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27話 久しぶりの宴

コボレ村に戻った俺は、仲間達とちょっとした宴を楽しんだ。

俺とクロウドが、 リグドでの作戦を話すと、ロッタとエレーネが、「計画が無茶苦茶だった」「体に悪臭が染みついた」などと苦情をいう。

それを聞いた皆は、大笑いし、俺はエミリとローザに呆れられた。


「そもそもエミリが薬の効能をキチンと説明してくれていなかったのが原因だからな」

「あー、私に責任をすり替えないでよ、どうせゴブリンの成分と聞いて、面白そうと思って使ったんでしょ」

「それはエミリの言う通りね。サエマは必ず悪乗りするから」

「サエマさんは体はオヤジですが、心は悪童ですから。諦めるしかありません」


フィアナ、お前までそんな風に俺のことを思っていたのか……ちょっとショック。


凹んでいる俺に、リットが笑顔で声をかける。


「おいらはいつだって兄貴の味方だぜ!」

「堅苦しい冒険者など面白くないわい! ハチャメチャなサエマ、一緒に行動して楽しいのじゃ!」

「それは言えてるよな。おかしくないサエマなんてつまらん」


ボウエン、それは褒めてるのか?

クロウド、絶対にディスってるだろ。


周囲の様子を見ていたロッタが不思議そうに首を傾げる。


「なんだかんだ言っていますが、皆さん、サエマさんのことが好きなんですね」

「「「それは訂正して!」」」


彼の言葉に反応したローザ、エミリ、フィアナの三人が即座に拒否の声をあげた。

すると男性陣が大爆笑となった。


皆、『ビザーマスク』の仲間だろ。

いつものことだが、一応はリーダーの俺を持ち上げようという気持ちはないのか。


俺の隣でニコニコと周りを見ていたニーナが、俺の服を掴んだ。


「パパ、ニーナはパパが大好き! 楽しいパパが大好き!」

「ニーナ! 俺の味方はニーナだけだ!」


両手でニーナを抱き上げ、俺は頬を摺り寄せた。

そんな俺達二人を見て、エレーネが妙なことを言い出した。


「ニーナちゃん、男選びはイケメンの金持ち一択よ。おじさんとは遊ぶだけでいいんだからね。パパ呼びは有効だけど、本気にさせちゃダメ」

「お前は幼児に何を言ってんだ。妙な匙加減を教えるな」

「エレーネ、ニーナちゃんはまだ子供だから。パパが大好きでいいんだよ」

「さすがロッタ様、女の子は可愛さが一番ですよね」


それから皆で騒いでいる内に、ニーナが眠くなり、目を擦り始めた。

それに気づいたローザがニーナを抱っこし「私も寝るわ」と告げて、退室していった。

そして次々と女性陣は別室へと去っていき、残っていた男達も寝ることになった。


翌日の朝、装備を整えた俺は、モル爺さんの案内で、外壁の外へ向かった。

爺さんは俺に何かを見せたいらしい。


森林は三キロほど遠くに離れ、村の周辺は荒地が広がり、所々に樹々が立っている。

外壁の近くでは、簡易の樹の柵が設けられ、その中では農夫達が新しい畑を耕していた。


「もう移住者が働きはじめてるんだな」

「サエマさんに見せたいのは、あちらの樹です」


モル爺さんが指差す先に、何の変哲もない樹々があるだけだ。

意図が理解できず、俺は首を捻った。

するとモル爺さんが、困惑した表情をして話し始めた。


「あの樹は動くのです」

「!? いったいどういうことなんだ?」

「ニーナ様が森の樹々を移動させ、村の周りは草しか生えない更地になっていました。しかし、日に日に樹々が増えているのです。『コボレの盾』の三人に調べさせたのですが、夜になると、森から樹が歩いてきたと」


歩く……ということは樹の魔獣……トレントか。

トレントはDランク魔獣で、単体ではさほど強くない。

火炎魔法で黒こげになるからな。

しかし、集団ではCランクに跳ね上がり、危険も倍増する。


「ボウエン達には相談したのか?」

「はい。ですが、ローザ様は『危険はなさそうよ』と申されまして。皆様のことを疑っているわけではありませんが、村民達の間で不安が広がっているのです」

「畑仕事をしている傍に魔獣がいるのは気味悪いよな。わかった。これから一緒に理由を聞きに行こう」


これで解決と思っていたら、まだモル爺さんは懸念があるようだ。


「もう一つ、ご相談がありまして……こちらです」


モル爺さんの後を歩いていくと、村の裏門に近い空き地に、一体の魔獣が座り、毛づくろいをしていた。


「ミャウ!」


俺達を見つけた魔獣は首を上げ、口から涎を垂らす。

その姿を見て、俺は腰の鞘から剣を抜いて、臨戦態勢を取った。


「爺さん、早く逃げろ! 奴はアルジャタイガーだ!」

「サエマ様、お待ちを。まずはこれを見てください」


モル爺さんは手に持っていた袋を、アルジャタイガーの目の前に放り投げる。

すると、袋の布を爪で破り、アルジャタイガーが中の肉を食べ始めた。

それを見た俺は、どう対処していいかわからず、モル爺さんを見る。


「いったい、どうなっているんだ?」

「最近になって村の周辺に居着いてしまったのです」

「俺の仲間達は討伐しなかったのか?」

「ニーナ様が反対されまして……『ビザーマスク』の方々が魔獣に近寄っても、魔獣は危害を加えることもなかったそうで……」

「なるほど、人々を襲いそうにないから放置したってことだな」

「その通りです」


冒険者ギルドの資料でしか知らないが、あの体の斑点模様はアルジャタイガーに違いない。

アルジャタイガーはアルジャ連峰に生息すると噂されている幻の魔獣だぞ。

資料には、不確かではあるが、Aランク魔獣相当だと記載があった。

……いったい仲間達は何を考えているんだ。


あー、帰ってきて早々、頭がいたい。

そんな危険な魔獣を放置するなよ。

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