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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
172/364

バグースの砂獣3

晴れた青空に鮮やかな緑。赤いハイビスカスの花が咲いてる。


ルビアナは、サバラン砂漠にあるオアシス。


オレンジ色の砂海に浮いた白い島。


いつもは観光客でごった返してる。このオアシスにさっきまで1万人の人がいた。


朝から断続的に揺れ、とうとう地鳴りも揺れも収まらなくなった。


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

...ドドドドドドドドドドドド


沢山の飛行艇、そして砂上船。


ルビアナの島民はほとんどが避難した。


あたしみたいな変わり者何人かを除いて。


砂上船も結局定員いっぱいだった。どうしてもワンちゃんを乗せたいっていうおばあちゃんに譲ってやった。おばあちゃんは非難されてたけど、あたしゃそうは思わない。

あの人にとっちゃ家族なんだろ。宝物なんだよ。きっと。


あたしにとってのトンバ、チィちゃん、そしてあの人みたいにね。


別にいいじゃない。


ただ、ハムルには悪いことしたね...。


砂上船から必死にあたしを呼んでくれた。声を枯らして大声で何度も何度も何度も...。


「...ナムヤさん!。逃げるんだよ!。何をやってる!。そんな怖い思いするこたぁないんだ!。みんなと逃げよう!。ナムヤさん!。どうして!。逃げよう!。そんなに頑張ることないんだよ!。ダンナだって、トンバだって!チィちゃんだって!みんな悲しむ!!。どうして!ナムヤ!。ほら!手を!手を掴んで!ナムヤさん!!ナムヤさん!!...」


砂上船から落ちそうなほど乗り出して。

嬉しかったよ。

忘れられないよ。あの声。


でも、あたしゃここから動きたくないんだよ。ごめんよ。


チィちゃん、ちゃんと乗れたかな。


ホルトまでの道のり。


緩い石畳。白い坂道。足の悪いあたしには険しい山道みたい。休み休みしか歩けない。


オアシスから吹いて来る風が涼しいけど、爽やかなこの景色も、一人ぼっちって思うと凄く寂しいもんだ。


テレビで言っていた。


もう間も無く砂獣ヤーの大群がルビアナを通り過ぎる。10万の砂に住む怪物が。


ルビアナを通り過ぎ何もかも粉々に潰して行く。

タンジア、そしてハイドラまでの通り道。


なぜ突然バグーが攻めてきたのか、なぜこんなに沢山の砂獣がいるのか。


そして...。


何をそんなに怒り狂っているのか...。


私たちには分からない。


他にも残った者がいる。家から山を下って丁度下に住んでるシーボル。少し前まで宝石加工の職人だった。 ヒモン、メロウ、シカム石の加工をする職人。幼馴染だ。ホントに腕が良い。あの硬い石をどうやったらあんなに繊細に削れるんだろ。


小さな頃から、不器用で無愛想だけど、腕は良いし、正直者だった。


でも...。


でも、半年前、もう辞めてしまった。


シーボルは目が見えなくなってしまった。

最愛の娘と奥さんを交通事故で亡くした。


名人のシーボルは目が見えなくても掘ることは出来る。


でも、もう頑張る気力が無くなってしまったと。泣いて話してくれた。無口なシーボルが。


それでも、シーボルは一人で良くやってる。誰にも迷惑をかけず、ゆっくりだけどしっかりと几帳面に。


チィちゃんには、1番糠の1番良いところをあげたくて、結局出発ギリギリになっちゃった。チィちゃんはちゃんと飛行艇に乗せて貰えたかね。ホルト桟橋で途方に暮れてないかね。


桟橋に着いた。

広くてなだらかだから、助走のいる飛行艇だって大丈夫さ。


桟橋は広いし、建物もあるから、ちょいと見て回らなければ。


砂獣の大群が来る前にお家に帰れるかしら。


ザッ、ザッ。


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

...ドドドドドドドドドドドド...


白い丸い砂利の音がなる。


ザッ、ザッ。


ザッ、ザッ。


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

...ドドドドドドドドドドドド...


地平線は、いつもと違う。


ここから見ても、酷い有様。


砂が狂った様に舞い上がってるよ。


コタン...


