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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
135/364

ダヌアの空に3


....冷たい水...汲んで.....

......今....たぜ......

.....無理して.....んだ.......

.....ュウ.......

......リュウ.....

...リュウ...

リュウ!


プロスティ...?


ハッ!


あれ!?


「ヤバっ!。」


「リュウ!。」


プロスティだ。


「プロスティ!あの、あの、俺...。」


「...ありがとう。リュウ。..あたし、あたし、怖くて何も...何にも...。」


あぁ...そうだ...俺、志願したんだった...........つら。


「大丈夫だよ。プロスティ。俺どうした?。」


「リュウ!大丈夫か?。」


「あぁ。何とか。」


「おまえ、倒れたんだよ。」


「おまえ、凄い度胸だな...アンヌ大佐殿に、直接志願するなんて。」


あぁ...そうだった...。


「ごめんなさい。ホントは、私が行かなきゃいけないのに。」


え?!。


「ダメだよ!ジャミーなんて前線なんてプロスティの行くところじゃない!俺、大丈夫だったよな!?パイロットになったよね!?。」


ダイダもケントもうつむいて、うなだれてる。


「なぁ!おいっ!。」


「あぁ...。そうだよ。ごめんな。俺も怖くて....怖くて。ごめん。」


「おい!みんなで逃げようぜ?。」


「ダメ!。ダイダ。リュウには家族がいるの。」


「....。」


やば。すっごく空気重くなってる。


「大丈夫だよっ!笑。生きて帰って来ればいいんだろ!?笑。」


「..でも....。」


「大丈夫だって!笑。これでも俺、けっこう悪運、強いんだから。笑。」


「だってリュウ!。」


「大丈夫だよっ!さ、訓練、訓練って...........。あれ?おまえたち何でここにいるの?。」


「今日は、休みだぜ。」


「え?。」


「ショウンがさ、『今日は、ハイドラの独立記念日だ。RSS隊(少年兵)は全員お休みを頂いた。アンヌ大佐殿に感謝しろっ!』だって。笑。」


「でさ『分かっていると思うが、逃げた者は、銃殺だ。自分の責任を放り出して逃げたら誰かが死ぬかもしれない。お前たちは監視されている。逃げられない。家族のいる者は家族も連帯責任だ!。いいな!?。』....だってさー。笑。」


