バグースの砂獣5
青い空からルビー色の羽根が降りてくる。
...ゥゥゥゥゥウウウウウウウオオォォォーーーーーーーーーーーーーーーンン...
...ボボボボボボボボボ
...ゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーー
キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
降りてくる。
ウルスラが来た。
...ブウゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
ブゥゥワッ!
土が舞い上る。
バサバサバサバサーーーーーーーーーー
降って来た砂が私の身体に当たる。
ズドーーーーーーーーーン
ズズドーーーーーーーーーーーーーーン
ウルスラが歩いて来る。
ゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボ
ウィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
ルビアナの湖には、準備を終えたハイカーがいる。
...パチ...バチッ...バチバチッ...パチッ...パチッ
木々があちこちで燻っている。
ハイカーのレーザー砲で、一斉に薙ぎ倒された木々が。
森は焼け野原になり、何もなくなった。
動物達には災難だ。
サバランが見渡せる。
これは大規模な自然破壊だ。
が、砂獣を止められなければ、このオアシス自体が消滅する。
ウルスラは怒っている。
ウルスラが機嫌を損ねると手がつけられない。
ウルスラは気性が激しい。
ラジュカムが鳴る。
『... しかし、何だろうね。あのガキ。偉そうに。何でよその土地まで守ってやらなきゃならない。本当に我慢ならないよ。...』
『... まぁ、そう言いなさんな。 ...』
ハイカーは穏やかだ。
いつも変わらない。
『...ジェニファーの部下じゃなきゃ今頃食い殺してる所だよ。 ...』
「ウルスラ。シー様の耳に入ったら厄介だ。 」
『... 何が厄介なんだい?。ジェニファーごとき。 ...』
「聞かれるぞ。シー様は意外に聴いておられる。」
『... お前が私に指図するのか?。ヤマキ。身の程思い知らせてやろうか?。 ...』
『... お止め。ウルスラ。 ...』
『... 姉さんだってズタズタじゃないか。もう半分の出力もない。 ...』
『... ジェニファーもズタズタだよ。私らは別にクシイバ(ジェニファー)の命令に従ってる訳じゃない。自分の望む世界を目指して闘っている。ジェニファーだってそうさ。...』
「シー様はあの気性だ。流石にあんただってただではすまない。」
『... 何だと?。 ...』
『... ヤマキ。学習しないね。ウルスラが勝気なのは知ってるだろう?。前回もおまえが煽るから、あんなことになったんじゃないか。ウルスラは、今から砂獣の群れに入っていく。命がけでね。おまえがウルスラの代わりをしてくれるのかい?。...』
ハイカーも、ウルスラも、砂獣の怖さを良く知ってる。自分たちの何倍も大きく何十倍も重い獣。
音速で砂漠を移動する。その10万頭と今から戦わなくてはならない。
砂獣を恐れない兵曹はいない。
極東のこの土地では特に。
兵曹が砂漠で砂獣に出くわしたら、黙って食われるしか無い。
砂の上でヤーより強いものも、速く移動できるものもいない。
X級。アトラ100万の兵曹の内、わずか100体にも満たない。そんな私ですら砂獣一体を相手にするのがやっとだ。
そんな中、極東の英雄 ハイカーとウルスラは、もう何世紀も砂獣の群れからタルカントをアトラを護っている。
兵曹として、並外れた強さだ。
新しく生まれた砂獣の遺伝子には、ハイカーとウルスラに対する恐怖が刷り込まれいるという。
確かにそれは、ジェニファーにも出来ないこと。
タルカントやサバランを渡る兵曹は、ピンクのラインを自分の装甲にペイントする。ハイカーとウルスラの威光に護って貰うために。
この姉妹は、砂漠の国、古代シャイアン帝国の末裔と言われている。
長い間、砂漠のライバル バグダディスに虐げられて来たシャイアン人の末裔。シャイアン人はモンタギューというケラムの化け物に食い尽くされてしまった。
