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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
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ハイドラの狂人32

サンザはフォンナクを飛び出し神殿前のコーナ(板の間、ボードウォーク)を走り抜けた。


...トントントントン...


サンザの足音が響く。


吹きさらしの広い木の床 コーナを通じて。


ネスファル様は履物を脱ぎ捨て全力でサンザを追う。


「待って!。落ちたら死んでしまう!。サンザ!。」


ネスファル様が叫びサンザは一旦振り返った。


「あ、危ないっ!。」


ネスファル様が叫んだ。


「サンザーー!。サンザーー!。サンザーー!。」


ワシは叫ぶことしかできない。


ネスファル様の大人の足に追いつけない。


ネスファル様がサンザの元に。


ジュエル兄様が走って来た。


「母様ーーーっ!。」


アリシア様も、みんなも...。


あっ!。


と、とっ、飛び降りたっ!。


ネスファル様も飛び込んだ!。


「キャアーー!。」


アリシア様の声だ。


「お妃様っ!。」


ジンナさん。


ど、ど、どうしよう...。


ネスファル様まで...。


ワシは走った。


こ、声が聞こえる...。


「...お願い...大人しくしてちょうだい...。」


ネスファル様の声...どこに...。


ネスファル様の手だ!。


ネスファル様の手がコーナにかかっている。


ワシは恐々下を見た。


足がすくむ。凄い高さだ...。


スロードープがミニカーみたいだ。



ネスファル様が片手でぶら下がっている。


もう片方の手でサンザの腕を掴んでいる。


サンザはバタバタと暴れている。


「サンザ!。サンザ!。暴れてはダメだ!。サンザ!。2人とも落ちてしまう。サンザ!。バカ!。暴れる奴があるか!。」


ワシは叫んだ。


ネスファル様は苦しそうだ。


シャガールの人は力も強いが自分の体重も重い。


「ど、ど、どうしよう!。」


「トラフィン、サンザに亀を...。」


ネスファル様は、苦しそうに言う。


あ、そうだ、ちょうど...。


あれ?。


いない!。


どこだ?!。


亀のヤマダさんは、コーナ(板の間、ボードウォーク)の中央辺りに落ちている。


「待っててください!。」


ワシは全力疾走でヤマダさんを取りに行った。


バタバタとみんなの足音が...。


みんな慌ててフォンナクから出てきた。


ヤマダさんはのんびりとあくびをしている。


ヤマダさんを掴みワシは走って戻った。


「サンザ!。こっちを!。」


サンザは暴れるばかりで、こっちを見ない。


...ギュギュウ...


ネスファル様の指が滑る。


...ダン...


