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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 百目鬼
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いつもと違う何か

「いよ~っすアリアリ」


 校門を潜ったところで後ろから走ってきた男子生徒に背中をおもっきし叩かれる。


「あれま、勝也ちゃんじゃないですか、珍しいねぇ、いっつも三時間目くらいに来る人が……」


 彼の名は志村勝也。

 髪は栗毛色、好青年っぽく見えるが実はただのオッパイ星人でしかない。

 いつも友達と巨乳バンザーイとか言ってる我がクラスの腐ったミカン壱号君だ。

 私に対してはなぜか同士とかゴッドとか先生とか言ってくるが、ただの友人である。

 私が女性を落とすスペシャリストだとか訳のわからない勘違いをしている可哀想な奴なのだ。


 でもってなんだか恐い人たちとお知り合いらしく、よく集会とやらに呼ばれたりしている。

 本人、「かったりぃけど貴明がなぁ」とぶつくさ言いながらも集会にはちゃんと顔をだしているらしい。授業には宝くじの一等くらいでてこないのに……


「今日はちぃと仲間内で集会なのさ」


 私に歩調を合わせて横に並ぶ、私は分かっていながらも、


「ああ、あの暴走族の……」


「違うっての、いっつもつるんでるあの三人はただのゴミ溜め仲間だって」


 自分でゴミ溜めとか言ってるし。

 彼はよく自分たちの事を卑下して紹介する。ゴミ溜め仲間、腐ったミカン、ウドの大木、太郎でも次郎でも三郎でもない四郎とかよく言っている。

 まぁ最後のはよくわからないが自分たちを卑下することで周囲との摩擦を減らしているつもりらしい。


「また、何かやったの?」


「なんかよぉ、貴明がヤバいことしたってさ」


「あらまぁ大変ですな、困ったお友達を持つ人は」


「アリアリだってマナマナがいるだろ? 大変だよなぁ……結婚何時だ?」


「するかっ! ボクは百合な人じゃないっ!」


 私のいつもの反論に、彼は思いもよらない一言を口走った。


「そうかぁ? マナマナは相思相愛とか喜んでたぞ昨日」


 グハァッ!?

 言いふらしてるの? 真奈香の奴、あの誤解を!


「有伽ちゃんとキ……」


「待て待て待てぇ~~~ッ!!」


 放送禁止な言葉がでそうになったので私は慌てて勝也の口を塞ぐ。が、勝也はひょいっと避けてしまう。


「ええい、それ以上言うなッ! 武士の情けだッ! それを言えば殴るよチョキでッ!」


「それは殴るとは言わないだろ。とりあえず、俺が言えることはたった一つだけだ」


 と、一呼吸おいて、


「同窓会には来ないでくれアリアリ」


「うがぁッ! 押し込んじゃる。その憎き喉仏を押し込んでくれるわッ!」


「うわぁ、アリアリが怒った、にぃげろ~」


 笑いながら走り去っていった。

 うん、教室で殺ろう。とりあえずどれだけ強く殴れば、たわばッという悲鳴が聞こえるのか試そう。




 不機嫌なままに教室についた私は、誰からも声をかけられることなく席に着く。

 おかしいなぁ、いつもならよっち~が「おっはよ~有ちゃん、真奈香とは何時くっつくん?」とか言ってくるはずなのに……


 周りを見回してみるけれどよっち~の姿はない。

 他のお友達はちらほらと見えるんだけど、少し前に流行った私の噂と昨日あったらしい真奈香の爆弾発言のせいで私に声をかけづらくなっているらしい。


 昨日は少し前に飲み食いした新人歓迎会の焼肉屋のツケ返すために支部長がバイトしてるファミレスで働いてたからなぁ……新人歓迎会ワリカンってどうなんですか? ありえなくない?

 加えてよっち~がいないので級友たちは挨拶すらしてこない。まったく、なんて薄情なヤツらですかね。一人くらい……


「有伽ちゃん、おはよ~」


 そうそう、ちょっと間延びしてるけど、それくらい親しみを込めて……ぷにょん?

 って、誰ですかッ!? 背中に胸押し付けてくる人はッ!?

 慌てて振り返った先にいた人物は、前髪で目の隠れてしまっている日本人形……じゃなかった、日本人形みたいな容姿の要注意人物。上下真奈香。

 今、巷で話題の百合なお人だ。


「あのね、真奈ちゃん。朝っぱらから胸を押し付けてくるのはどうかと思うよ」


「え~そんなことないよ~。二人は相思相愛なんだから~、もっとベタベタしててもいいくらいだよぉ有伽ちゃ~ん」


「ボクは百合じゃないんだってば。何度言ったら分かるかな?」


「一京ぐらい?」


 京!? 兆より上!? いや、無理でしょそれ。素直に諦めろってことですか?


「とにかく、学校でのベタベタ禁止ッ!」


「あぅ~有伽ちゃんが冷たいよ~よっち~……あれ?」


 いつものように、隣の友人にもたれかかろうとして、端と気づく。

 嘘泣きを慰めてくれるはずの該当人物が見当たらない。


「あれ? よっち~休み?」


「そうみたいだね。バカは風引かないってのに、珍しい」


 冗談を言って真奈香と笑い合う。

 その時、既に取り返しのつかないことになってるなんて、私も真奈香も、予想すらしていなかったんだ……

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