第8話: 天才の暴走 ――世界が彼女を処理しきれた、その恐るべき結果。
「……あ、あ、あああぁぁぁ……ッ!!」
シルフィの口から、悲鳴とも、歓喜ともつかぬ声が漏れる。
俺の手が彼女の胸元から離れた瞬間、廃工場のコントロール・センターは、視界を焼き潰すほどの黄金の魔力光に包まれた。
『システム:阻害データの除去を完了』
『システム:未処理経験値(EXP)の再演算を開始』
『――レベルアップ処理を実行します』
俺の視界にあるモニター群に、狂ったような速度でログが流れ始める。
$$
\text{Log: Silphy} \\
\text{Level: } 1 \to 5 \to 15 \to 30 \to 50 \to \dots
$$
それは、十数年もの間、彼女の天才的な魔導演算によって溜まり続け、行き場のなかった「成功ログ」の奔流だ。
ダムが決壊したかのように、経験値が彼女の魂へと注ぎ込まれ、肉体と魔力回路を強制的に再定義していく。
$$
\text{Level: } \dots \to 70 \to 85 \to 95 \dots \\
\text{Level: 99 (限界突破)} \\
\text{Job Evolved: [Arch Mage] → [Sorcery Empress (魔導女帝)]}
$$
光が収まった時。
そこには、以前とは比べ物にならないほどの、圧倒的な「存在感」を放つシルフィが立っていた。
ドレスは魔力の余波で破れ、露わになった肌には、古代の魔導言語が回路のように青く明滅している。
「……信じられない。これが……『レベル』がある、ということ?」
彼女は自分の手を見つめ、震える声で呟く。
その指先からは、制御しきれない極大の魔力が、目に見えるほどのスパークとなって漏れ出していた。
「レイン様。個体名シルフィ……魔力波形が計測不能。……私の『歼滅ログ』を上回る出力を検知」
エステルが、初めて表情に微かな危惧を浮かべて報告する。
リーゼも、そのあまりに強大で「清らかな」魔力に、圧倒されて祈ることも忘れていた。
「お前が天才すぎて、世界が処理を諦めていた結果がこれだ。……シルフィ。その溢れる魔力、試してみたくないか?」
「ふふ……ふはははは! いいわね! この十数年の鬱憤、全部ぶちまけてやるわ!」
俺はコントロール・センターの床に手をかざし、工場の地下にある『概念訓練場』へと座標を繋げた。
ここは、俺が深層の「空間のゴミ」を利用して作った、物理法則が通用しない、無限に広い仮想空間だ。
「さあ、全属性適性の『魔導女帝』様。お前の全力を見せてみろ」
「ええ、見てなさい! ――『全属性・同時展開』!」
シルフィが両手を広げると、訓練場の空間に、火、水、風、土、光、闇――すべての属性の極大魔法陣が、同時に、しかも無詠唱で展開された。
本来なら、一属性の極大魔法を使うだけでも、数分の詠唱と数千の魔導演算が必要だ。
だが、レベル99となった彼女の天才的脳細胞は、そのすべてをノータイムで処理していた。
「……マスター。あの複合魔法が発動すれば、この概念空間さえも崩壊します」
「問題ない。……俺の【ログ廃棄】が、ここにあるからな」
俺は、シルフィが展開した魔法陣の「演算処理」そのものに介入する。
(定義開始。対象、シルフィの魔法発動における『タイムラグ』および『魔力消費熱量』)
「【ログ一括廃棄】――『プロセス(詠唱・充填)』を捨てて、『結果(発動)』だけをここに残せ」
$$
\text{Causality Refinement:} \\
\text{[Magic Formula] } \xrightarrow{\text{Log Erasure}} \text{ [Instant Manifestation]} \\
\text{Cast Time: } \cancel{300 \text{ sec}} \to 0 \text{ sec}
$$
ドォォォォォォォォォォォォォン!!
訓練場が、七色の光の爆発に飲み込まれた。
それは魔法ではない。純粋な「現象」の暴力だ。
全属性の極大魔法が、コンマ零秒のズレもなく同時に炸裂し、空間そのものを粒子レベルで粉砕していく。
俺の【ログ廃棄】によって、魔法が完成するまでの「時間」と「無駄なエネルギー(熱)」が廃棄され、純粋な「破壊の結果」だけが現出したのだ。
「……あはははは! 凄い! 凄いわ! 私、本当に『化物』になっちゃった!」
爆発の中心で、シルフィが歓喜の声を上げる。
彼女は、世界で唯一、俺の【ログ廃棄】のサポートを受けることで、**「無詠唱・消費ゼロ・ノータイム」**で極大魔法を連発できる、システムの穴を突いた最強の砲台へと進化したのだ。
「……神の御業……いえ、レイン様の御業……」
リーゼが跪き、涙を流して俺を見上げる。
「さて、これでパーツは揃ったな」
俺は、モニターに映し出された王都の地図を見つめる。
そこでは、明日、レインを追放したヴォルグたちが参加する『御前試合』の準備が着々と進んでいた。
「最強の剣、最高の盾、そして最凶の砲台。……ゴミとされた俺たちが、世界の『常識』を掃除しに行くぞ」
その時、拠点の外壁センサーが、新たな侵入者を捉えた。
教会の残党ではない。……王宮の隠密たちだ。
「……どうやら、天才王女の覚醒に、王宮も気づいたみたいだな」
俺は、ニヤリと口元を歪めた。
王宮さえも巻き込んだ、俺たちの「世界の書き換え」は、ここからさらに加速する。
第8話をお読みいただき、ありがとうございます!
シルフィ王女のレベル99覚醒と、レインの【ログ廃棄】との
凶悪すぎるシナジー(無詠唱・ノータイム極大魔法)、
楽しんでいただけたでしょうか?
「全属性魔導女帝、最強すぎる!」「レインのサポートがチート!」
そう感じていただけたなら、ぜひ【ブックマーク】と【ポイント評価】をお願いします!
皆さんの熱い声援ログが溜まれば、レインたちの「概念破壊」はさらにエスカレートします。
第9話、王宮からの隠密をどう対処するのか。そして、いよいよ『御前試合』への乱入!
元パーティとの再会と、王都全体を震撼させる「システムの裏口」を利用した無双が始まります!
次回もお見逃しなく!




