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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 震々
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ストーカー、捕まる

 学園に着いた私は、刈華のいるだろう教室を探し、学校に来ているかを探しておく。

 しかし、案の定、今日は無断欠席らしい。


 一年教室全部探したけど、それらしい姿が見当たらなかった。

 何人かの一年生に尋ねて聞いてみたけれど、彼女の教室が特定出来た程度で、仲の良い友達などの話は聞けなかった。


 というか、刈華自身が言っていたように、三人の友人が消えてから、彼女自体も人が近付きづらい性格に変わってしまったらしい。

 今では教室にいても空気のような存在で、クラスメイトのほとんどが、彼女の存在自体視界から消しているようだ。


 ただ、刈華が友達と過ごしていた時期までの彼女の生活だけは、クラスメイトから聞きだすことができた。

 その頃は今のように凍てついた感じは一つもなく、屈託のない笑みを浮かべる少女だったそうだ。


 出雲美果と初めて出会った時、声を掛けたのは刈華の方だったらしい。

 刈華は強引な割り込みみたいに出雲美果に話しかけ、すぐさま仲良くなったのだとか。


 その後もう一人の女生徒を交え、三人でグループを作って話していたのを見かけたらしい。

 また、翌日には新入生がやってきて、出雲美果と親しそうに話しているのを見かけたとか。


 その女生徒は二日程学校に来ただけで、音信不通になってしまったらしい。しかも出雲美果と同じ日に来なくなったのだ。


 出雲美果が学校に通った期間はたった四日。

 これを聞いた時私はさすがに驚いた。

 つまり、出雲美果と刈華はたった四日しか会っていないということになる。なのに、刈華は出雲美果を親友と言った。

 それ程に、強い繋がりが、彼女たちにはあったのかもしれない。

 いや、むしろその繋がりを作ろうとしていたところを無理矢理切断されたから、余計に気にかかっているのかもしれない。


 始業式。

 刈華と仲良くなった日。

 新入生が来た日。

 そして……刈華に謎の言葉を告げ、昼休憩を最後に学校からは姿を消した。

 翌日には翼と遊園地に行っていたらしい。

 けれど、次の日には危険人物として翼に抹消されている。


 こうやって整理してみると、確かにおかしい。

 出雲美果の行動もおかしいが、新入生とやらがさらに妖しい。

 どんな生徒だったか聞いてみたけれどたった二日、しかもすでに何日も経っているので記憶に留まっていない生徒が多かった。


 一応全員の協力を得て似顔絵作ってみましたが……参考にはならなそうだ。

 とにかく、刈華に関する情報を探ってみた私だったけど、得た情報はちょっと違う方向が多かった。


 なんかね、出雲美果とブルマについて熱く語り合ってたとかいなかったとか。なんだそれ?

 鴇とブルマー夫人が争ったとか、いや、意味分かんないから。


 全く、とんだ無駄骨だったようだ。

 やっぱり雪山がポイントか……

 せめて今いる場所でも分かればなぁ。




 唐突に携帯電話が鳴りだした。

 さすがに授業中はマナーモードにしているが、今は昼休憩。

 真奈香たちとの談笑を中断して着信相手を確認。


 誰だ?

 見知らぬ相手からの電話に、ちょっと躊躇するものの、長い間震えているので電話に出てみる。


『あーりか~。元気~』


 即座に切った。

 しかし、再び携帯電話が震えだす。


「有伽ちゃん、それって小雪ちゃんからだよね? いつ教えたの?」


「いやいや、ボクは教えてないですよ真奈ちゃん」


「教えてないのに電話かかってくるって、マジストーカーやん。あんたそういうのによう好かれんなぁ」


 よっちーよ。それはつまり、真奈香もストーカーだと認めているのか?

 ふと、思ってしまったものの、指摘するのも友情的見地から止めておいた方がよいと判断し、私はツッコミを心の中にしまっておいた。

 険悪になりそうなことは言わない良い子ちゃんですから私は。


「仕方ないなぁ。でてやるか」


 再び受話を押して小雪と通話した。


『私、小雪さん、今雪山にい……』


 ブチッ

 再び電話を切って溜息を吐く。

 三度かかって来た電話に、やさぐれた気分で受話を押した。


『もしもし私小雪さ……』


「お客様のおかけになった電話番号は現在使われておりません。電話を切るか縁を切るかしてください」


『縁は切らないでっ!?』


「で、何の用? つまらない用事なら電話と一緒に細い縁も切れるわけですが」


『いやいやいやいやっ待って、報告する、ちゃんと報告するから縁を切らないでっ』


 焦った声で応える小雪は、一度大きく深呼吸して、


『ええと、その、雪山にいます』


「うん、それは知ってる」


『有伽に言われた女の子をスト―キングしてました』


 スト―キングって……まぁいいけどさ。


『それで……捕まっちゃった。てへっ』


 ぶちっ。

 思わず電話を切ってしまった。

 何だ今の甘えるような声は? 捕まったとかふざけてるのか。

 よぉし、弁当作る話は確実無しだね。

 またまた電話が掛かって来る。ただし、着信画面にでたのは別の携帯番号。


「なんとなく予想は着くけど、どちらさま?」


『はぁい小雪ちゃ……あんたは黙ってて』


 小雪の声がでてきたので切ろうと思ったけれど、途中で別の声が混じる。


『こんにちわ有伽』


 妙に醒めた声に、全身が震えた。


「舞之木……刈華」


『正解。私を探るのにこんな素人を巻き込むなんてグレネーダーとして二流だと思うけど?』


 いきなり手痛いダメ出しかい。


『真実を知る気もないくせに、私を引き留めようとする。あなたは何をしたいわけ?』


「わかるでしょ。このままじゃ刈華が危ないの。それを止めたいんだ」


『既に覚悟が出来てると言ってるでしょ? あなたには関係ないことなんだから、もうちょっかい掛けないでくれない?』


「そんなこと……出来る訳ないでしょ。知り合いの自滅を見守ってられるほど馬鹿じゃないんだよっ」


『……いいわ。ならこの少女と交換に、彼女を殺した奴を連れてきて』


「なん……っ」


『じゃあ、待ってるわ』


「ちょ、待っ……」


 慌てて声を張り上げるけど、刈華は聞く気は無いと電話を切ってしまった。周りにいた真奈香とよっちーが心配そうに様子を窺ってくる。

 マズイことをしてしまった。


 私は……どうすればいい?

 このままじゃ、刈華と翼を引き合わせることになってしまう。

 私たちだけで行って、小雪は無事に帰ってくるだろうか? それとも……


「どうするの、有伽ちゃん?」


「う、うん……翼に連絡するべきかな?」


 いや、やっぱダメだ。

 これは私がしくったことだ。翼にまで迷惑掛けるわけにはいかない。


「小雪、ちょっと助けに行ってくる。もしもの時は、真奈ちゃん、よろしく」


「え? ちょ……有伽ちゃん!?」


 真奈香が立ち上がるより先に私は駆け出した。

 方法なんてまだ何も思いつかないけど、何か、私に何か出来ることがある筈だ。

 小雪は、私が助け出すっ!

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