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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 雪童子
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二度目ですが自己紹介

 朝はいつも起きるのがつらい。

 特に昨日は焼肉パーティーなんぞで夜中まで盛り上がってたせいでもう、昼くらいまで寝てたい気分。


 とはいえ学校というものに行かにゃあなんない学生の身である以上、無理をしてでも起きねばなるまい。

 遅刻や無断欠席なんて頼まれてもできない良い子ちゃんですから、私は。

 息を吸って、さぁ! 一息!


「ふ~……はぁッ!」


 気合と共に上体をガバリと起こす。

 ついでにおもきし両手を上へと伸ばして背伸び。

 身体が引き延ばされる感覚が気持ちいい。


「はいはいはいはいッ、今日~も朝がやってまいりましたよ~っとぉ」


 独り言を呟きながら後ろ髪引かれるベットから飛び降りる。

 とたんにクラリとくる頭。

 よろけそうになるのを堪えて服を着替える。


 自分で見ても、毎回思う。

 え? これあんたの部屋? うっそ、女の子みたい!?

 って本気でいえる小奇麗な部屋から、酒瓶転がり悪臭漂う廊下へと踏みだす。


 あ、ちなみに女の子ですよ私。

 ついでに酒瓶は私が飲んだわけじゃなく親父が飲み散らかしたやつね。

 片付けても片付けても散らかすんで親父が片付けるまで放置することにしてる。


 ただ、親父が片付けるのも私に言われて二週間にいっぺんあるかどうか位なのでゴミは溜まる一方だった。

 ガンガンと頭の中からドラム缶をおもきし叩く感覚に眉をしかめながら洗面所へ。


 朝シャワーでもしたい気分だけど時間が無いので顔を洗うだけで済まし、ようやくはっきりしだした思考回路で朝食を作りにキッチンへ。

 大きな欠伸をかましながらトーストをオーブンでチン。

 焼けたトーストにハムを挟んでついでに目玉焼きを作れば、ハム玉トースト出来上がり。


 弁当は作る気になれなかった。というかご飯すら炊いてないので学食にするとして、親父のお昼……どうしよう?

 酒の臭いが染み付いた居間でいつものように一升瓶抱えて高いびきのクソ親父に、出来立ての朝食をお供えして自分の部屋へとトーストを持っていく。


 もう、あれですよ。一瞬でもここの空気は吸ってたくないね。

 酒臭くってたまんないやマジで。っていうか、もうすでにこの作業だけで酒の臭いが服に染み付いて……うぅ最悪だ。


 食事を済ませた私は鏡台に座って髪型を整える。

 いつもと同じように左右で括ってプチツインテールの完成!

 次いで学校へ行くために教科書その他をカバンに詰め込む。


 いつもは弁当を入れているので破裂寸前まで膨れる鞄は、本日スマートな体つきで収納を終えた。ハンカチ、ティッシュも忘れない。

 私、良い子ちゃんですから。


 流しに食器を持っていけば、水に付けておくだけで後は親父が洗ってくれるはず。

 洗ってないときは頬抓ってやる。


 時刻は丁度七時半。うむ。これならいつもと大差ない。

 昨日、水と間違えて隊長用の水みたいな奴を飲んじゃったせいで寝過ごすかと思ったけど。いや~よかったよかった。


 まだちょっと頭の中がヤバイけど、このくらいならなんとかなるっしょ。あ~、頭がガンガンする。

 あ、親父のお昼どうするか結局忘れてるや。ま、いいか。




 私、高梨有伽は中学生。

 鮠縄付属中学に通うどこにでもいる一少女。

 好きな物は甘い物。嫌いな物は多分ない……かな?

 同級生の某女の子から貰ってしまったバレンタインデーの本命チョコを食べるかどうか迷って未だに持ってるお年頃。媚薬とか入ってそうで怖いんだコレが。


 年齢は14、趣味は……ないッ!

 彼氏もとい彼女あり……じゃない、確かに告白されたし、勘違いで返事もしちまったことになっちょりますが、私は百合な世界の扉を開く気は一切ございませんので! ええ、もう本当にッ! ただいま彼氏急募中なんですよッ!


 で、妖専用特別対策殲滅課。通称グレネーダーの抹殺対応種処理係に近々所属することになった――いや、なりそうな妖使い。

 妖の名は【垢舐め】。


 そう、妖使いだ。

 何時の頃だったろう? 初めは二人の妖使いが出会ったことが始まりだった。

 数多くいる人々の中で、たった二人、互いのみを認識できる。一定範囲ならどこにいても通じ合える運命の人。


 彼等はやがて超能力者としてテレビデビューを果たす。

 やがて人々の中にポツポツと現れだす自称能力者。

 その中にいる本物の能力者たちが団結しあい、彼等はすぐに百人を超えた。自らを新人類【妖使い】と提唱し始めたのもその頃らしい。


 発現方法は極めて突然。生まれたての子供から、死ぬ寸前のご老体まで、家族ぐるみで発現することもあれば、一人だけということもある。

 ただ……その妖使いの誰もが、昔いたとされる人以外のもの【妖】に似た欲望を持っているということが問題だった。


 例えば猫又は死人の上を飛び越えるのが趣味になったり、永遠に食べ続ける餓鬼なんかは体の構造まで変わる。

 胃や腸の消化力が普通の人と違うのだ。

 しかも、栄養なんて最低限の栄養以上取れなくなるばかりか、残りカスすら出さずに消化してしまうようになる。


 この【欲】に抗うことはほぼ不可能。

 なんとか理性で保つこともできなくもないけど、あんまり我慢しすぎると発狂しちゃう。

 現に私も、恥ずかしながら垢を舐めたい衝動に駆られる時があったりなかったり。


 で、今から八年前のこと。当時私は六歳。

 妖使いによるもっとも記録的な大惨事が起きた。

 被害総額7億円以上。死者187名。重軽傷者702名。犯人は当時6歳の女の子。

 今では『大阪城の惨劇』と名高いこの事件、きっかけは小さな少女が覚醒した妖の欲望によるものだった。


「皆が私を怨んでいたの。だから、切り殺さなきゃって思って……」


 妖の名はガシャドクロ。人の怨念から生まれたという妖怪だ。

 三大欲求に次ぐ第四の欲求として殺人願望に目覚めた彼女は、突如として近くの民間人に襲い掛かり、たった一本のサバイバルナイフで一般人、警察、機動隊を相手に889人もの犠牲者をだした。


 当然、警察、機動隊は威信をかけて彼女を捕らえた。

 700人以上の損害は、実はこのときの警察などからでたものだった。

 警察側は彼女の死刑を訴えたが、当時の裁判所は精神が未熟なため更生の余地があるとして、でも、少年法では異例の無期懲役を言い渡した。


 少年院には置いておけないということで、今もどっかの刑務所に監禁されているはずだ。

 で、この事件で妖使いの危険性が囁かれ始め、マスコミに取り上げられはじめた結果。私の居るグレネーダーが設立されたのである。


 私は【陰口】という妖を持つ妖使いによって犯罪者扱いされたものの、隊長や翼の助けもあってこの妖専用特別対策殲滅課……グレネーダーに入隊した。


 元々手に負えない妖使いに対抗するための特殊機関。

 使える妖使いならほとんどの奴が入隊できてしまう。

 さすがに快楽殺人とかしてたらダメらしいけど……


 80歳くらいのお婆さんがこの前追跡係に就職したんだって。

 時速80キロで走れるそうで、若いもんには負けんぞいとかってライバル宣言されました。

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