ハイドラの狂人59
...ズッバーーーーーーーーーーン...
水が爆発するように噴き上がり空に拡散する。
マジゥはボルガ大河に足を踏み入れた。
...キェーーーーーーーーーーーー...
彼方で大気の悲鳴が反響する。
流体鏡面装甲リノリュートが大気と擦れて出す音だ。
ヒステリアだ...。
ヒステリアが戻って来た。
空気か歪んでいる。
...ブウゥゥゥゥゥーーーーン...
...キュヮーーーーーーーーーーーーー...
第二太陽ゼノンの下により眩い大きな輝きが見える。
巨大な航空戦艦が怪物を始末しに戻って来た。
120mを越える怪物を。
ヒステリアの艦首迫撃放射は直接マジゥを狙っている。
それに呼応し青い巨人の周りを薄い緑の光が覆う。
古い蛍光灯が点灯するように。
...ババババッバババババッ...
...ババババッバババババッ...
ローレライだ。
マジゥはヒステリアの存在に気づいている。
コウソンライの兵達は慌てて腕や袖で目を覆う。
私も両手で目を庇った。
コウソンライだけは動じない。
眩しい。
ヒステリアの迫撃放射で私の手やまぶたが桃色に光っている。
私達には当たりまえの迫撃放射や粒子放射は遠い大陸の国々から終末の剛火と言われている。
....ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...
...ババババッ...バババババババババババババ...
...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...
...ボーン...
...ゴゴーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ズズーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
迫撃放射は緑の光 ローレライの表面を流れ界面で爆発を続ける。
爆発が次々と起こり黒煙や炎そして火花を噴き上げていく。
まるで巨大な爆竹のように。
...
...ブウウウウウウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
マジゥの放電翼が焼けるように光を放つ。
...コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
マジゥが光を吐く
光の柱は彼方に消え去った。
ヒステリアがかわした。
1200mの巨体を操って...。
...ブウウウウウウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
マジゥの放電翼が再び光を纏う。
...コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
粒子放射が空を切る。
「...!」
将校が口を開く。
コウソンライは手で制した。
...ウィーーーーーーン...
..ウィーーーーーーン...
....ウィーーーーン...
..ウィーーーーーーーーン...
...ズドーーーーーン...
...ズドーーーーーーーン...
...ズズーン...
...ズドーン...
...ズドーン...
マジゥの放った閃光の上から幾つもの光の矢がマジゥに放たれる。
...ボウーン...
...ドコーーン...
...ドドドド...
...ドドーン...
...ズズーン...
無数の光の矢は緑の光を捉え激しく炸裂する。
ヒステリアの放った全ての砲撃がマジゥを捉える。
...ブウウウウウウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
マジゥの放電翼が焼けるように輝きを放つ。
...コーーードドドドドドーーーーーーーーーン...
『...被弾!。被弾!。右舷第二推進器に被弾!..』
...ズドーーーーーン...
...ズドーーーーーーーン...
...ズズーン...
...ズドーン...
...ズドーン...
間をおかずヒステリアが反撃する。
上弦下弦全ての主砲のが火を噴く。
閃光の嵐が吹き荒れる。
緑のエネルギーシールドがマジゥを護っている。
ヒステリアはマジゥの周囲を大きく旋回した。
空気が歪みヒステリアは徐々に姿を見せ始めている。
被弾したダメージは小さくない。
「...チッ!。流体装甲を...。」
コウソンライが舌打ちをする。
「おい。あれを見ろ!」
「なんだ...。あれは...。」
若い兵士達が北西の空を指差す。
!?
いつの間にかザザルスの方角。
台地の背後に幾つもの大きなキノコ雲が立ち上がっている。
「...コウ様。こ、このままでは...。」
「...ヒステリアに伝えろ。シフトを変えろと。」
「しかし...機密が...。」
「構わん。赤碧様はご許可下さる。」
「ハッ!。」
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
ヒステリアはその巨体をまるで小型機のように傾け旋回している。
ヒステリアの操舵手はアマルの174万の艦隊の頂点に立つエースパイロット キースだ。
世界中でキースに対抗しうる操舵手は恐らくあのアトラの女しかいない。
...バッシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...ドドーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ボホーーーーーーーーーーーン...
...ドッシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...ボーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ドブーーーーーン...
ヒステリアがマジゥの周りを大きく旋回しながら自らの巨大なパーツをボルガに落とし始めた。
大きな水柱が吹き上がり煙のように消え去る。
水の柱はまるで静止画のように動かない。
曲線の美しいメタリックピンクに輝く船体はとうとう厳つい剥き出しの金属の塊になった。
アマル艦隊174万の頂点に君臨する女王はその豪華な衣を惜しげも無く脱ぎ捨てた。
剥き出しになった艦首迫撃砲、主砲、副砲、ミサイル発射管、レーザー、カノン...。
ヒステリアは兵器だらけの正体を露わにした。
その細長い巨体はまるで金色の鬼ヤンマ(トンボ)だ。
角ばった重厚なその風体は勝つために手段を選ばないアマルの旗艦そのものだ。
もはや隠れたりかわしたりはしない。
攻撃力で敵を凌駕し耐久戦で生き残る覚悟だ。
両翼、尾翼部を中心に大小様々な粒子エンジンが36機取り付けられている。
そのスラスターが目まぐるしく動いている。
二重のステルス反射装甲を捨てたヒステリアはその巨体にも関わらずまるで軍艦鳥のように激しく軌道を変える。
...コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
マジゥが予備動作無く、光線を吐く。
ヒステリアがバレルロールをしながら急旋回をしてかわす。
まるで小型機の曲芸飛行だ。
...バスゥン...バスゥンッ......
...バスゥン...バス...バスッ...
...バス...バス...バス...バス...バスッ...
...バスゥン...バスゥンッ......
...バスゥン...バス...バスッ...
...バス...バス...バス...バス...バスッ...
...バスゥン...バスゥンッ......
...バスゥン...バス...バスッ...
...バス...バス...バス...バス...バスッ...
同時にヒステリアは上弦後部から無数のミサイルを発射する。
...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴ...
ハドランの彼方でヒステリアが放つミサイルの一撃一撃が空がはち切れるほどの爆音を放つ。
その衝撃波の一つ一つが直接脳や胃を殴りつける。
『...こ、こちら、ザザルス!。イプシロンがっ...。イプシロンがこちらを...。イプシロンが...あぁぁ。...』
!!
「チッ。」
コウソンライがまた舌打ちをする。
マジゥのイプシロンはヒステリアではなくザザルスの我が軍を攻撃していた。
ヒステリアの全砲撃が火を噴く。
...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴ...
ヒステリアの上弦下弦の全ての主砲がマジゥを捉えている。
凄まじい火力。
赤土は沸騰しボルガが入道雲のような水けむりを噴き上げる。
水が猛烈な勢いで蒸発する。
...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴ...
マジゥのローレライに着弾するヒステリアの全ての主砲は、この広大なハドランの大気を真っ黒にするほどの爆炎と黒煙を噴き上げ続ける。
ヒステリアがマジゥの至近距離を飛び去る。
たった一隻でトルメキアの艦隊を全滅させたヒステリア。
一撃で山脈を吹き飛ばす主砲。
ローレライを纏ったマジゥは動くことができない。
台地が崩壊していく。
世界最強の戦艦は兵曹に中々ダメージを与えられない。
女王の捨て身の闘いは続く。
女王は恥を捨てマジゥの至近距離まで近寄り攻撃を加える。
世界最強の戦闘艦が自分よりも遥かに小さな兵曹の周りを周っている。
ヒステリアが大きいため台地が小さく見える。
...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴ......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ボウン......ゴゴン...ドゴン...ボボウン......ゴンゴーン...ドガン...ドゴーーーン...ボウン......ゴ...