「私の力ではウルスラの代わりは出来ない。...。あんた達が怒るのはもっともだ。しかし、あの少年はアトラに、いや、この紛争だらけの大陸に、秩序をもたらす力を持っている。そして、シー様の人を観る目は確かだ。」
『...そんなことは関係ない。ウルスラがジェニファーとやるならば私も出る。私たち姉妹は二人で一人。そうやって乗り越えて来た。ジェニファー?。ウルスラが負ける?。そんな気はしないね。 ...』
「シー様もあんた達と同じ戦禍の中で生きて来た。心から、心から平和を渇望されている。あんた達と同じなんだ。」
『... 知ってるよ。あの女がどうやって生きて来たかは。 ...』
「あの方は、同志だったはずのザネーサーに意表を突かれてマバナカタールに攻め込まれた。無防備だった。完全に油断をしていた。シー様は命がけで皇子を護った。あの少年の力を借りて。そして、心にも身体にもどうしようも無い深い傷を負ってしまった。シー様はメンツもプライドもズタズタにされてしまった。そして自分の愛するマバナカタールの人も街も。もう誰も信じなくなっている。」
『...聞いているよ。気の毒だとは思っている。そうかい。あの皇子様のためだったのかい。気の毒に。しかし、なぜザネーサーは突然翻った?。...』
『... 何だって?。ザネーサーがマバナカタールを攻め込んだのは坊やを殺すためだったのかい?。何てことだい。 ...』
『... ザネーサーは皇子の擁護を表明していた。ザネーサーが一体何を考えているか、我々には全く分からない。 ...』
『... 分かったよ。ヤマキ。やるしかないね。ウルスラ。今日は前衛の排除は私がやる。おまえは少し休んでいなさい。 ...』
『... ありがとね。でも、いつも通りで良いよ。いつも通りで。第2高圧炉の調子が悪いだろ?。...しかし姉さんはいつも冷静だね。私にゃない所だよ。 ...』
『... いや、そうでもないさ。丁度良い悪党を見つけてさっき食っちまったよ。笑。 ...』
『...人を食っちまったのかい?。...』
『...腹の虫が収まらなくてね。丁度バカな野郎どもがいてね。いま私の腹のなかさ。これでいつもの数倍多く粒子砲を撃てるよ。笑...』
『...何だ。それで吹っ切れてるのかい。じゃあ、私の方がまだマシだね。笑...』
『...笑。だからそう言ってるだろ。いつも。あんたの方が、私よりよっぽど人間として良いんだよ。笑。もう、人間じゃないけど。笑...』
『...まぁ、そうだね。私は人食いでは気は晴れないよ。エネルギーが必要な時は同じ様に悪党探して食っちゃうけどね。笑...』
『...いや、私はこの島にも護るものを見つけたのさ。守ってやりたいものをね。...』
『...へぇ。何だい。その守ってやりたいものってのは。...』
『...もしこの闘いに勝ったら、教えてやるよ。ウルスラ。...』
『...そりゃ楽しみだね。でも、何で勝ってからなんだい?。笑...』
『...今日はいつもの10倍だ。ダーイエがいるらしい。あんたが真剣になり過ぎちゃ困るからね。必ず生き残ろう。ウルスラ。そして、またタルカントに帰ろう。...』
『...そうかい。そんなに良いことがあったのかい。楽しみにしとくよ。10倍でダーイエだろ?。流石の私も気後れするよ。...』
『...ヤマキ。任せたよ。ここの防衛は。ウルスラが私を心配せずに精一杯ヤーを蹴散らせるように。そして、生き残ってジェニファーに伝えとくれ。極東の英雄 ハイカーとウルスラは、今日からあんたの味方だと。例え、ザネーサーやアダムがどんなに強大だろうとね。いいだろ?。ウルスラ。...』
『...あぁ。いいよ。坊やを護ってくれたのなら、私たちの同志だよ。...』
『...ヤマキ。...』
「あぁ。間違い無く伝えるよ。そして、この命にかえてあんたを守る。」
『...ヒューカッコイイ。でも、私たちを説得して、私のディフェンスをするようにジェニファーに命令されたんだろ。本当に忠実な部下だね。...』
『... しかも、この作戦、小僧が考えてる。やりきれないね。...』
「お、おい、おい...。」
『...冗談だよ。姉さんを頼むよ!。ヤマキ。...』
『...来た。お喋りは終わりだ。頼むよ。二人とも。...』
「任せてくれ!。極東の英雄 ハイカー。そしてウルスラ。」
『...さぁ、行くよ!。...』
ズドーーーーーーーーーン!!
キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ゴゴゴゴゴーーーーーーー
ゴゴゴゴゴーーーーーーー
ゴゴゴーーーーーーー
ゴゴゴーーーーーーー
ウルスラがピンク色の羽根を広げ、いくつものスラスターを全開にする。
スラスターが焼けるような光を放っている。
ゥゥゥゥウウウウウウウオオォォォーーーーーーーーーーーーーーーンンボボボボボボボボボ
ズッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
...ゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーー
ウルスラは地平線目がけ猛烈なスピードで飛び出した。
ドーーーーーーーーーン!!
キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
水柱が上がる。
ハイカーだ。
ハイカーが第二高圧炉を起動した。
ハイカーは世界の兵曹で唯一のツインドライバー。
ウゥゥゥゥーーーーーーーー!!!
キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
...バシャバシャバシャバシャバシャバシャ...
...バシュバシュバシュ...
...バーン!バシーン!!バン!バシーン!...
ハイカーに触れた水は弾け、爆発して消えていく。
オアシスの水は一気に蒸発し始める。
ハイカーの放つ熱は、周りの空気を屈折させる。
ブゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
ハイカーの背中の風車が更に広がり、激しく回転し始めた。
ついに決戦は始まった。
砂獣ヤーの大群が押し寄せる。
...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーウウーーーーーウゥゥーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーー...ガラン、ゴローーン...ドドーン..ガラン...ゴローーン...ズッドーーーーーーーーーーーーーーン...ゴロン...ズドーーーーンーーーーーーーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーー...ガラン、ゴローーン...ドドーン..ガラン...ゴローーン...ズッドーーーーーーーーーーーーーーン...ゴロン...ズドーーーーンーーーーーーーーーーウウーーーーーウゥゥーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーウウーーーーーウゥゥーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーウウーーーーーウゥゥーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーー...ガラン、ゴローーン...ドドーン..ガラン...ゴローーン...ズッドーーーーーーーーーーーーーーン...ゴロン...ズドーーーーンーーーーーーーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーー...ガラン、ゴローーン...ドドーン..ガラン...ゴローーン...ズッドーーーーーーーーーーーーーーン...ゴロン...ズドーーーーンーーーーーーーーーーウウーーーーーウゥゥーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーウウーーーーーウゥゥーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーウウーーーーーウゥゥーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーー...ガラン、ゴローーン...ドドーン..ガラン...ゴローーン...ズッドーーーーーーーーーーーーーーン...ゴロン...ズドーーーーンーーーーーーーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーー...ガラン、ゴローーン...ドドーン..ガラン...ゴローーン...ズッドーーーーーーーーーーーーーーン...ゴロン...ズドーーーーンーーーーーーーーーーウウーーーーーウゥゥーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーウウーーーーーウゥゥーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーウウーーーーーウゥゥーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーー...ガラン、ゴローーン...ドドーン..ガラン...ゴローーン...ズッドーーーーーーーーーーーーーーン...ゴロン...ズドーーーーンーーーーーーーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーー...ガラン、ゴローーン...ドドーン..ガラン...ゴローーン...ズッドーーーーーーーーーーーーーーン...ゴロン...ズドーーーーンーーーーーーーーーーウウーーーーーウゥゥーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーー...ウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーウウーーーーーウゥゥーーーーーー




