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ルーンコンダクター  作者: クロ
序  章:An Far Eastern rune conductor
10/20

第七話    The end of the severe battle

それでは第七話スタート!!

 それは、突然聞こえてきた。

「全員、そこを動くな!」

 緑川が辺りを見れば、このフロアに相当な数の人間が集まってきていた。

 おそらく、全員が城の衛士だろう。

 ――やばいな……こいつらと少し遊びすぎたな、抜け出すのはさすがに大変だなこれじゃ…………さて、どうしたものか


         ●


 スプリンクラーから降りしきる雨。

 それは、そこにいる者全てを縮まらせる強烈な刃。

 今、それが、二人の異端者に対する物へと変化していった。

 空は緑川から視線を逸らさず、少しだけそっと後ろに下がる。

「時間切れだな。いつまでも、舐めて掛かって遊んでるからだ」

 緑川がその言葉を聞いて、一息溜め息をつく。

 そして、口を開く。

「まあ、確かに舐めすぎていた。そこは反省する。だが、ここから逃げられないとでも?」

「はあ? この状態から逃げれると思ってんの?」

 お互いに呆れた声。

 そして、睨み合い。

 二人が睨み合っていると、ここから五十メートル程の距離の所にあるフロアの入り口付近

で鎧で身を包んだ一人の衛士が前に出た。

「緑川篤也!! 石田和斗!! 両名は我々と任意同行をしてもらう!!」

 鎧から澄んだ綺麗な声がした。おそらく女性だろう。

「任意って事は、拒否出来んだよなあ?」

 緑川が聞き返す。

「やましいことが無ければ付いてくればいいだろう? 何も悪い事はしていないんだ。ちょっと年寄りと世間話して帰るだけだ。何か不満か?」

 女性がさらに聞き返す。

「なら、無理矢理突破させてもらうぜ」

 突然、ルーン武器(フォース)を構えた。

 向こうの鎧の女性に。

 後ろを見ると、どうやら、石田もルーン武器(フォース)を構えていた。

 そして、入り口付近に向かって走り出した。

「――拘束せよ」

 走りながら唱える。

 と、同時に、女性が締め上げられたように身動きが取れなくなった。

 だが、気にせず、大声を上げる。

「お前達、やれ! この二人を公務執行妨害の罪で現行犯逮捕しろ!!」

 一斉に、衛士達がなだれ込んで来た。

 あまりの数に、俺達は肩がすくんだ。

 その数をとてつもなく多く、数十人で取り囲んでいた。空達だったら、即座に諦めて謝るレベルだ。しかし、あの二人は徹底抗戦の構えだ。

 空は、あの二人を衛士達に任せ、樹の元に駆け寄った。

 近づくなり、樹が頭を下げた。

 空はびっくりして一瞬と惑った。

「すまん。俺は、あの時、お前達が必死に闘っている時に何も出来なかった。いや、やろうと思わなかった。怪我をしたくないとか、死にたくないとか、自分の都合でお前達を見捨てようとしてた」

 樹がそういうと、空は樹の肩を叩いた。

「気にすんなよ。お前は、結局ここに来てあいつらと戦った。それだけで十分だろう? 最初、びびった事に関しては、今度一個三百円のアイス四つで手を打とう」

「さりげなく、恐喝すんな!」

 それを聞いて、空はニッと笑う。

「当然の報いだ」

 そして、急に真剣な顔をした。

「……で? 龍太、大丈夫そうか?」

「ああ。一応、骨は折れてない気がする。たぶんな。でも、気を失ってるな」

「そうか、まあ無事なら良かった」

 そこまで、話した所で、こちらに手が余っていたのか、一人の衛士がやってきた。

「君達、大丈夫か?」

 今度は好青年のような声だ。

「なんとか、大丈夫です」

「それは、よかった。しかし、三人だけでよくここまで頑張ったな」

 樹が、笑い返そうとした。

 その時に強い口調で言葉を続けた。

「ただし! あまり、無謀な事をするのは感心できないな。君達も、もう分かっていると思うけど、あそこで暴れているのは大量破壊兵器と呼ばれたルーン武器(フォース)の使い手だ。今回は運が良かったからいいものの、もし大怪我したり、死んだりしたらどうするつもりだったんだ?」