「似てるー。笑。ウケる。笑。」


「何かいちいちキツイよね。あいつ。」


「ここのRSSは優秀だ!とか言ってるくせに、全然俺たちのこと信用してないよな。」


「ショウンのことは置いておいて!みんなで、行こうぜ!祭り!。」


「バカ、それこそ銃殺だぞ...。」


「ザナデインまでは行っても良いってさ。ショウンが言ってたよ。」


「おまえ、あんま呼び捨てにすんな。聞かれたらヤバいぞ。」


「笑。確かに。」


「リュウ大丈夫?。」


「良し。行こう?。」


「よし、決まり!。」


「30分後に12番ゲート前に集合!。」


「おおっ!。」


_____________________________________


ザナデインは港街だ。

軍の施設や航空桟橋もある。


漁師、施設や港で働く人、軍人、コールガール、ブローカー、マフィア....あまり、がらは良くない。


でも、海は真っ青で、航空桟橋から見る景色はとても綺麗だ。


ザナデイン港の周りは、遊園地のようになってる。


古いけど大きな観覧車や、メリーゴーランド、コーヒーカップ....。


いつも人で賑わってる。


遊園地に溢れる、古い色褪せた光と、安いのんきな音楽。


酔っ払って歩く人、じゃれあいながら歩くカップル。クッキーを売ってる人。


独立記念日には、この広い港湾のクルーザー地区で大きな花火が打ち上げられる。


外からザナデインの花火を見に、大勢人がやってくる。


満員電車みたいに。


でも、今年は、アルバーンが戦地になりそうなので、あまり人は来ないだろうな。


ザナデインでは、時々オーロラが見える。

2つの太陽風と、この星の磁場のせいで。


それから、赤、青、白、黄、緑....綺麗な色の識別灯を派手に輝かせたハイドラ軍の航空軍艦。


桟橋に離着陸する。


第七艦隊は、デューンの領土、ゾーグ平原まで行くから、今年は来ないかな....。


今日は、出店が沢山出てる。


今風の柄の民族衣装を着た若いカップルたち。


涼しそう...。


お金持ちの子達だ。


いいなぁ...。


のんびりで。


麦種を飲んで歩いている人。

果物に飴をまぶしたお菓子を食べてる女の子。


あ、他の部隊のRSSがナンパをしてる。笑。


「リュウ!。10ギルダ貸して!。プロスティにあれ取ってやりたいんだ!。」


ケントは、射的をやっている。


大きなぬいぐるみを狙ってる。


キノコの。


大きな大きな椎茸のぬいぐるみ....。


...。


それ??。汗。


ケントは、センスないけど、その不器用なとこが本当に優しいなって思う。


「はいよー。」


「わりぃ。俺今札しか持ってなくて。後で崩す。」


「いいよ。」


プロスティは、かき氷を食べてる。


プロスティ。民族衣装着たら綺麗だろうな。


可愛いだろうな。


やだ、見ないで....なんちゃって。


髪の毛を下ろして衣装着たら、


この街のどんな美人よりも、きっと綺麗だよ。


俺かき氷になりてぇわ。笑。


「なあに?笑。」


プロスティが言う。


「い、いや、な、なんでも....。」


「なぁ!凄いのがいるぜ!ちょっとこっち来てみ!。」


ダイダだ。


「早く!早く!。」


「どうしたの?。」


「いいから、早く!。凄いから!。」


ダイダは必死に手招きをしている。


どうした?。何があった?!。


冷めてるダイダが騒ぐなんて。


人混みをかき分ける。


プロスティが人混みに押されないように、かばいながら...。


「ほら!。なっ!。すげぇだろ!。」


なんだ、虫屋さんか...。


子供達が、装甲虫や、鉄鋼虫を見ている。


確かに珍しいけども....。


「ちげぇよ!。こっちこっち!。どこ見てんだよ!。笑。」


え?。


ダイダの指差すショーケースには、黒い粒が飛び跳ねてる。


なんだ?。


「何か跳ねてる。気持ち悪い...。」


プロスティは引いてる。


「君たち。ハイドラ軍の人?。」


出店の若い男の人が声をかけて来た。


「はい。そうです。」


「じゃ、分かるよな?跳ねてんのは、種だ。これ、クヌドーンだ。下見てみろ。緑の。」


「きゃあ。」


プロスティが悲鳴を上げた。


緑色の小さな人間のようなものが、蠢いている。小さな人間は目が無い。


「すげぇだろーー!?。なー!?。」


ダイダは、ショーケースに張り付いて見ている。


小さな人間達は根で繋がっている。可愛らしくも見えるが、何か苦しそうだ。


...そして、やっぱりキモい。


ギーーー。


「きゃあ!。」


クヌドーンが鳴いた。


子供達は、鉄鋼虫を放り出してクヌドーンを見に来た。


...ゲーーー、気持ち悪ぅぅ。...


...何だこれ!...


...人間の形してるー、この虫。...


...うわーーん。泣。変なのがいるー。...


バンバン!


「こら!叩くな!。...これが、ケラムに出て巨大化したのがオライドーンだ。こいつは可愛いだろ。笑。あの時は大変だったな。軍にはホント助けて貰ったよ。」


出店の人はこっちを向いて言った。


「何か苦しそう。」


ギーーー

ギーーー

ギーーー


何匹かのクヌドーンがショーケースの透明な壁に手を叩きつけて何かを言っている。


「こいつは、寿命が短いんだ。外に出たいんだな。この植物が何で人間の形をしているのかは分かんないけどな。ほら。餌だ。」


出店の人は、クヌドーンに干した小魚を与えた。クヌドーンは大人しく食べ始めた。


クヌドーンがケラムで進化したオライドーンは、一つ目の巨人。人間に似ている。でも、植物。人喰い植物だ。体長が10m以上ある。茶か緑の人間みたいなのに、全員が根で繋がってる。


