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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 雪童子
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新人研修・開始

 未だ青い色に染まった世界に、一人だけ深夜の雰囲気を纏った少女が一人……そう、私のことだ。

 すでに放課後になり、友達と共に会話を弾ませながら別かれた私の友達たち。

 いやもう勝手に騒いで勝手に帰りやがりましたよあいつら。


「いや~、しっかし上機嫌やな真奈ちゃん」


 右側によっち~、左に真奈香といった具合に見事に挟まれながら帰宅中。


「えへへ~、だってねぇ、これから有伽ちゃんと二人きりなんだもぉん」


「えッ!?」


 真奈香の激白に思わず立ち止まるよっち~。

 って待て! さっきの言葉は私も聞き捨てならんですがなッ!


「ちょっと待った真奈ちゃん、それってどういう……」


 私が答えるより早く、真奈香は懐から手帳を取りだす。


「え? それって……」


「えーっとね、今日はこのまま来るように。だって」


 その手帳は見覚えは無かったが、なんとなく想像が付いた。

 仕事の道具か何かだろう。


「え? なんなん? もしかして二人ってホントに付き合って……」


「そこ変な想像しないッ!! ちょっとアルバイト始めたんだよボクたち」


「アルバイト? 有ちゃんと真奈ちゃんが?」


「えへへ~、有伽ちゃんと一緒なんだよ」


 真奈香が嬉しそうに顔を綻ばせる。

 眩しい笑顔に少し離れた場所を歩いていた男子生徒がぽぉっとした顔をしていた。

 ふっ。青少年、こいつに惚れちゃなんねぇぜ。不幸にしかならねぇよ。なんつって。


「へ~、そうなんや。っていつ面接に?」


「ええと、一週間くらい前……あっ」


「おーい、そこ。学校あったのにどこいっとんねん不良娘ども」


「あ、あはは」


「如何わしい店ちゃうやろなぁ」


「違う違う」


 こういう場合は友達に教えていいのだろうか?


「如何わしゅーないんやったらウチもやってみようかな~」


「多分無理。かな?」


「だね~試験終わっちゃったし」


「うっわ差別や。ええもんええもん、どうせウチは余り一的な存在やもんな~」


「今度はよっち~がすねちゃった」


「ええか~有ちゃん! 明日は覚悟せぇよッ!!」


 拗ねたまま恨み言だけ吐いて走り去っていくよっち~。

 なんで私だけっ!?




 私は真奈香に付いて、目的地へと向かう。

 なんとなく場所の想像はついてたけど、場所自体は知らなかった。

 出口付近などは見たことあるものの、車を使ったりで周りを見てなかったので、そういう意味では初めて行く場所に等しい。

 夜の学校に向かう時だってタクシー使ったし、翼と一緒に外に出たときもタクシーだった。


「直線距離は学校から1キロ程度だってぇ」


「へ~、と言いたいとこですが真奈ちゃん。これどうみてもすでに2キロ歩いてないですかね」


「ま、まぁ民家が入り組んでたりするから遠回りしたりすることになっちゃうし」


 確かに、物凄く細い道は蜘蛛の巣状に張り巡らされてでもいるように家の建ち方で迷宮と化していた。

 結局、五キロくらい歩いた時点でようやく目的の建物を見つけた。


 建物。建物だよね……いや、間違いなく。

 でも、どうみても仕事場って感じしませんよ?

 支部の全景、なんていうんだっけ、あの東京ドームにビルを横倒しにしてくっつけたような……ああ、あれだ。前方後円墳!


