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ルーンコンダクター  作者: クロ
序  章:An Far Eastern rune conductor
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第五話    他人事の挑戦者達

ついに第五話です!!

ではどうぞ!!

 お互い、距離を詰めている。

 だが、まだお互いに攻撃射程範囲外。

「そんな理想論はどうでもいい。実際にどうやって勝つんだ?」

「それを敵に教える馬鹿がいると思うか?」

 空は、ゆっくりと無造作に距離を詰める。

 対して、緑川はそっと慎重に距離を詰める。

 二人の動作が微妙な噛み合いをしていた。

「まあ、どうせ答えられないだろうしな」

 言った直後、すぐさま返答が来た。

「よし! 俺の勝利へのステップを教えてやろう!!」

「え…………? ええええ!?」

 人差し指を立て、自慢げに話す。

「いいか? まず、俺はお前より強い。だから負ける道理は無い。ここまではいいな?」

 緑川は何か怒ったような顔だ。

「全然良くねえよ!! 最初からおかしいだろ!!」

「何もおかしくない。この世に存在するありとあらゆる存在、森羅万象においてこの俺より強いものなどありえない」

 緑川はなんて返したらいいのか分からないといった感じで額に手を当てている。

「あのなあ、お前ら馬鹿と違って俺達はなあ、ボケに対するツッコミスキルは備わっていないんだよ」

「ボケなんかではないぞ。なぜなら、こんなド素人をたかだか二人相手にしているだけで、どんだけの時間が経っているんだ? お前達はルーン武器(フォース)を使っているんだぞ? あくまで、武器性能や戦闘経験の差があるからこんだけ時間喰っているだけなのだよ。つまりは、お前達は無能なんだ。分かったか?」

