第四,五話 動き出した世界
ただ茫然と見ていることしかできなかった。
震える手を押さえる事も、震える足を踏み出す事も出来なかった。
ただ、金縛りにあったかのように体が固まっていた。
必死に闘う親友を助けたくとも、体が重くのしかかる。
「俺は…………何も出来ないのか…………?」
小さく呟く。
さっきも、龍太が敵の攻撃で倒れ込み、しばらく立ち上がらなかった時、自分は助ける事よりも保身を選んだ。
もし、手の空いた敵がこっちに来たらどう逃げようか。
そればかりを考えていた。
だが、敵がこちらに来る事は無かった。
敵にすら相手にされなかった。
あいつらは闘うべき相手として認められたのに、自分は違う。認められなかった。
このままでいいのか? 本当に。
自分にも何か出来る事は無いのか?
――それが見つかるんだったら、ここで立ち止まるわけが無い……結局俺は…………
何だというのだ?
友人のピンチに助けに入ることも出来ないのか?
きっと、あいつらだって怖いだろう。
死ぬかもしれないし、死ななくとも大怪我するかもしれない。
それでも、あいつらは震える全身を抑えてあそこに立っているんだ。
自分に何か出来る事。
それを早く見つけなければ……。
そうすれば、樹は勇気を振り絞ることも出来る。
そのために前へ進むんだ。
考えろ!! 自分に今何が出来る? いや、何がしたい? どうありたいんだ?
――そんなのは………………決まっている!!
どんな手を使ってもいい。
あいつらの手助けになるんだ!!
「待っていろよ」
心の中で大きく咆える。
一歩を踏み出したのだ。