ダヌアの空に2
AC13152 terdion 15th 18:15
--Voice mail:Speaker s-32672(rss5 grade3)--
こちらハイドラ軍 アルバーン支部 ダヌア 第5部隊 rss隊 s-32672 リュウ•アーデン
戦況をボイスレコーダーに残す。デューンがとてつもない量のローレア粒子を放出し始めた。ゾーグ平原を越えてここまで届いてる。アルマダイ、アフロダイを使った通信は筒抜けだ。パスタップ(アルマダイやアフロダイ素粒子に対応した通信機)は、もう使えない。
このボイスメッセージは、僕の家族や、親しい人には絶対に、聞かせないでください。
聞かれたら、無事に他国に逃げのびたと...
さっきハイドラ軍 旗艦レバンナと、ハイドラ第七艦隊が合流した。第七艦隊はハイドラでは最強だ。でも、第七艦隊には、レバンナに引けを取らないほど、凄い戦艦が何隻もいる。
と言っても、攻撃最大船速や、射程距離に余裕があるレバンナだけは、第七艦隊と合流するとすぐ全力で後退し始めた。
これで、南アマルも、デューンもレバンナを攻撃できない。
ただただレバンナの攻撃を受けるだけだ。
第七艦隊の最後尾には、超大型戦隊輸送基地ファイヤーバード1号から13号、そして17号が続いて飛んでいる。
ファイヤーバードは、一際大きい。こんなに遠くからでもはっきり分かる。
ファイヤーバードに乗っているヒドゥィーン戦士は1万人以上。
ハイドラ軍には、他国のように、サイボーグも、アンドロイドもいない。
いるのは、装甲兵やロボット。もともとヒドゥィーンの身体はアルマダイが豊富なおかげで強靭。ケラムの生物のように。
タントや、イリーナのように、桁外れに大きい人達だっている。そして、何よりも自然兵曹と言われる兵士達がいる。アトラやアマルの強化された軍事兵曹には敵わないかもだけど。
第七艦隊は、最大船速でこちらに向かっている。
さっきから、アルマダイエンジンの振動がだんだん激しくなって来ている。
北西の空の彼方から、艦隊が接近してきている。もうすぐだ。援軍はもうすぐ来る。
数は部族軍より少ない。でも、エンジンの振動が凄まじい。本物が来た。本物のハイドラ軍が助けに来た。
リュウ•アーデン
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AC13152 terdion 15th 22:15
--Voice mail:Speaker s-32672(rss5 grade3)--
こちらリュウ。このボイスメール。僕の家族や親しい人には聴かせないで欲しい。
僕の所在を知られたら、アトラへ逃げ延びたと言ってほ....
ちょっと待って....
「プロスティ!閉めて!。ごめん!聞かないで欲しいんだ! 。」
あの娘には聞かせたくない。特に。悲しむに決まってるから。
...ドン...ドーーーン....
...ゴゴゴゴゴゴ....
...ガガガガガガ....
...ドン...ドーーーン....
...ゴゴゴゴゴゴ....
....バリバリバリバリ....
...ピーーーーーー....
...ドーン...ドーーーン....
...今、ハイドラ第七艦隊が、基地の上空を越えている。続々と。アルマダイエンジンの音が響く。
数は713だ。
部族軍の艦隊と同じ高度なのに、音と振動が全然違う。
凄まじい。
何も聞こえなくなるほど。
基地が激しく揺れている。
そういえば、上官のショウン少尉が、部族軍の艦と、ハイドラ軍の艦では、軽自動車と戦車ほどの差があるって言っていた。
この音と振動。
本当なんだ...。
第七艦隊の大半は、ダヌア基地の上空では止まらない。このまま、アルバーンまで進んでいる。先で待っているんだ。
部族軍の艦隊は、ここから先には進めなかったのに。
....ゴゴゴゴーーーーーー....
....ドドドドドドドド....
