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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第五節 如意自在
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空からの刺客

「刈華さんは友達なの」


 的外れな言葉を吐いて、雪花先輩が歩き出す。


「な、なんだYO。これ、身体が……動かない!?」


 そう、身体が動かなくなったのだ。

 それも、私達も含めた全員が。

 ただ一人、何かの能力を使ったらしい雪花先輩を除いて。


「お、お前、何者……いや、何の妖使い……」


 男が抱えていた刈華を丁寧に奪い取り、雪花先輩はにこりと微笑む。


「私の妖は【かぐや姫】この娘は、月に連れて帰ります」


 少しふざけた口調で言うと、刈華をお姫様抱っこして悠々箒頭の所へ戻っていく。

 その姿を、私達はただ見送るしかできない。

 そして、韋駄天、つまり速度に秀でているしかない男には、雪花先輩を止める能力などありはしなかった。


「はっ。分かってねぇなクソアマァ! 俺から逃げたところでYO。グレネーダーに抹消指定されて生き残れると思ってるのか!」


「さぁ? でも、友達は、護ると決めてるの」


 意味が理解できない。といった顔で首を捻る雪花先輩。

 やっぱりあんまし考えて行動していないみたいだ。

 雪花先輩は箒頭の元に辿りつくと、箒頭の襟首を掴み歩き出す。


「それじゃあ、皆さんさようなら」


 最後にこちらを振りかえり、首を下げてお辞儀する。

 緊迫する状況などお構いなしに雪花先輩は飄々とした表情で再び歩き出す。

 だが……


 突如、箒頭の胴へと何かが飛来した。

 それは遥か遠くのビルから伸びており、ズブリと腹へと突き刺さる。


「ごはっ!?」


「……え?」


 さらに飛来する細長い棒状の何か。

 それは近くにあった時計の柱に絡まり、固定すると、その奥に続く何かを引っぱりだす。


「やはり、奴も来たか……」


「隊長? 奴って……」


 隊長の説明が始まる前に、それはやってきた。

 全員が動けないはずのこの場所へ。

 時計の柱に絡ませた腕を支柱に自身を引っぱり、女が一人、飛んできた。


「な、何アレ……」


「【如意自在】だ」


 短く、隊長が呟く。

 如意自在? えっと、確か自分が思う場所に手が届くとされる妖だっけ?

 ……!? そうか、あのビルに待機しておいて、相方の韋駄天が任務に失敗したらフォローに入るために待機していた!

 私達グレネーダーは基本、二人一組で仕事に当る事になっている。

 一人だけで来ていたから思い至らなかった。もう一人いるってことに。


 如意自在は真奈香のように綺麗な黒髪のストレートヘアで、タンクトップに青のハーフパンツ。ジーパンを引きちぎったような奴だ。

 出るとこ出てるナイスバディなので地面に立った拍子に胸が盛大に揺れ動いた。

 ちょっと視線が行ってしまったのは断じて百合に目覚めたわけじゃない。

 つい見ちゃうじゃん。女同士だって。


「ハロハロ皆さん。なーんかゴタ付いてますね~。ってか韋駄天ちゃんダサすぎ」


 如意自在はやってくるなり雪花先輩の能力下に入ったようで、動けなくなったようだが、その左手にはナイフが握られ、ナイフは箒頭の腹に突き刺さっている。


「さぁて、早くこの能力解かないと、私はナイフを外せませんよーっと」


「おい、いくらグレネーダーとはいえ、お前たちは追跡係だろう。殺害は許可されていないはずだが?」


「おやおや手厳しい。でもだぁいじょぶじょぶ♪ 見なさいな係長さ……って、ああっ。身体が動かないから証拠書類が取り出せなぁいっ!?」


 意外とバカかもしれない。


「仕方ないなぁ。そぉら、早く解かないとそっちの娘の首捻っちゃうぞっ」


 動けないはずなのに如意自在の右手が刈華へと伸びていく。


「か、解除!」


 慌てた雪花先輩が能力を解放すると、あら残念。と如意自在が右手を引っ込める。

 なるほど。どこにでも手を届かせることができるだけじゃなく、一度でもそこに手を持って行きたいと考えれば腕が自動で伸びていくということか。


「ほいさ、これどうぞ」


 右手が所定の位置に戻ると、左手のナイフも手放し元へ戻す如意自在。

 左手が戻ってくる合間にお尻のポケットからくしゃくしゃの紙を一枚取り出し右手を伸ばす。

 隊長の手前へと紙を持ってくると、隊長は戸惑いながらもそれを受け取った。


 しばらく読み辛そうにしていた隊長だったが、全て読み終えるとクシャリと握り潰した。

 何が書かれていたかは分からないが、隊長が「僧栄め……」と苦々しい言葉を吐き捨てる。

 そんな隊長の様子を見た如意自在は面白そうに目を細めると、今度は左のポケットからナイフを取り出す。


「えー、というわけで。雪女は任意同行拒否、グレネーダー職員への暴行容疑、並びに仲間も加わわってその場で抵抗したため、仕方なくぶっ殺しましたまぁるっと」


 そして、如意自在が雪花先輩に視線を向けて、右腕を伸ばす。その手にはキラリとナイフが煌めいていた。

 名前:  樹翠きみどり 雪花せっか

 特性:  マイペース

 妖名:  かぐや姫

 【欲】: 注目を浴びる

 能力:  【魅了】

       立ち振る舞いを見た相手に魅了効果を与える。

       微弱ではあるが長く一緒に居るほど効果が高くなる。

      【月からの使者】

       周囲の動きを止める能力。

       自分以外の敵味方を問わず全ての動きを止める。

      【婚姻の試練】

       重度の魅了にかかった相手に命令することで、

       パシリをさせる事が出来る能力。

       命令されたモノを持ってきても結婚する必要はない。

      【護りの竹】

       一節だけ光る竹を生みだす。

       能力使用者を包みこみ、あらゆる攻撃から防衛する。

       斬撃に弱い。

      【同族感知】

       妖使い同士を認識する感覚器。

       個人によって範囲は異なる。

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