ハイドラの狂人61
二体の巨人は離れて睨み合っている。
黄色いイプシロンはハイドゥク目掛けて光を照射している。
主人にエネルギーを供給している。
巨兵達は最終形態での決戦に持ち込む気だ。
赤碧様そしてデス様のご指示でこの兵曹達を長らく見張って来た。
かれこれ7年になる。
にも関わらずまだ知らないことが次々と出てくる。
これが決戦の場で無くて良かった。
もし、これが赤碧様のお出になられた闘いであったなら...。
考えることも恐ろしい。
...己の死では償いきれない。
ヒドゥィーンは、熊、虎、鳳凰、龍。
4つのエネルギーの系列のどれかを持って生まれて来る。
4つのエネルギー系は、もともとこれらの動物には関係がない。
兵曹化した者の姿がこれらの動物に外見も攻撃も似ているからそう区分けされた。
4つのエネルギー系はイプシロンの3つの波長によって、更に12種類の形態に分けられる。
区別できないエネルギー系の者や複合した者がいる。
ハイドゥクやマジゥのように。
大抵の場合、複合型の戦士はヒズチソと言われごく幼い頃に間引かれる。
ヒズチソの子は大抵の場合成長が遅く戦士としても小さい。
戦士として育成されたとしても、殆どの場合成功はしない。
一般に戻しても社会から受け入れられずその力を悪用して犯罪者になるケースが多い。
オルフェもモルフィンも度重なる幸運に恵まれ生き残ることができた。
そのような背景から、この二体は多くの人々の人気を勝ち得た。
絶望の淵からの血の滲む努力と、戦闘神ナジマに護られ成功した者として。
...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
ハドランにマジゥの咆哮が広がって行く。
《...そこをどけ愚鈍な老兵よ。我を忘れ我が子を見殺しにするのか...》
マジゥが咆哮を上げる。
...ボーーゴゴゴーーーーグガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
ハイドゥクの雄叫びが台地に反響している。
《...逆賊め。地獄へ堕ちるが良い...》
二体の絶対王者としての誇りももはや後戻りを許さない。
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...ゴーーーーーーーーーーーーーーー...
...ババババババババババ....バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
...チカ...チカ...
....バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
空気が割れ弾けている。
二つの炉の回転音は皮肉にも共鳴し合っている。
驚いたことに二体の最終兵曹は更に巨大化し始めた。
赤碧様を上回る大きさに...。
そして、最後であるはずの形態を更に進化させ始めた。
ハイドゥクの牙そして爪もせり出しより龍に外観が近づいて行く。
放電翼は魚の背ビレのように立ち上がり背中を縦断する。
全身の黄色い甲殻は黄金の鱗で覆われた。
マジゥの放電翼は孔雀の羽根のように広がり全身は白い鋼鉄の羽毛で覆われる。
そして、全身が七色の炎で覆われ爪は鋭い刃物のようにせり出した。
不動明王達の最後の姿だ。
マジゥは龍の角を纏ったままだ。
ハイドゥクの恐竜のように後方に伸びた鳳凰の角はより大きく後方に伸びて行く。
角はメロウの放電を伴い激しくプラズマを放出する。
マジゥの角は更に枝分かれし鋭く尖っていく。
青白いシカムの放電が激しくほとばしる。
...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
マジゥが咆哮を上げる。
...ボーーゴゴゴーーーーグガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
ハイドゥクが咆哮を上げる。
マジゥのような巨大な鳳凰が過去にいない。
何万年の史実、記録を遡ったとしても。
...ズドーーーーーーン...
...ズズドーーーーーーーン...
白い鋼鉄の羽毛を纏った巨人が大地を踏みつける。
黒く溶けた赤土が空に噴き上がる。
今度はマジゥがハイドゥク目掛けて突進し始めた。
数百ノードの距離は120メートルを超える巨人が加速するには充分ではない。
しかしそれでもその重量が激突する衝撃は凄まじい。
ぶつかる....
