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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五節 ダーキニー
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茶吉尼天の恋・エピローグ

「ようやく三嘉凪の潜伏した都市が判明した。高港市だ」


 朝イチの定期報告にやってきた支部長が、開口一番にそう答えた。

 今、この場所に居るのは五人。

 俺と師匠こと白瀧柳宮と小林先輩と支部長。


 それから、グレネーダーへの入隊時の願いでバイトができるように願いでて、以降ほとんどこの場に出てこなかったらしい隊員、常塚秋里。

 黛副指揮官は、あの時支部長に連れて行かれて以降、姿を見ていない。


「そこでだ、今日をもってここ、国原支部妖専用特別対策殲滅課抹殺対応種処理係を解散し、高港市に全員移ってもらう。ここの処理係はまた別のが入ってくる手はずになっているから気にしなくてもいい。それと、常塚秋里、お前を高港支部の支部長に任命する。詳しい話は現地に来ている上官から聞いてくれ。白瀧以下は現状維持だ」


 用件だけ伝えると、居づらいようにそそくさと帰っていった。

 まぁ、師匠が無言の圧力かけまくってくるからしゃあないっちゃしゃあないけどな。


「高港市か……」


「異動ですか。黛君の場所も移せますかね?」


 不安そうに呟く小林先輩。

 黛副指揮官が抜けて以来、彼が副指揮官に納まった。

 彼は保留状態だった入隊時の願いに、黛副指揮官の身の安全と、自由にいつでも会えることを条件として提出。

 師匠の支部長への圧力もあって受理されたらしい。

 そのため、黛副指揮官は今、妖能力研究所国原支部の棟内で暮らしているらしい。


「連れていくのか? 大いにモメるぞ」


「覚悟の上ですよ。斑鳩君ではありませんが、黛……いえ、真由は僕が一生をかけて傍に居ることを決めましたから。絶対に、研究対象になどさせません隊長」


「そうか……ならば全力を尽くせ。私も協力しよう」


 師匠が微笑む。

 悲しみの混じったその笑みは、見ているだけで哀愁をそそる。


「あ、あの……柳ちゃん……」


 遠慮がちに声をかけてくる常塚さん。

 あの事件以降、師匠との仲はギクシャクとしている。

 師匠は普通にいつもどおりのそっけない態度だが、常塚さんの方が妙に距離を置いているといった感じだった。


「どうした? 秋里」


「支部長……ってどうしたらいいのか、私」


「なるようになる。お前は心配しなくてもやれる。頭はいいからな」


「そ、そんなこと……」


 それきりまた黙りきってしまう。

 部屋の中が暗い空気で一杯で、居心地悪いったらありゃしねぇ。

 次の高港市って場所で入ってくる新人が華やかな奴であることを祈るぜ。


 そういやぁ美果と離れ離れにならないようにあいつにも引越ししてもらわねぇと。

 場所はグレネーダーが用意してくれるみたいだし、美果の親にでも伝えとくか。


「さて、本日解散ということらしい。各自高港市へ移住の用意をしてくれ。また高港支部で会おう。集合は支部に一週間後。以上だ」


 師匠が席を立つ。

 師匠は相変わらず真っ黒な衣装に身を包んでいる。

 常塚さんが師匠の支部入隊祝いにプレゼントした奴らしい。


 ただ、その中に、一つだけ違う色が混じった。

 銀色のロケット。普段は黒いコートで隠れているが、時々ちらりと首元に見える。


 それはきっと彼女との約束。

 肌身離さず持っていることで、せめて一緒に在ろうとする師匠の決意。

 一度だけ見せてもらったロケットの中身。

 師匠と隣で暖かな笑みを浮かべるあの女のプリクラが、たった一枚、大切に付けられていた――

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