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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 煙々羅
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デート確約

 もしかしたら最後の帰宅になるかもしれないこの瞬間に、どうしても寂寥の想いが沸き起こる。

 普段は気にも留めないお母さんに「ただいまお母さん」と親しげに言ってみたり、夕食の手伝いをしてみたりしたのも、きっともう二度と会えないだろうという思いあってのことだろう。

 決して鈴の食事風景に胸焼けした記憶をなにかの記憶で上書きして消したいという理由じゃないはずだ。


 まさか本当にレモンミルクブラックメロンソーダが出てくるとは思わなかった。

 メロンソーダなのに黒いんだ。そして白いんだ。

 こぽこぽいってるの。レモンの香りが漂ってくるの。

 もう、意味不明。


 しかもカイワレカーニバルってまさにカイワレ大根尽くしだったし……玉葱ボンバーは弾けたし、なんなんだあの店は……

 断言するよ、絶対潰れるね。


 でもまた行ってみたいかな。玉葱ボンバー意外と美味しかったし。

 ただ、鈴とは絶対もう一緒にはいかない。

 目の前であんなモノ飲まれるこちらの身にもなってほしい。

 白滝さんでさえちょっと引いてたよ。


 鈴もわたしの頑張りように感化されたというか、しぶしぶといった顔で食器だしなど手伝ってくれたのでいつもより30分は早く夕飯の用意が出来た。

 翼お兄ちゃんがやってきたのもその頃で、あまりのタイミングの良さに鈴が文句垂れていた。


 白滝さんのおかげで入鹿お姉ちゃんの居場所を知ることができた。

 これはわたしにしては大した進歩だと思う。

 入鹿お姉ちゃんの遺体は妖能力研究所に収容されず、密かに白滝さんがある場所に埋葬したそうだ。

 場所はある寺の後ろのお墓。


 こちらに来てすぐ埋葬したらしく、他の隊員にも場所は伝えてないんだとか。

 そんなことだから、どこを調べたって入鹿お姉ちゃんのことが分かるわけがなかったはずだ。白滝さん一人っきゃ知らないんだもん。


 でも、教えてくれたのはラッキーだった。

 鈴と二人で明後日にでも行くとしよう。

 翼お兄ちゃんが明日暇じゃなかったら明日にするけどね。


 食事をかっこむ翼お兄ちゃんをちらちらと意識しながら話のタイミングを計る。

 鈴もお母さんもわたしがなにを言おうとしていることが分かったのだろう。ちょっと空気が気まずいというか、いつでもいいからさっさと終わらせてくれみたいな雰囲気になっている。


 翼お兄ちゃんだけが全くといっていいほど空気読めない人で、周りを気にせずご飯に夢中。

 ドッグフード食べてる子犬みたいでちょっと可愛い。


 翼お兄ちゃんの場合子犬とかより闘犬かな?

 ……しまった。見とれてた間に食べ終わってる。

 翼お兄ちゃんのことだ。食べ終わったらすぐに帰ってしまうだろう。


「あ、あの、お兄ちゃんっ」


 手を合わせてご馳走様してる翼お兄ちゃんに、わたしは慌てて声を出す。


「んあ?」


 いい気分で席を立とうとしていた翼お兄ちゃんが、腰を浮かせた状態でこちらに意識を向けた。


「あ、明日……暇?」


「暇? ってお前なぁ。グレネーダーは年中無休だぜ? まぁ今のとこ開店休業状態だけどよ」


 う……う~ん。これは言っていいのだろうか?

 翼お兄ちゃんに迷惑かかっちゃわないかな?


「とかいいつつ暇なんでしょ。どうせいたっていなくたっていいでしょうし」


「ンだとテメェ? 美果の友人だからってつけあがんなよ? 泣かすぞ」


 なにこの一気に緊迫しだした空気……


「ミカが明日遊びに誘ってんだから行ってあげりゃいいじゃない。それともなに? 仕事優先? バッカじゃないの?」


「テメェケンカ売ってんのか? 売ってんだな? よし表でろッ」


「うわっ、女の子相手に殴る気だコイツ。野蛮人~。ミカ、こんな男止めて別のにした方がいいって絶対。紹介するよ?」


 鈴の紹介って絶対三嘉凪さんか伊吹さんだよね? っじゃなくて、やめてよ二人とも。

 どうしていいのか、わたしはおろおろとしか出来なくて、勝手にヒートアップする二人を止めるに至らない。

 言葉も止めてとすら口から漏れず。わたしの意志が伝わらない。


「や、やめよ二人とも……」


「ブチ殺すぞテメー!」


「上等よ、やれるもんならやってみなさいよっ」


 ああ、もう、止めて。なんでこんなことなってんの!?

 っていうか……


「止めよ♪」


 笑顔で妖発動。

 二人が気付いた時にはすでに魂の首を掴むわたしの触手。

 微笑み浮かべて青筋立てて、止めようと伝えると、二人揃って震えた声で「はい」と返事してくれた。

 皆、仲良くしないとね♪


「それで、どうかな翼お兄ちゃん。明日、遊園地とか?」


「あ~まぁいいけどよ。師匠に連絡はしとかねぇとマジィんだ」


「あ、それなら大丈夫」


 既に先手を打って白滝さんと食事中に翼おにいちゃんを明日一日貸してもらう……と言ってはなんだけど、とりあえず了承済みなのだ。

 白滝さん曰く、前田の新人研修を行うので翼はどうしても暇になるから好きにしたらいいということです。


 翼お兄ちゃん……まさか職場でぼっち化してないよね?

 まぁ、二人だけの職場にもう一人来たんだから指揮官である白滝さんは掛かりきりになるよね。仕事殆どないらしいし。


 翼お兄ちゃんにちゃっかりしてやがると言われながら、明日のデートに頬が緩むのを抑えきれないわたしだった。

 ちゃんと寝れるかな?

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