「おーーい!。取れた!。ほら!。ってか、花火始まるぞー!。」


ケントが、坂の下から大声で叫んでいる。


「お兄さん。ありがとう。」


「ん?もう行くのか?。祭り、楽しんでな。」


出店の人は、手を上げて挨拶をしてくれた。


「行こう。プロスティ。ダイダ。」


「うん。」


「すげぇな...。何でこんな生き物がいるんだろ。」


ダイダは、立ち上がって、歩きながら剥き出しの白熱灯で照らされた、クヌドーンのショーケースを、何度も振り返った。


「早く!。早く!。場所取られちゃうよ!。」


「大丈夫だろ?。今日は。戦時中だから、空いてるよ!」


「違うんだよ。良い場所があるんだよ!。早く!。」


ケントが坂の下から必死で手招きをしてる。


僕達は、走り出した。石でできた坂道を下り、ケントに追いつくと、ケントは普通に走り出した。


そんな良い場所なら、俺だったらプロスティと2人で消えるけど。


ケントはそういうことしない。

だから、俺もケントを悲しませたくない。

なんて、あいつイケメンで、性格も頭も良いから、俺じゃ勝ち目ないんだけど。笑。


「どこに行くの?ケント。」


プロスティが聞いた。


「あ、そうだ。これ。」


ケントは走りながら、プロスティに巨大な椎茸のぬいぐるみを渡した。


「あ、ありがとう....」


プロスティは、困り顔。これ、何で私に?って言いたそう。


「ケント!。ケント!。もっとゆっくり行こうぜ!。」


ダイダは、ソース焼きを両手に持って、肘に飲み物の入った袋を下げて走りにくそう。


「一個かせ。おまえ二個も買ったの?。」


僕はソース焼きを1つ持ってやった。


「俺、その袋持つよ。」


「みんなのだよ。これも。」


「えーー!。麦酒!。」


「やばいかな?。」


「さすがダイダ様。」


ケントが飲み物を持ってやった。


プロスティは、大きな椎茸のぬいぐるみを持ってるので、もう何も持てない。笑。


僕達は、ケントの後を走った。

下に見下ろす、港の明かりが綺麗だ。

遊園地の観覧車がゆっくりと回っている。メリーゴーランドの音がかすかに聞こえる。


風が涼しい。微かに虫が鳴いている。


〜ドン!ジャジャーン!ジャーン、ジャン!ッ!ジャララララ ラーラララー!〜


遊園地の辺りで、大音量で音楽が流れ出した。


「あ!。今日ブルースジョーが、ライブやるらしいぜ!。」


「え?。早く言えよ!。」


ケントが突然止まったから、みんな追突した。


「ば、バカ、急に止まるな!。」


ソース焼きの一部が、ダイダにかかった。


あははは!


