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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 雪童子
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先輩は出オチ系

 説明の内容は、私の配属される抹殺対応種処理係の仕事について。

 殆どは市民からの通報で判明した妖使いの危険の有無を調べること。

 危険じゃなければ保護観察専門の追跡係に仕事は委託され、危険であればそのまま抹消の仕事になる。

 他にも妖使いの捕獲の仕事や、張り込みなんて仕事もあるらしい。


 グレネーダーには五つの係があり、保護観察、おとりなどを主としている犯罪撲滅追跡係。

 市民からの通報の対応や情報について取り扱う通信情報処理係。

 捕まえた妖使いまたは要人を妖使いからの護衛などを生業とする貴重対応種護送係。

 その他の妖使いの関わる雑用を引き受ける総務係。

 そしてランクAクラス以上の抹殺対応種の抹殺などを主とする抹殺対応種処理係。


 構成は警察官と同じで、係長、副係長が二人、と十人前後の係員が二班に分けられるというのが基本的な係の構成だ。

 んでもこの抹殺対応種処理係、人数が私と真奈香を合わせても6人しかいないそうだ。

 ここにいる常塚さんは支部長なので人数には入らない。

 係長である隊長こと白滝柳宮と、副係長の小林草次というまだ会ったことのない人。

 それから係員はおバカで有名な志倉翼。

 今日の私たちと行動を共にするらしい先輩。名前は……


「彼女の名前は前田愛。最近ようやくこの仕事に慣れだしてきた娘で、この抹殺対応種処理係の最年少よ。それでも先輩は先輩だから、虐めないでね高梨さん」


 笑顔でそういう冗談は言わないで欲しい。


「イジメなんてしませんって。ボクは良い子ちゃんですよ!」


「とりあえず仕事については彼女から聞いてね。朝礼報告とかもあるのだけれど貴女達はまだ学生だし……一人足りないしね。その辺りのことはまだ柳ちゃんと相談中。貴女達は出勤と退勤だけをしっかり付けておいてくれれば良いから」


 そう言って席を立つ常塚さん。……私の言葉は無視されたらしい。


「それじゃあ私は支部長としての仕事に戻るわね」


 椅子の上に残されていた本の背表紙には、生意気な部下の調教法と書かれていた。

 思兼の妖使いである常塚さんが単なる忘れ物なんてするだろうか? これはまさか私たちに発見されるように置いていった? って、まさかねぇ……

 常塚さん……私たちに何か恨みでもあるんだろうか?


「ねぇ有伽ちゃん……」


「ん? どしたの?」


「前田さんって人、どこなのかな~?」


 そういえば、常塚さん、何も言わなかった。

 どこにいるんだろう、その上官は?

 私は周りを見回してみる。


「この近くに来てるのかな? でも人らしきものが隠れるとこなんて……」


 私の目に業務用冷蔵庫が止まる。


「……いや、あるよ。あるけど……ありえないって、そんなお約束は……」


 自分の考えに苦笑しながら冷蔵庫を開く。


 そこには毛糸の暖かそうな帽子があった。

 そこには手編みらしいマフラーがあった。

 そこには可愛らしい手袋があった。

 使用中のホッカイロがあった。


 それらを身に着けている小さな女の子が三角座りで冷蔵庫の中にいた。


「…………」


「ぁぅぁぅぁぅ……」


「…………」


「ぶるぶるぶるぶる……」


 静かにドアを閉めた。


「さ、さぁ真奈ちゃん。上官さんいないみたいだし、二人でがんばろっか」


「あ、有伽ちゃんダメだよ~」


 何も見なかったことにした私。

 真奈香は何かが壁を叩くような音が聞こえてくる冷蔵庫を困った顔で見る。


「可哀想だし、だしてあげようよ。イジメはダメって言われたばっかりだよ」


「いや、イジメじゃないから。まぁ真奈ちゃんがそういうなら」


 しぶしぶもう一度冷蔵庫を開いた。


「ぁぅぁぅぁぅ……」


「……えと……前田さん?」


「あいぃぃぃぃ、まままま前田ぁぁぁ愛ででででずぅぅぅ」


 ブルリと身体を震わせて、ようやく前田さん……むしろ前田ちゃんだなぁ……私より年下みたいだし……は、冷蔵庫から出てきた。


「はぅぅぅぅさ、寒い……」


 いや、そりゃぁ冷蔵庫の中は寒いよ。うん。

 というか、よく凍死しなかったな。

 なんでそんなとこに入ってたんだか……


「は、初めまして、私、前田愛です。グ、グレネーダー抹殺対応種処理係の係員です。はぅぅ、寒いよぉ」


 寒そうにガタガタと震えながら自己紹介をしてくる前田さん。一応先輩だしさん付けでいいか。

 一応、唇は紫じゃないので入って少ししか時間が経ってないのだろう。

 よかった。人知れず冷蔵庫で凍死してたりしたら大問題だ。

 主に私達より先に来ていた常塚さんが。

 幼女誘拐拉致監禁の上殺害。いや、過失致死か。怖っ。


「私は上下真奈香でぇす。よろしくね~愛ちゃ~ん」


 真奈香は年下として対応するようだ。

 まぁ、それでもいいけど一応仕事の先輩だよ真奈香。


「ボクは高梨有伽。今日はよろしくお願いしますね」


「は、はははいいいぃぃぃ。よよよよよろしくおねがががいしまずずず」


 全身を震わせているせいで声まで上擦って聞こえてしまう。

 なんだろう、このイラッとくる感情は?

 こうして対応していると震えているというより怖がる子供に威嚇している大人げない中学生といった風に見える気がするんだけど……

 なんだか頼りない上官だけど……大丈夫なんだろうか?

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