「今すぐ、終わらせてやろうか?」

「口で言うのは簡単だぜ?」

「てめえ…………!!」

 緑川が顔に青筋を立てている。相当お怒りのようだ。

 しかし、空は気にせず、自分の世界を展開する。

「ま、ともかく、お前達の制限時間は残り五分って所だろう。一応、ここは首都だからな。連中、来るの早えぞ?」

 何故か自慢げな表情。

「はっ! お前如き、五分もいらねえよ。二分もあれば十分だ」

「ほお? もう既に闘い始めて十分は経過しているようだが? 二分とは大きく出たな」

「これからは本気だからな」

 緑川がすうっと息を吸った。

 そしてゆっくりと吐く。

 空をじっと見つめ、大きく手を広げ、言葉を紡ぐ。

「俺は、ルーン武器所持者(コンダクター)。全てを薙ぎ払い、この地に混沌をもたらす。(わざわい)を呼び、(わざわ)いとなりて、この地を混沌に導こう」

 さらに言葉を続ける。

「さあ、はじめようか」


         ●


 遠くから、謎の詠唱が聞こえてきた。

 何故だか、向こうはすごい盛り上がっているようだ。馬鹿が一方的に盛り上がっているような気はするが、気にしたら負けのような気がするので龍太は無視する事にした。

「随分と盛り上がってんなあ」

 まるで、人事かのように遠くから見ている。

 なるべく大きく動き回りながら、敵と距離をとり、武器を回収している。

 拾い上げてはすぐさま投擲。

 硬貨の塊を投げ、時間差でカッターをニ連続。さらには、さっきは使わなかった十センチのプラスチックの定規、そして、鉛筆を三本追加して合計で四本。

 時間差を付け、ゆっくり投げては急に速度を上げて投擲したり、二本並べて投げ飛ばしたり、あらゆるパターンで攻撃を続ける。

 しかし、その全てが防がれる、または弾かれている。

 こちらがぐるぐる回るのにあわせて、相手も高速で動き回る。

「何、余所見してんだよ? 飽きたか?」

 相手である石田が正面少し離れた所から脇に急に現れ、脇腹を強打する。

 かなりの激痛が走るが、がんばって耐える。今まで散々、殴られ続けてきてだいぶ我慢することには慣れてきた。

 だが、こちらの攻撃が当たらないようでは意味が無い。どうすれば当たるか……。

 龍太は攻撃しつつも考える。

「そろそろ、飽きてきたかなあ。あっちの方盛り上がってるし、あっち行きたいんだけど?」

 左ポケットからさらにカッターを一本追加して投擲、寝転がった状態からの投げ上げだ。

「ちっ、めんどくせえな。どんだけ小道具用意したんだよ!?」

「こっち来る前に、鞄の中の使えそうなの、全部取って服のありとあらゆるポケットに仕込んで置いたからな」

 そう言って、さらに三十センチの木のものさしを取り出した。

 手首のスナップを使い、回転させながら顔面目掛けて投擲する。

 が、しかし、当たり前のようにルーン武器(フォース)で弾き飛ばされる。

「全く、どんだけ小細工しようともそんなんじゃ勝てねえよ」

「勝てねえなら、もうおまえの勝ちでいいからあっち行っていいかな?」

 まだ、向こうの空達の方に行くのを諦めてはいない。

 だが、出来るはずも無いのだが。

「おいおい。逃がすと思ってんのか?それとも、逃げ切れると思ってんのか?」

 すぐさま、振り返って空のほうに駆け出した。

 と、思ったら走り出した瞬間、後ろ向きに石田の方にカッターを投げた。

「当たるかよ。――加速せよ」

「ふっ」

 龍太が軽く笑む。

 石田が龍太の進行方向を塞ぐように現れる。

 だが、突如異変が起こる。

「! ぐっ、…………貴様っ!!」

 石田が頭から血を流している。

 何故なら、額にカッターが直撃したからだ。

 だが、あまり深くは刺さらず、血を流す程度に収まっている。

 龍太はそれを見て舌打ちをした。なるべく大きな音で。

「ちっ、大した傷にはならないか、最悪死ねとも願ったが…………」

 石田は左手で額を押さえる。

 そして、自分の血だらけの手を見て怒りが巻き上がる。

「許さないぞ!! この失った血よりももっと多くの血をあがなってもらう」

「さっきから口ばっかだぞ? 少しは実践してみたらどうだ?」

「――加速せよ」

 返事もせず、そっとゆっくりに、そして一瞬で龍太の目の前まで来た。

 そして、無言で左腕をルーン武器(フォース)の柄の方の剣先で切り刻んだ。

 ゆったりと多くの血が流れてる。しばらくは止まりそうに無い深い傷だ。

「ぐあっ…………」

 そして、ルーン武器(フォース)の頭で頭を強打し、もう一度、今度は『(エオー)』の加速による高速の打撃を腹にぶつけた。

「っ………………!!」

 あまりの激痛に言葉を発する事も出来ない。

 やはり、本気を出したら、ルーン武器(フォース)相手にはどうにもならない。

 圧倒的な戦力差が龍太を絶望のどん底に突き落とす。

 ついに龍太から腹から崩れ落ち倒れた。

「どうした? 大口叩いといて奥の手があるんじゃないのか? どうなんだ!? ああ!?」

 声を荒げる石田。

 しかし、龍太はなす術もなく倒れているだけだ。

「お前は殺す! 必ずだ!!」

 龍太に近づく石田。

「ただじゃ殺さないぞ!!」

 腹からと倒れこんでいる龍太の脇腹に強烈に蹴りを入れた。

 一発のみならず、何度も何度も繰り返し、蹴り飛ばした。

 その度に、龍太の口から吐血し、咳が出て、苦しそうに呻く。

「ヒッヒッヒッ。いやあ、愉快だなあ!!」

 狂ったような(わら)い声を上げた。


         ●


「ちっ、あの馬鹿!」

 緑川が石田の様子を横目に見て舌打ちをして悪態を付いた。

「完全に正気を失いやがって……」

 緑川は石田があの状態になるともう手が付けられない事を知っている。

 だから、心の中で思う。

 ――めんどくさい奴だ

 そこまで思って、真正面から声がした。

「おいおい? 余所見してて大丈夫か?」

 さっきの意趣返しだろうか? 