「何やってんのおまえ。笑。」


ぷっ。笑


「何だよ、止まる奴が悪いだろ?。」


「じゃあここでいいかぁ...。」


「私も聞きたい。」


「まぁ、行ってみようぜ。もうすぐだから。多分あそこでも聴こえる。」


「ホント?。」


「急ごうぜ!。」


「おう。」


「オッケー。」


「ラジャー。」


〜おまえは、傷つきすぎてもう泣きつくしたわっていって、人を押しのけてストリートを歩いて行った〜


「始まった!。」

「わ!急げ!。」


〜荷物を詰めて、1人で乗りたいって、おまえは、何もいらないし、だれも横にいて欲しくないって〜


「良く聴こえる!。」

「かっけーーー!。」


〜タフに歩いて見せるけど、baby、だけど、見えないで歩いてるんだ。絆は結ばれてるんだ。結ばれてるんだ。絆は。〜


「当たりだな俺たち。」


「本当は、ダヌア基地に来てくれるつもりだったんだって。私たちのために。」


「ホントか?プロスティ?!」


「俺たち3人のために?」


「違うよ。笑。そんなはずないでしょ。笑。基地のみんなに。特にRSS隊にだって。」


「マジで?。俺たちってことじゃん?。」


「ブルースがどうしても来るって言ったんだって。」


「誰に聞いた?。」


「ショウン少尉よ。」


「え?。それでかぁ。!」


「やぁるう!ショウン。」


「それでも、呼び捨て。笑。」


「ぎゃっはっはっは!。」


「ちょーウケる!。」


ケントは立ちどまった。


「着いたぜー。」


「えぇ?ここ?大丈夫なの?。」


「ちょっと中庭に入るだけだよ。」


今は使われていない、軍の通信基地だ。


みんなでフェンスを越えた。


よいっしょ。

手をかして。

よいしっょ。


「何だよ。普通の...。」


「まぁ、座ってみろって笑。」


「....。」


「わ。ふかふか。意外。」


「おい!港。ザナデイン全部見渡せるぜ!。」


「上見上げてみな!。」


「え?.....あ!。うっわー!。すげぇ!。何これ!。すげぇ星!。」


「この曲好き!。」


「あ、俺も。チャートではパッとしなかったけど。」


〜おまえの1番のドレスを着てbaby。それから。髪の毛をアップにして。ダーリン。いいかい?だって今日はパーティがあるんだ、ハニー〜


「ほら。ソース焼き。」


「麦酒いれるか?。あれ?。おまえコップは?」


「コップとかいらないじゃん。回し飲み、回し飲み。」


「プロスティが。」


「あそっか。」


「平気だよな?」


「うん...。まぁ、平気かな。」


「じゃ、プロスティだけこれ一本あげちゃおう。」


「え?こんなに飲めないよ。」


「じゃ、いらなくなったら言って、残り俺が飲むから。」


「うん。ありがと。」


「何でだよ。残り俺が飲むよ。」


「あ、はいはい。じゃ、俺とダイダで間接キッス〜。笑。」


「いいじゃん。男同志。」


「俺、リュウなら平気。」


「何の話だよ。」


「笑。」


「星が綺麗だなぁ。」


「え。何これ。美味しいーー!。」


「だろう?。俺のソース焼き。」


「おまえのって。笑。うーまっ!美味いです。ケントも食ってみ?。」


「どれどれ。ん?んん。んん。!」

「な?。」


「ちょー美味え!。」


僕は立って港を見下ろし叫んだ。


「ちょーー!。美味えーーー!。」


「ばか。リュウ。笑。笑。」


あっはっはっは。


「何やってんの?笑」


〜 俺は港で週に5日働いてる。girl。荷物をドックに積む仕事さ。やっと稼いだ金を持って、あの娘に会いにブロックを下るんだ〜


「風が涼しい。」


「気持ちいいー。」


「ずっとこうだったら良いのにな...。」


「それな。....戦争終わったら、また、元の生活に戻れるよ。」


「今となっては、天国だったな。」


「毎日眠いし、飯はまずいけど。」


「ね。不思議なくらいまずいわ。」


「プロスティ。そこ?。」


「いやいやいや。」


「任期もあと2年切ったね。あ、ダイダはあと一年半だよな?。」


「俺たち任期終わっても、ずっと友達だからな!。」


「当たり前じゃん!。」


〜リトルガール、結婚したいよ。リトルガール君と結婚したいんだ。そうさ。リトルガール。君と結婚したいんだ。〜


「リュウそれ頂戴?。」


「あ?これ。はいよー。」


「出ました。はいよー。笑。」


「いいだろ?笑。」


「リュウ私も。」


「はいよ...あ!」


「はいよー。笑」


「はい。みんなで一緒に?!」


『はいよー!』


わはははは。


ウケる。


あっはっはっは。


〜本当の愛ならうまくいく。でもおとぎ話じゃない。夢を叶えてあげるとは言えないけれど、手助けすることはできる。リトルガール、君と結婚したいよ。リトルガール君と結婚したいんだ。本気さ。〜