....
........
....ズズズズズズズズ...
...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...........
....
凄まじい衝撃。
...ゴゴゴゴゴゴゴゴ...
台地が崩壊していく。
ここも激しく揺れる。
あぁぁ...。
立っていられない。
...ガガガーーーーーーーーーーーーーー...
岩に大きな亀裂が...。
ここもそんなには持たない。
コウソンライのシムキャストが激しく揺れる。
奴は慌てる気配すらない。
....ゴゴゴゴゴゴゴゴ...
今度はハイドゥクが激しく押される。
ハイドゥクの足は赤土の台地を削る。
マジゥと組み合ったまま後退して行く。
マジゥとハイドゥクは再び組み合ったまま微動だにしなくなった。
...ズドーーーーーーーーーーーーーーン...
マジゥが足を踏み出した。
赤土が噴き上がる。
マジゥがハイドゥクの巨体を投げようとしている。
マジゥは怪力。
そして大闘技では天才的なセンスを持つと言われた。
マジゥの投げをかわせる者はいない。
ハイドゥクにとってマジゥはかつてないほどの強敵。
追い詰められている。
ハイドゥクの身体が僅かに浮く。
力を抜き滑るように身体をずらしマジゥの腕を掴んだ。
巨人同志の組手は遠目には緩慢に見える。
だが実際は凄まじい速度だ。
ハイドゥクはゆっくりと身体を巻き込みマジゥの肩を固め始めた。
...ゴゴン...
...ブシューーーーーーーーーーーーーーーー...
音が遅れて届く。
マジゥの甲殻が割れ体液が噴き出す。
...ズドーーーーーーン...
マジゥの蹴りがハイドゥクを直撃する。
...バスゥ...
ハイドゥクの黄金の鱗が空に舞い上がり甲殻が割れる。
...ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウゴゴゴゴゴゴゴゴガガガガガガガガガガ...
「うわァァァァァァァ!。」
「おおぉぉぉぉ!。」
...ブゥウヲォン....ブゥウヲォン....ブゥウヲォン....ブゥウヲォン....
兵士達が叫ぶ。
!!
こちらに飛んでくる。
回転しながら。
巨大な民家よりも大きな黄金の鱗が...。
...
...
...ッ...
...ガスーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
「ぎゃあああああ!。」
「ひいいっ!。」
こ、この台地に激突した。
上辺りだ。
台地ごと激しく揺れている。
...ガタン...
...ガッ...
...パラパラパラパラ...
岩が落ちてくる。
...ブシューーーーーーー...
彼方でハイドゥクの甲殻が割れ体液が噴き出している。
...ボウッー...
マジゥの蹴りが空を切る。
...ズドドドドドーーーーーーーーーー...
ハイドゥクが猛烈なスピードで後退する。
...ブウウウウウウーーーーーーーーーーーーーン...
マジゥが再び突進する。
凄まじい速度だ。
マジゥの突きがハイドゥクの肩を捉える。
...ドウゥーーーーーーーーーーーン...
再び黄金の龍鱗が吹き飛び甲殻が割れる。
ハイドゥクが突きを繰り出す。
...ズドドドドドー...
マジゥが爆速で後退する。
...ブウウウウウウーーーーーーーーーーーーーン...
ハイドゥクが突進する。
ぶつかる....
....
........
...ズズズズズズズズ...
....ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...........
....
マジゥの蹴りがハイドゥクを直撃する。
...バスゥッツ...
黄金の鱗が吹き飛ぶ。
...ブシューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
ハイドゥクの割れた甲殻から体液が噴き出す。
ハイドゥクがマジゥを掴もうとする。
マジゥが突きを繰り出す。
...ブウウウウウウーーーーーーーーーン...
ハイドゥクがかわす。
...ズドドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
マジゥが後退する。
...ブウウウウウウーーーーーーーーーーーーーン...
