国攻撃衛星ソラン!。4機展開中。...』
『...オグワン!ソランを包囲!オグワンがソランを包囲!..』
『...オグワン応戦中!オグワン応戦中!...』
『...地上に照射されたら終わりだ...。...』
『...ビスタック堕ちます!。ビスタック堕ちます!...』
...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!...
また、空が白んで行く。
でも、今度はかなり上空だ。
『...ゴーンだ。カルボゴーン。ファザスいけるか!?。残骸に備えろ。地上に到達するものもあるはずだ。アギュラーラムダの復帰を最優先しろ。アギュラーラムダを最優先に作業を進めろ。隊の復旧率は?!...』
『...オグワンがソランの一斉照射撹乱に成功しています。...』
『...撃たれたら終わりだぞ!絶滅だ!ペルセアは!?ペルセアのコントロール!!フラグ位置に!どれかフラグ位置に!急げ!!...』
『...ビスタック位置に、オグワン67号入ります。ペルセアのコントロール復旧します。...』
『...ジャミー第二隊出撃。ジャミー第二隊出撃。進路167解放求む!進路167解放を求む!...』
『...Z2エースだ。J1聞こえるか?速度落とせ。120まで。出来るか?今の速度は速すぎる。...』
『...ピーーーーーーーガガガガガ...』
やっぱりダメだ。
スロットル、アクセルを少しずつ戻す。
ジャミー84はダチョウのような脚。
二足歩行だ。
ウィングとスラスターが片側やられているから、バランスが悪い。
...ググググググググググググググググググググググググ...
...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
うわっ!
急ブレーキが。
うわわ...。
少しスロットを戻しただけで。
バランスがメチャクチャ崩れる。
『...あれ?おまえ、上手いな?へぇ。...』
え?な、何がですか?
『...ピーーーーーーーガガガガガ...』
クッソ!
...ガン!ダンッ!...
パスタップを蹴った。
『...くっそ。...』
『...おい!リュウだ!リュウの声だ!...』
『...おぉ!!リュウ無事か!?ジェットだ!おまえの新しい上司だ。...』
え?。
『...まだ早えぇよ。ジェット。笑...』
『...ヤッホー!リュウ!お手柄よ!!大抜擢でシビレちゃう!!...』
抜擢?
『...おい。もう少し落とせるか?...』
『...はい...』
...ググググググググググググググググググググググググ...
...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
『...おいおい。おまえ上手いな。スラスターとウィング取れてるぞ。ジェット。おい!。こいつ上手いぞ。...』
『...見りゃ分かる。無駄口叩くな。...』
『...おい!坊主!良く頑張ったな!頑張れ!もう少しだ。しっかしおまえいつの間に...』
『...デュークも落ち落ちしてられねぇな...』
『...おまえの心配しろ。エース。...』
デュークさんは?
『...無事ですか?デュークさんは?...』
『...あぁ。大丈夫だ。今は後方に下がってる。救護隊にいるぞ。心配するな。おまえももう直ぐ会える...』
『...よし、一気に60まで落とせ。行けるか?。低速はバランスが難しい。この状態では。行けるか?...』
『...はい...』
...ググググググググググググググググググググググググ...
...ウィーーーーーーーーーーーーーーーン...
エンジンの回転が一気に下がる。
...ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ...
激しく振動が。
やっぱり、かなりガタガタにやられてる。
明るくなっていく。
日が昇り始めた。
『...装甲が溶けてるぜ。これは...』
『...良く戻って来たな。...』
シールドモニターをオフにする。
遠くは見えなくなった。
目視の範囲だけ。
...ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン...
ダルバザの大地。
目視で見ると、かなり荒れている。
!!
見える!。
彼方に、みんなが!。
ジャミー隊のみんなが!!。
乙型。
派手なペイントをした、青色、黄色のジャミーもある。
ジェットさん達だ。
『...リュウ。もうそろそろ、一般歩行モードに。...』
『...はい!。...』
...ガギィ...
