第九話 遠く遠く先に
第九話です
今回は場面転換が超多いです
すいません
戦闘中も多いとかいうツッコミは無しです
「世界中に散らばったルーン武器を回収しろ!」
王様の口より、告げられた言葉が三人に届く。
その、言葉の意味が分からず、めまいがして倒れそうになった。
樹は相手が王様という事も忘れ、眉根を寄せ、怪訝な顔をして、『嫌だ!』と拒否しようとした。
だが、言おうとする前に王様がさらに言葉を続ける。
「世界中のルーン武器を集めることが出来れば、世界を滅びから救う事ができる」
「ちょっと待ってください!!」
思わず、樹が大声を上げた。
その声に反応して、脇にいた衛士のうち何人かが樹に対して鋭い睨みを利かした。
空と龍太も樹のほうをチラッと見て『静かにしろ!』というアイコンタクトを送った。
「おい、そこの小僧。あんまりでしゃ……」
「よい。言いたい事は分かる。申してみよ」
衛士の一人が樹を直接咎めようとしたが、王様が右手で制した。
ようやく、自分が大声を出して、周りから浮いてしまったことを理解して、頭を軽く下げた状態で、続きを言った。
「はい。まず、何故この世界が滅ぶのですか? そしてもう一つ、何故王様は世界が滅ぶことを知ったのですか? 最後にどうして、ルーン武器を集めると世界が救えるのですか?」
「おい小…………」
さっき樹を咎めようとした衛士がもう一度、樹を咎めようとしたが、今度は王様がその衛士に鋭い睨みを利かせたため、渋々、引き下がったが、納得のいかない表情だった。
「さて、順番に質問に答えるとしよう。まずは一つ目だな。どうしてこの世界が滅ぶのか? 正直に答えるとしよう。それは、余にもよく分かっておらん。だが、この世界が何らかの理由で滅ぶのは間違いない」
「どうしてですか?」
樹が聞き返す。
「霊夢というものを知っているかの?」
「え? あ、はい、知っています」
突然、意図の分からない質問を受け、一瞬戸惑ってしまった。
「夢で見た者は近いうちに幸か不幸が起こるとされる現象だ。それが余も、二週間ほど前に霊夢と思われる現象を見た」
びっくりして、樹は目を見開いた。
「その時、どこからか『終わりだよ? 近づいてきたんだよ、世界が休む時が。年が終わるとき、すべては静寂に包まれるよ?』と、そう告げられた。余はこれを余自身の不幸による、年末に起こる世界の滅亡と捉える。そして、さらに『世界を支える数多の柱、静寂を包み込む』とも告げられた。これは、世界中にある二十四のルーン武器と捉える。世界各国のパワーバランスを保っていると言われておるからのう」
王様の言葉はまだまだ続く。
「まあ、他にもいくつか理由はあるがそれは追々話すとしよう。これで分かったかの?」
樹はまっすぐ王様を見て、答えた。
「はい。ですが、恐れながらもう一つ質問をよろしいでしょうか?」
「申してみよ」
「はい、では。どうして、それを私達にそれを集めさせるのですか? この国には日頃から訓練を重ねている衛士たちがたくさんいます。それなのに、素人同然の私達のような十九歳の子供が大量破壊兵器といわれることもあるルーン武器を集めなければいけないのでしょうか?」
それ聞いて、王様は一度樹から目を離し、龍太、空とわずかに視線を移動させ、また、樹に戻した。そして、長い顎鬚を一度触ってから、樹に返答した。
「一週間程前、ルーン武器所持者と戦ったな?」
「はい」
「まあ、それもあって城に呼んだわけなのだが、衛士団長から聞いた話では、相手に臆することなく、堂々と戦ったそうだな? そうだろう? 衛士団長」
すると、わきで直立していた衛士団長の霧島さんが体を動かさずそのままの姿勢で口だけを動かし、すばやく返答する。
「はい。実際には彼らの戦った姿は殆ど見ておりませんが、眼を見れば分かります。勇気に満ち溢れた眼を彼らはしていました。あれは、堂々と真正面から戦った証拠です。大人でもあのような眼をしているものはあまりいません」
