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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五節 茶吉尼天
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時間切れ

 真奈香に一緒にグレネーダーへ入ることを伝えると、喜んで私の事後報告を受け入れてくれた。

 本人曰く、有伽ちゃんと一緒ならどこでもかまわないそうです……


 翼のバカが彼女ができてよかったななぁんて茶化してくれるし、あとで泣かす。

 三人でバカ騒ぎしながら隊長の待つ校庭にやってきた。


「隊長~ッ!」


 手を振りながら、私は隊長に駆け寄った。


「有伽、やはり無事だったか」


「やはりって師匠、こうなるって分かってたんスか」


 翼の問いに苦笑する隊長。


「ああ。お前たちと合流する前に真奈香とは会話させてもらったからな。安全だということは分かっていた。そうでなければ有伽一人でなど行かせるものか」


 隊長……意地悪です。

 しかもそのせいで私のファーストキスが一生の思い出ワーストファイブ堂々一位にランクインする最悪の結末になったし。

 ああ、もう、これ削除依頼だすから誰か脳内から記憶消してくれぃっ。

 というか、隊長、普通に真奈香のこと呼び捨てにしてるし。言わないでおくけどさ。


「で、真奈香はどうすると? 一応、前の茶吉尼は人でなくとも動物や魚の心臓でも欲は抑えられていた。犯罪らしい犯罪も起こしていないので、真奈香ならばすぐに上層部に受け入れられるだろう」


 なるほど、人以外の心臓なら焼肉店でもハツとかヤサキという名前で見かけたりする。それなら大した問題にはならないだろう。

 上層部への脅威とやらも真奈香の性格なら安全だと思う。

 私がいなくなったらどうなるかわかんないけどね。


「それはこちらも大丈夫です。二人でグレネーダーに……」


 言いかけた私を制し、隊長が校門を見る。


「いや、どうやら全てが無駄に終わったらしい」


 隊長が冷たく告げた。


「師匠? どうしたんです?」


「ゲームオーバーというやつだ。お前の負けだ有伽」


 負け? いきなりどういう意味?

 のっぺらぼうは死んで、陰口もいない。

 真奈香も害はないと証明できたはずだ。


「だってもう……」


「言ったはずだぞ有伽。お前が生き残るにはグレネーダーに入隊することだけだと」


 ついさっき真奈香と入隊するって言ったはずだ。

 隊長が何を言っているのか意味が分からない。


「口頭だけでは入隊したことにはならないってことよ、高梨さん」


 答えは別の方向からもたらされた。

 混乱する私にかけられた声は私が良く知っている声だ。でも、この場にはなんら関係ない。いるはずのない人物。


 だけど……エメラルドグリーンのウェーブがかかった髪は見間違うはずがない。

 私でも翼でも隊長でも、まして真奈香でもない第五の人物。


「なんで……」


 なんであなたがここにいる?

 その問いを代弁するように、隊長が口を開く。


「高港支部特殊支部長、常塚秋里とこづかあきり。彼女に有伽の抹消命令が今、移った。秋里の仕事……ファミレスのバイトが終わったからな」


 そう、常塚さんだ。

 ファミレスでウェイトレスをやっていたはずの、隊長の知り合い。

 何がどうなってるのか、私はさらに混乱する。


 でも、考えてみれば、ピースはあった。

 隊長の幼馴染。隊長の願い。一緒にグレネーダーに入った知人。常塚さんがグレネーダー関係者であったとしても不思議じゃない。

 あれ? ってことは、ファミレスのバイトのついでですか? 私の抹消って!?


「で、でも、ボクの鼻には常塚さんが妖使いなんて……」


「有伽、秋里はこれでも年頃でな。香水くらいは常用している。それにコイツは妖使いなのかどうかすらよくわからんからな。嗅ぎ取れなくとも不思議はない」


「これでも、はないでしょう柳ちゃん。まぁそんなことはどうでもいいのよ。高梨さん、グレネーダーへの入隊方法は副指揮官以上が二人以上いるとき、彼らの決めた試験によっての合否。もしくは正規筆記試験、面接、能力検定の結果による合否。この二種類のどちらかに加え、上層部の許可が必要よ。高梨さんは……上層部の許可はもちろん、どちらも受けてはいないでしょう?」


「そ、そんなの一言も聞いてないですよ?」


「そう? でもよかったじゃない。ここには今、副指揮官以上が二人もそろったわよ。ほら、私と柳ちゃん」


「そ、それじゃあ……」


 よかった。隊長が常塚さんに頼んでくれたんだ。

 たぶん私の家に来る前に。

 検問に捕まってたのは嘘で、ファミレスで常塚さんに。やっぱり私グレネーダーに入れ……


「そうね。テストはしてあげる。テスト内容は簡単。私を倒すこと」


 ……え? 今……なんて言った?