 表向きは警察署。でも後ろの円形部分はすべてグレネーダー支部。

 警察署自体よりかなり大きなそれは、どうみても税金の無駄遣いに他ならない。


 支部長曰く、弓の的型のその建物は、弓の的で表せば赤丸部分の内周部と、黒い輪部分の外周部から成っている。いわゆる二重丸の建設物。

 関係者以外立ち入り禁止のドアのカードリーダーに専用カードを差し込めば、そこからすでにグレネーダー支部内だ。


 とはいっても目の前に広がるのは右も左も廊下だけ。

 外周と内周は分かれていて、外周部は医療施設と更衣室、オペレーティングルームしかない。


 内周部は入ったことないからわかんないや。

 ドームの入り口を0度とすると、外周部の90度と270度のとこにオペレーティングルーム。その横に男女の更衣室。

 180度のとこには内周部への通路と反対側に警察署に繋がる通路があるらしい。


 他の部屋は全部医療施設なんだって。

 真奈香が私を探して全部開けちゃったらしいからあってるとは思う。

 時々職員の寝泊り部屋として使われているとか……


 更衣室にシャワー完備だし近くにはコンビニもあるんで翼のバカなんかはほとんどここに住んでいるそうだ。

 真奈香は内周部も行ったらしいけどここの支部長、常塚秋里さんによって口止めされてるんで私にも言えないってさ。

 無理に聞けば教えてくれるだろうけど……聴く必要もないからね。


 他愛無い会話で盛り上がりながら、オペレーティングルームに着く。

 中で待っていたのは女の人一人だけで、隊長も翼の姿もなかった。

 噂をすれば影。常塚さんである。


 オペレーティングルームには大きなホワイトボードと机と椅子が適当に置いてあって、予備の椅子や机が端っこの方に置いてあった。

 窓横には巨大な業務用冷蔵庫があって、窓の外は庭が見えるようになっている。


 昔は外周部と内周部の間は吹き抜けだったんだけど、隊長の野菜が作りたいというよく分からない意見から庭に改造されてしまったらしい。

 全体会議で可決したとか焼肉パーティーで聞いた。


 当然庭には天井はない。

 内周部からいけるようになってるって真奈香が言っていた。

 無農薬野菜だそうだ。


 目の前にはホワイトボードと、隊長が座るらしい専用の席……に、今日は常塚秋里さんが座っていた。

 私と学校の裏山にダイブした噂の支部長様だ。


 少し前に分かったことだけど、この緑の髪の常塚さん、実は天然らしい。

 あ、天然パ~って意味じゃないですよ。

 んなこと考えたらミミズバーガーか逆さ磔の刑に処されちまいますよ。


 天然ってのはつまり自毛だってこと。

 私みたいに染めたわけじゃないんだって。

 緑の髪って珍しいよね。


「今日はお一人ですか?」


 何かの本を読みながら、時間を潰していたらしい常塚さんが私の声に顔を上げた。


「待っていたわ、二人とも」


 読みかけの本をパタンと閉じて、柔らかい笑みで向かいの椅子に座るように促してきてくれた。

 私は真奈香と並んで座り、対座の常塚さんと顔を向き合わせた。


「本来なら他の職員と初顔合わせ……といきたかったんだけど……ごめんなさいね。昨日の生放送事件は知っている? マグギャンという番組なんだけど……この近くにある雪がまだ積もってる山。そこで数人の人間が遭難したらしいの」


「遭難……ですか」


「ええ、消える直前雪女がどうのという言葉があったし、この近くだからウチの管轄なのよね。妖使いと関わりがあるのか今調べている最中なの。ただの怪現象だとどんなに楽か」


「隊長たちが……ですか?」


「ええ。それで……まず貴女たちはこれから三日の研修期間に入ってもらうわ」


「三日……」


「一日一日担当は替わるけど、先輩グレネーダーと一緒に仕事をして貰うの。貴女達の配属は……第一希望の抹殺対応種処理係。でいいのよね?」


「ボクはそれで。やっぱり見知った人と一緒の方がやりやすいですし……」


「私は有伽ちゃんと一緒ならどこでもいいです!」


「わかったわ。それでは、今から仕事の説明に入るわね」


 それからしばらく、支部長による説明を受けた。

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