 暫く、空と樹が黙りこくっていた。

 空がそっと口を開く。

「いや、すいません。でも、なんとなく、逃げちゃいけない気がしたんで、一番最初に闘うって言い出したのは、そこで倒れてる龍太なんですけどね」

「この子か、全く無茶ばかりして……そろそろ起き上がったらどうだ?」

 空と樹がバッと龍太の方を見る。

 すると、目をパッチリ開け、上半身を起こしてそのまま起き上がった。

「お前、起きてたのかよ!?」

 龍太が平然と答える。

「ん? ああ、樹がやってくる少し前から気が付いていた。面倒だから、そのまま気絶した振りしてたけどな」

「はあ? お前は俺が戦ってる最中知らん振りだったんかよ!?」

「はっ、最初びびってた奴が何言ってんだ」

「お前も、一緒に戦ってたらもっと楽だったろうだが、衛士たちがもうちょっと来るの遅かったらやばかったんだぞ!」

「ざまあ!!」

「てめえ……」

 樹と龍太がその場で取っ組み合いを始めた。

 空と衛士の男はそれを無視して、二人で話し始めた。

「ところで、衛士さん?」

「何だい?」

 空は向こうの奥、緑川たちが暴れまわっている方を指した。

「あっちは大丈夫なんですか? 衛士さんは行かなくていいんですか?」

 そう聞くと、衛士はニッコリと笑ったように見えた。実際には鎧越しだから分からないが。

「ああ、たぶん大丈夫だろう。手を抜いていたとは君達と闘い続けていたんだ。今の状態なら、人海戦術だけでも行けるだろう。そして、その間に、私は君たちを保護しに来たんだ」

「ちょっと寒いんで外行っていいですか? さっきからどっかの馬鹿のせいで体中、水に打たれているんで」

「そうだな、反対側の出入り口に行こう。ほら、そこの殴り合ってる二人も外に出よう。風邪、引くよ」

 衛士が樹と龍太を呼んだ。

 丁度、お互いの顔を殴り合っていたが、衛士は一切気にすることなく、手招きした。

 が、二人は全く聞く耳を持たない。

 衛士は溜め息をつき、一言だけ言った。

「君たちが今すぐ来ないなら、今回の戦いで使った。食器など損害が出てるんだよねえ。弁償して貰おうか」

「よし、外に行くぞ」

「おら、ボケッとすんな風邪引くぞ!」

 パッと拳が止まり、二人が先行する形でさっさと外に向かった。

 その様子を見て、衛士はうんうんと頷いていた。

 樹と龍太は歩きながらも口喧嘩をしていた。

「お前が、食器とかくだらないもの使わなければ、弁償しなきゃいけないかもなんていう心配しなくて済んだものを!」

「文房具で闘ってた奴に言われたくないわ!」

「俺の方が粘ってたぞ!」

「俺は一度も倒れていないぞ!」

「お前はだいぶ後からやってきたもんな! それに、こんな雨ざらしにしやがって、風邪引いたらどうしてくれる!?」

「自分の体調管理ぐらい自分でしやがれ! もやし野郎!」

「ああ!? てめえが余計な事しなきゃ最初からそれで済むんだよボケ!」

 延々と言い合いをしていた。

 さすがに、手の付け様も無い。

 呆れて見ていると、衛士さんが空に語りかけてきた。

「ところで、君たちは見たところ学生かな?」

 突然の質問に意図が良くわからなかった。

「は、はい。俺と、そこの馬鹿二人は一応、十九歳の大学一年です」

「そうか。なら、スーツの類とかは持ってるね? 君たちの年だと、それが一番の正装だろう」

 ますます、意図が分からない。

「はい。持っていますけど…………それがどうかしたんですか?」

 すると、衛士の口から信じられない言葉が聞こえた。

「近いうちに王様から呼ばれると思うから準備しておいて」

「えっ!? 王様に!?」

 突然の事に空は大声を上げてしまった。

 先行していた二人も口喧嘩をやめて、こちらを振り向いた。

「その通り。確証は無いけど、たぶん、ルーン武器所持者(コンダクター)と戦ってたときの様子を聞かれるだけだと思うけどね」

「はあ……、でも、何で直接王様が? 代わりの者が来れば良いだけですよね?」

「まあ、そうなんだけどね。これは、ただの王様の趣味というか、人と話すのが好きなんだよね。特に若い人と話すのが。王様、もう今年で六十にもなるし。とは言っても、あの王様も若い頃とまではいかないけど、まだまだ現役で、一般人よりかは遥かに動けるしね。怪物王様だよ」

