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8話 魔獣を討伐したのに

エミリは魔道士で、魔法陣だけでなく魔道具の発明を研究している変り種である。

オタク気質なのに、アウトドアが好きで冒険者になったとか。

魔道士は魔法陣を扱い、魔法士は詠唱で魔法を操作するらしい。


ローザの宿で、酒のつまみに、エミリから魔道士の話を聞いている間に意気投合して俺の仲間になった。

俺からすれば魔道も魔法も違いがよくわからない。


彼女の得意技は、魔法陣の並列使用だ。


「探査に引っかかったわ。 ファングハウンドが約十体ぐらい。もう囲まれてる」

「ふん、犬っころが! ワシらを追いつめたつもりのようじゃな」


ボウエンは凄みのある笑みを浮かべ、背負っていた二本の大戦斧を両手に持ち、鼻息を荒くする。

ドワーフ種族特有の怪力を駆使し、魔獣を叩き斬るのがボウエンの得意な戦法だ。

それに肉弾戦だけでなく、土魔法の他に火炎魔法を扱うことができる。

鍛冶神の加護らしいが、ドワーフの中でも二つの魔法の才があるのは稀だという。


「サエマ、ニーナを連れているんだから、さっさと片付けなさい」

「ニーナのことは必ず守る。ローザはシッカリと保護者してろ」

「いちいち言い返さなくていいのよ」


俺は軽くローザをあしらい、腰の鞘から剣を抜き、腰を低くして身構えた。

チート的な才能はないが、俺にも一応、スキルはある。


俺の固有スキルは、『ドーピング』、『体調万全』の二つだ。

日本にいた頃、筋トレブームや健康ブームが流行っていた。

その影響で、プロテインやサプリを摂取し、仕事の合間にジムに通っていた。

そのことが起因して、異世界へ転移したことで、能力が発現したようだ。


先ほど飲んだ薬は、『瞬発力増強剤』である。

ちなみに薬は錬金術師であるローザとエミリに作ってもらっている。

俺が『体調万全』のスキル保持者と知った二人に実験され、色々なゲテモノを試された結果、色々な錠剤が作られた。


体調不良になることはないが、口に入れれば味はわかる。

あの苦しみを決して忘れることはできないだろう。


周囲の樹の枝が折れる、バキバキと音が聞こえてきた。


「さあ、来い!」


『ドーピング』は体組織の異常適応のスキルだ。

効果時間は約十分。

『体調万全』のせいで、時が過ぎると徐々に元の体へと戻ってしまう。

連続で薬を使うと、副作用があるから、今一つ、使えない能力なのだ。


樹々の間を縫って、ファングハウンドが一斉に飛び出して、奇襲をかけてきた。

犬系魔獣の得意とする戦法だ。

ボウエンはドシドシと前に駆け出し、襲ってきた二体のファングハウンドの体を大戦斧の両断する。


「ワンちゃんの丸焼きだー!」


エミリは嬉々として杖を振り、火炎魔法を放ち、三体のファングハウンドを一瞬で灰に帰した。


「可愛い女の子を狙うんじゃないわよ」


後を振り返ると、ローザが一瞬で数本のナイフを飛ばし、ファングハウンドを迎撃する。

あのナイフには彼女特製の猛毒が塗られているから、魔獣と言えども無傷ではいられない。


ローザがおっかないのは、暗記武器を体中に忍ばせていることだ。

その武器の一つ一つに色々な毒が塗られているから始末が悪い。

彼女は錬金術師だから、薬品の扱いに長けている。

以前に街でローザを不用意にナンパしようとした冒険者が、笑い茸の毒に侵され大変な目に遭っていたからな。

彼女に近づく男は例外なく痛い目をみることになる。

おー、怖い怖い。


「サエマ、早く蹴散らして! ニーナが怯えるでしょ!」

「パパー! 頑張ってー!」

「言われなくてもやってやるさ! ニーナに応援されているからな!」


俺は剣を斜め下に構え、身を屈めてダッシュする。

筋肉も強靭化され、瞬発力も跳ね上がっている。

体が異常なほど軽い。


まるで瞬間移動のように駆け走り、俺は三体のファングハウンドを屠った。

後を振り返ると、全てのファングハウンドが骸となっていた。


ファングハウンドはEランクの魔獣だからな。

俺達の実力からすれば、こんなもんだろ。


剣を鞘に戻していると、荷台から下りたニーナが走ってきた。


「パパー!」

「もう、怖い魔獣もいないぞ。食事の続きをするか」

「うん!」


ニーナを抱き上げ、二人で荷馬車まで歩いていくと、ローザ、エミリ、ボウエンの三人は呆れた表情で俺達を待っていた。


「周囲をよく見なさいよ。ファングハウンドの死体だらけじゃない」

「こんな凄惨な場所で食事だなんて、サエマのおっちゃん、無神経すぎるよ」

「うむ、ここでは酒も不味くなるわい」


ちょっと言ってみただけじゃないか。

俺にだってデリカシーぐらいはあるぞ。


するとニーナが頬を膨らませる。


「パパは悪くないもん」

「ニーナちゃん、男を甘やかしちゃダメよ」

「そうそう、私達はサエマのおっちゃんに常識を教えているだけなの」

「エミリに言われるようでは、サエマも情けないのう」


お三人さん、ちょっと俺への評価が酷くないか。

血の流れている場所で食事をしようと言った俺が悪かった。

でも今回も頑張って、ファングハウンドを倒しただろ。


俺のことを一番理解してくれているのはニーナだよな。

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