ガタガタガタガタ
な、なんだこの揺れ。
凄い音....ま、眩しい
タンタンタン
ガン
ガチャ
「....ファイヤーバードが来たぞ!ファイヤーバードだ!みんな手伝え!...。」
「...17号が最初だ!最初のは17号だ!横にラインが入ってる....。」
...ブチッ...
リュウ•アーデン
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AC13152 terdion 16th 9:05
--Voice mail:Speaker s-32672(rss5 grade3)--
僕達は、滑走路のある基地エリアに整列している。
コンクリートで舗装されたエリアには、隊列訓練用の様々な色のラインが引かれている。
僕達のアルバーン支部ダヌア第一分隊と、第七艦隊、そして、バハヌノア第一、第二、第三、第四、第五、第七大隊との合流、決起大会のために整列をする。
ファイヤーバード17号、4号、2号に乗っている兵士達を待っている。
ファイヤーバードから、兵士が、続々と降りてくる。
バハヌノア支部の兵士は、凄い。今ここにいるのは4万人。数も凄いけど、本当に強そうな人ばかり。大きくて鍛えられているけど、南アマルやデューンの兵士達と違い、気品がある。ただの野獣じゃない。
最初に、我がゴルスタ支部長が戦況の報告と歓迎の言葉、次に第七艦隊提督 ムスワルダン殿の概要説明、最後にバハヌノア支部長から、僕達も含めた後発隊への講話、そしてハイドラの国家を歌い終わる。
遠くに見えるファイヤーバードは、緑色の巨体をゆったりと地上に横たえている。コンテナを下ろしているから、大きく口を開けているようにも見える。両翼にとてつもなく大きなジャイロ型の反重力推進器をつけている。推進器の中の赤い羽根が、飛行中は、まるで炎のように見える。炎を纏った鳥に見えるからファイヤーバードって名付けられたらしい。
でも、鳥っていうよりは、大きなカエルか、アイロンのような形をしている。ファイヤーバードの船体のほとんどは、大きなコンテナだ。幅1200m長さ2400m高さ800mの巨大コンテナ基地を運んでる。持ち上がることが不思議なくらい巨大なコンテナ。
コンテナは、そのまま移動基地になっている。
戦闘状態になると、ファイヤーバードは、コンテナを残して上空に浮上する。空から、敵軍や、戦況を判断して、司令塔の役割を果たす。
この技術は、ハクアが最初に編み出したもの。でも、無限の物量を持つアマルや、デューンを圧倒的に有利にしてしまった。最初に発明するのはいつもハクア。ハクアは、自分達の発明で滅んだ国。
デューンの戦隊輸送基地は、もっと大きい。
戦隊輸送基地は、動きが遅く標的になりやすい。そして、堕とされると勝敗に直結する。
だから、普通は、領土内か、よほど優勢でない限り、出てくることはない。
既に、戦隊輸送基地アンバルアを全面に押し出しているデューンは、ハイドラ軍に全く脅威を感じていない。
きっと。
でも、戦況は変わった。
リュウ•アーデン
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AC13152 terdion 16th 9:05
--Voice mail:Speaker s-32672(rss5 grade3)--
ファイヤーバード17号が前線まで行かないのは、ホントは、合流式のためなんかじゃない。ペルセアとの変化暗号通信パスタップの出来る司令戦闘ロボットジャミーの数が150機足りないから。
デューンがペルセアとハイドラ軍の連携を分断するために、ローリア粒子を多量に散布している。
筒抜けにして、連携を取れなくして、一気に捻りつぶす気だ。
敵の前線には、デューン陸軍の代名詞 大型陸戦アンドロイド ボルボーレがいる。ボルボーレは、ケラム生物ギガサニーなどをモデルに作られた。無敵で無慈悲の殺戮マシーン。 ボルボーレを前にして、ペルセアの支援が受けられなければ、みんな殺されに行くようなもの。
