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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 氷柱女
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追跡、謎の少女

「いっやぁ~、あそこで雪花さんも有伽ちゃんの女だもん。は凄かったなぁ」


 帰り際、よっち~は友人たちと別れてからも真奈香の武勇伝を終始語っていた。

 これのおかげで小雪が泣きながら走り去っていった理由も分かった。


 ようするに私と自分の姉がすでに恋仲だと勘違いしてくれちゃった小雪が勝手に去っていっただけらしい。

 まぁ雪花先輩にそれ言えば否定するだろうからまた来る可能性はあるけれど……しばらくはちょっかいかけてこないだろうきっと。


 それよりも……気持ちを切り替え、私は鼻に集中する。

 なんとなく、すれ違った女生徒が気になった私は、そのまま臭いを追うことにした。

 幸い帰り道が私と同じだったのでこのT字路までは追っていけたのだが、ここから先は道が違う。


 さすがによっち~や真奈香を引き連れて行くのも変な話しだし、かといって二人に別れを告げて一人確認しに行くわけにも行かない。

 これから真奈香とグレネーダー出社しなきゃいけないし。

 何より隊長のためになる話聞けるだろうから、急いで……


「あ、よっち~、私と有伽ちゃんバイト、今日はこっちの道なの~」


 まるで私の思考を読んだかのように、急に真奈香がそんなことを言い出した。

 驚いた私と視線が合うと、ニコリと微笑んでくる。


 以心伝心!? マジで私の考え分かっちゃいました!?

 よっち~はそんな真奈香や私の思いには気づかず、そっか~しゃあないな~とか言いながら一人寂しく帰っていった。


「よく分かったね、こっち行きたいって」


「えへへ。有伽ちゃん迷ってたからもしかしたらと思って」


 よく気の利くいい娘だよほんとに……

 感動のあまり涙が出そうになりながら、私は本来の目的である少女の尾行に着手する。


 別に妖使いなだけなら気にする必要もないのだが、あの今にも人を殺しそうな殺気はどうにも放っておけなかった。

 しばらく臭いを辿りながら真奈香と歩いていると、見知った場所に辿り着く。

 ここ……出雲美果の家だ。


 出雲美果は翼の従姉妹である。

 かなり仲の良かった二人だが、隣のおばさんのせいで危険な妖使いにされ、翼自身の手で抹消された可愛そうな女の子。


 その家の前を、少女の臭いは行ったり来たりしていた。

 何往復かここで留まり、家に向かおうとしては立ち止まり踵を返す。

 かと思えばやっぱり引き返し再び入ろうとして、出雲美果のお母さんが出てきたので走って逃げた……とまで分かる程に分かりやすく残り香が付いていた。


 さらに臭いを追っていく。

 ただ、このままだとグレネーダーに遅れそうだ。

 そんなことを思いながらも追うのを止めないのは、本能的に彼女を止めないと、とでも思っているからなのだろうか?


 好奇心も手伝って、私は痕跡を追い続ける。

 臭いはやがて町を越え、隣町に向かっていた。

 そしてまた、見知った場所にたどり着く。

 目の前に続く巨大な山に、私は思わず足を止めて見入っていた。


「これは……ビンゴかもしんない……」


 携帯で隊長にメールを送り、私は真奈香を引き連れて山へと向かう。

 一度前田さんと来たあの山だ。

 遭難しかけた記憶がトラウマとして蘇りそうだったけど、無理をしてでも臭いを追う。


 まさか私の通っている学校に雪女がいるとも思えなかったが、この時期にこの雪山に上る女子中学生なんぞ怪しい以外の何物でもない。

 真奈香と勇んで追いつこう。としたのだが……


 …………

 ……………………

 ……………………寒い!


 この前の失敗を完璧に忘れた馬鹿すぎる失敗。

 目の前にグレネーダー入って初手柄という餌が吊るされていたせいか、普段は絶対やらないはずの失敗をしていた。

 小一時間後、雪山にブラウスで向かう愚かしさに自分を呪いつつ、真奈香に担がれながら山を登る私がいた。




 ようやく中腹ぐらいに差し掛かったころだった。辺りが雪で覆われた世界に、ぽつんと違和感が出現する。

 何もないので距離感がつかめないが、行く手に佇んでいるのは、一度だけ見たことのある雪女……いや、雪童子。


 疑惑は徐々に確信に変わっていく。

 女生徒の顔を見れなかったのは残念だったけど、私の学校にいることはほぼ確定した。


 ここでとっ捕まえるか学校で探し当てるか……まぁそれよりも優先なのは……生きて帰れるか……いや、マジ凍えて死にそうなんですけど。

 せめて前田さん連れてくればよかったかも。


 真奈香が戦闘体制に入るため、私を冷たい雪の上にそっと乗せる。

 真奈香が手を離した瞬間、ぽさりと冷たい感覚が地肌と服越しに私に襲い掛かる。

 しかも軟雪のせいで下手に動くと雪に埋もれて一生を終えるという悲惨な結末が……


 そんな私の危機など露知らず、真奈香は雪童子に突撃する。

 蹴り上げた足に雪埃が舞い、大量の粉雪となって私の上に降り積もっていく……真奈香よ、あんたは私を殺す気か?


 にしても……雪童子って風雪強くしたりするだけだよね?

 だったら真奈香の特攻受けたらまず間違いなく真奈香の勝ちだよ絶対。

 やはりというべきか、雪に遮られる視界から、雪童に腕を突き刺す真奈香が見えた。


 ぐっと力を入れて、私はなんとか起き上がる。

 さすがに真奈香に抱き起こされるまで雪に埋もれているとフランダースの犬のラストみたいな結末になりそうなので、寒さに体を震わせながら慎重に立ち上がり、ブルリと体についていた雪を払い落とす。


 目の前では、丁度真奈香によって心臓部分の雪を抉られた雪童子が崩れ落ちるところだった。

 うん、楽勝ですな。


「有伽ちゃん、倒したよ~」


 褒めてほしそうに報告してくる真奈香に震えながら褒め称え、真奈香の元に行こうとした刹那。

 真奈香が突然消え去った。

 あれ? っと思うまもなく、


 ズボッ


 真下の雪から何かに引っ張られ、私の視界が一瞬で真っ白になった。

 名前:  

 特性:  脆い

 妖名:  雪童子ゆきんこ

 【欲】: なし

 説明: 雪女に造られた雪で出来た人形。

     本人の意思はなく、雪女の指示にしか従わない。

     雪で出来ているので破壊されやすい。

     心臓の位置に核になる雪玉があり、これを破壊されると崩れる。

     稀に吐息で相手を凍らせてくる。

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