「いい歌ー。最高。」


「みんなでゲームしようぜ。」


「どんな?」


「これ。」


「これかー。」


「だめ?」


「いいよ!やろ。」


「んでもって、これ。」


僕はさっき買ったものを出した。


「水鉄砲?!」


「そう。ほら。」


ピシュ。ピシュ。ピシュ。


「うわ。冷てぇ。」


「負けた人これ。」


「良しやるよ。」


「んーー2!。」


「んーー8!。」


〜 楽しい時も、悲しい時もある。誰かを待ち続けるなんて賭け、良くないさ。恥ずかしがらずに君への愛を纏うよ。誇りに思う。もし、君が僕の名前を名乗ってくれたなら...〜


...ゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あ!ハイドラの航空艦隊キターー!。」


「派手ーー!。」


「でけぇ!。眩しいっ!。」


「あれ、ブルース、聴こえなくなっちゃった...。」


「やっぱ凄いね。本物の音は。」


〜....俺はベッドに倒れ込み、.....同じことの繰り返しだって、.....〜


「あ、また、キターーー!。」


「うわ。今度の派手!。」


「綺麗ーー。」


「うわーーーまたまたキターー!。」


「わぁ、凄い数。続々と来る。」


「コンサート終わるの待ってたのかな?。」


「まさか。笑。」


「あ、でもそうだ。ほら。20:00。」


「今日、独立記念日だから?。」


「去年は違かったよ。あんのかな?そんなこと。」


「そうかも。だってザナデインまで来て良いなんて。こんな時に休みなんて....。」


「優しいな。」


「かもな。感謝。」


「ほら、あそこまで連なってる。綺麗だなぁ。すげぇ。」


「わ。てか、もう2時間も経ったのか。はっや!」


「ブルース聴こえなくなっちゃった。」


「なぁコーヒーカップ乗りに行こうぜ?。」


「何だよ急に。笑。」


「私メリーゴーランド乗りたーい。」


「俺も。」


「じゃ、行くかぁ。ほら、もう一回星見といて。」


...ゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「また来た!」


〜バカな奴らと一緒に居たくなくて、俺たちは、教室を飛び出した。学校で習ったことより、3分の曲から多くのことを学んだ〜


さっき来た坂をみんなで下ってる。ダイダ、足速い。笑。さっきのお返し?。


「おーーい!。おまえらー!。早く来いよー!。」


〜そうさ。俺たちは誓った。そしていつも忘れない。撤退も、baby、降参もない〜


『撤退も、baby、降参もない〜』


「おっ!。みんな知ってるね!。」


「笑。」


〜嵐の夜にいる血の通った兄弟よ。撤退も、baby、降参もない〜


『嵐の夜にいる血の通った兄弟よ〜撤退も、baby、降参もない〜』


大合唱だよ。笑。


遊園地を歩いてる人みんなが僕たちを見てる。構うもんか。笑。


遠くに、倉庫の街が見える。広大な敷地に、灰色、茶色、緑、いろんな色の大きな倉庫たち。大きな海用のタンカーが幾つも接岸してる。


倉庫街の真ん中の拓けた広大な場所に、特設ステージが出来てる。凄い人、人、人。みんなブルースを見に来てる。


最初は、メリーゴーランド。でも、これ恥ずいし、何が楽しいのかわからん。汗。


それから、コーヒカップに乗った。


俺とダイダ。ケントとプロスティに別れて乗った。俺とダイダは、ハンドル回して高速で回転して、係員にキレられた。


「ちょっと、2人とも何してんの!笑。」


〜ダヌア基地のみんなー。楽しんでくれたかい?!〜


ブルースのMC。


?!俺たちのことだ。


オーーー!


観客は盛り上がっている。


前の方はダヌア基地のRSSだ。


「あれ?あの色?」

「バハヌノアだろ。」

「見ろよ!。あれハノイだ!。」

「そんな遠くから?!。」

「ハノイにもRSSいるんだ!。」


〜じゃ最後の曲だ。〜


えーーーー!

えーーーー!

