デュランダル•レビン3
ダウンタウンの海側にある駅。ここからボッグスへ行く。
東に行けば海だ。
海側には旧世代の旗艦、マルディックが停泊してる。今のゴンドノアのような存在。
マルディックは、旧式の航空要塞だ。大きくてとても重い。エネルギー系統には今のようなアルマダイエンジンではなく、陽子•原子力エンジンを積んでいる。
効率が悪く、環境への影響も悪い。粒子砲の威力も最大船速もゴンドノアに匹敵するが、エンジンはゴンドアナの6倍の24基、増殖炉は13倍の137基もある。総重量に至ってはゴンドノアの18倍だ。
当然、小回りは効かない。
粒子砲撃や主砲の発射にも数十分かかったらしい。
その重量や構造のため、故障や破損が絶えなかった。
維持費はゴンドノアの800倍だったらしい。
旧アトラ軍の象徴マルデック。
当時はそれでも世界最強の航空要塞だった。
そして、退役した今もゴンドノアに次ぐ存在。今は、軍事オタク以外からも根強い人気がある。観光名所として。
マルディックの甲板にはいろんな戦闘機、航空戦車など、200年前の兵器が飾られている。
建国記念日には、毎年、昔のように海中ゲートから飛び立ち、その重い巨体で着水を繰り返す。
毎年同じだが、子供達には大人気だ。
もう見飽きてしまった。笑。
レトロな観光名所の横に、巨大客船の乗降口がある。
マルデックと同じくらい大きな豪華客船が何隻か停泊している。
ここは金持ちが多く、彼等は派手な陸用車でやってくる。
駐車場は広く、1万台は停まっている。
日差しの中で、キャンディーのように光ってる。色とりどりに。
ショッピングモール、シーフードレストラン、ホテル、遊園地、展望台...潮風に旗がたなびいている。
巨大なこれらの商業施設は、大衆向きではない。アトラの1,2等市民向けのものばっかりだ。
そして、ここは終点。地上を走る全ての電車の。
客はホームから降り、放射状に無数に走る線路の上を歩いて、シャトルか、タクシーか、スロードープの乗り場に向かう。
道なのか広場なのか線路なのか分からない。この広い白い地面は遠くまで続く。
ボッグス行きのスロードープ(路線バス)の乗り場に着いた。
この地区を東西に隔てる幹線道路沿いにある。
地上の道は、片側100車線。
反対側は見えない。
航空車の空域は90層ある。
10車線90層。
車線数が少ないのは、日照の関係だ。
こんなにエルカー(航空車)が飛んでいるから、2つの太陽の日差しは緩やかだ。
歩道にチラチラとミニカーくらいの影が行き来する。
歩道はあるけど歩いている人はいない。
隣街でさえ数日かかる。
ここからボッグスまでの直線距離は17キロ。横切れない分、徒歩のほうが遠回りだ。タクシーか、スロードープ(路線バス)が早い。
スロードープは最大で5〜10mの高さまで飛べる。でも、普段は地面から70cmくらいの高さを飛ぶ。
タクシーもスロードープも階級の高い人達は利用しない。
階級の高い人達なら自分の家に、必ず航空車の着陸ポートを持ってるからだ。
スロードープは風情があるから僕は好きだ。
陸車の免許は持っているけど、やはりボッグスに来るにはエルカーじゃないと不便だ。
陸車は、ダウンタウンの外へ出ると、下層市民しか乗っていない。
危険だし、交通ルールや運転技術が僕たちには分からない。
下層の人達は、野生に近いからああいう運転が出来るのかな?。
スロードープには、小学生位の女の子が一人と、貴婦人が一人乗っている。
それだけ。
ドドドゥルルルルルルルルル....