 王様について矢継ぎ早に語った。

 しばらく、空も樹も龍太も黙って聞いていた。

「王様のこと、尊敬しているんですね」

 まず、空が口を開いた。

 そう言うと、衛士さんが嬉しそうな口調になった。

「うん。すごく尊敬しているよ。王様は私達の事を心から信頼してくれているし、基本的に無茶なことは言わない。それにいつも、この国を、極東をまとめてくれている。今を平和に暮らしていられるのは王様のおかげかもしれないね。他にも、たまに、剣術指導もしていて、大概は新人を中心として若手なんだけど、模擬演習という形で実際に王様と戦うこともある。一応、この国の衛士団は入団するのも難しいはずなんだけどねえ。後、他にも………………」

 また、長々と王様について語り始めてしまった。

 一度、熱が入ると止まらないタイプのようだ。

 黙って聞いていたら、気付いたようにハッと止まった。

「おっと、何だが、一人で喋りすぎてしまったようだね。すまない。まあでも、とにかく王様は偉大で尊敬できる人なんだ。それだけは分かっていて欲しい」

「今までのを聞けば十分、分かりますよ」

 今度は樹が言った。

 それに、龍太も頷く。

「そうか。それは良か…………」

 それは良かった。

 そう衛士が言うとした時、後ろの方で怒号が飛んだ

「貴様ーーー!!」

 さっきの女性の衛士の声だ。

 どうしたのか?

 全員が一斉に振り向くと、女性の衛士が緑川と石田に殺されそうになっていた。

 なんと、鎧の頭の部分が脱げていた。

 そこには、鎧の中にしまわれているが、おそらく、茶髪のロングヘアーだ。

 顔は整っていて、若干勝ち気な目をしていて、男勝りな印象を与える。

 極東の衛士団に所属しているのだから女らしいわけも無いのかもしれないのだが、

 『TH(スリサズ)』で縛り上げられ、『(エオー)』で首を突き刺されそうになっていた。

 周りには、倒れた衛士が何人もいる。

 今も闘っている衛士は三分の一程度にまで減ってしまっていた。

「なっ……!」

 衛士が全力で緑川と石田の元に向かって走り出した。

 そして、空達三人も後を付いていくように走り出した。

「お前等ーー!! 士団長に手を出すんじゃねええ!!」

 緑川と石田がこちらの方を向いてニヤッとした。

 石田が女性の衛士の首を斬り飛ばす…………その場にいる誰もがそう思ったその瞬間、急に石田の腕が士団長の女性の首を斬り飛ばす直前で硬直した。

 見れば、緑川の体も硬直して自由が利かないようだ。

 そして、代わりに士団長の女性の拘束が解けたようだ。

 瞬時に石田の顔を殴り飛ばした。

 そして、緑川の顔を空達と一緒にいた衛士が殴り飛ばした。

 二人は無防備の状態で衛士二人の拳を受けてしまい、数メートル飛んで床に落ちて、完全に気を失ってしまった。

 立ち上がっているもの全員が安堵の溜め息をつく。

 溜め息をつき終わってから、緑川を殴り飛ばした衛士が士団長に駆け寄った。

「士団長、大丈夫ですか?」

 そういうと、士団長はゆっくりと答えた。声は少しだけ、疲れたようになっていた。

「ああ。そこまで酷くは無いよ。首を飛ばされそうになったこと以外はな」

「そういえば、士団長。なんであのルーン武器所持者(コンダクター)の二人は急に動きが止まったんですか? 何かしたんですか?」

 そう聞くと、士団長は首を振った。

「いや。私は何もしていないよ。本当に死を覚悟したさ。まあ、今は運が良かったって事で原因は後々調べるよ。それより…………」

 今度は空達三人のほうに顔を向けた。

「君達、すごいじゃないか。大人でも逃げ出すルーン武器所持者(コンダクター)に真正面から闘ったなんて。いやあ、皆が君達みたいに勇気あるものだったらこの国はもっと平和になるだろうね」

