第二話 友達だから
やっとのことでルーンコンダクター第二話です。
ついに、物語は動き出します。
ではどうぞ!
「デパート! ここであったが百年目!」
樹達三人は樹の家から三十分ほどの距離にあるそこそこにでかいデパートにやって来ていた。
正面の入り口の前に立つと、真ん中に立っていた龍太が意味不明なことを大声で口走っていた。
「お前は何を急に分けの分からない事を……。それと、急に入り口で立ち止まるな」
左隣にいた樹が隣の馬鹿をデパートの中に自動ドアの奥に押し込んだ。押し込んだ勢いで店内で転んでしまった。
それを確認してから樹が入り、空が入った。
「っ痛……。急に押すなよ、馬鹿野郎」
龍太がそっと立ち上がり、体の前面に付いた埃を落としながら樹を半眼で睨んだ。
しかし、樹は完全に知らないふり。他人のふりだ。
「おい! 無視かよ!?」
しかし、樹と空は徹底して視線を逸らす。そして、テキトーな方向へ歩き出していった。
それとはまた別の方向へ空も歩き出していってしまった。
それを見た龍太は後ろから空を追いかけていく。
「待てよ! 空!」
追いかけていった先は、駄菓子コーナーだった。
そこに、空はいた。
空の真後ろまで走って行き、肩を掴んで問い詰めた。
「おい、何で急にどっか行くんだよ!?」
それを聞いて空は龍太の方へ振り返って、大真面目に返事した。
「おっ、やっと追いついたか。あの時、お前が”ビターンッ! ”って倒れて思いっきり周りの視線集めてたからな。場所チェンジだ」
それを聞いて、さらに問い詰める。
「あのなあ、お前らが俺のことを押し倒したんじゃねえか!」
「押したのは樹だし。俺関係ない」
――このやろう
龍太は空に対してこんな事を思った。龍太は、普段から人には悪ふざけや嫌がらせをよく行うほうだが、自分がやられると相当にイラッとするものだ。
「もうこの際、お前らの悪行は全て許してやるとして、樹はどこに行ったんだ?」
さっきから樹の姿が見えなかった。確かに、空とは別の方向に向かって歩き出していたがいつもなら、すぐに合流していた。
それなのに、今日はやけに遅い。
「どうせトイレだろ? ここの菓子売り場でも見て待ってようぜ。一応、場所もメールしとけば大丈夫だろう。……隣の洋服屋にいるってメールするけどな」
「お前、最悪だな……」
龍太が空の悪行に嘆息した。
正直、空の悪行は時々、龍太の想像を超える事がある。はっきり言えば、最悪だ。
「偽情報が隣なだけマシだろう」
確かに空は過去に数々の偽情報を樹に仕掛けてきた。数日前は、デパートで樹がトイレに行っている間に階段を二つほど降りて外に出た上で、樹にメールで『二つ上の飲食店にいるから』と送った。当然、十五分程経ってから、樹が怒りながらデパートから出てきた。
「確かに、前よりは大分良心的だが地味な悪行が結構イラッとするぞ?」
「そんなもん、お前だってよくやってることじゃん」
「……うん。そうだな」
結局頷いた。
二人で『こんなもんは悪行には入らない』と結論付け、駄菓子コーナーを漁ることにした。
「これ、美味しそうじゃね?」
空が、龍太に菓子袋を見せてきた。そこには真っ赤な文字で『激甘ポテト』と書いてあった。
「なんだよ、これ。辛いのか甘いのかはっきりしろよ」
「『激甘』って書いてあるんだ。甘いに決まってるだろう」
「いや、ちょっと待てよ。なんでわざわざ赤い字で書いてるんだよ? 分かりづれーよ」
そんな他愛無い話で十分程経った頃ーー
「そういや、樹遅くね? 完全に”大”だろ」
龍太がお菓子を漁りつつも時計を確認した。
確かに、いつもだったらもっと早くに合流してもいいのだが、何故だか今日は遅い。
「大だとしても、遅いな。あれだろ。腹が急降下しているんだろう」
二人で軽く笑い合い、またお菓子漁りに戻る。
それから、さらに十分程が経過した……。
未だに樹は二人の元には来なかった。
空が、さすがにおかしいと思ったのか、携帯で樹にメール出した。覗き見ると、『お前今どこ?大なら早く来いよ?小ならちゃんと手を洗えよ?』と打たれていた。
何かいろいろと間違ってる気がするがいつも通りなので気にしない。気にした所でこちらの精神が磨り減るだけだ。相手は馬鹿なのだから。
龍太は馬鹿から目を離し、自分も樹にメールを打ってみることにする。
「一応、俺からもメールを出すか……」
ポケットから携帯を取り出し、メールを打とうとしたところで誰かから、龍太の携帯にメールが届いた。
「うわっ、誰かからメールきた。誰からだ……?」
隣で、変な目で龍太を見た空を見ている。
「……あっ、樹からだ! どれどれ……」
「ちょっと待て、俺にも見せろよ」
龍太がメールを開く。空も携帯を覗き見ている。
龍太が、メールを読み上げる。
「『おい、不審者が今、三階にいる! かなりやばい奴でこっちは大混乱だ! 今すぐ、俺も下に向かう!!』っておい、何だこれ? ドッキリか?」
隣で、空も怪訝な顔をしている。割とマジな顔で。
「あいつ、こういうボケはあまりしない筈だが……でも本当ならここ一階だし、上の階から客がたくさん駆け下りてきてもいいと思うが」
