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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 雪童子
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雪山探険開始

 医療室に連れて行こうかという私の気遣いに対し、大丈夫だからとしつこいくらいに否定した前田さんは、さっきまで常塚さんの座っていた席に座り、私達にも座るように促してきた。

 私と真奈香は彼女の容態を心配しながらも対面の席に腰掛ける。


「でででででわ、こ、これから私達も……雪、ゆき、雪山に行きたいとぉぉぉはうぅぅぅぅ。場所はぁあぁあぁあぁ……」


 話し始める前田さん、震えはなおも続いていた。


「ええと……ここからだと電車で一駅だね」


 震えすぎて何が言いたいのか分かりにくいので、真奈香が慌ててフォローする。


「そ、そそそそうですぅ。そこでゆゆゆゆき」


「雪女について調べるんだよね」


「は、はいぃぃぃぃ。それとそ、遭難されたらしいいいい」


「ええと遭難された人の捜索も兼ねているってところかな?」


 私も堪らずフォローに加わる。

 彼女の話し方。可愛くあるんだけど聞いてる方からするとまどろっこしくてイライラしてくる……


「そ、そのとおりですぅぅぅ。それでぇ、きききき聞き込みを……」


「山の近くで?」


「スキー客じゃないかな? 今でも何人かはいるはずだよ? 物珍しい人」


 物珍しいって……真奈香ほど物珍しい女の子に言われたくないですよ。

 言いたいことは言い終えたのか、ぶるぶるっと身震いして前田さんは部屋から出て行こうとする。


「お二人とも、こ、ここここちらに……グレネーダーのせせせ制服に着替えて……」


 ふるふると震えながら懸命に用件を伝えようとする前田さん。

 真奈香がああ~と頷き前田さんに付いていく。


「制服だって有伽ちゃん! 早く着に行こうっ」


 ついでに私の手も引っ張っられ強引に部屋を連れ出された。


「いやまぁそんなに急がなくたって制服は逃げやしないって」


「だめ~っ!! 有伽の制服早く見たいっ! 見たい見たい見ぃたぁいぃっ!!」


 握られた腕が痛い。どんどん力が込められている。


「あ、あのぅ……真奈香さん?」


「有伽ちゃんの制服ぅ。有伽ちゃんのせぇいぃふぅくぅぅぅ……うふふふふ……」


 う、うわぁ。今物凄い悪寒が背中を駆け巡ったよ。


「有伽ちゃぁん……ああ、有伽ちゃぁん……はぁはぁ……」


「待て! なんで呼吸荒くなってるの真奈ちゃん!?」


 目の焦点が定まっていない気がする。大丈夫か真奈香!?


「有加ちゃん、私がじっくりたっぷりねっとりまったりぬっちゃり脱がせてあげるか~ら~ね~♪」


 なぜかじゅるりと舌なめずりを始める真奈香さん。


「丁寧に熨斗までつけて遠慮します。ほら、散った散った。見世物じゃないんだから」


「え!? ええ~っ!? さっきまであんなにラブラブだったのに!? どうしてそんな冷たいことを!?」


「脳内妄想を現実と一緒にすなッ! 今度暴走したら一週間一メートル以上ボクに近づかせないよ!」


「ええッ!? 待って!! そんなことされたら私死んじゃう!? インコやウサギやマッチ売りの少女みたいに一人寂しく凍えながら寂死しちゃうよ!?」


 じゃくしってまた勝手に言葉作って……

 つーか、たった一週間一メートル離れたくらいで死ぬな!


「え、えと……そろそろ制服……着ませんか……?」


 私たちのやり取りに付いていけず置いてきぼりを食らった前田さんが体育座りで膝の前で両手の人差し指をつんつん突き合せながら遠慮がちに言ってくる。

 ごめん前田さん、存在すっかり忘れてました。




 電車に揺られて15分、目的の場所はそこからタクシーで向かうこと20分弱。

 運転手さんと登山の話で盛り上がりつつ、登山口付近でタクシーを降りる。

 前田さんがお金を払って……領収書まで貰ってるよ。

 思わずえらいね~って頭を撫でたくなってしまった。


 今、私たちは皆同じ服装をしていた。

 一応これがグレネーダー女性用の制服らしいのだけれども……なんて言えばいいのだろう? 物凄く地味。


 茶色だか黄土色だかわかんないけどその中間色。に短めのスカート。

 なんだかどっかの学校の冬服みたいだった。

 まぁ着るのを躊躇うような恥ずかしい服とかじゃなかったからいいけど、もう少し可愛らしいのがよかったなぁ。


 しかもスカートが短いせいで見えちゃいそうだし。

 次からはスパッツでも穿いとこう。

 ちなみに、真奈香は風が吹くたびにいやーんとか言いながらスカートを押さえて私を見てくる。

 いや、有伽ちゃんのえっちとか言われても……


「ここここここからはぁぁぁ車が入れないのでぇぇぇ歩きなんですぅぅぅ」


 前田さんの言葉に山を見上げる。

 雪のかかっているところはほぼ頂上。標高はかなり高い……

 よくもまぁ雪が残ってたな。もう冬は過ぎてしまったというのに。

 しかもここ、富士山みたいに高くないぞ? なんで残ってんだろう?


「登るの? これを? 今夕暮れ時だよ? 着いたら真夜中なっちまいますよ!?」


「だからですよぉぉぉ。雪女はぁぁ夜行性ですぅぅぅ」


「マジでッ!?」


「たぶん?」


 確証性のない理由に従い、私たちは山へと向かい始めた……ああ、明日は公欠扱いにしてくれるといいなぁ……


「それで……雪女って本当に居るわけ?」


「おそらく私たちみたいに妖使いだと思うよ有伽ちゃん」


「雪山に住み着くことが趣味だとか? 凍死しないのかね」


「わ、わたたたたしと、おおお同じで寒さに耐性があるんだと……」


 舗装された道を歩きながらおしゃべりに花を咲かせて登り始める。

 ま、しばらくはこんな和気藹々の状態で登れるだろう。

 途中辺りから言葉もなくなりそうだけど。

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