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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 のっぺらぼう
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夜の学園・赤嘗の怪

 コンビニで骨付きフライドチキンを買って、私は深夜の学校に着いた。

 何が起こるかわからない以上、何か奥の手は持っておきたいものである。

 それが尖った骨ってのもちょっと頼りないけど……


 相手に悟られずとっさにだせるものとして、思いつくのがコレしかなかった。

 後はまぁ、勝手知ったる我が学校だ、なにかしらあるだろう。


 夜の学校に着くと、いつもと全く違っていた。

 雰囲気も空気もなんだかひんやりとしていて、幽霊や妖怪がでてきてもほんとに違和感がないくらい人の気配がなかった。


 妖使いの反応すら一つもないからかなり恐いんですけど……

 のっぺらぼうさん、妖反応ないからなぁ。

 居るのはわかるけど反応わかんないから居ないのといっしょだし。


 校門をくぐり、下足場まで上がったものの、暗闇の恐怖で足が震える。

 シンと静まりかえった世界に、月明かりが薄く窓から差し込む。

 下足場にも多少光はあるものの、言い知れない恐怖感というか、不安感というか。月明かりの届かない場所には何かが潜んでいる気さえする。


 自分も妖怪じみてるとはいえ、夜の学校は恐すぎる。

 すのこに足を乗せた瞬間、カタンと不気味な音が響く。

 いや、すのこが歪んでただけなんだけどさ。怖いんだよこれが。

 あ、無理。これ以上いけないかも。


 とっさに適当なロッカーを開ける。

 よっちーの上履きだ。ということはここは私たちの下足箱か。

 無意識に口内の骨を取りだして手に持った。


 衣類などに比べて、足の裏を包んでいる靴は大量の垢を含んでいる。

 靴下をしていようとも、それはアポクリン腺液とかいう物質と一緒に靴底に溜まってゆく。

 垢舐めにとっては珍味の一つであったりなかったり。


 とくによっち~は体育の後に靴下を履かずに上履きを履く。

 本人曰くムレるかららしいんだけど。

 ああ~なんか……また舐めたくなってきたなぁ。


 でも、なんていうんだろう、よっち~のより隣の靴の匂いに惹かれてしまうような気がするな。

 真奈香のロッカーに……って、あれ? 真奈香の上履きがない?

 帰ってないのかな? スニーカーあるし。

 なるほど、外履き用だからこっちに惹かれたのか。


 上履きは通気性がいいから外履きより美味しくないんだよ。

 ま、いいか。下足だろうと上靴だろうと……いや、待て自分。

 私は今何を考えてた? 普通に友達の靴に欲情してましたか!?


 だ、だめ、でるな舌! 口からでるんじゃないってば!

 私の制止もなんのその。靴に向かって舌が延びだす。

 既に私の意志では抑えきれない。

 最近寸止めが多かったせいで理性の決壊も早いんだ。


 ヤバイ、舐めちゃう……

 私の理性が壊れかけたその瞬間、私の体に光が当てられた。


「う、うわああああああああああっ!?」


 舌を伸ばしたまま振り向く私に驚き、懐中電灯を落とした誰かが悲鳴を上げた。

 理性を保とうとしたせいで危機反応能力が低下してた。

 人の気配に気づかないなんて。


「お、驚かすなよテメェ。お、怖気づかずによく来れたな」


 自分が怖気づきながら、モヒカンヘッドが顔をだす。

 こいつってもしかして、


「のっぺらぼうさん?」


「そ、そうだ。高梨有伽」


「また奇抜な格好してますね」


「お前の舌よりは奇抜じゃねぇよ。まぁ、アレだ。こういう顔の方が少し変なとこにいても怪しまれないんだよ。ああ、不良がいるな程度のもんだ」


「そうなんだ……で、なんでここに呼んだんですか?」


「あ? ああ、そりゃぁアレだ。とりあえず付いてきな」


 それだけ言うと、懐中電灯を拾ってのっぺらぼうが歩きだす。

 ふむ。いきなり攻撃してきたりはしないようだ。

 大丈夫、のっぺらぼうの性格からして私に襲い掛かってくる事はないはずだ。赤舐めにトラウマ抱えてるみたいだし。


 私は真奈香のスニーカーに延ばされようとしていた舌を口内に収め、口の中に骨をセットし直し、のっぺらぼうの後を追った。

 果たして、彼は何を伝えようとしているのだろうか?

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