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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 雪童子
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真奈香、猛攻♪

「有ちゃん、今日どこで食う?」


 昼休憩に入り、数学の授業の片づけをしていると、よっち~が他の数人と共にやってきた。


「有伽ちゃ~んッ! 外で食べなぁい?」


 ついでに真奈香もナンパしてきた。

 真奈香はとても可愛らしい。

 まるで人間国宝の人形師が精魂込めて一生に一度の最高傑作を作り上げたとしたらこんな顔になるに違いないと思える程、キレイな純和製人形の顔立ちだった。


 前髪は目元まで伸びていて、目は完全に髪に隠れてなかなか見ることができない。

 後ろは腰元までのストレート。

 体の線が細いことと背が小さいこともあって、本当に人形店で人形の格好していても見分けつかないと思う。


 そんなに整った容姿なら中身は……とも思うが、こちらもまた他人を気遣うことを忘れない良い子だったりする。

 そこまで来ると、もはやぱーふぇくつな上出来人間かと思いきや、彼女には二つだけ問題があった。


 その一つは、私と同じ妖使い。

 【茶吉尼天】と呼ばれる妖の力を持ち、体力腕力が常人の数倍にまで跳ね上がっている。

 本気で人を殴れば一撃必殺。相手はそのままお陀仏だ。


 他には狐に似たジャッキー君(真奈香が勝手に命名)という精神体を作り出すことができたり、空を歩き回ることもできるらしい。

 そして、彼女の欲、それが【心臓喰らい】。


 時々無性に心臓が欲しくてたまらなくなるそうだ。

 とはいえ、別に牛でも鳥でもいいそうなので、毎日焼肉店に入り浸ってる真奈香さん。

 太ってしまわないか友達ながら心配です。


 で、問題二つ目。

 ってかこっちの方が最重要大問題だ。

 それは……


「あのねあのね有伽ちゃん! 今日は久しぶりに有伽ちゃんと学校にこれると思ってぇ。お弁当作っちゃった」


 嬉しそうに私の机に乗せられた弁当の包みを自分で解いていく。


「じゃじゃ~ん!」


 もはや絶句。

 ご飯の上に広がったハートマークのピンクワールド。

 嬉しいくらい丁寧な丸文字で【ありかちゃんL・O・V・E】と書かれている。

 そう、上下真奈香。彼女の好きな人は女の子。というか……私だった。


「いやね、ありがたいけどボクは弁当……」


 ふと思い出す。

 今日は弁当を作ってないという最悪の事態を。

 なぜだろう。気付くと同時に尋常じゃない程汗が噴き出してくる。


「有ちゃん弁当どうしたん? もしかして今日は作ってないとか~?」


 いち早く私の事態を察したよっち~。

 さも面白そうなもん見つけたみたいな顔をして真奈香の弁当を私に近づけてくる。


「ほ~らここに有ちゃん用の弁当が用意されとるで~」


「うぐっ!」


「有伽ちゃん、食べて……ほしいな」


 ついでに真奈香も普段は見せない瞳をウルウルと滲ませて攻撃……って待て! それ通用するの主に男性でないですかッ!!

 確かに可愛いけどっ! 食べない罪悪感に苛まれるけどっ!


 人生の崖っぷちで迷っていると、他の友達たちも楽しそうに真奈香の愛妻弁当を勧めてくる。

 そして……数分後、結局食べてる私がいたりした。

 だって、お腹すいたんだもん。グスン。


「空腹に勝てない自分が恨めしい」


「どぉしたの有伽ちゃん? なんで泣いてるの?」


「そらもう真奈ちゃんの弁当が美味しゅうて嬉し泣きやろ」


 心配して聞いてきた真奈香によっち~が悪戯っぽい笑顔で替わりに答えた。


「本当ッ! それなら私明日も作ってくるよぉ有伽ちゃん!」


 うぅ。泣いてる理由違うけど本当に美味しいから反論できない……

 私が作ったのより数倍美味しいよチクショー。

 神様の意地悪。

 なして私と真奈香の性別を一緒にしてしまったんだ。

 私が男だったら絶対真奈香と結婚前提に付き合ってましたよっ。


 でもね。それでもやっぱし私も女の子なんですよ。

 女の子として生まれた以上は好きになるのは男の子にしたいじゃないですか。

 カッコイイ男の人に愛情弁当作ってやりたいじゃないですか!

 ドキドキしながら本命チョコ渡したいじゃないですか!!


 なのになんで……全部される側なんですかッ!!!


「なんか、有伽すごい泣いてんだけど」


「めぐめぐ気にしたらあかんって」


「そういえばよっち~、昨日のマグギャン見た?」


「あ~見た見た、雪山探検隊やろ? 生放送で途中切れなんで驚いたわ」


「何があったんだろうね? あの後急遽特別番組入ったし」


 どうやら私をイジるのに飽きて話題は別な方向に向ったようだ。


「有伽ちゃん、おいしい?」


 訂正。真奈香以外は別な方向の話に夢中になったようだ。


「まぁ。自分で作るより美味しいよ。素直に喜べないけど」


 それを聞いた真奈香は不意に私用の弁当からタマゴ巻きを箸で摘んで持ち上げる。


「あ~ん」


 何を考えたかいきなり私の口元にタマゴ巻きを持ってくる真奈香。

 即座に私は背筋を伸ばして仰け反った。

 何をなさる真奈香さん!? ま、真奈香様がご乱心でございますッ!

 誰か、誰かある――――ッ!!


「おお、真奈ちゃんの猛攻開始や」


「いけ真奈香~。有伽を落とせ~」


「応援してるよ~」


 するなッ!! 応援するなッ!!


「の、ノーセンキュー! ノーセンキューですよ真奈香さん!!」


 が、逃げようと席を立つ私を左右から友達が押さえつける。


「よっしゃ右は任し有ちゃん! 左はやいぴょん任したで!」


「りょ~かいッ!」


「待った待った待った!! 任さないし! ってか、ヤメてとめてどいて拘束するな縛るな座らすな来るな任すな任せるなァッ!! いやぁぁぁっ!! へるぷみぃーーーーーーーーーッ!!!」


 私は今日……多勢に無勢という言葉を身を持って知った。

 折角なので有伽の友人を紹介。


 上下うえした 真奈香まなか

  言わずと知れた有伽オンリーラブな少女。

  中学からの同期だが、なぜか馬が合う竹馬の友的な存在。

  有伽のためならメロスを超える程に疾走する。


 よっちー

  エセ関西弁? を使用するムードメーカー。

  ノリで真奈香の恋を応援する真奈香の幼馴染。家は隣近所らしい。

  家の前庭では頑固で有名なお爺さんが小豆をといでいる姿が毎日見られる。


 貝塚かいづか 耶伊香やいか

  よっちーの友達。よっちーが真奈香と仲がいい関係で有伽たちとも一緒につるむ様になった。

  胸は絶壁だが顔は小顔美人。


 新月にいづか 響子きょうこ

  よっちーの友人。よっちーが真奈香と仲がいい関係で有伽たちとも一緒につるむ様になった。

  耶伊香とは胸の話題で仲がいい。ツインテールで気立てのいい少女。しかし真奈香がいるためどうしても存在が霞む。

  地味に副委員長。


 真金井めぐみ(まがねい めぐみ)

  よっちーの友人。よっちーが真奈香と仲がいい関係で有伽たちとも一緒につるむ様になった。

  気分屋でノリがいい。この友人たちの中では唯一の彼氏持ち。

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