第5話 金曜日の放課後
こんな世界に神様なんているはずがない。そんな妙な確信を得ながら今日もセランは当麻と放課後の街をぶらついていた。校則で寄り道は禁止されていたし、先生が交代でゲーセンやボウリング場付近を巡回しているからそうやすやすと羽を伸ばすこともできない。レッドブルの登場が待たれる。
ではなく。
高校の帰りに寄っていいのは塾、そして本屋と図書館である。これだけは生徒手帳にも「勉学のために参考となる資料を手に入れるために書店等に立ち寄ることは学生の本分に背かない」と書かれているのでOKだ。というわけで、今日の二人は学校の最寄駅から二駅先の駅の駅前にある大型書店へ向かった。金曜日の放課後である。案の定というか、駅前には学生の本分に背く各施設へ学生が赴かないよう監視する先生方が見回りに来ていた。単なる体育教師、ジャージ姿のおじさんである。目があった。
「お前たち!ゲーセンやらカラオケに行くんちゃうやろなぁ?!」
「そんなことしませんよ先生。本屋に寄るだけですよ。」
威圧的な教師にセランは屈託のない笑顔で答えた。もちろん目は笑っていない。
「今日は川田先生も見回ってるからな!すぐばれるぞ!」
「大丈夫です。先生たちのお世話にはなりませんよ」
別にセランは彼らが嫌いなわけではなかった。ただ、何故自分より確実に劣っている人間に横柄な口を利かれるのかが分からなかった。劣った、という言い方は適切ではないかもしれない。セランは常々、人と人とは敬意を払いあうものだと考えていたし、それができない人間は野蛮だと考えていた。そういう意味で、彼からすると教師は野蛮に見えた。