スロードープが、静かな心地良いエンジン音を響かせながら、ゆっくりと大通りに合流していく。
風の絨毯に乗ってるような感じ。
真っ白なメインストリートは、まるで色とりどりの魚で溢れる海流だ。
スポーツカーが、真っ白な道路を高速で走り抜けて行く。太陽の光を反射しながら
片側100車線の広い広い幹線道路を。
スロードープは、高層ビル街に沿って走る。
まるでのんびりと泳ぐマンボウのように。
海辺のハイタワー(ビル)達は、金色、銀色、薄い青い金属色に輝き、様々な形をしている。
でも違和感のあるものは1つも無い。景観法があるからだ。
奇跡的な美しさ。
女の子と、貴婦人もハイタワーをじっと見つめている。
手に持った新聞(様々な事件や情報の書いてあるレポート)やバンドル(情報端末かスーパーコンピューター)を持っていることさえ忘れて。
ここの景観は、建築家を目指す者からすると憧れだ。
スロードープは大通りを2つ入る。
歩いている人もちはほら見える。
モーター式の移動機器に乗っている人も。
またがるタイプ、車に似たタイプ、ただ乗るだけのもの。
自転車に乗っている人もいる。
道幅は、3車線から5車線くらい。
ビルの規模も道のサイズも常識的になって来る。でも、無駄に土地が広く、高級過ぎる。
本物のエメラルドや翡翠で作られたビルや、エンダル石の公園。
人工的に植えられた、大きな真っ直ぐな並木道。この木はイナトナだ。かの帝国ではこのイナトナの品種改良が進んでいる。樹木にして樹木じゃない。美しく壮大な木だ。この木を扱うための知識は、建築家にとって重要だ。
他の大陸から入って来た不思議な草や花。まるで、魔法の国から来たようだ。色も形も自然の物とは思えない。凄く高価な植物達。
街を歩いているOLも、宝石のように鮮やかなブルーのスーツを着て、高級車が買えるほど高価なヒールを履いている。白の眩しいヒールを。
そして、抱えている書類はそれ自体がまるでファッション雑誌かアートみたいだ。
オレンジの敷物のような坂を、アップにした金色の髪で、颯爽とそれでいてゆとりを持って歩いている。
彼女の通り過ぎた後の風は、仄かな香りが漂っているはずだ。風に紛れて。
スロードープがまた角を曲がり、内側の道に入る。
海側から中に入るに従って、穏やかで鮮やかな街並みは、都会、無味、灰色、合理的になって行く。
そして、大気から、焦り、厳しさ、よそよそしさ、危険、不安を感じるようになる。
この辺りは治安が悪い。
スロードープに乗っていれば安心だけど、降りて歩くようなことはしたくない。
地下マフィアのオフィスがいくつもあるという。
この辺りをスロードープやタクシーで通りかかると、時々衝撃的な光景を目にする。
見て見ぬふりは、気分が落ち込む。でも、兄さんから、何か行動をする前には、必ず先に報告するよう言われてる。
何で、兄さんは、わざわざこんな危険な場所に引っ越して来たんだろう。
...。
そう。俺も母さんもここより危険で不衛生な場所に住んでいた。
兄さんが救ってくれた。
俺たちを探し出してくれた。
15歳年上の異母兄弟。
俺たちの父さんは大らかで楽しい人だった。でも、女にだらしなく嘘つきだった。
...。
何回か門を曲がりボッグスに近づくと、治安はまた良くなる。
最近とみに、そうだ。
ここだ。
ここでいい。
ピーーー
『...次停まります...』
スロードープから降りると、温かくそれでいて、澄んだ空気が鼻から肺に入って来る。
普通に人が歩いている。
庶民感覚の土地。
木々や草花。緑や自然が多くなる。どこにでもある普通の花や木。でも、とても綺麗だ。
緑が清々しい。
土曜日の午前。まだ陽は上がりきっていない。
昨日の雨が大気や地面をしっとりとそして涼しく潤してくれた。
柔らかい光が、木々の葉を照らす。
都心のど真ん中にあるこの公園ビュークには、いくつもの大きな庭園、山、池、川まである。大きなモニュメントのある舗装された広場では、子供達がスケートボードを楽しんでいる。
今日も市場は賑わってる。
沢山の人達が歩いてる。
それこそ、いろんな人達が。
天然石屋の店頭で、若い女達が綺麗な石を漁っている。
店先に並んだ大きな石。庭とかインテリアに使える。
でも、きっと驚くほど高い。
売れてるのを見たことが無い。
「よう!リッキー!久しぶり!。」
「やぁ!。ニック。」
果物屋のニックだ。
朝から元気だ。
「兄ちゃんのとこかい?。」
ニックは50代のおじさんだ。
?。60かな?。
早起きでいつも爽やか。
「そう!。」
「あんまり兄ちゃん怒ったらダメだぞ。笑。優しくしてやんな。笑。ほれ。」
ニックが赤い実を投げてよこした。
「お。いつもありがとう!。」
あれ、今日はマジーの実じゃないのか...笑。
