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17話 作戦会議

ボイルとドンガルも気が抜けて、少しは冷静になったようだな。


「考えてもみろ。ジャルダン子爵の兵は戦準備を始めただけだ。まだオルホース領に侵攻してくると決まっていない。今、王宮でオルホース男爵と子爵が論争している最中だぞ。兵を動かすには経費がかかる。子爵だって無駄銭は使いたくないだろ」

「しかし、手をこまねいて、敵軍の動向を見誤れば、タリアが戦火に見舞われるのじゃぞ」

「そうだ。子爵領との境からタリアまでは近い。一気に進軍されてもいいのか」


二人の懸念は理解できる。

俺が男爵に「領内を南下して街を作り直そう」と提案したのも、その点に理由がある。

そもそも、タリアの街が領内の北東に位置しているからだ。

オルホース領は北東部に平地が多く、街道沿いに南西へ進むほど、周囲は『オリジンの大森林』に覆われている。

つまり、南下すればするほど、人にとっては使い勝手の悪い土地しかない。

だからジャルダン子爵が狙っているのは、領内の北部だけだろうと俺は推察している。


「もし、王宮で、オルホース男爵の主張が負ければ、オルホース家は領地を取り上げられるかもしれない。そうなったら、こちらから戦う意味もないだろ」

「しかし、オルホース男爵の意見が勝ったとして、ジャルダン子爵が大人しく引き下がるかわからん。現に戦準備を始めているではないか」


ドンガルの言うことも、ごもっとも。

だが性急すぎる。


フーっと息を吐き、俺はドーマさんへ視線を移した。


「ドーマさん、コボレ村へ移住を希望している住人の数はどれくらいだ?」

「まだ悩んでいる人達が多いね。すぐに引っ越すと決めたのは、一割ぐらいよ。子爵領になっても税がそのままであれば、街に残りたいと思っている者達も多いからね」


予想通りだな。


生まれ育った土地を離れるのに、未練を持たない者はいない。

待遇が変わらなければ、現状のまま暮らしたいと思うのも無理はない。

以前に子爵領の税を聞いたことがあるが、男爵領よりも一割ぐらい税が重い。

それをどう判断するかは、それぞれの考えだからな。


続いて俺はボイルに顔を向けた。


「冒険者達の動向はどうなっている?」

「こちらのギルドにも、子爵領のギルド支部がジャルダン子爵と手を組んでいる噂は広まっている。る。多くの冒険者を囲い込んでいるようだ」

「それで何人ぐらい、オルホース男爵に協力してくれそうなんだ?」

「古くからタリアの街で狩りをしている冒険者が二十名ぐらいだろう。皆、実力も信用も折り紙付きの連中だ」


冒険者は自由を好み、金に目がない。

冒険者にとって貴族の領地云々の話は関係ないからな。

それだけ居るだけでもありがたい。


するとドンガルとサーシャが、蔑んだ視線でボイルを見た。


「ドワーフは恩義を重んじる。人族は情けないのう」

「エルフは信用と信頼を重んじます。人族とはなんと薄情な種族でしょう」

「冒険者の中には、ドワーフもエルフも、他の亜人種もいるわ。人族の悪口は許さんぞ」

「もういい加減におしよ。話が進まないじゃないか。サエマ、気にせず、話を続けな」


ドーマさんが窘めてくれて助かった。


「コボレ村の村役とは話がついた。街にできる敷地もあるし、食糧の目途もできている。村の特産品を取引してくれるスポンサーも見つけた。住人の移動については、男爵の資金から援助するから、ドーマさんは住人の中から先発隊を編成してくれ。サーシャはドーマさんの手伝いを頼む」


俺の言葉に二人は大きく頷く。


「ボイルの旦那は、男爵からの依頼として、コボレ村で魔獣狩りをしたい冒険者を募ってくれ。ドンガルとサーシャは、移住する者達を護衛したまま、村に残ってくれる人員を頼む」


冒険者、ドワーフ、エルフに警備されていれば、村までの道中も安心だ。


これで準備万端だと、油断していると、ボイルとドンガルが不満そうな声を漏らす。


「サエマ、意図的に話をずらすな。もったいぶらずに、『泥棒の時間』とやらの作戦の内容を話せ」

「今の話はコボレ村へ街を作り、撤退する話ではないか。どうせジャルダン子爵に嫌らがせをするのであろう。さっさと吐け」

「戦略には優先順位があるだろ。まあいい、俺の考えた作戦は、子爵の兵が動く前に戦えないようにする。訓練された兵士でも、武装と食糧がなければ戦いようがないだろ」


軍の戦となれば、数日はかかる。

武器も防具もなければ戦えないし、腹が減っては力もでない。


「武装を盗むということか? 多くの子爵の兵士は、リグドの街に集まっているが……城壁都市に襲撃をかけるのは無理だぞ」

「泥棒は戦わない。こっそりと盗むんだ。真正面から押し通ることはしない。街の近郊にある森から街までの穴を掘る。そうすれば、こっそりと忍び込めるだろ」

「はぁ!?」


呆れかえる二人を見て、ドーマさんが腹をポンポン叩いて大笑いをする。


「アハハハハハッ……何を考えたのかと思えば、穴掘りだってさ。サエマが普通のアイデアを出してくると思った、あんた達の負けさね」

「そうですね。サエマはサエマですからね」

「サーシャ、それって褒めてるのか?」


ディスっているように感じるのは俺だけかな?

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