第12話。「ただいまの後は、二表裏。
このお話は、
私が小さな頃周りであった面白い話やエピソードを元に、Aiに文章化を手伝ってもらいながら一緒に作った共同制作の小説です。私自身がゴビの調整や行間の演出など、こころを込めて編集しています。
コメディータッチの物語、
読者の私と一緒に読んでもらえたら嬉しいです(笑)
第12話「ただいまの後は、二表裏」
我が名はポチ。茶色のスピッツ。
カケルの『見守りカメラ』から僕のドアップの鼻でタマたちの秘密を守り抜き、ようやくカメラの電源が切れた日の午後。
ガチャリ、と玄関の鍵が開く音がした。
この軽い足取りは、小学校が終わって一番に帰ってきたサクラちゃんだ。
「ただいまー! ポチ、タマ、ミケ!」
リビングに飛び込んできたサクラちゃんを見て、さっきまでソファで
「あー、今日のマグロ缶は最高だったな」
とオッサン全開で寝そべっていた茶トラのタマが、俊敏な動きで床に飛び降りた。
「にゃ〜ん❤(サクラ、お帰り。寂しかった〜)」
「にゃお〜ん❤(サクラちゃん、待ってたのよ〜)」
……お前たちのその切り替えの早さは何なんだ。
タマにいたっては、普段のオッサン声を完全に封印し、サクラちゃんに拾われた恩を返すかのように、限界まで高音を出して甘えている。
サクラちゃんは「みんな良い子にしてた〜?」と嬉しそうに二匹を撫で回している。
この時のタマとミケは、誰もが認める「ただの可愛い猫」だ。
しかし、その平和は30分後に破られた。
ドカドカと乱暴な足音が聞こえ、高校生のカケルくんが帰宅したのだ。
「ただいま! ……おいタマ、ミケ! お前ら、今日カメラの前で何してた!?」
カケルはカバンを放り出すなり、スマホの画面をタマたちの目の前に突きつけた。
そこには、僕の巨大な鼻の後ろから、にょきにょきと不気味な前足が出てダンスをしているような録画映像が映っている。
「フニャッ?(何それ、知らない)」
「みゃあ?(ただの毛づくろいよ?)」
二匹はすっとぼけた顔で首を傾げる。
「嘘つけ! 録音データを聞いたら、ポチの鳴き声の裏で、思いっきり『クチャクチャ…あー、美味い』みたいなオッサンの声が微かに聞こえたんだよ!」
「お兄ちゃん、また変なこと言ってる。タマたちが喋るわけないじゃん。ねー、タマ?」
「にゃ〜ん❤」サクラちゃんに抱っこされながら、タマがカケルにだけ分かるように、一瞬だけ片目を細めてニヤリと笑った。
カケルの額にピキッと青筋が浮かぶ。
「ほら! 今こいつ、絶対に俺を煽った!!」
高校生の兄と小学生の妹がリビングで言い争う中、僕は二匹の猫に視線を送った。
タマの奴、サクラちゃんには極上の猫撫で声なのに、カケルには声を出さずに
『おいガキ、証拠を出してみろ』
と言わんばかりのオッサン顔でメンチを切っている。
ミケも爪を研ぎながら鼻で笑っている。
夕方になり、パートからお母さんが帰ってきた。
「ただいま〜。あら、カケル、またタマたちが喋るとか言ってるの? サクラ、お兄ちゃんをあんまりからかっちゃダメよ」
「はーい!」
「母さん、違うんだって! 本当に今日のは怪しいんだよ!」
お母さんはカケルくんの訴えをスルーし、キッチンへ向かう。
そして夜。
ようやくお父さんがクタクタになって帰ってきた。
「ただいま……あぁ、疲れた……」
お父さんがスーツの上着を脱いでソファに倒れ込んだ、その瞬間。
昼間はあんなにサクラちゃんに甘えていたタマが、お父さんの顔のすぐ横にのしかかり、ドスの利いた、本物の「オッサン声」でボソッと呟いた。
「おい。親父、ビール」
「うおっ!? ……なんだ、タマか。お父さん疲れてるから、後でな……って、え?」
お父さんがガバッと起き上がった。
「今、タマ、喋った……? ビールって……」
「ほら見ろーーー!!! お父さん、やっぱり喋ったろ!?」
「あなた、疲れて幻聴が聞こえるのよ。早くお風呂入っちゃって」
「お父さん、お仕事でお耳がおかしくなっちゃったんだね」
「ええ……? 幻聴、なのか……?」
頭を抱えるお父さんと、勝ち誇るカケル。
その横で、タマはフンと鼻を鳴らし、僕のドッグフードの皿の横に座った。
「(ポチ、お前のカリカリ、一口よこせ)」
「(絶対に嫌だ)」
家族が揃えば揃うほど、木村家のカオスは深まっていく。
我が名はポチ。茶色のスピッツ。
僕は自分の皿を前足で守りながら、そっとため息をついた。
僕たちのたたかいは、夜になっても、まだまだ続くらしい――。(第12話・終わり)