「リッキー!旦那のとこかい?。」
「あぁ!パド!久しぶり!元気!?。」
「あぁ!。ぼちぼちねー!。旦那によろしく。」
「あぁ!ありがとう。」
洋服屋のパド。個性的な女性。多国籍な洋服屋だ。旅行好きなパドは世界各国にいろんなパイプを持ってる。
「ヒヒヒヒ。リッキーーィ。」
「ほ、ホワン...。やぁ。汗。」
調合屋のホワンだ。色白のぽっちゃり中年オヤジ。調合の腕は確か。たまにボッグス総合病院の医者も相談に来るほどだ。でも、笑い方が気持ち悪いから、毒を調合しているようにしか見えない。
「ヘイ!リーック!。」
「やぁ!。」
アップとミッキーだ。何かデカイ鍋を二人で担いでる。炊き出しでもするのかな...。
ドタバタドタバタ...。
「ヤバい、ヤバい!。ヤバいヤバいヤバいっ!。」
若い男が走って行く。
ジャガードゥだ。彼は菓子作りの上手いロッカー。いつも寝坊してる。
「おや。リッキー?。久しぶりだね。」
魚屋のジェシー。
「こんちは。ジェシー。お孫さんは元気?。インカちゃんだっけ?。」
「あぁ、元気だよ。会いに来てやっておくれ。インカはあんたの話しばっかりしてるよ。ついでにイカぐるぐる見においで。」
「イカぐるぐるって?。」
「あれ?。やだよぅ。忘れたのかい?。あんたが見たいって言ってたんじゃないか。笑。イカの扇風機だよ。」
「あぁ。そっか笑。干物マシンだよね。」
「来るかい?。これから。」
「えぇっと...。今から兄貴の所に行かなきゃ。」
「オッケー。笑。時間出来たらいつでも声かけておくれよ。あぁ、後、旦那によろしく。」
「あぁ、分かった。ありがとう。」
ジェシーが手を振る。
「...そーんなに安くしたらおまえ店潰れちまうよ...」
「...おやじっ!。ケチケチすんな!。ハムはおいしい時に食べてなんぼだ!。...ホイ!みんなー!。今日は8割引だよ!全部持ってけドロボー!。...」
「...おいおいおいおい...。ぜ、ぜ、全部って、全部って。破産しちまうよ...。あれ?。リッキー!。...」
「え?。リッキー。良し決めた、持ってけドロボー!これ全部タダだっ!。」
「...あぁ、ダメだ...目が回る...」
「やぁ!。」
ヤンさんとニコ。
ニコはバカみたい気前が良い。でも、それだけじゃない。ウデと勘も良い。
ヤンさんの自慢の息子だ。
「ウイーーッ...。よぉ。坊主。飲んでけ。」
ロージャだ。
いっつも酔っ払っている。笑。
会話もいつもと同じ。
「まだ未成年だよ。殺されちゃうよ。兄さんに。笑。」
「いけね。そうだった。汗。」
ロージャは目を見開いて、そして、舌を出して額をピシャリと叩いた。
いつもと同じだ。
ムゥがまた犬とじゃれてる。指で合図をして来る。
『...食べていきなよ...』
何でジェスチャー?。
あれ?。
ジーナだ。珍しい。
サマンサの屋台で煮込み食べてる。
ああ。ジーナ驚かせろってことか。笑。
ジーナはリアクション派手だから。
やんないよ。ムゥ。もう子供じゃないんだ。笑。
俺はムゥに手ぶりで断った。
「あれー!?ちょいとっ!。リッキー!!。」
サマンサが叫ぶ。
「ひ、ひぃぃっ!。」
ガタン!
ジーナが驚いて立ち上がった。
ジーナはキョロキョロしてる。笑。
挙動不審。
プッ!
笑える。
ドタ!
ジーナの小さなテーブルが倒れて、煮込みがこぼれた。
うわ...。流石に気の毒...。
はっはっはっはっ!
はっはっはっはっはっ!
あっはっはっはっはっはっはっ!
ムゥ笑い過ぎだ!。
「ああああ...。ジーナごめんよ。私が声デカイから。ごめんよ。すぐ新しいの出すよ。ごめん。ごめん。」
サマンサが別の煮込みの皿を持って来る。
はっはっはっはっ!はっはっはっはっはっ!あっはっはっはっはっはっはっ!はっはっはっはっ!はっはっはっはっはっ!
あっはっはっはっはっはっはっ!
ムゥにはジーナがツボらしい。
「いつまで笑ってるんだよ!おまえは!。ジーナに失礼だろ!。」
ボン!
「イテっ!。」
サマンサがムウの頭をアルミのお盆で叩いた。
ジーナは、それを見て、目を見開いておどけた表情で腰を振ってる。ムゥを挑発している。
ざまあみろと言わんばかりだ。笑。
「このクソババァ!。」
俺たちは、子供の頃からジーナを驚かして遊んでた。
ジーナは子供が大好きだ。ビビリ症なのも本当だけど、ああやって遊んでくれてたんだ。
「なぁにい!クソババァだとぉ?このクソガキがぁ。笑。」
ジーナはそう言うとムゥのほっぺたを両手で挟んで、揺さぶってる。
もう、中学生なのに。
ジーナはムゥが可愛くて仕方ないみたいだ。
ムゥもジーナに助けて貰った一人。
「ババァ!その汚い手を離せ!ペッペッ!。」
ムゥが悪態をつく。
精神年齢が小学生だ。
もう中学生なのに。
ボーン!
