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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 氷柱女
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雪花の秘密

 真奈香と二人きりで帰るのって久しぶりだな。

 よっち~がカラオケでしょっ引かれてる時くらいしかないしね。

 銀行に行くのには大して時間はかからなかった。

 ATMで二万……やっぱりちょっと頑張って三万円。遠慮なく引き落としてみちゃいました!

 我ながら沢山引き出したなぁ。


「本当にそれだけでいいの有伽ちゃん? 私、三万円じゃ一週間も持たないよ?」


 それは真奈香が焼肉店で散財してるからでしょうが。

 私はこれで一ヶ月は保たせられる。

 十日で一万円の計算だ。二人暮らしでこれはなかなか凄い事なんだぞ。


 ちなみに、ここに親父の酒代は一円たりとも入っちゃいない。

 今月分は既にあげたしね。追加金は来月ですよ。

 お金あげればあげるだけ酒に費やすんだもん、さすがにこれ以上お金をドブには捨てれません。


「あ、らっきぃ~有伽発見っ」


「へっ!?」


 銀行を出た途端、私に向かって走りこんでくる奴が居た。

 いや、まぁどう見てもたった一人しかいないんだけどね。

 私に気付いた小雪が小走りに駆け寄ってきた。


「あー、小雪ちゃんだよ有伽ちゃんっ」


「いよっす。珍しいね、こんなとこで会うなんて……はっ、まさかこれが運命の再会という奇跡!?」


 物凄い期待してるの悪いけどただの偶然ですから。

 なぜかいよっす。のとこで真奈香とハイタッチ。

 こいつら無駄に仲良いな。

 やはり通じ合うものがあるのだろうか? 私にはきっと一生縁の無い世界ですが。いや、きっとではなく絶対に。


「あ、そうだ。小雪ってこれから雪花先輩に会ったりする?」


 ふと、思い至った私は小雪に尋ねる。

 そう言えば雪花さんの妹だったよこいつ。インパクトがデカ過ぎるのでその事になかなか気付けなかった。というか理解できなかったけど。


「うん? 家で会うよ? どしたの?」


 私はカバンから手紙の破片を取り出した。

 どうみても既に読める状態じゃない。

 というか、これを手紙だと言われても私にはゴミにしか見えない。


「何それ?」


「雪花さん宛の手紙」


「有伽ちゃんね自分が告白されたと思ってたの。雪花さん宛だって気づいてついやっちゃったんだって」


 楽しそうに暴露する真奈香さん。穴があったら入りたいよ。


「あははっ有伽可っ愛い~」


 お腹抱えながら背中をバシバシ叩かんとってください……

 ちくせう。覚えてろよ。いつか見え返してやるからな。


「もう、ラブレターくらい言ってくれれば私がいつでも書いてあげるって」


 いや、女の子からラブレターとかいらないから。

 真奈香も、張り合って私もとか言わない。真奈香からのラブレターとか絶対紙面にびっしり有伽ちゃん大好きとか書いてあるはずだ。いや、奴ならむしろ書かれた文字を顕微鏡で見たら【有伽ちゃん大好き】の文字で文字が出来ている可能性だってある。

 恐ろし過ぎて貰いたくも無い。

 いつの間にか自宅の机に置いてありそうでさらに怖い。


「あ、そうそう。お姉ちゃんといえば最近変な女とよく一緒なのよね」


「へぇ、雪花先輩が? ただの友達じゃないの?」


「だったとしてもだよ。二人でこそこそ隠し事してるみたい。私も話に加わろうと話しかけると二人して言葉濁すし、別の場所に移動したり早くどっか行けみたいな空気醸し出すし……二人っきりで口ではいえないようなことしてるのかなぁ」


 雪花さんにかぎってそれはないと願いたいが……知り合う女性に百合属性が多いので私にはなんとも言いがたい。

 本当に口ではいえない関係だったりしたら目も当てられないなぁ。

 でも、あの雪花さんに限って百合というのは……いや、まぁ、私も会って数日だから何とも言えないけどさ。


 あの人無駄にぼけっとしてるから悪い人に騙されたりしそうだし。

 小雪、雪花さんのことしっかり見といた方がいいよ。

 特に変な虫が湧きだしたら股に向ってちょいさっと蹴りブチ込んでタマ潰すんだよ。

 あ、でも相手が女性だった場合は打つ手ないから諦めて。駆除の方法があるならむしろ教えて。真奈香を正常に戻す方法を。


「相手の子、髪を青に染めて不良みたいだし、ホウキ頭の不良と良くつるんでるのよね。心配なんだ、私」


 あ、あれ? 口ではいえないことって百合系じゃなくて普通にタバコとかシンナーとかで不良化してないか心配ってことだったの!?

 ヤバい……私の思考がどんどんピンク方面に向かっていっている気がする……これが真奈香効果か!?


「いいよ。手紙預かっとく」


「あ、でもちぎれたままだし……」


「それくらい大丈夫だってば」


「でも、ボクがやったわけだし」


「だからこそ私が手伝って借りを作る! 有伽は気づくの、小雪に任せれば何でもやってくれる! これはもう結婚するっきゃないって!!」


「……思わないから」


 ツッコミを入れながら、私は手紙の残骸を小雪に手渡す。

 ま、やってくれるというのなら遠慮せず任してしまおう。

 風に吹かれて飛んで行かないように真奈香と共に慎重に小雪の鞄へと委譲させて貰った。

 一応、目に付く範囲では全ての残骸を渡せたと思う。足りないピースは無いと思う。


「ん、じゃあ私用事あるから、残念だけどまたね有伽」


「あ~うん、またねー」


 名残惜しそうな小雪にやる気ない返事で別れを告げて、私と真奈香はグレネーダー高港支部へと向かって歩き出した。

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