えーーーー!


ダイダも、ケントも、プロスティも、そして、僕も、みんな手摺に肘をついて、コンサート会場を見てる。


「終わっちゃうんだ....。」

「寂し...。」


〜サンダーロード〜


ウォーーーー!

ウォーーーー!


「サンダーロードだ!。」


「やった!。」


「うっわーやった!やった!。」


ハーモニカの音が...


〜....編戸がぱたつく。メアリーのドレスがはためく。ラジオの音楽が流れると踊ってポーチを横切るように。1人ぼっちのためのロイオービンソン。ねぇ。それは俺のことさ。そして欲しいのはおまえだけ。どうか、また家へ戻らないで欲しい。もう1人ぼっちに立ち向かう勇気はないんだ...〜


みんな泣いてる。

ケントとプロスティもダイダも。

そして僕も。


〜おまえは、選ぶことができる。海岸の近くの隠れ家に身を隠し、自分の痛みを思い出すことも。雨の日恋人から投げられた十字架の思い出を。夏を虚しく遊んで過ごすことも。大通りから、救世主が現れることをただ待つことも。〜


遊園地の人達もみんな聞き入っている。


〜俺はヒーローなんかじゃない。それは分かってる。おまえへ出来るつぐないは、この汚れたフードの中にある〜


両脇のダイダとプロスティが肩を組んで来た。プロスティとケントも。みんなで肩を組んだ。


〜ウォーオーオーオーサンダーロード、オー!サンダーロード、オー!サンダーロード〜


『ウォーオーオーオーサンダーロード、オー!サンダーロード、オー!サンダーロード』


〜もう手遅れなのは分かってる。でも、走ればまだ間に合う。ウォーオーオーオーサンダーロードしっかり座って、捕まって、サンダーロード〜


アンコールの拍手が鳴りやまない。


いつまでも、いつまでも...。


ロックの未来って言われた人。

伝説のロッカー。

僕たちの歌。

今の僕達のための歌。


みんなブルースの歌が聞いていたいんだ。


【---ザナデイン市からお知らせです。第125回ザナデイン祭 花火大会が始まります。本日は、ブルースジョー様の特別講演により、ハイドラ第七航空艦隊のドッグ入りが同時に行われます。誠に申し訳ございませんが、皆様、どなた様も、なにとぞご了承のほどよろしくお願い申し上げます。皆様、最後まで、第125海岸ザナデイン祭、お楽しみくださいませ。----】


「すげ。待ってくれてたんだ。」


「俺、飲み物買ってくるよ。みんな何が良い?。」


「あ。俺行く。リュウはゆっくりしてな。明日出撃だし。」


「あ、俺も行くわ。」


「え?ケントおまえも。」


【---ザナデイン市からお知らせです。第125回ザナデイン祭 花火大会が始まります。本日は、ブルースジョー様の特別講演により、ハイドラ航空第七艦隊のドッグ入りが同時に行わ----】


だんだん人が増えて来た。


...ゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この数...。


空に無数の光。


まるで巨大なシャンデリア。


ハイドラの第七艦隊の巡洋艦。


戻って来てくれたんだ...。


眩しいほどのカラフルな識別灯...。


待って!?