「いい加減にしないと!。こうだよ!。怒」
またサマンサがムゥの後頭部をお盆で叩く。
はっはっはっはっはっ!
今度はジーナが笑い出した。
「ちぇっ。2対1かよ。」
サマンサが下唇を噛んでムゥを睨んでる。
「おまえ、ホントいい加減にしろ?。」
サマンサが男言葉だ。笑。
仕方ない助け舟を出してやるか。
「母ちゃん、あいつはいいのかよ!。すげぇ笑ってんよ!。」
あいつ...。
あ、俺?。俺か?。
笑ってないだろ?。
あのクソガキ。
ボーン!
3度目。笑。
「イテー。」
「奥さん。俺も煮込み1つ。」
あぁ、客だ。
「はいー。いらっしゃいませ。いつもありがとうございます。」
笑。
「何この落差!変わり身っ!二重人格かっ!。」
サマンサはお客さんに見えないように下唇を噛み、お盆を振り上げ、ムゥを威嚇している。
ジーナは肩を震わせながら、煮込みを食べてる。
あ、いかん。こんなことしてる場合ではない。
「あら!リッキー!。食べていかないの?!。」
「帰りに寄ります!。腹ペコなんで!。」
「待ってるわよ!。」
また、サービスしてくれる気だ。
「...オニババァの煮込みなんて誰も食いたくねぇよ。笑。...」
まだ言ってる。笑
ボーン!
「...イテッ!...」
4回目。笑。
通りを渡り、斜めに走る広い道を歩くと、商店街だ。商店街?って言っても、雑貨屋や、皮物屋、金物屋、フライヤーやスピーダーを売ってる店、武器の店...。
20分歩くと、エルカーやフライヤーの部品。アフロダイエンジン。コンパネ。反重力ホィールなどなど。部品がむき出しで置いてある店にたどり着く。
兄さんの店だ。
このデカイ、アフロダイエンジンも配送つきだ。兄さんの。
...ゴーーーーーーー
...ガーー
...ググ...
...ゴーーーーーーーーーーー
...ガーーーーーーーーーー
...グゴーーーーーーー
...んん!?
...ムニャムニャ...
...
...
...ゴーーーーーーーーーーー
...ゴーーーーーーーーーーー
...ゴーーーーーーーーーーー
近所のチビ達が店の中を覗き込んでる。
なぜかひそひそ話を始める。
「...怪獣の声だ...」
「...ホント?。怪獣...」
「...クマちゃんじゃない?。...」
「...違うよ。ヒバゴンだ。...」
ヒバゴン...?。
なぜか兄さんは、ちびっ子に人気がある。
ブラッククロウの輩ですら震え上がると言うのに。
避けて中に入...。
ガン!。
スパナに足が当たった。
「...シーーーッ!...」
女の子が指に人差し指を当てる。
「...あ、ごめんごめん...。」
「ああ!リッキーだっ!。」
男の子が手を振る。
「シーーーっ!」
また、女の子。
声の方が大きいんだけど?。
拉致が開かない...。汗。
前に立ってる男の子の頭を撫でて奥へ入る。
「... あぁ、勝手に入った。よそのお家。 ...」
「... リッキーはクマちゃんの兄弟だからいいの。 ...」
「... えぇー。似てない。ぜんっぜん似てない。 ...」
余計なお世話。
機材だらけの通路を歩く。
この機材の山。
崩れて来たら普通にみんな潰れてしまうよ。片付ければ良いのに。
特に小さい子が来るんだから。
部屋に近づくに従って、イビキが大きくなる。
ゴーーーーーーー
ガーー
ゴーーーーーーーーーーー
ガーーーーーーーーーー
グゴーーーーーーー
ゴーーーーーーーーーーー
ゴーーーーーーーーーーー
ゴーーーーーーーーーーー
確かにヒバゴンだ...。
金属やグリースの匂い。
横開きの扉。
ここが玄関だ。
普通は。
この辺りの店は、軒先に商品を並べる作りになっている。
ぐっすり寝ている。
でも、兄さんはどんなに熟睡していてもすぐ起きる。
中学を出てから、用心棒や、傭兵をしていた。アトラ軍に入る前は。
きっともう気づいている。
ゴーーーーーーー
ガーー
ゴーーーーーーーーーーー
ガーーーーーーーーーー
グゴーーーーーーー
ゴーーーーーーーーーーー
ゴーーーーーーーーーーー
ゴーーーーーーーーーーー
だだっ広い、ガレージの様な部屋。
体育館みたいだ。
少し小さめの。
あちこちに、銀色の機械が置いてある。分解しかけのフライヤーの部品だ。
薄緑の金属の階段がいくつかある。
二階の窓から光りが差している。
殺風景だけど、さり気なく洒落てる。
でも、洗面台も何もかもかなり大きく出来ている。兵曹用だ。この辺りの人には多い。部屋の中央に見える縦長の倉庫はシャワーだ。
僕にも大きすぎる。
まるで小さな子供に戻った気分だ。
兄さんは、戦闘に出るたびに元の大きさに戻れなくなってる。
今は戻っても3m以上はある。
それもあるのかな...。
大きなマットレスで寝ている。戦闘機運搬用のクッション材。
部屋の真ん中で。
ゴーーーーーーー
ガーー
ゴーーーーーーーーーーー
ガーーーーーーーーーー
グゴ。
ゴーー?