「そういう事だ。そこで、お主らの勇気ある行動を称え、世界の命運を任せようと考えたのだ。もちろん、お主らだけではない。我が国の衛士も護衛として付けよう。だが、この国の治安維持もある故、あまり、そちらには数を割けられないがの」
「そして、お主らなら預けても良かろう。持って来い」
霧島さんが後ろの垂れ幕の奥に行き、すぐに出てきた。
手にはあるものを二つ持っており、それを見た。樹と龍太と空が一瞬、度肝を抜かれた。
「今、衛士団長に持ってこさせたのは、見て分かるとおり、緑川篤也、石田和斗両名から没収した『Z』と『TH』のルーン武器だ。これをお主らに貸し出そう。少しでもルーン武器回収の手助けになれば良かろう。それと、これも貸してやろう」
そう言って、王様は立ち上がり、玉座の後ろから何か取り出した。
見ると、それは、『Z』と『TH』にも似た先が渦巻状の杖型だ。だが、『Z』と『TH』と比べると、少しサイズが小さいようにも見える。大体三、四十センチくらいだろうか。
「これは、余が持つルーン武器『ing』。効果は、『持ち主の運を急激に上げる』。要はものすごくラッキーになるということじゃのう。これを貸そう」
「え……王様もルーン武器所持者だという事ですか?」
「そういうことじゃ。これで、ルーン武器が三つ揃った。つまり、お主達に一つずつ渡せるという事じゃのう」
「え……あのう、何て言うか…………」
樹や龍太や空までもがそわそわし始めた。
無理も無い。
今まで、存在自体が怪しまれ、目撃証言も殆ど無いルーン武器に遭遇した上に今度はそのルーン武器を使って世界を救えと言われたのだから。
それを感じ取ったのか、王様はこう言った。
「まあ、すぐに返事は出来ぬだろう。一週間ほど猶予を与えるとしよう」
「八月十四日にまた来るとよい。此度の謁見はこれにて終了とする」
謁見が終わった。
●
「時間は掛かるだろうが俺は楽しみに待っているぞ…………」
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謁見の場から出てすぐの脇の休憩室に霧島は待機していた。
そこで、樹や空、龍太と衛士団の珍エピソードなど雑談に興じていたのだ。
それは、なるべく、この三人の気をもいでやろうという霧島なりの気遣いだが、それが彼らに届いているかは分からない。だが、見ためからは王様との謁見の時よりは大分落ち着いているため、少なからず効果はあっただろう。
一通り雑談が終わったところで本題に入った。
「……で? そろそろ、本題に入るが、雑談してる間に決意は付いたかな?」
樹達は急に話を振られ、慌てた様子で返事をした。
「いや、王様の頼みなら断ることは出来ないですよ」
その言葉を聞いて霧島は安堵する。
「そうか。それなら安心した。大丈夫。君達なら、必ずこの世界を救えるだろう」
「その事なんですけど……」
「どうした?」
樹は遠慮がちに霧島に尋ねてきた。
「こんな事言うのは失礼かもしれないですけど、霧島さん達は王様の言うことを信じているのですか?」
――随分と素直な質問だ。
霧島はそう思った。
だから、真剣にこう答えた。
「正直、私達も半信半疑だよ。でも、王様が真剣に言っているんだ。王様が真剣に言ってる時は必ず嘘は付かない。だから、出来る限り信じることにしているんだよ」
「そうですか…………なら俺達は霧島さんの事を信じることにします」
樹がそういうと、空と龍太も頷いた。
――私を信じる……か。なら……
「そうか、ありがとう。それならば、私の事は下の名前で呼ぶといい。信頼してくれる相手には下の名前で呼んでもらうことにしているんだ。だから、君達はこれから私の事を『時雨』と呼んでくれ。衛士団の人もオフの時は私の事は時雨と呼んでいる」
