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4話 仲間達

オルホース男爵は俺と話し合った三日後、数名の私兵を護衛に従え、馬車で王都へと出発した。

ジェイクもまた、私兵の一人として男爵に同行している。


邸に残るはずだったニーナは、俺と行動を共にすると言い張って聞かず……結局、俺が根負けして一緒に行動することになった。


邸を後にした俺とニーナは丘を下り、街中へと歩いていく。

俺の手を握り、ニーナは嬉しそうだ。


「いいか、これから宿屋に戻るけど、俺から離れちゃダメだぞ」

「どうしてなの?」

「街には恐い冒険者達が沢山いるからな。ニーナみたいな可愛い女の子が一人でいたら食べられちゃうぞ」

「え!? 私、食べられるの?」

「ニーナのお肉は柔らかそうだからな」

「イヤー!」


慌ててしがみ付いてくるニーナの体を両手で掲げ、肩車をしてやる。

すると視線が高くなり、ニーナの表情に笑顔が戻った。


「頭の上なら、安心だろ」

「わーい、遠くまで見える!」


小一時間ほどかけて街の中央に到着した俺達二人は、細い路地に入っていく。

そこには『ローザの隠れ家』と看板が掲げられている宿屋がある。

ここは俺の定宿で、一階が飲み屋になっているのだ。


ニーナを路上に下し、二人で扉を潜ると、カウンターにいるローザが声をかけてきた。


「あら、急に出かけたと思ったら、可愛いお客さんを連れてきたわね」

「ニーナ、ローザおばさんだ。挨拶して」

「うん、私、ニーナと言います! ローザおばさん、こんにちは!」

「うふふ……こんにちは、ニーナちゃん」


引きつった表情でローザはニーナに手を振り、次の瞬間、カウンターを飛び越え、俺の首筋にナイフを突き立てた。

咄嗟に身の危険を感じた俺は、ニーナの頭を撫でる。


「サエマ、二十代の私がおばさんなのかな? 返答次第では頭がなくなるかもね」

「ニーナ、ローザお姉ちゃんだ。言い間違えちゃダメだぞ」

「はーい、ローザお姉ちゃん、よろしくお願いします」

「ニーナちゃんはいい子ね」


ニーナの返事に満足したのか、チッと舌を鳴らしてローザはナイフを胸元に入れる。

そんな物騒な獲物を、なんて場所に隠すなよ。

ちょっとした冗談だろ。


片手で首筋を摩りながら、俺はローザに声をかけた。


「集まってるか?」

「ええ、サエマがいないから、皆、暇してたわよ。ここで待っていて。呼んでくるわ」


クルリと背を向け、部屋の奥にある扉から去っていった。

その後ろ姿を見ながら、ニーナが俺の足を掴む。


「ローザお姉ちゃん、どこに行ったの?」

「騒がしい連中を呼びにいったんだ」


しばらく待っていると、ドタバタと足音が聞こえ、扉を開けて冒険者達が一人の少女が飛び出してきた。

そしてニーナを抱き上げ、顔を摺り寄せる。


「可愛いー! もしかして、サエマのおっちゃんの隠し子?」

「違うわ!」

「ニーナはパパの子供なの!」


男爵の邸で、パパ呼びはしないって言ってたのに、忘れてるし。

子供だから仕方がないけど、このままでは話がまとまらないでしょ。


後から現われた髭面のドワーフと、小人が俺達の様子を見てニヤニヤと笑みを浮かべている。


「ジェイクに連れていかれたと聞いたが、子供を誘拐してくるとは情けないのう」

「クスクス……兄貴にそんな趣味があったんだね」

「よからぬ妄想をするんじゃない。この子はオルホース男爵の孫だよ。以前に話したことがあっただろ」


二人に弄られているとはわかっていても、反射的に突っ込んでしまった。

俺達四人で騒いでいると、遅れてローザとエルフのフィアナが姿を現した。


「皆、少し落ち着きましょう。サエマさん、状況を教えてください」

「エミリ、ボウエン、リットも静かにして。そうでないと全員、昼飯を抜きにするわよ」


フィアナに諭され、ローザに脅された俺達四人は静かに黙り込む。

するとニーナが俺の足に、ヒシッとしがみついた。


「パパは悪くないもん!」

「そうね、パパは悪くないよね。ニーナちゃん、美味しいパンケーキがあるんだけど、お姉さんと一緒に食べようか?」

「うん! 食べる!」


ローザの提案に機嫌を直したニーナは、ローザと二人でカウンターへと歩いていった。


「ニーナちゃんの相手は私がするから。皆に話があるんでしょ。さっさと済ませて」


ニーナがいると、どうしても話しが脱線するからな。

助かるよ。


ボックス席のソファに座り、俺は皆を見回す。


「実はオルホース男爵家が潰されそうなんだ。状況を説明するぞ」


それから俺は男爵家が巻き込まれている件について、端的に話を始めた。

周囲に集まっている皆の表情も徐々に真剣に変わっていく。


「ひっどい話ね! オルホース男爵はキチンと領地を治めてるわよ。だって荒くれ者の冒険者達も、街の中では喧嘩しないようにしてるし! 犯罪も犯さないように頑張ってるわ!」

「それは街中で住む者として常識の範疇じゃ。 ジャルダン子爵が主張しているのは、『オリジンの大森林』の開拓ができておらんという点じゃろう」

「難しい話は苦手だから、おいらは何も考えずに兄貴の指示に従うよ」

「状況はわかりました。それでここにニーナちゃんが来ているということは、オルホース男爵からサエマさんが、何か対策を託されたということですよね。お世話になっているオルホース領のためなら、私達も協力します。話の続きを聞かせてください」


エミリとボウエンは現状を理解しているようだな。

リットは判断を丸投げするな。もう少し自分で考えろよ。

さすがはフィアナ、察しがいい。


俺はテーブルを片手でパンと叩き、ニヤリを笑んだ。


「皆で『オリジンの大森林』の中に街を作ろう! 新しい冒険者の街を!」

「ハァァアー!?」


その呆れた反応はないだろ。

いたって俺は真面目に提案してるんだぞ。

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