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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第六節 紫鏡
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眼鬼と復讐者・エピローグ

 二日がたった。

 斑目稲穂は自ら警察に自首していた。

 本人は元の封印部屋への帰還を要求したのだが、前回簡単に脱走されたので、もはや牢獄の意味がないと、グレネーダー本部での会議が始まったらしい。


 その関係で常塚さんが東京の警視庁へしばらく出張してしまい、斑目稲穂は会議の結果がでるまで高港の刑務所に収容されることになった。

 収容所には、紫を塗りたくった鏡が一枚置かれているらしい。


 ま、なんとか一件落着ってわけだ。

 でも結局紫鏡に吸い込まれた留々離さんや伊吹さん、そして大倉道義は行方不明のままで、あの駐車場での事件以来家に帰った形跡すらなかった。

 きっと、今も鏡の向こうの世界に居るんじゃないかな。


 隊長からの話を聞きながら傍らのベットで眠る真奈香を見る。

 傷こそないが、彼女は病院を抜け出してきたのだ。

 安全のため精密検査を受けて今、病院のベットで可愛く寝息を立てていた。


 彼女はいつも私を助けてくれる。

 いつも身勝手に傷付きに行ってしまう私を快く守ってくれる。

 彼女は……姉を恨んだ稲穂のように私を恨んでいるだろうか?

 自分からかかわらなくてもいいことに首を突っ込んでいく私を……


「有伽ちゃん……そこだめぇ……」


「…………」


 少なくとも、愛想は付かされていないようだ。

 隣に佇む隊長と顔を合わせながら、二人して苦笑いを浮かべる昼下がり。

 失った友達と居場所に別れを告げて、今ある居場所を私は……もう失いたくないと思った。


 ――――――――――――――――――――――――


 明かりのついていない暗い部屋に、わたしはいた。

 この部屋には四人の妖使いが集まっている。

 わたしと、鈴と、伊吹さんと三嘉凪さん。


 鈴とわたしはベットに座り、三嘉凪さんはそのベットで大口開けて寝入っている。

 さっき帰ってきたばかりの伊吹さんが、部屋に入るなり経過報告をしてくれた。


「じゃあ、ガシャドクロは元の鞘に納まっちゃったんだ?」


「ああ、残念ながらな。あわよくばこちらに引き入れようと思ったんだがな。本当に残念だ」


「全く、伊吹が実名で潜入なんてヘマするから」


「おいおい、実名捜査は探偵の基本だぜお嬢」


 何かが間違っている。

 そう思いながらわたしは手探りでベットに手を這わす。

 指先に触れた感触に喚起を抱き、そっと引き寄せ抱きしめた。


「それで? これからどうするの、迷探偵さん?」


 毛むくじゃらの体をギュッと抱きしめながら、わたしは伊吹さんに問いかける。


「ああ、それなんだが、ちょっと面白い奴と会ってな」


「面白い奴?」


「ああ、鈴にとっては面白くないことかもしれんがな」


 へぇ……と興味深そうに、わたしの隣に寄り添っていた少女が答える。


「奴が、お前のお姉さんの……代わりを見つけたらしい。しかも上下真奈香も一緒だ」


「真奈香お姉ちゃん、グレネーダーに入ったんだ」


 ちょっと意外と思いつつ、わたしは毛むくじゃらのぬいぐるみを高々と掲げる。

 暗闇になお黒い瞳が見つめ返してきた。

 お気に入りのクマのぬいぐるみだ。


「魂が……古巣に懐かしさを覚えたのかな?」


「どっちにしても……そろそろこっちも動いた方がいいんじゃない?」


「そう言うだろうと思って次の作戦を考えてきたさ。今回は悪いが手伝ってもらうぞ、ミカ」


 名前を呼ばれ、わたしはぬいぐるみをベットに置いた。

 そっと立ち上がり伸びをする。


「いいの? わたしがでるとややこしくなるよ。特に……翼お兄ちゃんとか」


 ニタリと笑って見せたわたしに、伊吹さんは魂から笑って見せた。


「それが狙いさ。さぁ、鹿鷹聖良に会いに行こうか」


 そして、わたしたちは動き出す。

 もう、後には引けず、昔にも戻れない辛い道。

 でも、過ぎ去った過去があるからこそ、今ある道を真っ直ぐに進んでゆける。


 わたしはもう後悔しないと決めたから。

 たとえ誰が敵になろうとも……迷わない。

 それが、今のわたしの所在ありかだから。

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