あら。こんな所にビンが...。


トプントプントプン...。


おやおや、お水が溢れた。


ハイビスカスのお花が沢山。

誰かが、花瓶にしたんだね。


よいしょ!。


どっこいしょ!。


可哀想に。


誰が置いて行ったのかしら?。


はっ!。


こ、これ、チィちゃんの髪飾り!!。


チィちゃんの...。

チィちゃんが何よりも大切にしていたヒモンの髪飾り。


あたしの大好きなハイビスカス...。


ありがとうチィちゃん。


間に合ったんだね...。


ちゃんと乗れたんだね。


良かったぁ...。


これで一安心。


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

...ドドドドドドドドドドドド...


おや、大分近づいて来たね...。


急いで帰らなきゃ。


痛たたた。


あぁ。そうとうガタが来てるね。笑。


地鳴りも振動も段々強くなる。


しかし、もう何の迷いも無い。


もしまだ時間があるなら、シーボルに声をかけに行こう。


きっとムスっとして、ぶっきらぼうに返事するね。笑。でも、あたしゃ知ってる。シーボルは人一倍優しい奴さ。


お互いもう60歳。ホントにいい年だよ。


よいしょ。

こら、しょっと。

よいしょ。

よっこらせ!。


ほら、もうすぐだ。

シーボルのお家に。


家の山の下、お店と仕事場。


あれ?。


外にいないね。


今日はいつもの椅子で昼寝して...。


あら!。


道中あちこちのガラスが割られている。


火事場泥棒が?...。


こんな平和な島に。


「オラァ!。早く出せこの死に損ないがぁっ!。立てゴラァ!!。このクズ野郎!!。」


え。


何だい?。この声。


「汚ねぇジジィだなぁ。笑。ほれ、おめぇの帽子だ。」


シーボルだ。

シーボルが...。


自分の帽子を被されてるが...。


だ、だ、誰だいあのガラの悪い男達は!。


どこからこんな大男達が...。


痩せた年寄り取り囲んで一体何だってんだい。


可哀想に。


シーボルも腰が悪いのに、椅子なしでは座れないのに。


「座れ!!コラァ!!座れって言ってんだ!!ゴラァ!!。」

「さっさと座れこの小汚いクソジジィが!。」

「何だ?!その目は!!。」

「こいつ目見えてるぜ。兄貴。」

「どこかに隠してやがるな?。」

「さっさと石を出せ!!。」

「何だその面は!!ああん!?。」

「文句あんのか。クズ野郎!!。」


ドカ!!。

ドカッ!!。


ああぁっ!!。

無抵抗なシーボルを。

なんてことを!。

し、シーボルはもう石なんか持ってないよ!。

あぁ見てらんない。


ああっ...。

歯が折れて口から血が。


シーボルが何かを男達に...。


シーボルが何か渡そうとしてる。


お金だ!。


小さく折った、お金。爪に火を灯すようにして貯めたお金。


「?何だいこれ?宝の地図か?。何だ?これ。」

「何だこれ?。」

「おい。これ1ベリーだぜこれ...。」

「ふざけんてんのか?。ふざけんじゃねぇぞ!!!。このウジ虫野郎!!。」

「この汚ねぇクズが!!。こんなジジィになってまで、どこまで貪欲なんだ!!このクソ野郎!!。」

「このくたばり損ない!!。」


もう。泣。放っといてやんなよ。見てらんないよ。


「あ、あ、あんた、あんた達ぃ...。」


震えちゃって、こ、声がでないよ。


手も足を震えちゃって...。


「し、し、シーボルに、な、な、何するんだい!。」


男達がこっち向いた。


足がガタガタ震えちゃって...。


「あんだ?。おまえは。」


「ババァ。何か言ったか?。」


「おい。」


「はい。」


男の一人がボスみたいな奴に命令されてこっちに来る。


色が黒くて、レスラーみたいに大男達だ。金色や、だらしなく伸ばした髪や髭。不潔な感じだ。


「あんた達、し、し、シーボルはね。毎日、ま、奥さんも、娘さんが、な、な、亡くして、毎日ねぇ、が、が、頑張ってる、頑張ってるんだ!。な、な、なんでするんだい!。」


「あぁん?何言ってるんだ?!。このクソババァ。」


「あ、あ、あんた達なんかより、よ、よ、よっぽど、シーボルのほ、方がり、り、立派なんだよ!。」


「へぇ?。あのウジ虫、シーボルって言うのかい?。」


しまった...。あたしゃ余計なことを..。


「... 兄貴!。あっちの白い家、結構金目のもん置いてあるぜ。ハンマー貸してくれな。窓ブチ壊して入るから。」