デューン軍の軍事シナプスフレーム ゴトラは、演算能力は高いけど、ペルセアの激しい変化演算方式に全く対応できない。
ペルセアとハイドラ軍が繋がっている限り、デューンはボルボーレがいても有利に戦いを進められない。
アマルのアメンがアルバーン地区に影響力を持たないのは、部族軍とアマルが契約を結んだ瞬間に、ペルセアがアルバーンにおけるアマル系の情報拠点をことごとく掌握したからだ。
そう、上官のショウン少尉が言っていた。
ダヌアには、ペルセアとの変化暗号通信パスタップが使える司令塔ロボットジャミーが144機ある。
その内、コックピットの小さな、ジャミー84型が17機。大人は乗れない。
もう大型ジャミー乙型のパイロットは揃っている。ダヌアのプロのパイロット。
そして、故障一台を覗いて、84型の操縦士も決まっている。
プロのジャミーパイロットを目指している少年兵達。僕達と同じ少年兵士達。
自分達の少し前に並んでいるのがそうだ。みんな小刻みに震えている。さっき、大型陸戦アンドロイド ボルボーレの映像を見たからだ。怖くてたまらないんだ。僕が逆の立場だったら...。そう思うとゾッとする。
ボルボーレは、えげつない殺戮マシーンだ。それにただ殺すだけではなく、敵の作戦の精度を下げるために、あらゆる残虐行為をする。この辺りも、ケラム生物達をモデルにしている。
「隊列整えろー!気をつけーっ!」
ザッ!
あれ?提督の横にいた、女の士官が走って来る。支部長殿に。2人で支部長の所へ。一体何が。
「ジャミー84型に乗れる者を探している!パスタップパイロットの乗組員の1人が、訓練中の事故で死んでしまった。そこにある壊れた機体がそうだ!パイロットを探している!身長が180cm以上の者は駄目だ!無理だ!LCCジャミーテストの上位の者!」
「プロスティ•ヨンドハル!リョータ•リスデム!ケント•リューベンス!前へ!」
プロスティが呼ばれている!
「早くしろ!」
「プロスティ•ヨンドハル!」
「はい!」
「リョータ•リスデム!」
「はい!」
「ケント•リューベンス!」
「は、はいっ!」
「前へ!」
「はい!」
け、ケントも。。
三人とも前に並んだ。
だめだ、だめだ、だめだっ!
ボルボーレのいる最前線なんて、一番過酷で一番生存率の低い場所じゃないかっ!
そ、そんなところに、女の子を行かせるなんて!
「お前達は、LCCジャミー訓練での、得点上位者だ。この中で志願する者は?時間が無い。過酷な任務だがどうか志願してくれ。」
「..........」
「.....あ......ぇ.......」
「.........」
「では、こちらから指名させてもらう。プロスティ•ヨンドハル!前へっ!」
ば、バカ!ケント出ろっ!
「は、はいっ...。」
「成績、適合性から、おまえが適任だ。おまえに任務を....」
あぁ、プロスティが震えてる!
可哀想に。
「ま、ま、待って下さいっ!。」
え、マジか俺...。
「ちょっと待って下さいっ!。」
ドタッ。ズザン!
な、何やってんだ俺は....。
「何だ貴様は!。」
「ハイドラ軍 アルバーン支部 ダヌア 第5部隊っ! 。」
「バカ者!俺も第5部隊だっ!。」
「ハッ!申し訳ありません!rss隊 s-32672 リュウ•アーデンでありますっ!。」
「で、リュウアーデン!貴様何の用だっ!この切迫した状況が分かるだろう!。」
「ハッ!理解しております!。」
「貴様ーっ!。」
「志願させて下さいっ!。」
「何だと?。」
「よろしくお願い致します!。」
「...駄目だ。貴様の名前はリストに無い。」
「そんな、11番目にあるはずです!。」
「11位だと?話にならん!。下がれ!。」
「待って下さいっ!。じ、実戦は...。」
「貴様ぁっ!。上官に口答えするなっ!。」
バキっ!
痛え。目から火花が。
「断トツで自分が1位であります!。」
「ふざけるな!15000人の命がかかっているんだぞ!貴様ぁ!。」
ボゴッ!
