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16話 猛る街の重鎮達

早朝、皆が起きる前に、旅支度を整え、玄関へ向かうと、モル爺さんが立っていた。


「もう行かれるのですか?」

「仲間のことを頼みます」

「皆さん、優秀な方ばかり。 サエマ様、ご無事を祈っています」


手短に挨拶をし、俺は馬に乗り、外壁の門を潜り、街道を疾走する。

二時間に一度の小休憩を挟むが、荷馬車を引いていないので、馬も元気だ。

俺が急いでいるの、表の理由はドーマさん達と早く合流するため。

ニーナと離れたのは寂しいが、久しぶりに監視がなく、心のままに酒が飲めるぞ。

子供の近くで酒を飲むのは教育に悪いとローザがうるさいからな。


甲斐甲斐しくニーナの世話をする彼女の姿を思い出し、プッと吹き出してしまった。

本人が知ったら怒るだろうが、今はいない。


「俺は自由だー!」


ウキウキしながら、手綱を操り、俺は先を急いだ。

道中、魔獣や野盗に遭遇することもなく、夕暮れ前に俺はタリアの街に到着した。


冒険者ギルドの馬房に馬を繋ぎ、玄関から建物内に入ると、多くの冒険者が屯っていた。

広間を見回すと見知った冒険者達が小さく手を振っている。


「サエマ、コボレ村に行ったと噂になっているぞ」

「ああ、ボイルさんが騒いでいると聞いてな。急いで戻ってきたんだ」

「ギルマスなら執務室にいるぜ」

「クロウド、ありがとよ。そうだ、用事を済ませた後、一杯やろうぜ」

「また宿に戻って、ローザに怒られるんじゃないのか」

「フフフッ……その心配は御無用。今日の俺は自由だからな」


俺が軽やかにステップを踏むと、周囲の冒険者達からドッと笑いが起きる。


それではと、クロウドと夜に飲みに行く約束を取り付け、俺は階段を駆け上がった。

三階の廊下まで行き、奥の部屋の扉を開けると、ボイル、ドンガル、サーシャ、ドーマの四人が集まっていた。


「皆揃って、会議でもしているのか?」

「こんなに早く戻ってきて、コボレ村で何かあったのか?」

「エルフの伝令から、ボイルの旦那が暴走しそうだって聞いたから戻ってきたんだろ」

「チッ……余計なことをしたのはサーシャだな」


デスクに両手でバンと置き、ボイルはジロリとサーシャを見据える。

その視線を無視して、サーシャはニコリと微笑んだ。


「サエマから、伝令を使って常に情報を伝えてほしいと、お願いされていましたので」

「そうだよ。サエマは、オルホース男爵から代理を頼まれてるんだ。情報と伝達するのは筋じゃないか。ギルマスとドンガルが、戦だと騒いでいたことが原因だろうに」

「ドーマさん、ちょっと黙ってくれ」


四人の様子からだいたいのことがわかった。

ボイルとドンガルの二人は、戦が近いと気持ちが逸っている。

それとは対照的に、ドーマさんとサーシャは、状況を見極めたいと考えているようだな。


「まずは、ジャルダン領の動向について教えてくれ」

「密偵の報告では、子爵の兵は、装備を整え、行軍の準備に入ったようです。まだ子爵からの命は来ていないようですが、油断はできません」

「軍の規模はわかるか?」

「ええ、子爵が抱えている兵数は約二百です。既に領境の街、リグドに百名ほどの兵士が移動を完了しています」


オルホース領内にいる男爵の私兵は約百名。

そのうちタリアに常駐しているのは五十名だが、今は護衛として、男爵と共に二十名ほどの兵士は王都に滞在しているからな。

城壁都市であるタリアを防衛するだけなら、冒険者を加えれば、粘ることはできるだろう。

しかし、領境を越えて進軍されると、近隣の村々にも被害が出る。


「だからワシは、国境を守りに行こうと言っておるのだ! 先手必勝は戦の常道じゃ!」

「タリアを守っている男爵の兵は動かさない。冒険者を募って、もし敵兵が領境に現われたなら、数を減らしておくだけだ。ゲリラ戦なら冒険者に分があるからな」


おいおい、ボイルとドンガルもすっかり熱くなっている。

二人共、少しは冷静になってくれ。

それに冒険者ギルドは、貴族の領土争いに手を貸すことは禁止されているはずだぞ。

ボイルに街の防衛を頼んだのが、間違いだったかもな。


するとドーマさんが大声で一喝する。


「あんた達、息まくのはいいけど、戦となれば装備も食糧も資金もかかるんだよ。誰がそれを負担するんだい! あんた達が暴走するのは勝手だけど、領主様に迷惑をかけるなら容赦しないからね!」

「ドーマさん、俺達は最善の策を考えてだな」

「こちらから領境まで出向いて、子爵の兵を煽るような行為は看過できません」


どう聞いても、ドーマさんやサーシャの方が正論だな。


オルホース男爵から代理を頼まれたが、それは自由に戦をしていいという意味じゃない。

もしもの時に備え、街の人達を安全に誘導するためだ。


しかし、このままだとボイルもドンガンも気が収まらないだろうな。

敵の兵士が動いているとわかって、じっとしていられるほど冒険者もドワーフも大人しくない。

エルフが血の気の多い種族でないだけ助かった。

俺だって、欲ボケ子爵に一泡食わせたい。


そこでフッと、俺の頭の中に悪巧みが思い浮かんだ。


「皆、一旦落ち着こう。子爵の兵が戦準備をしているのは確かに不穏だ。それなら行軍できないようにすればいい」

「サエマ、何か思いついたのか?」

「ああ、真正面からの戦はしない。だが盗みはする。ここから先は泥棒の時間だ」


俺の言葉を聞いて、四人は口を開いたまま体を固まらせた。

クーっ、一度は言ってみたかった名台詞なんだよな。

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