ネスファル様はコーナを掴みなおした。


凄い力だ。


ネスファル様は苦しそうだ。


そうだ!。


ワシは腰紐を解きヤマダさんを縛った。


「ネスファル様。もう少しご辛抱を...。」


ゆっくりと腰紐に結んだヤマダさんをサンザの目の前に下ろしていく。


「サンザ!。ヤマダさんじゃ!。ヤマダさん!。」


サンザは、気がつかない。


「えい!。」


サンザの顔にヤマダさんをぶつけた。


しめた!ヤマダさんに気づいた。


「あー...あぁあぁ。」


サンザはヤマダさんに気を取られ暴れるのを忘れた。


ネスファル様は深く息を吸うとサンザを引っ張り抱え上げサンザを床に放り投げた。


直後に両手で床をつかみ直し一回振り子のように揺れ一気にコーナ(板の間、ボードウォーク)に上がった。


そして直ぐにサンザを抱き上げた。


こ、こ、これは...鳳凰の型だ。


ネスファル様は鳳凰の型を...。


「おおぉ。」


みんなからため息が、漏れた。


「母様ーーっ!。」


ジュエル様は駆け寄った。


アリシア様も。


「良かった...。」


ケンドゥさんの声だ。


「クッソ良かっ...。」


リロイさん。


赤ちゃんを抱えたニンフさんがリロイさんのお腹を肘打ちした。


「わははは!。トラフィン何だその格好は!?。グフッ!。」


ニンフさんはケンドゥさんにも肘打ちをした。


「トラフィン。腰紐、もう結んでも大丈夫よ。」


エノアさんがヤマダさんを外してそっと腰紐を締めてくれた。


そして、ヤマダさんをそっと手に乗せてくれた。


「無駄なことを。知恵遅れの汚い乞食など、そのまま死なせば良かったのだ。」


いつの間にか3人の神官が立っている。


「サンザは乞食などではありません!。無礼は許しません。2人はハイドゥクの子達です。」


ネスファル様は強い口調で言った。


流石にハイドゥクの第2妃。


威厳と凄みがある。


さっきまでの親しみやすさが嘘のようだ。


「ゆ、許さないだと?...。か、か、片腹痛い。それは、それは、こ、こちらのセリフだ。本当にハイドゥクの子なのか、わ、わ、分かりはしない。」


神官たちはネスファル様を直視することが出来ない。


「何という無礼な。そもそもこの子達がなぜ乞食なのです?。まるでこの子達の生い立ちを知っているかのような言い方。誰も知らないはずのこの子達の生い立ちを。」


「そ、そ、それは...。」


神官達は口ごもった。


明らかに動揺している。


「兎に角、神聖なこのフォンナクを汚した罪は重い。今すぐこ、こ、この汚いゴミをお、追い出すのだ。」


「お黙りなさい。何と言う無礼。私を誰だと思っているのです?。」


「こ、この、い、異端のシャガールの、シャガール族の女め...。」


怯えているのに神官たちは引かない。


「失礼だぞ!。あんた!。」


ケンドゥが叫んだ。


「ふん。ば、ば、蛮族女には、は、は、白痴のガキが...お、お似合いじゃ。」


サンザは、またネスファルの腕の中でまた暴れ出した。


...バシッ...


サンザの手がネスファルの顔に当たる。


「サンザ!。やめろ!。落ち着け!。ネスファル様サンザを下ろして下さい。」


ワシは叫んだ。


サンザは正気を失っている。


人との接触に敏感なサンザは悪意に気づくだけでおかしくなってしまう。


「いいえ、おろしません。今度こそ本当には落ちてしまうかもしれません。」


太った神官が言った。


まるでセリフが決まっているようだ。


「なぜそんな汚い白痴を庇う?。し、シャガールの女。おまえに渡す奉納金などない。卑しい女め。」


ネスファルは無視をした。


髭を生やした歳を取った神官が言う。


「も、もし、お、おまえが、その白痴を追い出し手をついて謝罪すれば、奉納金の一部を特別に授けてやろう。」


背の高い神官が言った。


「貴様のガキはワシの躾を拒むばかりかた、叩き返しやがった。し、神職である我らの指導に逆らうことはこの国では最大の不敬に当たる。」


「それは、おまえ達が、アリシア姉様を叩いたからだろう!?。」


ジュエル兄様が叫んだ。


「ほう?。それでは、ゴルダスク(宗教裁判)にかけるとしよう。首長の方々が何と言うか...。」


「卑怯な!貴様達、それでも、ナジマに仕える者達か!?。」


リロイさんが叫ぶ。


神官たちは平静さを取り戻した。


「ほう?。ハイドラの軍の者がここで何をしている?。空軍が狂った青鬼から祖国を護っている間貴様は何をしている。貴様の発言はハイドラ軍として我らセクハンニの神官に対する正式な発言か?。」


リロイさんは黙ってしまった。


「さぁ!。この白痴の乞食を追い出し我らに謝罪するのか。それともゴルダスク(宗教裁判)の裁きを受けるのか決めよ!。」


サンザは益々暴れるサンザは怖いのだ...。


正気を失っている。


「あーーー!。ぁああーー!。」


サンザは暴れる。


「サンザ!。落ち着きなさい。私はあなたの味方です。私はあなたにとって母と同じ。サンザ。落ち着くのです。」


ネスファル様はしっかりとそれでいて優しくサンザを抱きしめている。


「サンザ!。サンザ!。」


ワシはヤマダさんを持ってサンザに見えるように、ぴょんぴょん飛んでいる。


一体ワシは何をやっているのか。


情けないけど、 これしか出来ない。


一番歳を取った髭の神官が近寄って来た。


いきなり杖でワシを弾き飛ばした。


「な、何をするんじゃ!。」


「何のつもりだ!。」


カバディルおじいさんと、ケンドゥさんが間に入ってくれた。


でもみんな首長会やゴルダスク(宗教裁判)が怖くてそれ以上は何もできない。


セクハンニの神官はそれほど強大。


...バシィ...