「ね!ねぇあれ!。」


プロスティが叫ぶ。


識別灯の光、メッセージを送っている。


「プロスティ分かる!?。」


「ちょっと待って。RS...Sた...いの.....み...ん...な...け..ん...と..うを、みんなの検討を祈るだって!凄い!。」


「すっげーーーーーーー!。」


「また来たわ!。」


「おーい!おーーい!。」


「おまえら見たか??識別灯!。」


「み....ん..な...で勝利...を勝ち...取...みんなで勝利を勝ち取ろう、だっ!。」


「あれ何!綺麗ーー。」


「何だろ、あれ、、他のと違う。」

「すげぇ光ってる。あれ!?。船体が見えない。」


「い!い!インティバルだっ!インティバル!。」


「えぇぇ!インティバル!大破してたんじゃないのかっ!。」


「ま、ま、間違いないよ。光源が他のと違う。明るい!しかも主灯が右上!間違いないインティバルだ!インティバルだっ!。」


「もう一隻来たわ。降下してくる。」


「ストラバルだっ!ストラバル!ストラバル!ストラバル!ゲー。ゲー。」


ダイダは、ミリタリーオタクだ。戦艦が好きで、好き過ぎてハイドラ軍に志願した。


「吐きそうになってる。笑。」


「お、おいっ!インティバルが何かメッセージ送ってるぞ!。」


「えぇ...と。独...立..記.....念日...お..めでとう。俺たち...も...頑張る、君たち...も頑張れ...だって!」


「ストラバルは...ザ...ナ...デインの??...ソース焼き...え?ソース焼き??!...最高...繰り返す....ザナデイン....のソース...焼き...は最高....だって、マジ!笑。笑。ウケる。」


わっはっは!

はっはっは。何それ。


....ゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


...ドンドーーン

...ドンドーーン


「あ!あれ。」


「リガヤ、キターーーーー!リガヤキターーーーー!キターー!ゲー。ゲー。ゲー。オェ。」


「ダイダ大丈夫かよ。笑。おまえ興奮し過ぎ!。」


僕はダイダの背中さすってやった。


「気持ち悪いー。興奮し過ぎた...。」


「大丈夫かよ。全く。笑。」


「はい。お水。」


「リガヤの識別灯....嵐の...夜に...いる血の....通った...兄弟....撤退も、baby...降参もしない......。」


「これって.....。」


ウッウォーーーー!

ウワーーーーー!


会場から凄い声が。


「上がる!。」


「うおーー!ブルースの歌詞じゃん!。」


「すっげーーー!。」


【--第125回 ザナデインクルーザー地区花火大会始まります!最初はスターマインからです!--】


...パンパンパーン

...ヒューーー

ヒューー

...ヒューーーー

パンパンパーン

...パンパンパーン

...パンパンパーン


「うっわーー綺麗!。」


「プロスティ後ろ見てみ!。」


「うわぁ!オーロラ!素敵ーー。」


宇宙まで広がる光のカーテンが...。


「あぁ。見て!あんな空の高い高いところまで続いてる!。」


荘厳で怖いほど。薄い緑やオレンジの光のカーテンが汗ばんだ身体を涼しく感じさせる。


「ホントだっ!こんなオーロラ初めて見た!。」


「すっげぇなぁ。」


母さん、父さん、シンタ、ココロ。


みんなにも見せてあげたい。


花火の中を、インティバル、ストラバル、リガヤが通り過ぎ、航空桟橋に着陸していく。


凄い綺麗だ。


うっおおおーーーーー!

うっおおおーーーーー!

うっおおおーーーーー!


ステージから大歓声が。


「ブルース出てきた!」


「もう、楽しすぎるぞ!。えいっ!。」


ケントはダイダに水鉄砲をかけた。


2人はまた麦酒買ってきたみたいだ。


「冷てぇ。バカ。」


「ほらほら。冷たいか?。どうすんだ。おまえ。ほらほら。」


「なろー。ほら!。」


ダイダは、大型の水鉄砲を出した。


「オラーーー!。」


今度は多量の水がケントの顔を直撃してる。


「ははは。ばか。やめろ。うぷわ。あっはっは。ばか。うぶぶ。」


ケントはびしょ濡れだ。


「待て、ま、待て...!。あ、インティバルだ。」


「え?。」


ダイダは、空を見上げた。


「どこ?。どこ?。」


「うりゃあ!。」


ケントはダイダの大きな水鉄砲を奪った。


「どーだ。」


今度はダイダの顔がびしょ濡れだ。


2人は酔っ払って水鉄砲のかけあいを始めた。


「ば、ばかやめろ。わっ。やめろー。あはは、あははははは。こーのー。」


「ウプププ。やめろ。うわ。ははは。ははははは。」


子供みたいにはしゃいで走っている。


「おい!。転ぶなよー。笑」


僕とプロスティは疲れて座っている。


僕は、明日出撃だし。


また、花火が上がった。


ヒューーー

ヒューー

ヒューーーーーー

ドン!