 問いかけながら月島が跳び蹴りをしてきた。

 喋りながらの跳び蹴りというのはかなり滑稽な見栄えだ。

 サーカスとしてはありかもしれない。

「余所見ぐらいしてやらないとハンデにならないだろう?」

 そう言って、飛んでくる途中、空中で縛り上げた。

 月島が足を投げ出した状態で空中に固まった。とても滑稽な絵面だ。

「くそ、やばいな……龍太を助けに行かねえと」

「行かすと思うか? まあ、石田も完全に正気を失っている。ありゃ、死んだな。手ぐらいは合わせてやるぜ?」

「龍太は死なねえよ」

 縛り上げられた状態で反論する。

「何故そう言える? 石田のあの状態は正直俺でも手が付けられない。俺としても、あまり関わりたくない。そんな奴相手に生き残れると?」

「あっちは問題ねえよ。というかそろそろ降ろせ」

 急に床に叩き落とした。

 背中を強く強打させた。息が止まったのか、その場で声も出せずに苦悶する。

「言う通りにして、降ろしてやったのに貧弱な奴だ。……で? 何が問題無いんだ? 問題しか無いように見えるが」

 やっと呼吸が戻ってきたのか。喋れるようになっていた。

「ゲホッ、ゲホッ。あっち見てみろよ」

 そう言って、石田の方ではなく、さらに奥の方を指差した。

 ――確かあっちには…………

 そう言って、指差した方向を見ると、そこには……

 ――あれ?

 そこには、あるはずの姿が、そこにあるべき姿が、見当たらなかった。

「あいつは? あのヘタレ小僧がいない。あいつどこ行った?」

 そう言うと、上半身を起こし、両手を軽く挙げ、さあ、といったポーズをとる。

「分からんな。あいつ神出鬼没だからな」

「はっ? 分かってるから指差したんじゃねえのかよ?」

 月島が膝に手をかけゆっくり立ち上がる。

 もはや、縛るのも面倒になってきた。どのみち縛るのだが。

「知らねえよ。あいつの奇行なんざ。でも、あいつがこの場から消えたって事は何かビックリ現象があるかもな。ちょっと楽しみなんだ」

「楽しみにするのはいいが、その前に俺がお前を倒す事になる。お前の楽しみは来ないぞ?」

「おっ? お前のブチギレてみるか?」

「俺はあいつほど短気でもなければ馬鹿でもない…………何だその顔は?」

 月島が何やら口を半開きにしてあんぐりしている。恐ろしくオーバーリアクションだ。

「目糞鼻糞というかなんというか…………」

「実際馬鹿じゃねえよ」

 さらに続ける。

「それより、さっきから自分の心配をしたらどうだ?」

 月島というと、さっきから、いや、今まで戦っている間ずっと人の話ばかり、自分の事は一切話さない。自分に対して一切の執着がない。

 今、自分が命を失うかもしれない過酷な状況にいるのにもかかわらず、この男の目には恐怖の色というものがない。

 いや、この男だけではなく、向こうの西崎とかいう男にも全く恐怖はなかった。

 三人目の連れは恐怖で一歩も動けなくなっていたが、それが今どこかへ消えたのだが多少気がかりではあるが今はどうでもいい。大した事は起こらないだろう。

「何故心配する必要がある? お前は、平坦な道を歩くのにも鼓動を高鳴らせて歩くというのか?」

「何の話だよ!?」

「分からんか。つまりだな、心配事なんて一切無いのに、何を心配するというのだ?」

 ここまで開き直られると逆に尊敬さえ出来る。

「自己防衛能力の欠如、危険に対する鈍感さ、真っ先に死ぬタイプだ」

「別に俺は鈍感なわけじゃない。腹を括っているだけだ」

「最後まで強がりが続くといいけどな?」

 お互い、睨み合い、相手を見る。

 月島は拳を握り、緑川はルーン武器(フォース)を構えた。

 お互いが走り出そうとしたその時、異変が起こる。

 突然、天井から大量の水が噴出してきた。

「何だこれは!?」

 緑川が叫ぶと月島がニヤリと笑う。

「大胆なことをするねえ」

今回で中盤戦終了です。

次からは緑川石田戦終盤に移ります。


状況は割と深刻な状況に龍太や空が抑え込まれ始めています。


それと、第四,五話は第五話の途中ですね、時系列的には。



それではまた次回こうご期待


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