マジゥの突きがハイドゥクの胸を捉える。
...ドウゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ボウッー...
ハイドゥクの蹴りが空を切る。
...ブウウウウウウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
ハイドゥクが突進する。
また来る....。
....
........
...ズズズズズズズズ...
....ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...........
....
また、二体が激突する。
マジゥは押され二体は組み合ったまま数百ノード後退する。
再び組み合った。
力くらべをしている。
ハイドゥクが押し始めた。
やはりハイドゥクが力では優っている。
再びハイドゥクがマジゥの首を絞め始めた。
ハイドゥクの勝ちだ。
二度は無い。
今度こそ逃げられない。
ハイドゥクの怪力がマジゥを絞め始める。
やはりハイドゥクが最強の力を持つはずのシャガールの腕力を上回っている。
それも圧倒的に...。
もはや勝敗はついた。
....
...ズズズズズーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...
!!
どうした?。
何があった!?。
ハイドゥクの頭部の甲殻が割れ顔面から体液が噴き出している。
...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
ハイドゥクが両膝を大地に落とした。
マジゥの蹴りがハイドゥクの頭部に直撃した。
...ブゥゥゥゥアアアアアア...
マジゥの蹴りが空を切る。
...ズドドドドドー....
ハイドゥクが全力で後退する。
もはやハイドゥクには突進する力が残っていない。
...ブウウウウウウーーーーーーーーーーーー...
マジゥが突進する。
...ブウォーーーーーーーーーン...
ハイドゥクの突き。
マジゥはかわす。
...ブウウーーーーーーーーーーーオン...
マジゥの蹴り。
ハイドゥクがいなす。
...ブウウゥゥオオオゥ...
マジゥの蹴り。
ハイドゥクがいなす。
...ブウウウウオオオオオオオォォォォ...
マジゥが突く。
ハイドゥクが腕を掴み再びマジゥの首を絞め始める。
...ギリギリギリギリ....
....
...ズズズズズーーーーーーーーーン...
...
あぁぁ...
ハイドゥクはマジゥの蹴りを今度は胸に受けた。
ハイドゥクがよろめいている。
...な何ということ...
ハイドラの守護神がアンティカに倒されかけている...
...バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
マジゥの放電翼が光る。
孔雀の羽根のような放電翼は眩い青白い光で満たされていく。
マジゥの口には眩い光が充満している。
万事休すだ。
ハイドラの守護神は。
...コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
マジゥがハイドゥクに向けて閃光を放つ。
とどめだ...。
うっ...。
ま...眩しい...。
!!
マジゥの身体を光が貫いた。
...ドーーーーーーーーン...
...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
今度はマジゥが交互に膝を地面に落とした。
マジゥの左胸を黄金の矢が突き刺さっている....
ち、違う....。
そうじゃない...。
しゅ、し、しゅ、シュピーゲル...。
シュピーゲルドラゴンだ!。
3種の神器 最強の武器 シュピーゲルドラゴン!。
マジゥの左胸から物凄い勢いで体液が噴出している。
まるで滝のように。
...キーーギギーーーーーーゴゴガガガーーーーーーーーーーー...
マジゥのシーアナンジンが異音を響き渡らせる。
シュピーゲルドラゴンがマジゥの左胸を貫いた。
マジゥの巨体は小刻みに震えている。
遂にマジゥは急所が貫かれた。
ハドランを全て吹き飛ばすほどの爆発が起きる...。
逃げなくては...。
ま、ま、ま、間に合わない...汗。
ハイドゥクの最後の手段。
最強の攻撃。
ハイドゥクは槍の遣い手。
シュピーゲルドラゴン唯一の遣い手。
ハイドゥクがこの槍を扱う限りマジゥにはもはや勝ち目はない。
シュピーゲルドラゴンにはローレライもシールドも通用しないからだ。
マジゥの放電翼は輝きを失っている。
恐らく今の形態を維持するのに精一杯だ。
そして一度形態を落としたらこの身体ではもう二度とは這い上がれない。
ハイドゥクと69倍以上の力の差が出てしまう。
...キーーギギーーーーーーゴゴガガガーーーーーーーーーーー...
