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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 陰口
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翼と美果の関係

 正直に言うと、聞き込みはあんまし意味なかった。

 そもそも噂の中心人物である私を知らない人が噂してるので、誰が誰から噂を聞いたのかすら判別できない。


 むしろ、始めの人も影で刷り込みされたんじゃ?

 という些細な私の呟きに気勢の削がれた翼がよろよろとベンチにもたれかかった。


「しかしよぉ、見事なまでに統一されてるよな」


 すでに夕方になってしまった。

 何の進展もないままに今日が終わろうとしている。


「なにが?」


 公園のベンチで一休みしながら、私は隣で項垂れる翼に聞き返した。


「噂だよ。統一されすぎてんだ。尾ひれ背びれがついてねぇ」


 そういえば、老人から小さい子供にいたるまで、噂の内容が全く一緒だった。


「改めて聞いてみると不自然極まりねぇ」


 公園で遊ぶ子供たちを見ながら、気のない返事で返す。


「そうだね。だからその不自然さを指摘したから噂を無効化できたんだろうけど」


 二人してしばらく黄昏る。


「なぁ、高梨。実はさ、美果と俺、知り合いなんだわ」


 不意に、翼が呟いた。いや、なんとなく予想はしてたけどね。


「……恋人さん?」


 私は助かった訳ではないけど、陰口の仕業だと分かって生き残っている。

 でも、出雲美果は噂だと気づかれず、指摘できた人物がいなくて翼の手で殺された。

 それが無駄なことをしたってことに気づいてしまった今、翼の心境は複雑だろう。


 今の翼は思いつめているようで見ていられない。

 私に話して楽になるのなら話してくれた方がいい。

 いつものおちょくりがいがある翼に戻ってもらいたいものである。


「いや、まだ従兄妹だった。小さい頃はよく遊んだよ。お子様ランチを二人でよく分け合ってたのはいい思い出だ」


「そっか、従兄妹さん……」


 翼の従兄妹が出雲美果だったんだ。それなのに翼は彼女を……


「結構お前と似たところがあってな。初めお前を見たとき美果の幽霊かと思った」


「はい? それってつまり、私に興味あるとか言ってたのって」


「美果に似てたんだ。気になることに突っ込んでく性格とか。他にもいろいろと。それにその、美果は……」


「婚約者だった。とか?」


 なんて、さすがにそんな都合のいい設定は……


「ああ。結婚の約束なんてのもやった。十年以上前の話だ。でもよ、あいつ、今だに覚えてやがったんだ。遊園地に行った時、あいつの死ぬ一日前だ。

もう少しで結婚できるね。なんて言ってきやがった」


 あったよ設定。子供の頃は良くやったよね、近所の男の子とかと。

 私も幼稚園の時は20人くらいと約束した記憶あるよ。女の子ともやったね。うん。

 もう、誰としたかすら覚えてないけど。


「すでにあいつが妖使いだってことくらいは分かってたし、人魂使いだってのも分かってた。知らねぇだろうけどな、あいつの妖はB級なんだ。ぎりぎり抹消対象にはならなかったんだ。それに俺の願いは従兄妹……美果の安全の保障だった。なのに……」


 きっと、他の奴に殺されるくらいならと、翼は自分から名乗り出たのだろう。グレネーダーとして、出雲美果を抹殺することを決めたんだ。


「何であいつが死ななきゃならなかったのか、ずっと疑問だった。それでも俺が抹消するのに立候補した。美果を殺した奴を怨むくらいなら、俺は自分を怨むほうがマシだったから。師匠みたいになりたかったから……なのに、許せねぇよあのババァ」


 翼が拳を握る。

 力の入れすぎで、震えて爪の当たっているところが白くなっている。


「翼……」


 声をかけるべきなんだろう。でも、私にはかけるべき言葉が見つからない。


「なぁ、高梨……」


 翼はベンチから立ち上がり、背伸びをする。


「なに?」


「お前の作戦、使ってみようぜ」


 振り返ってきた翼は、歳相応に大人びて見えた。振り向かれた瞬間にドキリとしながらも、反射的に頷く。


「う、うん」


 慌てて私も立ち上がる。


「俺が狩ってやるっ」


 格好付けて浸ってますよ翼くん。

 周りではしゃぐ子供たちという背景がマヌケな感じだけど。

 やめて、だるまさん転んだぁとか言われると気分が萎えるって。

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