「兄貴。何もねぇ家、分かんなくなるから全部燃やしていいよな?。」


カタカタカタカタ。


震えて。歯が鳴る。情けないよ。こんな奴らの前で、怖くて震えてる。あの人がいてくれたら...。いや、こんな危ない目に家の人合わせられない。あたしだけで。


「と、と、兎に角ね、災害の時に、人が困ってる時にね、そんなことする人はね。」


「何だとこの小汚ぇババァが。おまえは鬼ババァか?。」


い、い、痛いっ!!。


男に髪の毛を掴まれて引きずられてる。


痛い、痛い!。


ズザザザザザ...。


凄い力で引きずられ...。


ドサッ!!。


情けないよ...ホントウに...。泣。

怖くて、怖くて、この悪党の顔も見られないよ...。うぅ...。ううぅぅ...。


「このクソババァ泣いてやがるぜ。笑。汚ねぇ。殺しちまうか?。キモいから。」


「おい、そいつ何か金目の物持ってねぇか?。」


「パンツの中とか、何か隠してんじゃねぇのか?。」


「ババァのパンツの中にか?兄貴。ひでぇ。ギャハハハハハハハ!!。」


「おい!。おまえ、そのババァのパンツ脱がしちまえ。みんなの前で大股開かせて、私はヤリマンですとか。笑。ワッハッハハハハハハ!!!。」


「おもしれぇ!。ババァ!こらぁ。俺がひん剥いてやんよ!!。ガハハハハハハハ!!。」


ひぃ!。止めて!そ、そんな...。止めて!。


「や、やめ...」


声が出ないよ。


「おい。兄貴、このクソババァ、いやんだってよ?。」


「よく見りゃ意外と...クソババァだぜ。キモッ!!。ギャハハハハハハハ!。」


「何だ?!!この野郎!!。何だその目は!?!。」


ダメよシーボル。


「娘が死んでいい気味だぜ。バーカ!。おーらよ!!。」


私は何てバカなんだろう。泣。


何をする気!!?。


男が棍棒を振り上げた!!。


ゴキッ!


あぁぁ...シーボルが、シーボルが...。


また、振り上げ!!。


ゴキッ!


ゴキッ!!。


あぁぁあぁぁ...。シーボルがシーボル死んでしまう。


誰か...。だ、誰かシーボルを。


「誰か...。誰か...。」


「誰も来ねぇよ!!!クソババァ。ギャハハハハハハハ。おら。ひん剥いてやるよ。ギャハハハハハハハハハハハハ!!。」


「アハハハハハハ!!!」


「や、やめて...。」


「せーーのーーっ!!!」


ググゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


キーーーーーーーーーーーーーーン


何?。

この爆音は...。


鼓膜が破れそう。


「な、な、なんだ...?。こ、こ、この音は...。」


「砂獣か!?。」


「まさか...。笑。まだ、地平の彼方だぜ。」


ググゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


「う、うわぁ!!。あ、兄貴、こりゃ、な、な、何だ!!?。」


「分かる分けねぇだろ...。」


「こ、こ、鼓膜が破れそうだぜ...。」


男達が動揺している。


ググゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


まただ。


...ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!


...ズズドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!


地面が激しく揺れる。

男達が乗ってきた盗難車が宙に跳ね上がる。


「...お、お、おい...これ、何かの足音だぜ...。」


男達はすっかりあたし達のこと忘れてる。


「こんなデケェ足音させる生き物いますかね?。兄貴。」


「...そ、そ、そうだな。笑。いるわけねぇか。」


...ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!


...ズズドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!


もの凄い振動だ。地面がたわんでる。


...ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!


...ズズドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!


