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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 雪童子
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運命的? な出会い

 朝、巨大怪獣対メカ巨大怪獣のテーマソングの目覚ましが鳴り響き、私の安眠を妨害する。

 二、三度寝返りをうち、耐え切れなくなって起き上がる。


 巨大メカ怪獣型目覚まし時計の頭をぺしこんっと叩いて黙らせて、ベットから這い出し大きな欠伸と同時に背伸び。

 ふぁあう~~~~んとよく分からない声を出しつつ意識を眠りから救い出した私は着替えを始め、洗面所へ。


 台所に着くとまたもご飯を炊き忘れていた事実に気付く。

 まぁいいや。真奈香の弁当あるし。

 と気楽に考え、ハッと我に返る。


 自分が真奈香の弁当を当てにしていた餌付け済みの事実に恐怖を覚え、弁当作りにとりかかる。ご飯は時間的に用意できないので、ご飯部分に生野菜を切ったそばから詰め込んで、本日も朝食のマヨ玉トーストをつくりながら野菜にマヨネーズを垂らしこむ。


 さらにレトルトハンバーグを冷凍庫から取りだし解凍。野菜の真ん中に鎮座させケチャップつけて弁当完成。

 マヨ玉トーストにパクつきながら弁当を持って自室に戻り、髪形整え準備完了。


 寝ている親父に行って来ますを言いながら、カバンに弁当をつっこみ玄関へ。

 まだ半分残っているトーストを器用に舌と唇で口の中に押し込みながら靴を履いていざ出陣。


 携帯電話で時間を確認して、外へ出た途端にダッシュ。

 少女漫画的な行動だな~と自分で自分をあざ笑いながら、どうせなら忠実再現。

 とばかりにトースト咥えたまま遅刻遅刻~と走り出す。

 実際遅刻なんて言葉喋れなかったけど……

 十字路を突っ切ろうとした瞬間、

 どんっ


「のわっ」


「あっ」


 ホントに運命的な出会いが起きた。

 出会い頭にぶつかった人物の胸に飛び込むようにぶつかり、ぷにゃんとやわらかいものが二つ、顔に押し付けられるのを感じながら、その人物を押し倒す。


 一体何が起こったのかはとっさに理解できなかったけど、相手の人がクッションになって私は無傷だったらしい。

 がばりと上体をおこし、マウントポジションになると、相手の人と眼が合った。


 引き込まれるような赤と青の瞳。

 私と同じ制服を着ていて、私よりも胸があった。

 何が起きたのか必死に把握しようと私を見返してきていた。


「あ、その、ごめん」


 慌てるように飛びのく。

 身を起こした彼女に手を差し伸べて助け起こす。


「ありがと……」


 控えめに返された透き通るような綺麗な声。

 助け起こしたのはどうにも女の子らしい。

 胸はかなり出っ張っていて、感触からおそらくD以上。

 女の私でも羨むくらいに凶器だった。


 かと思えば身体つきは真奈香みたいに華奢で、胸と比べるとお尻の方が小さく見えてしまう。

 髪の色も印象的だった。


 クセッ毛なのだろう。ところどころで跳ね返るように反り返った青白い髪はおおよそ腰元まで伸び、内巻き外巻き一緒こたで彼女の髪として収まっていた。


 ぶつかった拍子に落としたらしい自分のカバンと彼女のカバンを拾ってやり、今だに自分に何が起こったのか理解できていないような表情の彼女にカバンを持たせてやる。


「ほんとゴメンね。まさかぶつかるとは思ってなくってさ」


 手でジェスチャーを交えて謝ると、ようやく状況が理解できたらしい。

 優しそうな瞳と眉を笑みに変えて、


「怪我が無くて何より」


 私が男子だったら確実に惚れそうな可愛らしい微笑を浮かべてくれた。

 一応言っときますが惚れる気はありませんよ。私女の子ですから。


「あ……」


 ふと、何かに気付いたように彼女は視線を地面に向ける。

 ゆったりとした動作に何かしら奥ゆかしさを感じながら、彼女の視線の先へ。

 マヨ玉トーストの残骸があった。

 どうやらぶつかった拍子に落ちたらしい。


「ま、しゃーないね。洗えば食べられるっしょ」


 拾い上げて砂を払う。

 もったいないから彼女の見ていない時に食べてしまおう。

 私の妖である垢舐めには、垢を舐める過程で口から体内に入るバイキンをやっつけるための抗体が、人とは比べ物にならないほど存在する。


 そのため、例えエイズだろうがペストだろうが、私は病気にかかることは無い。そういうわけで落ちてるものを拾い食いしたところで他人様の視覚的にきちゃないだけであって私にはどうということはない。


