第9話: 御前試合のログ上書き ――「予定調和な勝利」という常識を、ゴミとして廃棄する。
「……マスター。個体名:王宮隠密部隊。……拠点の第ニ障壁を突破。……排除を開始しますか?」
コントロール・センターのモニターを見つめ、エステルが感情の起伏のない声で問いかけた。画面には、高度な隠蔽魔法を纏い、廃工場の敷地内に侵入した黒ずくめの男たちが映し出されている。
「いや、エステル。お前が動く必要はない。……拠点の『防衛ロジック』をテストする、ちょうどいい機会だ」
俺は操作パネル(元・錆びた鉄板)に手をかざし、工場の空間定義を一時的に書き換えた。
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\text{Defense Logic: [Log Maze]} \\
\text{Action: Discard [Directional Log] and [Spatial Continuity Log]}
$$
「【ログ一括廃棄】――対象、侵入者たちの『直進』および『空間の連続性』という概念」
その瞬間、モニターの中の隠密たちの動きが止まった。
彼らは真っ直ぐ歩いているつもりだろう。だが、俺が彼らの「進む」という概念のログを廃棄したため、彼らの肉体は一歩も前に進まず、同じ場所で無限に足踏みを続けていた。
さらに、空間の連続性も廃棄したため、彼らは隣にいる仲間の存在さえも認識できず、果てしない孤独の中で、ただ「存在しない出口」を探し続けるゴミへと変わった。
「……信じられない。魔法さえ使わずに、存在そのものを『演算ミス』にするなんて……」
シルフィが、俺の隣で驚愕に目を見開いていた。レベル99となり、世界の魔導演算を理解できるようになった彼女だからこそ、俺がやっていることの凶悪さが理解できるのだ。
「お飾りの王女が消えたと、王宮も焦っているみたいだな。……だが、彼らはもう『存在しないログ』だ。……さて、俺たちも行こうか」
俺は操作パネルを叩き、王都中央にある『御前試合』の会場へと座標を繋げた。
モニターには、満員の観客と、その中心で悦に浸るヴォルグたちの姿が映し出されていた。
「エステル、リーゼ。……そしてシルフィ。ゴミと蔑まれた俺たちが、世界の『常識』を掃除しに行くぞ」
「了解。マスター。……殲滅のログを生成します」
「はい、レイン様。……皆様の傷は、私が癒やします」
「ふふ……いいわね! 王都の連中に、本当の『化物』を見せてやるわ!」
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王都中央競技場。
そこは、国中の強者が集まり、国王の御前で最強を決める、一年で最も熱狂する場所だ。
そして今年は、俺を追放した聖騎士ヴォルグ率いる『蒼天の翼』が、Sランク昇格を賭けた決勝戦に臨んでいた。
「ヴォルグ! ヴォルグ! ヴォルグ!」
地鳴りのような歓声の中、ヴォルグは黄金の鎧を輝かせ、聖剣を高く掲げていた。
彼の顔には、かつて俺に向けたような蔑みは微塵もなく、ただ「勝者」としての傲慢さと、悦楽だけが浮かんでいる。
「ふん、ゴミ拾い(レイン)がいなくなってから、パーティの調子は最高だ。……あいつは、奈落の底で自分の無能さを呪いながら、死んだんだろうな」
ヴォルグがニヤリと口元を歪めた、その時だ。
ドォォォォォォォォォン!!
競技場の巨大な鉄門が、内側から爆発したかのように吹き飛んだ。
爆煙の中から、四人の人影がゆっくりと歩いてくる。
先頭に立つのは、ボロボロの作業着を纏い、冷徹な瞳でヴォルグを見つめる男――レイン。
その隣には、汚れ一つない銀髪の殲滅姫と、清らかな聖女。
そして――最後尾には、かつて「レベル1の忌み子」と蔑まれた、だが今は圧倒的な魔力を放つ天才王女、シルフィが立っていた。
「……あ、あ……あえ……?」
ヴォルグの声が、恐怖に震える。
彼が今見ているのは、死んだはずのゴミ拾いではない。
システムの常識を根底から破壊し、世界そのものを書き換えようとする、四人の「概念破壊者」たちだった。
「ゴミは、溜まってからまとめて捨てる方が、効率がいい。……そう言っただろ、ヴォルグ」
俺は、凍りついた競技場の中心で、ニヤリと口元を歪めた。
ここからが、真の「清掃」の始まりだ。
第9話をお読みいただき、ありがとうございます!
王宮の隠密を静かに「存在消去」し、いよいよ御前試合へ!
第1話からの宿敵・ヴォルグとの再会、そして圧倒的な「ざまぁ」の予感!
楽しんでいただけたでしょうか?
「ついに復讐が始まる!」「シルフィ王女の活躍が楽しみ!」
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皆さんの熱い声援ログが溜まれば、次回、御前試合はレインたちの「独壇場」となります。
王都全体を震撼させる「システムの裏口」を利用した無双!
ヴォルグたちが信じていた「強さ」という概念を、完膚なきまでに粉砕します!
次回もお見逃しなく!