「ひ、ひえぇ!!。やっぱり、何か来たぞ!!?。」


「足音だぞこれ!!。な、な、な、なん、何だこれ...。」


頭の上に影が出来た。

何かに覆われた。


ググゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


「うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!。」


「ギヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!。」


「うわっ!!うわっ!!うわぁあぁぁあぁぁあぁぁ!!!!。」


キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーー


ジェットエンジンみたいな音。

爆音が響いている。


あたし達の頭の上。


大きな大きなロボットが...。


デェっけえロボットが。


ピンクのロボット。


顔は銀色。


大きい。


途轍も無く大きい。


真上を見上げる。


車や乗り物のヘッドライトみたいに、切れ長の黄色い目が光っている。目は6つある。


右も左も中段のが大きい。


黄色い、ライトみたいに光る目、でも銀色にキラキラ光って奥行きがある。


ライトみたいに綺麗な、大きな目。シーボルの家よりも大きな目。


このロボット、呼吸をしている。呼吸の度に胸が膨らむ。少しだけど表情も変わる。


胸が出ている。このロボットは女?。


ルビアナのメフィラスの塔は、200mあるけど、それよりも大きい。


顔。目は6つあるけど、女の顔をしている。


銀色にピンク色の塗装が。違う、塗装じゃない。まるで皮膚みたいだ。ピンクの部分は大きな鱗がついている。


アフロヘアみたいな頭をして、尖った耳をしてる。まるで太古の王女様だ。


ピンクの模様は、特急車の塗装みたいだ。


あたしたちを見下ろしてる。


あたしを食べるのね...


...ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!


...ズズゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!


女ロボットが膝をついた。

女ロボットは、あたし達を覗き込んでいる。


食べたきゃ食べなさい。

あたしは、あたしなりに、人様のためにできるだけのことをして来た。その見返りがこの仕打ちならそれでもいい。神様がそうしたけりゃ、勝手にすればいい。


ググゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!



「ギィヤーアーーーーーーーーーー!!。」


男が飛び出した。


ブゥワーーーン!


ロボットの腕が動いた!。

すごい風が。


グッシャアーーッ!


ロボットは男を握り、口に運んだ。


「...ギャァアアア。ぎゃあ!!ウゲッ!!ぐごつ。た、たすゆさけてぁーーー。だらか、たすゅかぱばぁーわー。ごば。ごご。..,」


ゴリゴリゴリ。

ボリボリボリボリ...。


ロボットが男を食べてる...。


骨の砕け散る音が...。


「お、おおぃ。おめぇら。ば、ば、ババァを差し出せ。」


また、あたしは男達に髪を持って引きずられた。


「おおぃ...。おまえ。笑。こ、このババァ美味いぞ。ひ、ひ、へへへ、へへへへ。」


ブゥワーーーン!。


グッシャア!!。


バシャバシャバシャ。


ロボットは男をいきなり握り潰した。

男はロボットの銀色の指の半分の大きさもない。


女ロボットはその細くて綺麗な指で血だらけの肉の塊を口に運んだ。


ゴリゴリゴリ。

ボリボリボリボリ...。


シーボルと、あたしは、シーボルの家の前の白い砂利道に倒れてる。


怖いけど、もう動けない。


でも、ロボットは、いや、女の巨人は、男達ばかりを掴もうとしてる。シーボルの家を壊して捕まえれば良いのに...少しおつむが弱いみたい。


シーボルの家の隙間から大きな手を入れて、男達を掴もうとしてる。


あたし達には目もくれないけど、男達を食べ尽くしたら、あたし達を食べると思う。


ブゥワーーーン。ググ。


女巨人の手が近くを通るだけで、シーボルの木造の家は壊れそう。


「...おい、兄貴ぃ...。泣。あいつ左手に何か持ってるよ。泣。もうダメだぁ。泣」


「何だテメェしっかり...あぁぁ...あぁぁあぁぁ。何てことしやがる!...。」


柄の悪い男達が、情けない声を出してる。いい気味だよ。


左手に何が...。


!!?。


飛行艇だ...。高速飛行艇。こいつらのだね。いい気味だ。笑。巨人さん。食べておしまい。笑。


ドーーーーーーーーーン!!

ズドーーーーーーーーーン!

ズドーーーーーーーーーーーーーーン!


また、別の足音が。

今度のは小さい。


!!?


...ゴゴガァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!


女巨人が咆哮をあげ、本当に飛行艇を口に放り込んだ。


「あぁぁあぁぁあぁぁ!!」


ゴン!ゴン!ガキ!ガギィ!!...ドーーーーン!!


飛行艇が巨人の口の中で爆発した。


はっ!!。


目の前にまた別の大きなロボット...いや、巨人が。


戦車みたいなごつい黒い身体。背中に大砲が2つついている。銀色に光る綺麗な大きな大砲。


でも、背丈は女巨人の10分の一くらい。


男の巨人。


「...ハイカー!fghjjjjhhgfdf。Ssfgcdfghhjj、ssfggddghjjjbvswwwrg。」


聞いたことのある言葉。


「Ggfesdddgハイカーhhhfukoplkk、Efgffgdghgrewwfgh、ハイカー。dghhhjjhhffdwsdfferuolk。」


ハイカーって言葉を何回も言ってる。


!!?。


この女巨人がハイカー!!?。


アトラの兵曹?。


ニュースで何回も聞いた。

もう一人の女兵曹と伴に、バグーと戦っているハイカー。


世界一の砲撃兵曹だって。


ドーーーーーーーーーン!!