シーアナンジンの危うい音。
シュピーゲルドラゴンの直撃を受けている。
何者にも傷つけることの出来ないはずのアンティカのシーアナンジン。
ハイドゥクの攻撃そして3種の神器だけは違う。
マジゥは苦しそうだ。
容赦無くハイドゥクは、神器の槍を振りかざす。
..バッスーーーーーーーーーン...
...ゴゴ...
...ドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
シュピーゲルはマジゥが腕で防御をしようがしまいが容赦無く突いている。
その度にマジゥの鋼鉄の白い羽根が吹き飛ぶ。
容赦無くシャガール最強の戦士の無敵の装甲を打ち砕く。
...ドドゥーーーーーーーーーーン...
...シューーーーーーーーーーーーーーーー...
...ザシューーーーーーーー...
...バギィッ...
マジゥは防ぐ術すら無い。
かつてマジゥを護っていた神器アスバードドラゴンはマジゥの意志を守り今はアトラの少年を護っている。
...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー....
....ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー....
...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー.....
マジゥは必死で何とかししようとしている。
必死だ。
マジゥの頭の中にあるのはサンザのことだけ。
マジゥはもはや風前の灯。
マジゥが泣いている。
マジゥが泣き叫んでいる。
マジゥは、終わりだ。
シーアナンジンを突かれてしまった。
もう、どうすることもできない。
...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー....
...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
マジゥは、死ぬしかない。
サンザを助けることは叶わない。
マジゥの四つの目からは真っ赤な体液が吹きこぼれている
...ドウゥーーン...
ハイドゥクの体内から爆発音が響く。
...バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ....
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
....チカチカチカチカ...
ハイドゥクが粒子砲撃を放つ。
マジゥの左胸に刺さっているシュピーゲルドラゴン目掛けて。
万事休す。
...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
最期の咆哮を上げている。
まるで泣いているようだ...。
!!
マジゥが己の胸に右手を突き刺した。
...バシューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
マジゥの体液が空高く噴き上がる。
マジゥが自らの左胸に腕を突き刺した。
あぁ...。
マジゥは...マジゥは...自分の心臓を握り潰した。
ゴボォ...。
マジゥの目からも口からも血が噴き出している。
マジゥは自分の肉体を殺し再び闘う気だ。
!!
マジゥの心の声が....。
《...神よ...神よ...我に...我に力を力を与えたまえ。我が肉体と引き換えに、我が命と引き換えに、力を与え給え...我が弟、この星の希望、サンザを救う力を与え給え。我が肉体が滅ぶとも、我が魂が永遠に滅ぶとも、我に力を与え給え...》
無理だ...残念だが...無理だ...。
人が脳を無くして生きられぬように人が心臓を貫かれ生きられぬように...。
シーアナンジンを突かれた兵曹は生きられ無い。
ましてやシュピーゲルに突かれたシーアナンジン。
マジゥアンティカは間も無く己の炉とととに終末を迎える。
....
今、マジゥの肉体は完全に死んだ...。
...ゴボゴボゴゴゴゴ....ギーーーーーーーーーーーー...ギギ...ズゴゴゴ...
あぁぁ...マジゥのシーアナンジンが止まる。
闘いが終わる...
!!
....
...ドウゥーーーーーーーーーーーーーーンー...
....
激しい爆発音が。
シュピーゲルドラゴンが空中に吹き飛ばされる。
【...我が子よ...意のままに...魂の赴くままに...】
何だ?。
この声...。
いや、心に、マジゥの心に話しかけている...。
ナジマ?!。
ナジマなのか!?
...バババババッ...
...バババババババババババババババッ...
...ババババババババババ...