「キャアーーー!。」


「お妃様っ!。」


大きな音がして、ネスファル様の長い髪の毛の一部が落ちた。


ネスファル様の顔に大きな傷が...。


血が流れ出した。


さ、サ、サンザが...。


く、く、熊櫓 をネスファル様に...。


ど、ど...どうしよう...どうすれば...。


「何て子だね一体...。」


「馬鹿野郎ーーー!。サンザの馬鹿野郎!。母様はおまえを、おまえを、子供だと思ってるんだぞ!。おまえなんか死んでしまえばいいんだ!。」


ジュエル兄様が叫んだ。


「何てこと言うのよ!あんた!。」


アリシア様が、ジュエル様の肩を揺さぶった。


「ほうら見たことか。」


神官達はニヤニヤと笑って言った。


「サンザ。離しませんよ。あなたは私の子です。ジンナ。傷口を塞ぐパットを持ってきて。ジュエル。サンザに謝りなさい。」


「何で!?。」


「ジュエル。母様を助けてちょうだい。」


ネスファル様も辛そうだ。


サンザは暴れて治らない。


一体どうすれば...次またサンザが技を繰り出せばネスファル様は死んでしまうかもしれない...。


どうすれば...。


一体、どうすれば...。


ネスファル様は歌を歌い始めた。


『遠い...遠い...いにしえの。王が今蘇る。...みなの悲しみ絶望を希望の光に変えていく...。風になびく銀の髪。青い瞳の王はまた命の限り立ち向かう...』


歌の旋律の美しさネスファルの歌声の美しさにサンザの興奮が静まって行く。


この旋律...。


アマトの子守唄。


シャガールに古くから伝わる子守唄だ。


モル兄様も歌ってくれた。


ネスファル様はサンザを優しく抱きしめた。


ジンナさんが慌てて血を拭き取りパットと呼ばれるジェルを剥がしてネスファル様の顔に貼った。


パットはすぐに肌に浸透し傷口を塞いだ。


ネスファル様はサンザの頭を優しく撫でた。


「茶番は終わったのか?。」


背の高い神官が叫んだ。


「何が茶番なのです。」


芯のある女性の声が轟く。


全員がハッと振り返った。


フロストの降車場に白い服を着た大きな男の人と大きなティアラと豪華な衣装を着た女性が立っていた。


「ネスファル。いつもながら見事な歌声です。」


女性はコツコツと踵の高い靴の音をさせながら大きな扇子で手をそっと叩き拍手をしながら歩いて来た。


扇子は金属のような光沢を放っている。


身分の高い人の持つ大扇子だ。


年齢はネスファル様より少し上かもしれない。


でも綺麗な人だ。


目も顔も派手で鋭い。


ネスファル様が白い素朴な衣装なのに対して、その女性は真っ赤な光沢のある豪華な衣装を着ている。


「誰だ?あいつは!。」


太った神官が言う。


「プロスファル様。」


ネスファル様は片手でティアラを外しひざまづいた。


神官を除く全員がひざまづいた。


全員がざわついた。


あれがプロスファル様。


いつもは1000人近い付き人がいるそうだが今日は付き人は一人だ。


しかしこのセクハンニの神官たちはプロスファル様を知らないのだろうか?。


「おや。ネスファル。どうしたのです。その傷。血だらけではありませんか?。」


「こ、これは...。」


ネスファル様は、膝まづきながら、口ごもった。


「先ほどから第二妃であるあなたに横柄な態度を取っているのは何者です?。おまえ達ですか?。」


神官達の方を向いて言った。


三人の神官達は俄かにそわそわし始めた。


プロスファル様は、一緒に来た大男を振り返り呆れたといった仕草をした。


白い装束の大男は三人の神官達に言った。


「おまえ達は何者か?。」


この人は大きいけど様子から小人症の人かもしれない。


耳の形からタント族だ。


きっと。


この人は、プロスファル様のお付きの方なのだろうか...。


!!


