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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 百目鬼
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真奈香さんアレを鷲掴む

 翌日。私が教室に来ると、珍しく志村勝也が学校に来ていた。

 ちゃんと着席してるなんて……一年ぶりじゃない?


「あらま珍しい。今日はやけに早いですな勝也ちゃん」


「……アリアリか」


 なんといいますか、いかにも重大問題抱えちゃいましたよって面してるね。こっちまで気が重くなりそうだよ。


「何かあったの?」


「あ……ああ、まぁ、な」


 歯切れが悪い。話しにくいことなんだろうか?


「このクラスによ、良知留ってのいるだろ?」


「? もしかして……斑目良知留?」


 ……このクラスにいたの? あの被害者。


「今日は来てないのか?」


「うん、たぶん?」


 私の言葉に頭を抱えて絶望に染まる勝也ちゃん。

 って、もしかして……私の中でようやく結ばれていく一本の線。

 とりあえず、勝也ちゃんを指して言うべきかどうか迷ったんだけど、真奈香が登校してきて安全が保障されたので、言っちまいましょう。


「暴行犯、発見?」


 疑問口調で勝也ちゃんを指してやる。

 途端に勝也ちゃんはクラス中の視線を浴びることになった。


「な、ち、違うッ! 俺じゃないッ! 本当だって!」


 多分、彼は直接関わってはいないだろう。

 昨日、聞かされたんだ。集会で。

 つまり、犯人は仲間の三人。犯人の数も合ってるし、確定だろう。


「詳しく……聞かせてくれる?」


「だ、だから俺じゃねぇって」


 私と勝也ちゃんの騒動に、どうしたの? と真奈香が寄ってくる。

 私は勝也ちゃんと真奈香を連れて屋上へでることにした。


「真奈ちゃん、勝也ちゃんが斑目良知留の事件に関係ありだよ!」


 勝也ちゃんの腕を引っ張って屋上を目指す。

 ドアを開いて屋上へ。適当な場所に勝也ちゃんを座らせると、真奈香と二人で詰め寄った。


「だぁかぁらぁ、俺じゃねぇんだよ」


「でも、知ってるんだよね? 貴明だっけ? のやったこと」


 言った瞬間、勝也ちゃんが息を呑む。

 この反応だけで十分なんですけど。


「どういうこと? 有伽ちゃん」


「どうもこうも、昨日ね、勝也ちゃんはこう言ったのだよワトスン君。貴明の奴がヤバイことしたらしい……ってね。そして集会に呼びだされて、今日は問題抱えちゃいましたっていうこの表情。さらに斑目良知留が関係しているとなればッ!」


「うわぁ、有伽ちゃん探偵さんみたい♪」


 真奈香に拍手された。悪い気はしないね。


「言うと思うか? 俺がダチを不利にすることを」


「言わなきゃあんたも同罪よ勝也ちゃん。今の良知留さんの姿見て……ほんとに同じ言葉いえる? あんなことした奴を庇えるの?」


「……そんな……ヒデェのか?」


「ええ。今も昏睡状態で……傷物にされて、左目まで潰されて。全身包帯で巻かれた姿なんて見ちゃいられないよ」


 喉を鳴らす勝也ちゃん。

 しきりに目線を泳がせ、額から汗を噴きだしていた。


「わ、分かった……言うよ。でも、あいつ等に関わるのは止めとけ。今殺気立ってるからよ。斑目の二の舞になるかも知れねぇぞ」


 殺気立つ? なんでそいつらが殺気立ってんの?