空が光る。
...キュイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーィィィーーーーーーーー!ゴゴゴゴーーーーーー...
す、凄まじい爆音...。
マジゥのシーアナンジンが息を吹き返した。
完全に蘇った!。
...バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
マジゥの放電翼が蘇る。
角に再び眩い放電が降り立つ。
...ボボボボボボボボボボボボボボボボボボ...
空の青いイプシロンが回転している。
激しく青い炎を纏いながら。
凄まじい勢いで回転している。
こ、これは...。
な、なんだ一体....。
さすがのコウソンライもシムキャストの上に仁王立ちになっている。
こんなイプシロンを見たことが無い。
まるで大車輪。
巨大な青い炎の。
天高く燃え上がる直径数十キロの大車輪。
光のマントラは激しく燃え上がる。
....キュイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーィィィーーーーーーーー!ゴゴゴゴーーーーーー...
更に激しくマジゥの高圧炉は回転する。
広大なハドランに響き渡る。
ハイドゥクが唖然としている。
ハイドゥクもこれを初めて見たのだ。
マジゥは何者かの力を借りている。
これはマジゥの力では無い。
ハイドゥクが右手を差し上げると光が空から降って来る。
シュピーゲルドラゴンだ。
マジゥは再び構える。
シュピーゲルはメロウの雷を纏いマジゥの放電を、エネルギーを巻き取る。
シュピーゲルドラゴンの力はこんなものでは無い。
マジゥが何度蘇ろうともこの惑星の3種の神器を侮ってはいけない。
シュピーゲルドラゴンが光を増した。
は、早い!。
目にも止まらぬ速さでマジゥの左胸を再び...。
...バババババッ...
...ま、眩しい!。
光る何かが空を横切る。
......
.....
...ズズズ...
...ズゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ゴゴゴゴォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
.......
......
赤い、赤い光がマジゥの胸に取り付いた!。
いつの間にか銀と真紅の巨大な盾がマジゥの左胸を護っている。
眩い光を放っている。
「ば、ばかな...。あ...アスバード...アスバードドラゴンが...。」
コウソンライがうなされるように呟く。
...アスバードドラゴンだ...
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
アスバードドラゴンのシーアナンジンも激しく回転している。
主人を護り主人に力を供給している。
もはや如何にシュピーゲルとてマジゥの炉は簡単に貫けない。
...ズドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーーーーーーーーーーン...
突然地面が真っ赤に光り焼けるような光の巨柱が、ハイドゥクを直撃した。
ハイドゥクは数百ノード吹き飛ばされた。
...ドドドドドドドドーーーーーーーーーーーーーン...
空の青いイプシロンからも光の巨槌が....。
...ズドドドドドドドドドーーーーーーーーーーーーーン...
ハイドゥクは直前でローレライを展開し空のイプシロンの雷爆を吹き飛ばす。
火を火で制している。
ついに遂にハドランの地が割れ始めた。
ボルガの水が大量に雪崩れ込む。
どうやら、空と地のイプシロン。
シカムとヒモンの波紋をマジゥが制した。
兵士達が、おかしくなり始めた。
無理もない。
ますます限度を越える光、恐怖、爆音。
耐えることが無い。
ここはもうもたない。
なぜ、コウソンライは落ち着いている?。
「なぜか教えてやろう。笑。愚か者め。赤碧帝のみならず我が帝国の神がこの闘いを見ておられるからだ。」
な!!。
神帝様が!?。
「カムイ。貴様を通してな。」
わ、私を通して...。
「気づかなかったのか?。愚かなパリサイめ。」
確かにそうだ...戦闘機のシールドだけでは...。
空には、ボルガの水が吹き上がり、巨大な竜巻を起こしマジゥを襲う。
激しい放電を伴いながら。
大地からマグマが吹き上がり全てのものを吹き飛ばしながらハイドゥクに迫る。
空から光の巨大な柱が次々と激しくハイドゥクを直撃する。
ハイドゥクが口から光を吐く。
マジゥも反撃をする。
お互いの制したイプシロン、粒子砲撃、嵐、稲妻、マグマ...激しい応酬が続く...。
...コーーーーーーーーーーーーーーー...