「合否は直接生か死か。とても楽なテストでしょう?」


 不適に微笑む常塚さん。


「そんなの……」


「私はあなたという脅威の排除。あなたは私という試練を超えてグレネーダーになるのが試験。わかった?」


 なにソレ? なに、この状況?

 意味が理解できていないのに勝手に進展していく。


「幸い、これはあなたたち二人の検定試験でもあるそうね。そっちは二人がかりでかまわないわよ」


「なんで……そんなこと」


 いいじゃん、私はともかく真奈香は役立つし、裏切り行為なんて絶対しないんだから。


「今から戦闘服に着替えてくるわ。その間に決めてしまいなさい。試験を受けて死ぬか、逃げだして死ぬか、好きなほうを選ぶといいわ」


 言いたいことだけ言い終えた常塚さんは踵を返す。


「柳ちゃん、着替えてくるね」


 隊長に一言呟いて校舎に消えていく。


「有伽ちゃん、その、ごめんね、私のせいで……」


 私の裾を引っ張りながら真奈香が遠慮がちに言ってくる。


「違うよ、真奈ちゃんのせいじゃないって、どのみち筆記試験なんて受けてる暇はなかったんだから」


 そうだ。たった一日でそんなもの受けたって結果がでる前に私は排除されていたことだろう。

 だから、これはチャンスでもあるわけだ。

 多分、隊長たちからの最終試験。

 そう、思いたい。


「さてどうする?」


 隊長が語りかけてくる。


「逃げてもいいんだぜ? できるだけ引き止めて見せるからよ」


 翼の用意してくれる甘い逃げ道。けど、これは選んではいけない選択肢。


「逃げないよボクは」


「戦いには向いてないのだろう?」


「別に勝とうなんて思いませんよ。知り合いを殺してグレネーダーになんて

なりたくないですから。でも、負けません。生きてグレネーダーに入るって

、真奈ちゃんと二人でなるって決めたから」


「勝たねぇのに負けねぇって……矛盾してねぇか?」


「死ぬか殺すか。答えは二択なんて誰が決めたんですか? 隊長の釣瓶火だって触らないっていう三択目があるんです。ボクは三択目を選びます」


「なんだよそれ」


 翼が呆れる。それに反応を返さず、私は横で心配そうにしている真奈香に向き直った。


「がんばろう、真奈ちゃん」


「う、うん、私がんばる」


 作戦なんてある分けない。能力が分からないから対策すら立てられない。

 ただ、負けられない戦い。ううん。戦いなんてもんでもない。

 私は争いには向いてないし、真奈香がどれほど強力だってど素人。

 相手が妖使い専門の抹殺者。一方的になるのは目に見えている。

 だからきっと頭脳戦。考えて考えて相手の隙を付く。

 そうして、きっと倒してみせる。


名前:  上下うえした 真奈香まなか

 特性:  有伽一筋百合属性

 妖名:  茶吉尼天?

 【欲】: 心臓を食べる

 能力:  【空の遊歩者】

       空を自由に歩く、または駆けることができる。

      【身体強化】

       心臓を抉り取るために身体が強化されている。

       人間の肉体なら初速度無しで突き破れる。

      【ジャッカルみたいな精神体】

       精神体を作りだすことができる。

       ただし、操作は作りだした本人に依存する。

      【死期悟り】

       知人の死期を知る事が出来る。

       この能力は本人の関心度に依存する。

      【???】

       相手に触れる事で相手の■■■を知ることができる。

      【不幸体質】

       この妖に目覚めた者は知人の死を遠ざけるため、

       自身の幸運を相手に分け与える。

       (真奈香の場合この能力が有伽に付加される)

      【同族感知】

       妖使い同士を認識する感覚器。

       個人のよって範囲は異なる。

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