ゴー?
ゴ?
「...リックか?。」
「ああ。俺だよ。」
「...どうした?。」
...ガーー
余程疲れてるんだ。
いつもは、どんなに疲れててもすぐに起きて来る。
「話があるんだ。」
ガーーーーー
ガ?
「エルカーか?。」
「いや、自分で買うよ。」
「...そうか。...それもいい。」
ゴゴーーーーー
「...実はさ、実は」
ゴ?
「何だ?。」
....。
「マーサーさんのことだよ。」
ガガーーーー
スーー
ゴゴーーーーー
ピーーー
「なぁ。マーサーさんのことだよ。」
ガガーーーー
ガ...
「大人の...事情だ...。」
ゴゴーーーーー
「マーサーさん、悲しそうだったよ。」
ゴ...。
「マーサーさん、寂しそうだ。一人でコーヒー飲んでた。仕事いく時だってカブスの帽子被ってる。」
「何が言いたい?。」
「あの、その...。」
「...デリケートな問題だ。...立ち入るべきじゃない。...兄弟であっても。」
「あんないい人いないのに。兄さんだってあんなに楽しそうにしてたじゃないか。何があったの?。」
「...終わったことだ。」
兄さんは寝返りを打って、背を向けた。
「あの人のためなら命も惜しくないって言ってたじゃないか。」
「...疲れてるんだ。リック。...寝かしてくれ。」
「兄さん!。」
「...そんな話なら...帰ってくれ。...俺はヒマじゃない。」
兄さんの声は太い汽笛のようだ。
「危ない仕事だから?。いついなくなるか分からないから?。それとも身体が大きくなっていくことを気にしてるの?。」
「リッキー。いい加減にしてくれ。恋愛話がしたけりゃ大学でやれ。」
「分かったよ!。兄さんは怖いだけだろ。逃げてるんだよ。帰る。」
...。
ゴゴーーーーー
ガガーーーー
スーー
ゴゴーーーーー
ピーーー
兄さんはバカだよ。
あんないい人いないのに。
ゴゴーーーーー
ガガーーーー
スーー
ゴゴーーーーー
ピーーー
ゴ...
「..おおーい、リッキー。リーック。リーック。」
え?。
「何?。」
「そこのマジーの実ぃ。...持ってぇ帰れ。ゴゴ..お前のだ...」
マジー実て...。
「どこ?。そこのって、どこ?。」
「紙袋だぁ...、茶色の..。ニックん所の...。スーー。」
...。
え?。これ?。
随分デカイ紙袋だな。
げ。これ全部。
「こ、これ全部?!。」
...ゴゴゴ
「...そうだぁ。...おまえ好きだったろぅぅ。ゴゴ...」
...ガガーーーー
「す、好きだけど、こんなに持って帰れないよ。」
ゴ...。
「...好きなだけぇ..持って帰れぇ。おまえの好きなだけぇ。...。」
「あぁ。」
「...リーック。」
...ムニャ...ムニャ
「ん?。」
「...帰るならぁ...気ぃをつけて帰れぇ。...ダウンタウン...危ないか...。」
...ゴーーーーーーー
...ガーー
...ググ...
...ゴーーーーーーーーーーー
...ガーーーーーーーーーー
...グゴーーーーーーー
...んん!?
...ムニャムニャ...
...
...
...ゴーーーーーーーーーーー
...ゴーーーーーーーーーーー
...ゴーーーーーーーーーーー
「兄さん。おやすみ。また。」