顔面殴られた!
いてぇ。
「自分に、自分に!。」
「まだ言うか!貴様!。」
「学科は、今日!今日勉強しますっ!。」
く、苦しい、首が。襟首を上官に...。
「待て!。」
「ハッ!。」
上官が直立不動に。
女の士官が。
「誰が志願する者を調整しろと言った!。」
「ハッ!申し訳ありません!。」
「おまえ。名前は?。」
「ダヌア 第5部隊 rss隊 s-32672 リュウ...リュウ•アーデンであります!。」
「リュウアーデン。おまえはなぜ志願したい?。」
「前のパイロット達は震えています!。ビビっていては、絶対に勝ち目がありません!。それに、前列のパイロットの誰よりも自分の方が実戦では、では、遥かに、遥かに上でありますっ!。」
「貴様ぁっ!。」
「待て。いちいち突っかかるな。兵士といえどまだ子供だ!......笑。ほぅ?リュウ•アーデン。おまえの言うことが本当か確かめさせて貰うぞ?」
「あ....あ...。」
女士官が支部長を手招きして呼んだ。
こ、この人そんなにえ、偉いんだ...。
「おい。この者のジャミーLCCの結果を持ってこい。」
「は、はいっ!。」
支部長は、こちらを睨んで舌打ちをした。
みんな震えて、何も喋れない。動くこともできない。
「アンヌ大佐殿!こちらが!。」
こ、この人が大佐...。
「うむ。...なるほど....。確かに実戦での数値はかなり高い。しかし、前列のパイロットを遥かに上待っているというのはどこのことだ?。」
「え、いや、その、そうだ!その時は怪我をしていたんだっ!。」
「怪我を?。どこを怪我していた?。足か?。腕か?。嘘をつくな。怪我をしたパイロットは乗せないように命じている。ジャミーは貴重だからな?。」
「貴様ぁーーーっ!。」
「やめろと言っている!。」
「俺を乗せろよ!。俺はどうしても行かなきゃなんないんだ!。ボルボーレを見ただけで震えてる奴より俺の方が絶対マシだよ!。」
「き、貴様、大佐殿に何という口の利き方だっ!。」
大佐が制した。
「リュウ•アーデン行かねばならない理由は何だ?。」
「何でもです!。どうしても行かなきゃ何ないんだっ!。頼むよ!。お願いします!お願いします!お願いします!。」
「おまえは身長は何セクト〔※1〕だ?。」
〔※1:1セクト=1.1センチメートル〕
「17...169ですっ!。」
「笑。嘘をつくな。正直に言え。」
「178だけど、座高は168の人とおなじです!。こいつらみ、み、みんな足短ですっ!。だから、だからっ!。」
「分かった。分かった。」
「お願いしますっ!。お願いしますっ!。お願いします!。」
「分かったと言っているだろう。しかし、なぜ、そこまで執着する?。」
「何でもです!。何でもっ!。」
「分かった。鼻水を拭け。リュウアーデン。」
「お願いしますっ!。お願いしまーーーすっ!。」
「よし分かった。最後のジャミーは、この男にしよう。おい。ゴルスタ。ジャミーの最後のパイロットは、リュウ•アーデンにする。直ぐに調整を始めさせろ。できるだけ、座席の間隔を開けてやれ。特別にバックコンテナを外して調整してやれ。私のペネループ(司令装甲車)の手をリュウアーデンの整備に回して構わん。」
「しかしアンヌ大佐殿....。」
「何度も言わせるな!。ゴルスタ!。急げ!。出撃時刻を早める!。リュウアーデン!。おまえの熱意に免じて特別に志願を認めてやる。忘れるな!おまえのジャミーには15000人の命がかかっている。」
「あ、あ、ありがとうござい!。....ま....す........。」
視界が狭くなる。まずい、今倒れる何て...せっかく.......プロステ......に.........。
ドタッ
.....あれ。こいつ、、気絶したぞ。.....
.....大丈夫か?.......