 勝也ちゃんの話によれば、仲間の名前は遠藤高貴。日留里貴明。大倉道義の三人で、日留里貴明が斑目良知留に一目惚れ。

 仲間内で相談した結果ナンパすることに決定したんだとか。

 ただ、決行日は勝也ちゃんだけ用事があって、三人でナンパしに行ったらしい。


 が、いざナンパという時点でモメにモメた。

 というか、斑目良知留が手酷く貴明を振ったらしく、止め役の勝也ちゃんがいなかったせいもあり、キレた貴明が逆上したまま襲いかかり、これに遠藤高貴が便乗。

 最後に大倉道義が左目を抜いたらしい。


 さすがにその姿を見た三人は自分たちのしたことに恐れをなして逃げ出したそうだ。

 それだけならば、犯罪者となっただけ、彼らは別に罪の意識を感じはしなかっただろうし、その内忘れたはずだった。


 でも……その数時間後のことだ。

 彼らにとって最も恐ろしい事態が起こった。

 勝也ちゃんは両手を組んでカタカタと全身を震わせながら、その先を言葉にする。


「貴明の掌にさ……できちまったんだ」


「できた?」


「ああ。目ができた」


 目? また……目ができた?


「貴明は深夜、右手の痛みに目を覚ましたらしい。瞬きもすれば涙も流す。突けば痛みが全身を駆け巡る」


 だから、すぐに仲間に連絡し、昨日の集会になったらしい。

 事が事だけに、彼ら犯人たちは神経質になってしまっているらしかった。

 それにしても……


 目が生える? まるで斑目良知留と同じ現象だ。

 同じ妖使い? まさか本当は斑目良知留が妖使いになっていて……

 いや、でも、私の鼻には妖使いだと反応でなかったし、というかまだ昏睡状態だから反撃も何も無理だよね。


「勝也ちゃん、その三人に会いに行こう」


「アホか、殺気立ってるって言っただろ。俺でも止め切れねぇ。そんなとこに女二人を連れて行けるかッ!」


「真奈ちゃんがいるから大丈夫だってば、ほら、さっさと案内しちゃいなさい。じゃないと、友達三人……失うよ」


「失うって、なんでだよ」


 早く会っておかなければならない。

 相手の性格を知ったり、罪の意識を確認させたりするのもあるけど、一番重要なのは、やっぱり彼らの安全だ。


 少し前のことだ。立て続けに私の前で二人が死んだ。

 陰口の妖使いとのっぺらぼうの妖使い。

 死んだ。いなくなった。今まで私の目の前にいたのに、消えてなくなった。物言わぬ肉塊に変化した。それは……もう、二度と見たくは無いものだった。


 例えそれが、今まで敵対していた相手だとしても……

 そして、グレネーダーの仕事柄、私自身が抹消という形で妖使いを殺さなければならないことも起こりうる。だから、せめてそれまで、できるだけ助けたい。


 全ての人を助けることは私には無理だから、私の目に映る人たちだけでも、私の手が届く人たちだけでも助けることが可能なら、私は助けたい。

 時間が惜しい。一秒でも早く会わなければ手遅れになるんじゃないかと思ってしまう。

 相手が不明なだけに焦りも強く、私は強い強迫観念にも似た思いで三人の犯人に会わなければいけないと思った。


「真奈ちゃん、やっちゃって」


「は~い」


 返事を待つ時間もないと、真奈香に指示をだす。

 途端に勝也ちゃんを軽々持ち上げて、サバ折り体勢にもって行く真奈香。

 ……って、掴んでる掴んでるッ!

 具合の悪い場所を平気で掴んでるよッ!?


「な、なんでこんな力が!? ってマナマナ、そこはヤバイ! ってか潰れるッ! マナマナに潰されるッ!?」


 ちょっと嬉しそうな顔はなんですかね……


「で、どうしますか勝也ちゃん」


「わ、わかった、話す。話すからっ」


 真奈香に目線だけで合図を送ると、真奈香が勝也ちゃんを下ろした。


「うぅ、ちょっと名残惜しい自分が恨めしい……」


 呟く勝也ちゃんをジト目で睨みつけて真奈香を見る。

 不思議そうに手を握っては開いてしていた。


「真奈ちゃん?」


「有伽ちゃん、なんかね、変な感触した。なにアレ?」


「あ、いや、知らないなら知らなくていいものだよ、うん」


「知らないのかよマナマ……いや、待てアリアリ。その今にも俺を鈍器で殴り殺しそうな目で射抜くのは止めて?」


「さっさと教えて。例の場所をッ!」


 何故か口調が荒々しくなってしまう私だった。

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