表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 雪童子
80/485

真奈香 イン 有伽ズハウス

 作戦会議室に着くと、すでに二人の人がそこに来ていた。

 隊長に前田さん。他は居ないようだ。

 というよりか人数的にそれだけしか居ないのは仕方ないんだけどね。


 私たちを待つのに疲れたのか、隊長は黒い手帳に目を落とし、前田さんは机の上に寝そべってこまごまと震えていた。

 その姿はちょっと可愛い。


「作戦会議って聞いて来たんですけど」


「ああ、適当に座ってくれ」


 私の言葉に反応した隊長は、目線を上げると手帳をパタンと閉じた。


「では会議を……真奈香はどうした?」


「粛清中です」


 簡潔明瞭に事実を話した。

 苦虫を噛み潰したような顔をする隊長。

 私の言葉ではよく分からなかったらしく、詳しいことを聞くために翼に話をふった。


 翼はご丁寧に報告したのだろう。

 隊長の側に歩み寄ってわざわざ小声で告げ口してくれていた。

 おそらく根も葉もない作り話も多分に入ってるだろう翼の報告を聞いた隊長は、私から目線を逸らしながら一つ咳をした。


 あ、ちょっとそれは酷いです隊長。

 傷付きますよ。傷付いちゃいますよ。私のガラスのハートがブレイク寸前ですよ?


「では、真奈香の到着を待つのもアレなのでさっそくだが雪山捜索の会議をする」


「雪山捜索……ですか?」


「うむ。未だ遭難者が見つかっていないのでな。我々グレネーダーも捜索に参加することになった」


「なしてっ!? グレネーダーってそんなこともするんですかっ!?」


「妖使いが関わっているかもしれない事件全般だ。少しでも怪しければすぐのりだして調べる。何もなければよし。危険な妖使いがいれば危険度調査だ」


 上層部の捜査力使えば足使って探すより十分探せる気がするのですが……

 それにしても雪女か……なんでグレネーダーに追われるって分かっててこういう事件起こしちゃったんだろ?

 なんとなく悲しい気分になった。

 なんで……抹消されるって分かってるのに……


「ひとまず、明日の捜査について説明する。新人である有伽と真奈香は私と。ようするにここに集まってくれればいい。翼と前田は引き続き雪山の捜査を続けてくれ。現地の総務係と連携を取って上手くやってくれ」


 それで話は終わった。

 翼に今日は解散と言われて隊長を見るが、隊長としてもその案に賛成らしい。私と真奈香はもう帰っていいようだ。




「どうする有伽ちゃん? 時間余っちゃったね」


 まったくだ。今日は翼との研修だって思ってたのに、実際に行ったのは厳ついオッサンどもが屯している倉庫に向って探しモノをちょっとしただけである。


 正直真奈香の粛清時間の方が長かったと思う。

 そんな真奈香と二人、私はグレネーダー支部から自宅へ向って歩いていた。


「そうだねぇ。よっちーでも誘ってどっか遊びに行こうか?」


「あ、それなら有伽ちゃん。私の家来ない? ご馳走するよ?」


 冗談ではなかった。

 真奈香の家になど向えば、確実に私のいろんな初めてが奪われる。

 それだけで済む話ではないだろう。

 下手すればそのまま監禁事件に発展しかねない。


 きっと警察に発見される頃には「マナカサンダイスキ、マナカサンダイスキ」を繰り返す壊れた人形にされることだろう。

 恐ろし過ぎる。絶対に二人きりで行くべきではない。

 それはバッドエンド一直線のデスルートである。


「絶対無理。ボクは身の危険を感じるので大人しく家で引き籠ってます」


「ええ――――っ」


 凄く残念そうな声を出してくるが、私の人生が掛かっているのだ、絶対に行くもんか!


「んー。もう、仕方ないなぁ。じゃあ有伽ちゃんの家に遊びに行っていーい?」


「ボクの家? 酒臭いオッサンが一匹いるよ? 家の中酒臭いよ? そんな場所でもいいの?」


「うんっ。それはもう、未来のダンナ様の家だもん。一度は、見ときたいなぁって思ってます。有伽ちゃんがどんなに家を汚くしてても私の愛は綺麗なままだよ?」


 そんなもの汚れきってしまえ。

 しかし、まぁ、何もやる事無いし、私の部屋に上げるくらいならいっか。

 さすがに親父が寝ている近くで襲われたりはしないだろう。


 下手に真奈香と遊びに行ってもラブホに誘導しようとしてくるだけだし、まだ自宅の方が安全だろう。

 と、思ったんだけど……




「うへ、えへへへへ……」


 私の部屋に上がった瞬間、真奈香が気味悪い声を洩らしてトリップした。

 何を考えているのか口元からは涎が一筋。

 そして私の背中を悪寒が駆け抜ける。

 やっぱ、連れてくるんじゃなった。


 真奈香は無造作にベットに歩み寄ると、「とうっ」と掛け声を上げてル○ンダイブ。

 空中を泳ぐようにしてベットに飛び込むさまは、綺麗な女性なのに気持ち悪かった。


「ああっ。有伽ちゃんが、有伽ちゃんの臭いがぁ。いい。いいよぉ有伽ちゃん。私、私もうっ」


 そしてベットで身悶え始める真奈香さん。

 どう見ても危ない人だ。


「はぁはぁはぁはぁ。あぁ、有伽ちゃんが入ってくるよぉ。私の穴に有伽ちゃんの香りがぁ」


 真奈香さんが壊れた。

 しきりに鼻をヒクつかせてベットを嗅ぎ続ける真奈香。

 右手がスカートの奥に入ってますが、何をしようとしてますか?


「あ、有伽ちゃん。わた、私、もう、無理。我慢できないよ……お願い、来て?」


 そして、両手を広げて足はM字開脚。私に身体を開く真奈香。

 燃える瞳を潤ませ、荒い息を吐きながら私を見る。

 ごめん、私、あなたの真意が理解できない。


「ああ、有伽ちゃん、有伽ちゃん、有伽ちゃん。切ないよぉ。私の初めて貰ってよぉ。私のここ、いつでも有伽ちゃんを受け入れる準備で来てるのにぃ~っ」


 ……連れてくるんじゃ、なかった。

 真奈香との友達付き合いを、真剣に考え直す私だった。

 ちなみに、首筋45度にチョップを当てると壊れた旧型テレビみたいに正気に戻った真奈香。その後は適当に話しをして帰っていった。


 夕食を未来のお嫁さんだからとかいう意味のわからない理由で作ってから帰ったけどね。

 食べたよ? うん。美味しかったから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