ジェイ•ディー様だ!。


「お、おまえこそ、誰だ!。」


三人の神官は、慌てて叫んだ。


ジェイ•ディー様はプロスファル様所まで歩きながら言った。


「神職にありながら私を知らないのか?。おまえ達はどこの神殿の者か。セクハンニの者でないことは確か。」


太った神官が言う。


「何を言う!。我らはセクハンニの神官。貴様こそ、本当にセクハンニの神官か?。見たことが無い!。」


「ほう?。私を知らないのならばセクハンニの誰を知っているのだ?。私は神官ではない。」


俄かに神官達は勢いを増した。


背の高い神官が言った。


「神官の俺たちを知らない?。貴様!。宮司だな?。愚か者め!。」


「何?。」


ジェイ•ディー様の声に僅かに怒気が含まれていた。


三人の神官達は途端に震え始め汗を全身からボタボタとこぼし始めた。


「私は287人の神官全てを知っている。私が任命したのだから。そして、5853人の働き手全てを知っている。私が神への重大な仕事を託したのだから。」


「に、任命...?。た、託した...?...。ば、はかな...。セクハンニ神殿の神官の任命権は、大神官様のはず...。貴様のような出来損ないが...。」


「はっはっは。おまえ達。さては神職の者ではないな?。ハイドラには出来損ないも白痴も知恵遅れもいない。おまえ達は...。」


「くっ!貴様ぁ!。」


偽神官達はミトラ(司祭冠)を投げ捨てた。


背の高い偽神官が拳を握りしめ中指の指輪をサンザを抱いたネスファルに突き出した。


指輪は光り始めた。


「レーザーだ!。」


リロイが叫び飛び出した。


...バッシィィ...


煌びやかな扇子が神官の腕を直撃した。


偽神官は顔をしかめ腕を抱え込んだ。


神官の拳からは大量の出血が。


骨が飛び出ている。


プロスファル様の扇子だ。


「ここはフォンナク。妃に対する無礼は私が許しません。」


プロスファル様はカツカツと床を鳴らし偽神官達に近づいた。


太った偽神官は懐から小さな銀色のペンを取り出しプロスファル様に向けた。


レーザー銃だ。


「ほう?。私を撃てるのですか?笑。」


レーザー銃の先が光った。


危ない!。


...ジュウウ...


銃は偽神官の手の中で煙を上げ始めた。


「あ、あ、アヂイ、あぢい!。」


偽神官は銃のある手を振りのたうち回った。


銃は、床に落ちた。


真っ赤になって溶けている。


大神官ジェイ•ディー様が手を掲げていた。


「あら、よろしいのに...。」


プロスファル様はジェイ•ディー様の方を振り返り残念そうに言った。


確かモル兄様がデフィン兄様母様には叶わないと聞いたことがある。


「ひ、ひぃい...!。」


三人の偽神官達は慌ててフロストの乗り場に走って行った。


「ほっほっほっほ。」


プロスファル様がゆっくりと扇子を拾い上げコーナ(板の間、ボードウォーク)をフロストの乗り場に向かって歩いていった。


偽神官達は慌てて次々とフロストに飛び乗った。


プロスファル様はゆっくりとフロストの乗り場に近づき下を見下ろした。


「覚えていろ!プロスファル!。」


太った偽神官が叫んだ。


「この年増女め!。」


背の高い偽神官が叫んだ。


「まぁ。無礼な...。」


そう言うとプロスファル様はフロスト発着場の柱を何回か蹴り上げた。


...ゴーーーーーーーン..


...ゴーーーーーーーーーーーーン...


「うわああああーーー!。」


「ギャアア!。」


フォンナクごと激しく揺れ、神官達の悲鳴が響いた。


...バン...


...ドサッ...


...バスッ...