...ウォーーーーーーーーーーーーン...
...バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
...ブゥーーーーーーーン...
...コーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...ドドドドドドドドーーーーーーーーーーーーーン...
...コーーーーーーーーーーーーーーー...
..ズドーーーーーーン...
...ズズドーーーーーーーン...
...ズズズズズズ...ズズズズズズ...
...ドドドドドーーーーーーン...
...ドドドドドドーーーーーーーーーン...ズズズズズズ...
...ドドドドドーーーーーーン...
...ドドドドドドーーーーーーーーーン......ズズズズズズ......ズズズズズズ...
...ドドドドドーーーーーーン...
...ドドドドドドーーーーーーーーーン......ズズズズズズ...
...ドドドドドーーーーーーン...
...ドドドドドドーーーーーーーーーン...
...ドドドドドーーーーーーン...
...ドドドドドドーーーーーーーーーン...
...ドドドドドーーーーーーン...
...ドドドドドドーーーーーーーーーン...
...コーーーーーーーーーーーーーーー...
...ウォーーーーーーーーーーーーン...
...バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
...ブゥーーーーーーーン...
...コーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...コーーーーーーーーーーーーーーー...
...ズドーーーーーーン...
...ズズドーーーーーーーン...
...ズズズズズズ......ズズズズズズ...
...ドドドドドーーーーーーン...
...ドドドドドドーーーーーーーーーン......ズズズズズズ...
...ドドドドドーーーーーーン...
...ドドドドドドーーーーーーーーーン......ズズズズズズ......ズズズズズズ...
...ドドドドドーーーーーーン...
...ドドドドドドーーーーーーーーーン......ズズズズズズ...
...ドドドドドーーーーーーン...
...ドドドドドドーーーーーーーーーン...
...ドドドドドーーーーーーン...
...ドドドドドドーーーーーーーーーン...
...ドドドドドーーーーーーン...
...ドドドドドドーーーーーーーーーン...
ハイドゥクは、遂に倒れた。
シールドを張ることはおろか、ハイドゥクは起き上がることが出来ない。
全ての甲殻が割れ鳳凰の角が折れている。
莫大な量の体液が溢れている。
ハイドゥクの両腕は引きちぎれかけている。
...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
...ズズズーーーン...
...ズズズーーーン...
...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
...ズズズーーーン...
マジゥは、西に向かい進み始めた。
倒れているハイドゥクは、止めることが出来ない。
...ズズズーーーーーーーン...
マジゥはゆっくりとハイドゥクの横を通り過ぎる。
マジゥはハイドラの守護神を倒した。
悠然と西に向かう。
今ならまだ間に合う。
サンザを救うことが出来る。
マジゥが勝った。
...ズズズーーーーーーーーン...
しかし、なぜだ?。
コウソンライ?。
おまえはなぜそんなに落ち着いている?。
!?
おかしい...。
地のイプシロンが消えている...。
...ズズズーーーーーーーーーーーーン...
...ズズーーーーーーン...
マジゥが西に向かう。
!?
...ボボボボゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
西の方角から、またしても巨大な咆哮が。
「やっと来たか。笑」
コウソンライ!。
何だ!?。
一体、何が来たんだ!?。
「見ろ!。ハイドゥクが立ち上がるぞ!。」
兵士が叫ぶ。
何だ一体...。
...ボボボボゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
...ボボボボゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
何の鳴き声だ...!?
「マジアだ!。」
な、何だと!?
「はっはっは。挟み撃ちだ。愚鈍な男よ。カムイ。そんなことも分からぬのか貴様は。笑」
コウソンライが笑う。