空や龍太がいるこの一階では何事も無く普通の雰囲気だった。とても、不審者が現れたような雰囲気は無かった。
……だが、それもすぐに状況が変わった。
突然、地震の様な地響きが鳴り出した。
見れば、階段やエスカレーターから大量の買い物客が走って駆け降りて来ていた。
「何だ!? 何が起こってるんだ!?」
その異常な程の人だかりに空が後ろ足を踏もうとして一歩下がり、うろたえていた。
「おそらく、さっき樹が言っていた不審者だろう。しかし、いくら不審者とはいえ、ここまでの騒ぎになるのか? かなり異常なほど混乱しているな。それに、これだけ騒ぎ立てたら怪我人も出るし、あまり良くない。どれほど危ない奴なんだ……?」
確かに、見る限り誰しも我先に逃げようとして非常に危険な状態だ。混雑にもまれて大怪我を負う人も出てくるだろうし、もう実際にいるかもしれない。とにかく、今すぐ逃げても人ごみの揉まれるだけなのでまずは店の端に行き、落ち着いてからすぐに逃げて方がいいだろう。
「とりあえず、店の端にいれば大丈夫だろう。さっきから、見る限りでは樹の姿は見えなかったから、まだ上の階だろうな」
空と龍太は人で溢れかえる前に急いで、近くのトイレ付近まで走って行き身を潜めた。そこから、電話を出る余裕は無いだろうから樹にメールを送った。気付くかどうかは分からないが、合流なんていつでも出来る。今は、すぐに連絡を出す事が重要だ。
二人が非難した途端、一階はもう人が押し寄せ床も奥の出口も何も見えない状態になった。
――これでは、樹が降りてきたかどうか目で判断する事は出来ないだろうな……。
龍太は初めてみる人の荒波に、少しずつ恐怖を覚えてきた。
空は呆然と立ち尽くして溢れかえる人だかりを見つめていた。
五分ほどすると、人ごみが消え始めた。おそらく、デパート内の人々が全員逃げ切ったのだろう。いや、逃げ遅れて不審者に襲われている人も上の階にいるかもしれないが。
「そろそろ、動いても大丈夫そうだな」
龍太が動き出そうとして空に声をかけた。が、返事が来なかった。
見ると、顔が遠くの明後日の方向を向いていて意識がどこかに飛んでしまっている。どうやら、相当に混乱してしまっているようだ。
「……おい? 返事しろよ」
龍太が再度話しかける。
すると、ハッとしたように意識を取り戻し、軽く両の手で自分の顔を叩いた。
「すまん。あまりの事態にちょっと呆然としていた。もう大丈夫だ」
「よし、上の階見に行くぞ!」
龍太がそう提案すると、空が目を大きく見開いて龍太を見返した。
頭でも狂ったのかとでも言いたそうな目だった。
「お前、何言ってんだよ!? 気でも狂ったのか? 逃げるに決まってるだろう!」
空の言い分は正しかった。
普通の人間ならこんな分けの分からない状況だったら逃げたしたくもなる。普通の人間ならば……
「よく考えてみろ? 樹がメールしてきてからもう十分以上経っている。途中に俺らからもメールを出した。それなのに、あいつの姿は当然見えないし連絡一つも無い。何かに巻き込まれているだろう」
龍太は、そう説明すると空の返事を待たずに近くの階段へと歩いていった。
「おい! これだけの混乱だぞ? メールをする暇が無いだけかも知れないだろ!?」
龍太は振り向かず、速歩きで答える。
「今はもう、ある程度外に流れ出ているからメールを打つ余裕くらいはある。あいつは、俺らと違ってそういうことはしっかりしている。そのあいつから、何も連絡は無いんだ。親友として心配して探しに行くのは当然だ」
さらにもう一言。
「それに、万が一に敵と遭遇したときに戦う方法は少しは考えてある。俺はな」
龍太は、鞄からあるものを取り出し、ポケットに突っ込む。
そして、階段を上り始めた。龍太からはもう空の姿は見えない。
視界の外から大声が響く。
「おいっ! 待てよ! ったく……」
後ろから、しぶしぶ空が走って付いてきた。それを龍太が目の端で確認すると、さらに速度を上げて走っていった。
二階に辿り着き、フロアを見渡す。
誰もいない。
ふと少し視線を下にずらすと何人かが床に突っ伏していた。
「どうしたんですか!?」
龍太が急いで近くの意識がまだある人に駆け寄り、上半身を抱き上げた。
倒れていたのは、龍太や空達よりも少し年齢が上の男だった。
だが、かなり辛そうで言葉も途切れ途切れだ。
「二人の、二人の若い奴ら、大体君等より少し、年齢が低いくらいの、男だった。そいつらが、突然、三階から降りてきて、急に、暴れだした。奴らは、一メートルくらいの棍と杖を、一つずつ、持っていた。俺は、そいつらを、ただの、コスプレ野朗だと、思った。だが、あいつらは、魔法のような、不思議なことをやった」
そこまで喋って、激しい咳をした。
龍太は軽く背中を叩いて、落ち着かせた。
そして、またゆっくり話し始めた。
「あいつらは、一瞬で長い距離を、移動したり、いろんな人の、動きを止めたり、した」
龍太と空は二人揃って、怪訝な顔をした。
それもそうだ。突然、魔法を使われたと言われて、素直に頷ける人は少ないだろう。
――なんだ? 何が起こってる?