何かが地面に落ちた音がした。


「おおぅ...。汗」


大神官様は、祈りを捧げた。


プロスファル様扇子をポンと手で叩いた。


するとプロスファル様の豪華な耳飾りから将校らしき軍人のホログラムが空中に浮かんだ。


「レスター。泳がしつつ追いなさい。何者か探るのです。大体予想はついていますが...。」


「ははっ!。大妃様!。」


そう言うと将校のホログラムは消えた。


「プロスファル様。」


ネスファルはプロスファル様の前に歩み出て再びひざまずいた。


「ネスファル。大丈夫ですか?。怪我は。」


「はい。申し訳ございません。このような騒ぎを起こしてしまい。」


「いえ。見てもう分かったと思いますが他国の息のかかった策士が我が国に暗躍しています。私達も気をつけねばなりません。ハイドラの国内を掻き回しているのです。」


「一体どこの国が...。」


「恐らくあなたの想像している国です。国内のある勢力と結託しているのです。」


「ある勢力。セティ家...。」


「セティは、単なる駒に過ぎません。今の者達もそうです。ある勢力とは...口に出すことは出来ませんが。あなたの想像している通りの勢力です。」


「やはり...。」


ジェーディー様が口を開いた。


「私はあなたにお隠れ頂きたくお願いに参りました...。」


プロスファル様は続けて言った。


「あまり時間がありません。単刀直入に言います。ネスファル。あなたは狙われているのです。」


ネスファル様は驚きの表情を隠せなかった。


「私が...なぜ?。」


「ある勢力があなたを捉えモルフィンの動きを封じようとしているのです。」


「モルフィンを...。あの子はハイドゥクやデフィンに訣別をしてしまいました。」


「いえ、ネスファル。寧ろ、ハイドゥクや、デフィンが踊らされているのです。あなたの子は、間違ってはいないのです。」


「あの子は、気が触れていると...。バールクゥァンの死でおかしくなってしまったと...。」


「ネスファル。狂った子があなたを慮り小まめに物資を手配して送ってくるでしょうか?。」


「プロスファル様。このままではあの子はハイドゥクやデフィンすら敵に回しかねません。自分を攻撃して来る者を見境いなく破壊し続けています。このままでは...。さ、最悪の事態に...。」


「ごめんなさい。ネスファル。私にもそれを止める力はありません。ハイドゥクもデフィンももはや私の声に耳を貸さないのです。そして、私も安全ではありません。デフィンは私がハイドラの秩序の邪魔になると考えれば、母親だとしても見逃さないでしょう。」


「一体どうすれば...。」


「今のかの国には恐らく強力な策士がいるのです。デューンのシシィ•ドールのような。私達には、今出来ることを精一杯するしかないのです。」


「あなたに出来ることは。あなたに出来ることは第二妃様。今はあなたが身を隠すことです。あなたを狙っている者は、私の神殿の中にもいる。情けないことに私には見つけることができない。あなたへの奉納金が止められていることすら把握出来ていなかった。私を信じてはいただけないだろうか。」


「ネスファル。時間がありません。追手が来ます。逃げて下さい。」


「一体どこへ逃げれば...。」


ジェー•ディーが口を開いた。


「最初は南ゴードブリフェンのハドルトへ。あそこは私の育った神殿。私が信頼している者しかいない。田舎の寂れた神殿ですが、温かい者達ばかりです。あなたを護ってくれる。匿ってくれます。その後このゴードを速やかに出なければ...。」


ネスファル様は考え込んでいる。


「ネスファル。子供達を連れて行きなさい。トラフィンとサンザそしてあなたの家の者達は私が責任を持って匿います。ネスファル!。時間がないのです。」


「トラフィンは時期が来ればキドーに行くことになっている。トラフィン1人なら私が責任を持って送り届けよう。しかし、この状況では、サンザをキドーのあるタンジアまで連れて行くことは、無理じゃ。」


「...。」


ネスファル様は考え込んでいる。


「母様!。サンザが!。サンザはどこに行ったの!?。」


アリシア様が叫んだ。


サンザはいなくなっていた。

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