ヒステリアの主砲の集中放火が続く。
衝撃波で倒れる兵士が後をたたない。
「ゲホッ!。ゲホッ!。」
「ゴホッ!。」
ここまで爆煙が届く。
広大なハドランが黒煙で充満する。
煙の中でマジゥの黄色い四つの目だけが不気味に光る。
...グゥウオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォイィィーーーーーーーーーー...
黒煙を引きずりながらヒステリアが飛び出した。
また急旋回してまたマジゥの元に向かう。
...ガガガ...ボンッッ...
ヒステリアの尾翼の一つがGに耐え切れず吹き飛んだ。
その巨大なパーツは回転してまたボルガに水柱を噴き上げさせた。
...ググゴゴゴーーー...
...ググゴゴゴーーー...
ザザルスの方角から咆哮が...
マジゥが応える。
...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
激しい音圧。
光からも音からも逃げられない。
耳鳴りがする。
...バリバリバリバリバリバリバリバリバリ!バリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
マジゥの放電翼とその鹿のような銀色の角が焼けるような光を纏う。
ローレライが一層激しく光を放つ。
マジゥの10倍の大きさのヒステリアが進路を変えた。
まるで吸い寄せられるように。
!!
大地がたわむ。
...
...ツッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...
一際大きな爆発が。
大地が裂けないのが不思議なくらいだ。
ヒステリアの左翼がローレライに接触した。
...チカッ...
焼けるようなフラッシュ。
...ドドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
ヒステリアの船体が粉々に吹き飛ぶ。
...ゴーーーーーーーーーーーーーーー...
ヒステリアの巨体は墜落し始めた。
反重力推進器をやられた。
『...左舷メインスラスター全て停止!。左舷メインスラスター全て停止!。総員対衝撃防御!。総員対衝撃防御!。繰り返す...』
...ブウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
マジゥの放電翼が光る。
... コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
マジゥの吐いた閃光がヒステリアを直撃する。
....ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーン...
ヒステリアは音を立てボルガの水面めがけて墜落して行く。
...ブウウウウウウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
マジゥが粒子線を吐く。
...ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーン...
再びヒステリアを直撃。
次々とヒステリアの反重力推進器を吹き飛ばして行く。
ヒステリアは操舵手の力で何とか体勢を保っている。
奇跡だ。
「ここまでか...。」
コウソンライが呟く。
女王は北東に進路を向け必死に逃れようとしている。
カマキリに身体を喰われた鬼ヤンマのように。
辛うじて水面から離れている。
マジゥは攻撃を緩めない。
再び放電翼が光を放つ。
...ブウウウウウウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...コーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
この状況でもヒステリアはバレルロールをしてかわす。
墜落しかけた1200mの巨体が。
奇跡だ。
ヒステリアは必死にボルガの対岸に向かい逃れる。
...ドウゥーーン...
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
マジゥの体内からだ。
...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
...バリバリバリバリバリバリバリバリバリ!バリバリバリバリバリバリバリバリバリ!バリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
マジゥは全身を放電させながら水に入って行く。
角、放電翼、ローレライ...眩しすぎる光だ。
ヒステリアにとどめをさす気だ。
『...こちらザザルス!。アギラ軍 消滅!。イプシロンが!。イプシロンが!。』
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
マジゥの炉が激しさを増す。
『...サンザがっ!。サンザが拘束鎖を引きちぎります!。あぁぁっ!。...』
「なんだと?。」
コウソンライはシムキャストの上に立ち上がった。
かなり動揺している。
今度ばかりはコウソンライも後がない。
マジゥは肩までボルガの水に浸かっている。
マジゥの口は眩い光を灯している。
ヒステリアは終わりだ。
!?
