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東野陽太(1)
いつまでこんな役をやれば、俺は俺になれるだろうか。そんなことを休憩中に考える。 東野陽太、26歳。自分を表現できる場所、自分の個性を出せる場所。それは誰もが学生時代に理想とし、そして現実を見て諦めるものだ。しかし俺は、現実とは理想によって作られると思い込んでいた。 俺にとって理想とは、俳優。中三のころ、オーディションを受けたら合格してしまった。理由は多分、顔立ちだけ。デキ婚で高校中退し、まずい飯で俺を育てた両親に初めて腹の底から感謝した。
そしてバイトをしながらこの業界にしがみついてきた。しがみつく他無かった。これを手放せば、俺には何も無い。いる価値もない様に思える役を重ねるほど、この事実が怖くなっていった。きちんと勉強し、良い大学に行き、稼げる仕事に就くといった「きれいな人生」を進んできた同年代の奴らが続々と幸せになっているからだろうか。家を出る際、足りない頭で反対してきた両親に従えばよかったと今更思う。しかし時計は戻らない。恐怖を抱えながら、演技に向き合う。これしか、無かった。