ズドーーーーーーーーーン!

ズドーーーーーーーーーーーーーーン!


男の巨人が、荒くれ男達を次々に持ち上げる。


男達は猫に摘み上げられた子ネズミのようにバタバタと暴れている。


兄貴って言われてた、金髪の一番大きな男が吊り上げられる。


空中でバタバタ足や手をバタつかせてる。


刺青を入れた子ネズミに見える。


こうなると可哀想だね...。


「うわぁ、ひいぃ、止めてくれー。お願いだ。食べないでくれぇ...お願いだよ。食べないでくれぇ...後生だ。後生だから...。」


黒い巨人は、ハイカーの方に向かって、男を投げた。


「うわぁあぁぁ。ひぃぃ!。食べないでくれぇ。やめてくれぇ。やめてぇ。やめてよぅ。」


巨人に比べたら、荒くれ者もただの小動物だ。


男が空中に飛ばされながら、必死に叫んでる。


悪りぃけども、少し滑稽だね。


ボワゥッー!!


ボッググゥゥゥ!!


「うわぁ!。」


男兵曹が投げた荒くれ者を、ハイカーが咥えた。


「ギャアア!。ギャアアアアアアアア!!。痛てぇ!!!、いってぇ!!!。ギャアアアアア!!。た、たすけ、グワ、ドブッパギャア...。」


ゴリゴリゴリ。ボリボリボリボリ...。ゴリゴリゴリ。ボリボリボリボリ...。


鈍い骨の砕け散る音が響いて来る。


黒い巨人は、次々と男達を捕まえ、ハイカーに差し出し、ハイカーは、何の躊躇も無く咥え咀嚼していく。


7人いた男達は、全てハイカーの食事になってしまった。


あたしも、シーボルも、もう覚悟している。あの男達に辱められて死ぬより、この巨人に食われて死ぬ方がまだ尊厳がある。


ハイカーがあたしとシーボルを見ている。


でも...怖い。


こんなに怖い思いをしたことは無い。


...怖い。泣。


子供みたいにチビッてしまった。


食べられる...。


シーボルは、あたしを庇おうとしている。


ダメだよ。シーボル。逃げて...。


あたしゃ、足がすくんで動けない。


ハイカーの目。


光るクルマのヘッドランプのような六つの目。


機械のような目。


でも、優しい目。


人食い獣の目とは思えない...。


この巨人はバカじゃない。


ハイカーがあたし達を見てる。


自然と嗚咽がこみ上げる。


怖い...。


逃げられない。


ひぃっ!。


ドーーーーーーーーーン!!

ズドーーーーーーーーーン!

ズドーーーーーーーーーーーーーーン!


!!?。


ハイカーが...ハイカーが立ち上がった。


シーボルもあたしも地面から浮いて落ちた。


ハイカーは天に届くほど高い。


「Ggfesdddgハイカー!。hhhfukoplkk、Efgffgdghgrewwfgh、dghhhjjhhffdwsdfferuolk。」


黒い巨人がハイカーに語りかける。地鳴りのような重低音。ただの振動みたいだ。


聞いたことがある。この言葉...。


ググゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


ハイカーが咆哮を上げる。


ドーーーーーーーーーン!!

ズドーーーーーーーーーン!


ズドーーーーーーーーーーーーーーン!

ドーーーーーーーーーン!!


ズドーーーーーーーーーン!

ズドーーーーーーーーーーーーーーン!


ドーーーーーーーーーン!!

ズドーーーーーーーーーン!

ズドーーーーーーーーーーーーーーン!


ハイカーはゆっくりと歩き始めた。


オアシスの方向、砂獣の来る地平の方向へ。


ハイカーの身体から爆発音が。


ドーーーーーーーーーーーーーーン!!


ユッサユッサ


地面が揺れる。


キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


ジェットエンジンのような音。


高まって行く。


ハイカーの背中に、赤くて丸い光の円盤が回転し始めた。


まるでハイドゥク様のように...。


ハクア語だ。


あの言葉。


ハクア語。


なぜ、ここにアトラの兵曹が。



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