ボルガに巨大な影が!。
魚影だ。
凄まじい速度だ。
川岸が雪崩のように崩れていく。
マジゥよりも大きい。
何だ!。
リューイ?。
伝説の人魚族の守護神リューイ!?。
実在した...。
巨大な魚影がマジゥに向かって進む。
もの凄い速度。
ボルガの多量の水が激しく沸き立つ。
速度は時速1000ノードを超えている。
...
...ズズズズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...
魚影が...。
巨大な魚影がマジゥに激突した。
水中で...。
水が噴き上げ何も見えない。
衝撃波は台地を次々と崩して行く。
ボルガ大河から流れ出た津波は一気に辺りを飲み込む。
我々の台地の下四合目までボルガの水で溢れている。
ボルガはマジゥの真っ赤な体液で染まっている。
ボルガの水は収まらない。
魚影もマジゥも姿を消した。
コウソンライはシムキャストに立ったままボルガの水面を見ている。
いや...ここにいる誰もが。
荒れ狂うボルガの音しか聞こえない。
ボルガ大河から見ればマジゥも魚影も小さな存在。
「見ろ!。」
兵士の1人が空を指差す。
...ゴゴゴゴ...
青いイプシロンが...。
再び姿を現わす。
マジゥは生きている。
赤い体液が浮き上がる場所。
ゆっくりとボルガの岸に移動して来る。
...ザザザーーー...
...ズドーーーーーーン...
巨人が少しずつ水面から姿を現わす。
青い巨人。
全身赤い体液でまみれている。
胸の甲殻が割れて無くなっている。
右胸に大きな穴が貫通している。
...ズドーーーーーーン...
大地を踏みしめる。
動きは緩慢だが巨人は全力で水から退避している。
...ドウゥーーーーーーーーーーーン...
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
高圧炉の音だ。
...ゴゴゴーーーーーボボボゴガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
マジゥが咆哮をあげる。
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
体液の噴出は静まり肩や腹の甲殻が伸びて行く。
胸の穴を塞いでいる。
...ズドーーーーーーン...
マジゥは、岸に上陸した。
返ってくるボルガの水に押され中々前には進めない。
再び黒い魚影が。
ゆっくりとマジゥの方に迫って来る。
黒い魚影は水面近くに浮上した。
...ズザーーザーザザザザザ...
魚影は浅瀬に近づくに従い形態を変える。
岸まであと500ノードの所で停止し姿を消した。
「お、おい!あれ!。」
また、兵士の1人が空を指差す。
黄色いイプシロンが西の空に。
数十キロに渡る巨大な波紋。
青いイプシロンと対峙する場所に。
...ボーーゴゴゴーーーーグガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
怪物の咆哮が...。
マジゥとは別の方角から...。
...ザザーーーーーーーーーーザザザザザ...
「み、見ろ!」
魚影のあった水面から出てくる。
銀色の巨大な一本の角。
恐竜のような金属の角。
三つの目がメロウの黄色い光を放っている。
ひたいにある目は円形。
他の二つの目はマジゥと同じく横に長い多角形だ。
...ズザーーザーザザザザザーーーーーーーーー...
微かに黄色い金属の巨体。
極限まで金属にも見える筋肉が隆起している。
マジゥと同じ銀色の牙が見える。
「やっと来たか。笑」
コウソンライは、安心してシムキャストの玉座に倒れ込んだ。
...ズドーーーーーーン...
水中を黄色い巨人が歩いている。
魚影は巨人に姿を変えた。
...ズザーーザーザザザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーザザ...
黄色い巨人の姿が少しずつ露わになる。
背中の放電翼が眩い光を放つ。
マジゥのそれとは違い多角形の対角線のような形。
100mはゆうに超えている。
...ドウゥーーン...
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
高圧炉の音だ。
...バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
黄色いイプシロンからの光を全身に受けている。
身体の周りでプラズマ放電が起きている。
...ボーーゴゴゴーーーーグガガガアァァァーーーーーーーーーーーーーーー...
「...ハイドゥクだ...。」




