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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 百目鬼
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生えた目玉・後編

「伊吹さんもグレネーダーからこられたんですか」


「あ、そ、そうであります! わた、わた、わたしはッ!」


 物凄い動揺ではないですか。怪しいねこの人。

 まさか、こいつ犯人か何かで様子見に来たとかじゃないでしょうね。


「ええ~、高港警察に転属したグレネーダーなんて聞いたことないよぉ」


「もしかしてモグリ?」


 瞬間、伊吹さんの懐から取りだされた拳銃……って、まさかッ!?


「すいやせんッ! おいらぁただのしがないノンキャリでさぁッ! グレネーダーにすら入れなかったどうしょうもないクズッスよッ!」


 だぁぁッ!? また口に向かって銃口をッ!


「だから自殺禁止ぃ~ッ!」


 パンッ


 銃を取り上げようとした瞬間、またも発砲。

 私の頬と鏡台の真横を通り過ぎ、壁に穴が開く。

 誰よ、この人に拳銃持たしたバカは?


「セーフティロックわざわざ外して撃たないでよッ! アンタ警察でしょうがッ!」


「と、とにかく落ち着いてくださいねぇ。有伽ちゃん傷付けたら……心臓抉るから」


「ぁぅぁぅぁぅぁぅ……真奈香さん恐いです冷酷ですよぉ」


 笑顔のままに真奈香が伊吹さんを覗き込む。

 最後の言葉だけ異様なほど冷酷だった。

 伊吹さんはゴクリと生唾を飲み込んで、拳銃をしまった。


「し、失礼。グレネーダーの試験で落ちてしまってね。仕方がないから警察用の採用試験を受けたら、一発で受かったのだ。問題らしい問題も起こしてないし、同じ警察側の私をわざわざ抹消する理由もないだろう? まぁ、一緒の仕事になるたびに私を殺しに来たのでは? と思ってしまうことはあるがね」


 それであの異常な怯えようなわけですか……

 とりあえず、これで四人。斑目良知留が妖使いって訳じゃなくなった。

 気を取り直した伊吹さんが斑目良知留の左目を無理矢理開く。


「これだ、ほら、目があるだろう?」


 そこには確かに眼球がある。ちゃんと存在する。だから……なに?


「いや、まぁ、確かにありますけど、ボクらなくなってたかどうかわかんないし」


「それもそうか。しかし、確かに抉られていたのだ」


 斑目良知留の左目から妖の臭いがしなくもない。

 ただ、私の鼻でも分かりにくいほどに微かにしか残ってない。

 おそらく斑目良知留に目を生やしたのは斑目良知留以外の妖使いだろう。

 でも、もしも本当なら、斑目良知留の左目なんか生やしてなんになるんだろ?


 それにしても、なーんか嗅いだことのある臭いなんだよなぁこの斑目さん。

 包帯ぐるぐる巻きだから顔わかんないけど、どっかで見たことある気もするし。


「今のところ彼女から話を聞くことはできていない。運び込まれてからずっと昏睡状態が続いていてな」


「でぇ、唯一の通報者も行方不明なんだよねおじちゃん」


 手袋を顔の前に持ってきて、白くもない息をハァ~っと吹きかけながら前田さんが尋ねる。


「うむ。そこから手がかりは掴めそうにない。一応、該当人物を探しているが……たぶん偽名だと思う。期待はしないでくれ」


「本当に分からないんですか? 証拠も関係者も……」


「一応、関係者としてはこの斑目良知留の姉と爺さん。それから犯人の三人だな。犯人を捕まえてしまえば我々警察の仕事は終わりなのだが、消えた通報者が気になってな」


「もしかして彼女の復讐……ですか?」


「うむ。その可能性がある。犯人を挙げるのは簡単だが、それをした瞬間に狙われでもしたら警察の信用問題だ。捕まった瞬間の暗殺はよくある手段だしな。相手がこの病院で警察の目をかいくぐり斑目良知留の目を生やすようなことのできる妖使いだとしたら特に逮捕寸前で手柄を掻っ攫われる危険もある」


 だから……捕まえようにも捕まえられない? それこそ信用問題じゃん。


「でも早く捕まえないと、犯人がまた事件を起こす可能性もあるんじゃないですか?」


「そうだな。だが相手は未成年だ。捕まえたところで年少送りだ。数年ででてくるよ。いや、数年もかからんか……」


 忌々しそうに呟いて、伊吹さんは私たちを見回した。


「警察としてたとえ殺人犯だとしても人民の命を危険にさせるわけにはいかなくてね。理不尽ではあるが雨宮恭一の捕獲と斑目良知留の生えた目の謎が解けるまでは犯人は保護観察処分。私服警官が常にマークすることになっている」


「私たちは斑目さんの生えた目の理由を見つければいいんですね」


「そういうことになる。雨宮については斑目家に聞く他ないだろう。黙秘されていて我々では聞けなかったが、友人である君たちなら可能かもしれん」


 友人じゃないんだけどな……ま、いっか。


「じゃあ、斑目さんの家行こう、有伽ちゃん」


「知んないよボク。斑目良知留の家」


 まぁ、伊吹さんは知ってるだろうけど……


「大丈夫だよ~、私の家の隣だと思うもん。斑目っていう豪邸あるから多分そこだよ」


「ふむ、豪邸なら間違いなくそこだろう。斑目自体が珍しい名前だから別の家ということもあるまい」


 伊吹さんの言葉を受け、一応地図で確認を取ってから斑目家へと向かう事にした。

 というか、この前真奈香の家行ったけど、近くに豪邸なんてあったかな?

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