龍太は頭の中で混乱が生じていた。今までの人生でありえないこと続きで頭がくらくらしそうになっていた。
「どういう事だ……? とりあえず、早く行かなくちゃ……」
すると、倒れこんでいた男性が大きく目を見開いた。
「何!? 今なんて言ったんだ?」
樹は当然といった感じで平然と答える。
「その、魔法使いもどきの不審者を探しに行く。そこには、俺の友人もいるかもしれない」
男性は引き止めたいといった感じだが、友達もいるかもしれないということで引き止めきれないでいた。
それでも、竜太の腕をなんとか掴んで引き止めようとした。
「危ない! 逃げたほうが、いい! これだけの騒ぎだ。すぐに、警察も、救急車も、来る筈だ! いや、もしかしたら、城の衛士も来るかもしれない。とにかく、今は少なくとも、自分の命だけ、でも守ったほうが、いい!」
「いや、俺は行く。友人を見捨てるくらいだったら俺は死を選ぶ! だから、俺は行く」
その言葉を聴いて、空が軽く笑ってから男性を諭した。
「ははっ! こいつはこういったら絶対引かないから何言っても無駄ですよ。こいつは、普段は相当の馬鹿だしアホな行動もたくさんする。だけど、意外とまじめなんだよ」
「何だ、空? お前は行かないのか?」
龍太が半眼で空を見て、溜め息をついて聞いた。
「何言ってるんだ? 行くに決まってんだろ?」
「どうしたんだ? さっきまで嫌がってたのに」
「お前がそんな必死に助けに行くって言ってんだ。俺も行くしかないだろう? それに、樹が大事な友人なのは俺も同じだ」
二人の会話を聞いて、男性はついに諦めて、二人を止めることはもう、しなくなった。
「もう、止めはしない。友人を、助けて来い!」
男性は、龍太の支えてた腕を下ろさせて床に寝転がった。そして、ゆっくり目を閉じた。
「ああ、ありがとうな」
「まかせとけ!」
男性は、口の端をあげて、軽く笑った。
そして、走り出す二人の音を聞いて最後に力強く言った。
「死ぬなよ? 勝って来い! そして…………」
さらに、一言付け加えた。
「…………生きて、帰って来い!」
「はい!!」
二人は、大きく返事をした。
途中でも、何人かの怪我人を見かけたが、さっと避けて樹がいないのを確認すると、走り抜けていった。
デパートの奥、洋服屋の所まで行くと、三つの人影が見えた。
一つは、樹だと分かった。
そして、残りの二つは、見知らぬ男……おそらく例の不審者がいた。
樹は二人に向かい合うように立っていたが、体のあちらこちらを怪我している。だが、動けないほどではなかった。
「樹!」
「樹!」
龍太と空が、樹に駆け寄った。
樹が、驚いた顔でこちらを振り返った。
「何で来たんだよ!? 逃げろよ!!」
龍太が呆れたように笑った。
「助けに来たに決まってんだろ?」
「そういうこと」
すると、不審者の片方……黒髪短髪がこちらを見て、鼻で笑った。
「おい、あいつら、ヒーロー気取りでやってきたぞ?」
黒髪短髪が言うと、もう片方の肩にかかるぐらいの長さの茶髪が一緒に笑った。
「ああ、俺も見た。お笑いだな。俺らが誰かも分からないで哀れだな」
二人でひとしきり笑い合っていた。
それを呆然と眺めていた龍太と空が、樹に問いただした。
「あいつら誰なんだ? 魔法使いもどきらしいが……」
「あいつは――」
すると、樹の口からとんでもない言葉が出てきた。
「あいつは、ルーン武器の使い手、ルーン武器所持者だ!」
さらに、一言付け加えた。
「正真正銘の魔法使いだ」
どうだったでしょうか?
文章がおかしい!
ここが意味不明!
等々
できれば待ってますので
今後応援よろしくお願いします。