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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 雪女
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強制連行

 男は刈華の前に辿りつくとニヤけた顔で隊長を見た。


「抹消部隊の係長さんYO、こっから先はこいつらの管轄はウチが貰うぜぇ」


「追跡係がか?」


「おぉよ。何せマグギャンとかいうテレビ番組のディレクター以下数名、妖の力使って拉致っちまってしぃ。上層部もあのこと蒸し返されんの好きじゃねぇってなぁ。つーわけで、監視対象に指定されたっつーわけYO。抹消じゃねーからアンタらの出番じゃないっつーね。追跡係の管轄だっつの」


 チェケラとか言いながら男がふざけた口調で言う。

 さすがに隊長も良い顔してなかった。凄くウザったそうに眉根を寄せつつ無言で相手の言葉を聞いている。


「さ、わかったらちぃっと下がってて……つーかもう、アンタら帰っちまいなよ。居ても無駄だし、それなら別の妖事件探ってろっての」


 むぅ。正論ではあるけど、こんな奴に言われると無性に腹が立つ。

 男はふふん。と鼻息を吐いて刈華に向き直る。


「さぁて嬢ちゃん。悪いが事情聴取させて貰うぜぇ。任意同行シクヨロ~」


「ふざけないで」


 男がふざけた口調のまま手を差し出してくるが、刈華はそれを払いのけて嫌悪感丸出しの声を張り上げる。


「アンタが何者か知らないけど、任意でしょ? 行くわけ無いでしょうがッ」


「……あっそぉ? あーやっぱこうなっちゃう? あーっと、こうなった場合どうすんだっけ?」


 ポケットに手を突っ込んで何かを探しだす男。

 やがて一枚の折り畳まれた紙を取り出し開きだした。


「あーっと、任意同行を蹴られた場合は……ああ、これか。あーその、なんだ? 適当な軽犯罪で逮捕って強制連行させろ? ヒャッハー。俺好みの展開じゃね?」


 ちょ、いきなり強制連行とか、いくらなんでも酷過ぎっ。

 思わず口を出そうとするが、隊長が手で制してきた。喉元まで出かかった言葉を思わず飲み込む。


「隊長……っ?」


「翼、有伽と真奈香を連れて下がれ。絶対にアイツの邪魔をさせるな」


「了解ッす師匠」


 隊長の言葉に驚く私と真奈香の手を引っぱり、刈華たちから遠い場所へと駆ける翼。


「ちょ、翼、あいつ無理矢理連れて行くって……」


「強制連行なんざ良くある手だ。上が何考えてるか知らねぇが、あいつらはもう諦めな。たとえアイツを撃退できたとしても良くて公務執行妨害の現行犯。悪くて妖能力による殺人で抹消対象にされるだけだ」


「な、なんでよ!? 刈華たちはただ知りたかっただけでしょ!?」


「それだけヤバい情報だっつーことだよ! 分かれバカ野郎。テメーがどうこう出来る問題じゃねぇんだよ!」

 

 翼はある程度遠くに来ると、真奈香に絶対私にアイツらの邪魔をさせるなと私を拘束するように伝える。

 真奈香も状況的に私が暴走するのを危険と判断したらしく、素直に私を拘束してきた。

 いつもなら私のやる事を全肯定の真奈香が、である。

 私に抱きつく時かなり嬉しそうだったのは気付かない事にしておいた。


「さて、もう一度聞くぞ? 任意じゃ同行しねぇっつーわけだよな?」


「ええ。そして抵抗するわ」


「別に構わねぇけどよ。それって公務執行妨害だぜぇ?」


「公権力の横暴でしょ? それに抗うのが人権よ」


「ハッ、テメェに人権なんざねぇよ」


 突如、風が吹き荒れた。

 雪交じりの強い烈風。

 思わず目を閉じた一瞬の間に、猛吹雪が吹き荒れる。

 春も半ばだというのに数分もしないうちにうっすらと地面に雪が積もりだす。


「うおおっ!? さっみぃっ!?」


 あはは、あんな薄着してるから寒いのよ……って本当に寒いっ!?


「さぁ、私は別に何もしていないけれど、この寒さの中私を連行できるのかしら?」


「はは、笑える……ま、まま、マジこの程度でうおおお、さむぃっ」


 何か台詞を言おうとしたようだけど、風が強くなったせいで身震いに一生懸命だ。

 男は身体を縮めて両手で二の腕を擦る。


「しゃ、しゃーねぇ。俺の能力特別に見せてやんYO」


 男がふっと身を沈めた。と思った次の瞬間だった。

 男の姿が消え去り、刈華のすぐ目の前に接近。近距離からニタリとほほ笑んだ。


「なっ!?」


 さすがにキモかったらしく、刈華は相手を払いのけようと掌でビンタ。男の頬を思い切り叩いた。


「……え?」


 まさか成功するとは思っていなかった刈華だったが、痛みに頬をさする男は後ろへと跳躍して距離をとると、不意に肩を揺らして笑いだす。


「くく、くはは、はーっはっはっはっはっ。やっべ、マジやっべ。攻撃されちまったYO、おい!」


 なんだ? キチガイさんか? 寒さに頭やられちゃいましたかね?


「あー、やっちまった。ありゃもう連行確定だな」


 と、翼が言葉を漏らす。

 なんで? と疑問を浮かべ、すぐに思い至った。

 簡単だ。あの男は言っていたじゃないか。軽犯罪を犯させると。


 確かに、男は不意を突いて刈華の目の前に移動した。

 移動はしたが、一切触れていない・・・・・・

 そう、触れちゃいないのだ。


「俺が触れちまっちゃあセクハラだ。でもよぉ。先に手を出されたら、こりゃあ正当防衛成立っつーわけだ。アンタは暴行罪ってな。逮捕だタイーホ。いやもう楽な仕事だなぁ、オイ!」


 これじゃ本当に強制連行されてしまう口実ができただけじゃない。どうするのよ刈華!?

 もう、大人しく付いていって話を聞けば……いや、話を聞くだけじゃ終わるわけないよね。ここは、この人を撃退して逃げるしかもう……

 明日は100話になりますので特別編・潜入恐怖の上下家をお送りいたします。

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