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茶吉尼天の恋・プロローグ
遠い、遠い昔の話
遥か昔の絵本の話
とても悲し悲劇の話
女は男に恋をした
決して振り向かれぬ一目惚れ
男は人の王子様
すでに伴侶も決まっていると
女も承知していたものの
やっぱり諦めきれなくて
種族が違うと分かっていても
全てを捨てると分かっていても
せめて傍に寄りたくて
だから……禁忌に手を染めて
主張する事ができなくて
元に戻る事も出来なくて
失意のうちに泡となる
それは、はるかな昔の物語
王子と人魚の悲劇の童話
報われることのない恋物語
でも……そうありたいと私は
願ってしまった……