レバーを落とす。
...ススゥーースゥーースゥーー...
ダンバーが離れて行く。
...ズドーンズドーンズドーンズドーンズドーンズドーン...
この瞬間から、ジャミーはトラックより扱いにくい鉄の塊になる。
あと、数百メートル。
みんないる。
ハッチを開けて手を振ってる。
『...リュウ。良くやった。お帰り。みんなと少し話したら、おまえも後方に行け。レッドアロー15号だ。バンと同じだ。デュークは8号にいる。...』
バンさん...。デュークさん...。
『...リュウー。お帰りー。あたしよ。奇跡の生還だね。笑...』
『...リュウ!せ、制動!制動開始!泣。20まで落とせ。...』
『...はいっ!制動開始!...』
まだジャミーは40kmで走っている。
...ウウウウウウウゥゥゥゥゥゥーーーン...
...ズーーーンズーーーンズドーーーーンズドーーーーンズドーーーーン...
エンジンブレーキで強いGがかかる。
身体がもうガタガタだ。
このくらいのGでも応える。
『...リュウ!良くやったな!!良かった!..』
『...坊主お帰り!泣。良く帰って来た。...』
『...パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ良くやった。笑良くやった。笑...』
そんなにヤバかったんだ...。
意識が遠のいていく。
睡魔が...。
...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
また地面が揺れている。
奴らが来た!。
『...リュウ。ジャイロだ。後方で休め。戻って来い!お前のミッションは完了だ。良くやった!。デュークはもう休んでいる。本当に良くやった。後は、仲間を信じて任せろ。...』
『...そうよーん。あたし達に任せてー!...』
『...リュウ。安心しろ。俺とジェットはデュークに負けてねぇ。笑...』
『...俺もいるぜ。坊主。ロッド様の戦いっぷり。後方で目に焼き付けとけ。...』
『...ウィンテルンの群れ、108度線まで、あと10分...』
『...レバンナが来ます。レバンナ来ます。...』
上空の艦隊戦はハイドラ軍が押している。
『...J18。J1の並走をZ2と交代しろ。...』
『...あ!了解よーん。Z2変わります。...』
『...リュウ!J1!ここで一旦お別れだ。気をつけて行け。ウルヘリエス。頼むぞ。...』
『...了解!任せてちょ!行くよ!リュウ!。ついて来て!あたしがあんたを護るから!安心して着いて来て!...』
北と南の超大国アマルとデューンが手を結びハイドラは窮地に立たされている。
首長達が自分達の利権のためだけに、アトラを追い出した。
首長達は、自分のためだけに、宝物を売り渡した。
人々の誇りそして伝説である2種族16人の族長達。
そしてこの美しい国ハイドラ。
均衡は破られた。
僕たちの最後の希望。
ハイドラの絶対的守護神。
ハイドラの守護神もまた、デューンに負けてしまうのだろうか。
この圧倒的な力の前に。
アバウク国のウィルハのように。
『...岸壁を破壊して進路を変更する。レバンナ到着後作戦を開始する。...』
『...オグワン67号、ソランと交戦中。衛星砲の照射目処たちません。...』
そうだ。まだ半分以上残ってる。
ウィンテルンが。
....ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーー
...コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーー
...コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
!?
二機のジグルスが飛んで来る。
第七師団の主力戦闘機。
『...ミラージュ1、ミラージュ2目標を補足。攻撃を開始します。...』
目標?
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ジグルスがみんなの上を旋回していく。
『...ゴーグが出た。...』
ゴーグ?
『...なぜゴーグが!?。...』
...チカーッ...
...チカーッ...
朝焼けの空に緑の閃光が横切る。
思ったより近い。
まるで、ジルカンダーのエネリウム砲のようだ。
...ドーーーーーーーーーーーーーーーーン!...
...ドーーーーーーーーーーーーーーーーン!...
『...み、ミラージュ1、ミラージュ2沈黙...』