ドーン!

ドンドーン!


わーーー!

凄〜い!

綺麗だなぁー


パラパラパラパラパラパラ


パパー見て見てー!。


ブルースのアンコール、最後の歌が始まった。


〜サンディ。花火が僕たちを祝福しているよ。〜


風が涼しい。


花火の光がプロスティの横顔を照らす。

とても綺麗だ。

とても、綺麗だよ。


「リュウ。ありがとう。」

「ん?何?。」

「いつもありがとう。」


?。プロスティが僕の肩にもたれかかってきた。プロスティ?。


「...ごめんなさい。...私。..いつも助けて貰うばかりで。」


「ううん。そんなことないよ。」


心臓がバクバクする。


ダメだ。プロスティは、親友の愛する人なんだ。


〜街のサーキットでは、ジャックナイフのように、アブナい恋人達で溢れてる。素早くて、輝いていて、尖ってる〜


「私...。私...。」


プロスティが泣いている。

泣かないで。僕の大切な人。


あぁ。僕はこの子を愛してしまっている。

この娘のためなら、例え死んだっていい。


〜カジノから来た少年達は、シャツをはだけてラテンの恋人が海辺でするダンスを踊ってる。都会から来たうぶな女の子を狙っているのさ。〜


僕は、指でプロスティの涙を拭ってあげた。綺麗だよ。可愛いよ。プロスティ。だから泣かないで。愛しているよ。


〜サンディ。オーロラが僕達の後ろに上がっているよ。桟橋の明かり達...僕たちのカーニバルみたいな日々。永遠に。〜


プロスティの頭を撫でた。ごめんケント。


〜今夜は僕を愛してよ。もう君には会えないかもしれない。おぉサンディgirl。僕の、僕だけのbaby〜


そう。僕は明日死ぬかもしれない。


空には満天の星空が。


ハイドラ軍の軍艦も明るく僕たちを照らしてくれている。


ドン!

ドーン!

ドンドーン!


パラパラパラパラパラパラ


僕はプロスティを真顔で見つめてる。


ヒューーー

ヒューー

ヒューーーーーー

ドン!

ドーン!

ドンドーン!


パラパラパラパラパラパラ


「プロスティ好きだ!大好きだ!愛してる!僕は君を愛してる!。誰よりも誰よりも。」


ヒューーー

ヒューー

ヒューーーーーー

ドン!

ドーン!

ドンドーン!

パラパラパラパラパラパラ


僕は咄嗟にプロスティを抱きしめて、唇を奪ってしまった。


ヒューーー

ヒューー

ヒューーーーーー

ドン!

ドーン!

ドンドーン!


あ.....。


プロスティも呆然としてる。


「リュウ。ごめんなさい。」



〜サンディ。オーロラが僕達の後ろに上がっているよ。桟橋の明かり達...僕たちのカーニバルみたいな毎日。永遠に。今夜は僕を愛してよ。もう君には会えないかもしれない。おぉサンディ。girl。僕の、僕だけのbaby〜


プロスティは、泣きながら走って行ってしまった。


何てこと、何てことしてるんだっ俺はっ!。最低だ!。最低じゃないか。。

でも、愛してるんだ....。


「...あれっ、プロスティどした?。おーい。おい!。ケント!。」


ケントが走って追いかけて行った。


俺って最低だ...。


あぁ。。


「駄目だよ。女の子泣かしたら。リュウ。リュウ...?。おまえ...泣いてんのか?おい。」


「泣いてなんかないよ。泣くわけないだろ。笑。」


駄目だ目から水が。


「バカ!。馬鹿野郎!。強がってんじゃねぇよ。」


ダイダが抱きしめてくれた。強く。強く。


「ダイダ。俺....」


「何にも言うな。何にも...。」


ダイダの胸は少し汗臭い。でも、僕はダイダの胸の中でボロボロに泣いた。

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