 というわけで、彼女から手早く離れて食パンの残りをパクつこうかと思ったんだけど……

 行き先が同じだったのでなぜか一緒に登校する羽目に。

 登校中の会話で、彼女の名前が分かった。樹翠雪花。黄緑色なんて変わった苗字だね~と言ってみたら、手書きで丁寧に樹翠と漢字を教えられた。


 学年は三年でBクラスだそうだ。

 歩く姿は優雅の一言で、横で歩いている私の歩き方がマヌケに思え、行きかう人を振り向かせるほどの魅力ある歩き。

 彼女の歩調と共に風が流れていくさまが見えてくるような、そんな人を魅了させるような歩き方をする人だった。


 こういう人ってやっぱりいい匂いがするのかな、なんて真奈香みたいなことをついやってしまった私は、雪花先輩が私と同じように妖使いだという事実を嗅ぎ取らせてくれたのだが、そんなこともどうでもよくなるくらい話が弾んでいた。


 そりゃもう、なんていうの? 真奈香やよっち~と同じような、その、旧知の友達みたいな感覚。

 ただ、行程のはしばしで雪花先輩の視線はある一つの方向に向かう。

 私の片手に持たれたパンの切れ端。


 おそらくなぜ捨てないのかとか、どうしてずっと持っているのだろうかとかで気になっているんだろう。

 視線がそちらに行くたびに、内心注目しないでっと祈りつつ、チャンスを窺う。


「ああああああああああああああっ!!?」


 突然の聞き覚えのある声。

 雪花先輩が声に気を取られた瞬間、私は素早く残ったパンを口に突っ込む。


「有伽ちゃんの浮気モノおおおおぉぉぉぉぉっ!!」


 どしーーーーんっ

 むしろ効果音としてはぷにょんだろうか?

 いつものように真奈香が楽しそうに私の後ろから体当たり。真奈香の突進力を利用して口の中にあったものをそのまま胃の中へと押し込む。

 窒息するかと思った……


「もぉ~~~~、有伽ちゃんったらぁ~、愛人さん作るなら作るって言ってよぉ~」


「うぅ……死ぬかと思った……」


 なんとか喉元を通り過ぎたのを確認し、声だしで異常が無いか点検。砂、ちょっと入った。

 大きく深呼吸して落ち着きを取り戻し、真奈香の拘束を振りほどく。


「あのねぇ真奈ちゃん。何度も言うけどボクは百合な世界の扉は絶対に開きません」


「え~、だってこんな綺麗な人と朝帰りしてるしぃ」


 学校は私の家じゃないですよ真奈香さん……


「この人は今朝知り合った雪花先輩だよ真奈ちゃん」


 私と真奈香のノリについていけていない雪花先輩に、真奈香が深々とお辞儀する。


「初めまして雪花先輩。私、有伽ちゃんの妻の上下真奈香です」


「うをいっ!」


 普通の自己紹介っぽく言ってたけど私は聞き逃さなかった。


「妻ってナニ!? 真奈ちゃんもボクも女の子でしょうがっ。ああ、雪花先輩、この娘はボクのただの、たーだーのクラスメイトなんですっ」


 真奈香にツッコミ入れてさらに雪花先輩に振り向きざまにフォローを入れる。【ただの】と言うところを重点的に強調しておいた。

 理解したのかしていないのか、雪花先輩は真奈香に会釈。自己紹介をして三人揃って歩きだす。


「そういえばよっち~は?」


「ん? あ~、よっち~お姉さんと口論してたから放ってきちゃった。時間ぎりぎりに来るだろうから心配しなくていいよ」


 そっか~と答えつつ、私に向けられた視線に気付く。雪花先輩がカバンに掛けられた私の両手に行っていた。


「どうしました先輩?」


 なぜ目線がそこに行くのかをなんとなく予想しながらも、気付かないフリして聞いてみる。

 すると、ビクリと全身で驚きを露にして、顔を真っ赤にした雪花先輩は、不自然に「何でもないです」と答えながらそっぽを向いてしまった。

 さらに視線が私に集まったのでそちらに意識を向ければ、なんだか楽しそうな真奈香が、「有伽ちゃんはジゴロだね~」とか訳の分からないことを言っていた。

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