「あ…………こちらこそ、ありがとう御座います、時雨さん」
「改めてこれからもよろしくな?」
●
薄暗い鉄格子で出入り口を塞がれた密閉空間。
日の光が入らず、あるのは、天井のランプのみ。これではあまり明るくは無い。
壁も近く、あまり広くない。せいぜい、二、三人くらいが暮らせるくらいのスペースしかない。
もうこんな空間で一週間は過ごしている。
やる事はあまり無いが、暇なせいか、やたら汗をかいている。
隣のここと同じ密閉空間にいる奴も同じく汗をかいている。
そこで、一つの影がやってきた。
一度動きを止めて、影を見やると、そこには顎鬚がたっぷり伸びた男が立っていた。
「ちゃんとやってるか?」
「何だよ。暇だからなちゃんとやってるけどよ……わざわざ何で俺らにこんな事させんだよ?」
「今は言えないのう。だが、いずれ話そう。今は黙って鍛えてろ」
「へっ、鍛えて力強くなったら衛士殴り倒して脱獄するかもしれないぜ?」
ニヤリと笑う。
だが、相手は一切表情を変えず淡々と答える。
「寝言は寝て言うのだな。お前らはルーン武器があったから強かったのだ。たかだが十六、十七程度の小童のお前らでは熟練の猛者の衛士達に勝てるわけが無い」
「けっ、つまんねえジジィだな。んな事は分かってんだよ。もうちょい面白い返しが出来ないのかよ?」
「余はお前達の下らん戯言に付き合ってやる余裕は無い」
「けっ、そうかよ。なんか言ってやれよ、石田!」
隣の部屋の男に話を振ってみた。
だが、返ってきた声からはやる気が感じられなかった。
「あ? 話しかけんなよ。俺今眠いんだよ」
「おい、お前も体鍛えておくのだぞ?」
「うっせ、指図すんな! ジジイ」
「かわいくない小僧め」
そう言うと、ジジイもといこの国の王は体を反転させ帰って行った。
そして、背を向けたまま一言だけ言って、そのまま去っていった。
「お前達のその筋トレはいつか必ず役に立つ。信じていろ」
「期待はしないぜ? ジジイ」
●
あれから、しばらくして、城から出て、樹達三人は樹の家に集合していた。
もう夜の十一時を回っており、今日一日は精神的にどっと疲れたのでもう寝る事にした。
三人で布団を敷き、寝る準備はもう万全になっていた。
「はあ、世界を救うねえ。あの王様何企んでるんだが…………」
樹は溜め息を付く。
それを聞いた空も頷いた。
「実際、俺らに話していない事もたくさんあるっぽいし。何か企んでるのは間違いなさそうだよなあ」
さらに龍太が続く。
「ま、王様の事だ。俺らが危険な目にあうことは極力少なくしてくれるんじゃないか? それに、俺らが本当に世界を救ったら一気にワールドクラスの救世主だぜ? やるしかないだろ」
「RPGじゃないんだぞ?」
樹が釘を刺した。
「分かってるよ。でも王様から期待されてるの事実だろう? 多分」
「まあ、そりゃそうかもしれないけど…………」
「まずは、親に言わないとな………………言ったらどんな反応するんだろう。怖いな」
龍太がその場で震えていた。
「お前ん所の親父は怖いもんなあ」
樹が笑った。
「うっせえよ!」
「ま、一週間は猶予がある。ゆっくり心の整理をすればいいだろう。俺は眠いから寝る」
空はそれっきり寝てしまって起きては来なかった。
結局、樹と空もそのまま寝ることにした。
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それから、一週間が経った。
約束どおり、樹たちはまた城の謁見の場へとやってきていた。
一週間前と同じ服装で入り、同じような形で謁見が始まった。
「さて、心の整理は付いたかな?」
「はい」
樹達三人ははっきりとした口調で答えた。
「よろしい。では、すぐに本題に入ろう」
とりあえず、どうでしたでしょうか?
意味不明だったでしょう?
すいませんね。
布石です。