 その言葉に空達は『いやあ』だの『それほどでも……』とか照れ隠しに小さく返事するしか出来なかった。

 その様子を見て、さらに言葉を続ける。

「そうだ、君達の名前を聞いておこうか」

大神樹(おおがみいつき)です!」

月島空(つきしまそら)です」

西崎龍太(にしざきりゅうた)です」

 一人一人、自己紹介が終わると、士団長の女性が大きく頷いた。

「よし。君たちの名前は覚えておこう。またいつか会おう。といってもまたすぐ会えると思うけどね」

 三人はドキリとした。

 さっき、衛士の人が言ってた『王様から呼ばれるかもしれない』という話があったからだ。士団長にまで言われるといよいよ本当に呼ばれるかもしれないと思い始めた。

 士団長はこちらから目を離し、周りの衛士団の人達に指示を出し始めた。

「よーし!! おまえ達とこの勇気ある少年達の活躍のおかげで緑川篤也、石田和斗、両名の確保に成功した! おまえ達、この少年達に盛大に拍手だ!!」

 すると、倒れていた者も起き上がり、空達三人に一斉に拍手が送られた。

 数十人から一斉に拍手を受け、ものすごい怒号にも匹敵するほどの大音量が響き渡っていた。

 衛士達も口々に『おまえ等、よくやった!!』とか『あんま無茶すると、母ちゃんが悲しむぞ!!』とか賞賛や野次が四方八方から飛んできた。

 空達はどうすればいいか分からずそれが終わるまで黙ってみているしかなかった。

 しばらくして、士団長の女性が大きく手を叩いた。

「よし。おまえ達そのくらいにして、この馬鹿二人を回収して撤収するぞ! 混乱の修復など、後は警察様の仕事だ! 撤収!!」

 そう言って、号令をかけると、衛士団の人達が、いつの間にかロープで縛り上げられ、ルーン武器(フォース)を没収された緑川と石田を抱えて、ぞろぞろと帰り始めた。

 僕達と一緒にいた衛士と士団長がこちらに寄ってきた。

「よし。じゃあ、これでいったん別れよう。気を付けてな……って言いたい所だが――」

 士団長が龍太の胴体を見た。

「龍太って言ったな。お前、さっきからずっと無意識に腹を押さえてるな。普通に立っていられる様だし、大したことは無いだろうが、一応病院に行け。樹君、空君。連れて行ってあげられるか? なんなら、補助として、私かそこの使えない衛士を一緒に連れて行くが」

 士団長が空達の脇にいた衛士をジロッと見た。

 三人は目を見合わせる。

 そして、空がそっと口を開く。

「あの、実は俺も樹も全身が痛くてつらいんですよね。一人で歩くので精一杯なので、どちらかが付いてきてくれるとありがたいです」

「そうか、ならば、そこのやはり使えない衛士を連れて行かせよう。いいか? 丁重に病院まで遅れよ? いいな?」

 衛士は急にビシッと背筋を伸ばし、敬礼した。

「はっ! 責任を持って丁重にお送りいたします」

「よろしい。では私ももういくぞ」

 士団長の人は返事を待たずに歩き出していった。

「よし。君達、さあ病院までいこうか」

「はい!」

 短くて長い、とても長い初めての戦いを終え、デパートを後にした。

 龍太は衛士の人に肩を貸されて、樹と空はゆっくり足を運び、外に出た。

 空から降り注ぐ強い日差しが眩しく一層強く空達に降り注いだ。

 何年ぶりかに浴びたような暖かい日差しだった。

今回で予告通り、VS緑川石田戦終了です。

いやあ、たったの五.五話だけだったんですが

結構疲れました。

創作って大変ですね。

次回から新章です。

樹達の人生がこれからがらっと代わっていきます。


《追伸》

 最近、逆お気に入りユーザーが出来たり、感想もらえたりと、こんなまだまだ未熟な一作家にどうもみなさんありがとう御座います。

これからもがんばっていきますので応援よろしくお願いいたします。


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